モンスター・ヴァース、新章開幕
東宝30周年記念作品として制作され、国外でも高い評価を獲得した『キングコング対ゴジラ』(1962)のリブートであり、モンスター・ヴァース4作目となる映画『ゴジラVSコング』(2021)。トム・ハンモック氏とオーウェン・パターソン氏ら美術監督たちが『ゴジラvsモスラ』(1992)、『ゴジラvsデストロイア』(1995)、『シン・ゴジラ』(2016)など昭和シリーズだけではなく平成シリーズへの愛を込められたと明言しているモンスター・ヴァース。
その最新作『ゴジラxコング:ザ・ニュー・エンパイア(原題:Godzilla x Kong: The New Empire)』の短い予告映像が2023年4月20日の未明に公開され、2024年3月15日に劇場公開されることが発表された。約36秒という短い映像だが、そこから読み取れること、そして噂として語られていることから『ゴジラxコング:ザ・ニュー・エンパイア』について考察していこうと思う。
The #Monsterverse continues. Only in theaters March 15, 2024 #GodzillaxKong pic.twitter.com/i2YrX75D2K
— Godzilla x Kong (@GodzillaVsKong) April 19, 2023
「VS」ではなく「X」
今回の映画のタイトルで注目すべきはタイトルが『ゴジラVSコング2』などではなく『ゴジラxコング:ザ・ニュー・エンパイア』になっている点だろう。この怪獣の名前をXで繋ぐのは、平成VSシリーズと呼ばれた作品シリーズの後に制作された単発の作品群「ミレニアムシリーズ」の中でも人気が高く、2部作となった『ゴジラ×メカゴジラ』(2002)と『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003)が有名だ。
今回の『ゴジラxコング:ザ・ニュー・エンパイア』はTwitterの表記上は「x」となっているが、タイトルロゴを見ると「×」のようにも見える。前述した『ゴジラ×メカゴジラ』(2002)と『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003)ではゴジラとメカゴジラ「3式機龍」は戦うことになるのだが、一方でモスラとは共同戦線を張るなど、『ゴジラxコング』も単なる対立構造ではないことをうかがわせる。
特に、今回の『ゴジラxコング:ザ・ニュー・エンパイア』では日米2大怪獣以外にも新たなる敵怪獣の登場も噂されているため、もしかするとこの「x」はゴジラとコングが掛け合わさることで生まれる強大な力と未知数の可能性を示唆しているのかもしれない。
噂される敵怪獣
「宇宙から来た戦闘生命体スペースゴジラ」説
ファンの間では既に「敵怪獣はどの怪獣になるのか」という議論が白熱している。その中でも注目度の高い怪獣2体を紹介したい。その1体がゴジラの細胞(G細胞)がブラックホールに吸い込まれ、恒星の爆発のエネルギーを吸収して誕生した宇宙凶悪戦闘獣スペースゴジラだ。
スペースゴジラ説がファンの間で囁かれている理由としては、『ゴジラVSコング』で登場した地下世界に多数の結晶体が存在していたことが挙げられる。
スペースゴジラは地球上ではエネルギー消費が激しいため、地球上にも自身の肩にある結晶体に似た結晶体を生み出して宇宙エネルギーを吸収する設定がある。その結晶体が『ゴジラVSコング』の地底世界の結晶体であり、過去にモンスター・ヴァースの地球にスペースゴジラが飛来していた可能性を挙げるファンが多いのだ。
また、宇宙にゴジラの細胞(G細胞)が飛び立つ理由として、平成VSシリーズで初めてゴジラと戦った『ゴジラVSビオランテ』(1989)に登場した植物のバラと人間、そしてゴジラの細胞(G細胞)をかけ合わせたバイオ怪獣ビオランテの登場を期待する声もある。
「人類の負の遺産・完全生命体デストロイア」説
そもそも、「ゴジラ」シリーズにおける怪獣の立ち位置には人類の負の遺産という側面も大きい。核と放射能によって生み出されたゴジラ、『ゴジラ対ヘドラ』に登場するサイケデリックな公害怪獣ヘドラ、さらには第二次世界大戦中に不死の兵士を作るための「フランケンシュタインの心臓」が広島で被曝したことで生まれたフランケンシュタインにその体細胞が分裂したサンダとガイラなど数多く存在している。
他にも人類の自然破壊によって目覚めた怪獣も含めるときりがない。そのような人類の負の遺産としての怪獣の中でも、一度はゴジラを倒し、なおかつモンスター・ヴァースに登場する可能性がかなり高いと言われているのが完全生命デストロイアだ。
デストロイアは平成VSシリーズの最終作である『ゴジラVSデストロイア』に登場し、前述の通りモンスター・ヴァースにも影響を与えた作品にして怪獣でもある。デストロイアは先カンブリア時代の微小生命体が、初代ゴジラを倒す際に用いられた酸素を用いて相手を即死させ、溶解させるオキシジェント・デストロイヤーによって海底が無酸素状態になったことで誕生した怪獣である。
平成ゴジラシリーズではオキシジェント・デストロイヤーは核に匹敵するような危険な兵器として扱われ、『ゴジラ』(1954)では発明した芹沢大助博士は大量破壊兵器への転用を危惧して自殺するほどだ。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でも対怪獣兵器として登場しており、その際にはゴジラ抹殺まではいかなかったものの自然に大規模な悪影響をもたらし、不毛の大地ならぬ不毛の大海へと周囲の海を変えてしまう威力をもたらした。
今回の日米2大怪獣映画、ゴジラとコングは宇宙から来る敵スペースゴジラと戦うのか、それとも『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で怪獣(巨神、タイタン)たちが破壊された自然環境を復元したように再び人類の負の遺産であるデストロイアや人類が生み出したビオランテと戦うのか。期待は高まるばかりだ。
『ゴジラxコング:ザ・ニュー・エンパイア(原題:Godzilla x Kong: The New Empire)』は2024年3月15日(金)米公開。
『ゴジラvsコング』登場怪獣の紹介はこちらの記事で。
『ゴジラvsコング』の続編考察はこちらから。