映画『ゴジラvsコング』公開
2021年7月2日(金)、コロナ禍における公開延期を経て『ゴジラvsコング』が遂に公開された。待ちに待った世紀の一大決戦、既に多くの方が劇場で楽しまれたことと思う。
アメリカでは好成績を収め、4月には「#ContinueTheMonsterVerse(モンスターバースを継続せよ)」のハッシュタグがトレンド入り。同月、米The Hollywood Reporterは制作会社であるレジェンダリー・ピクチャーズの「シリーズをもう一つか、それ以上に増やすために静かに動いている」というコメントを紹介。同時に『ゴジラvsコング』のアダム・ウィンガードが監督に復帰する可能性もあるとされている。
さて、『ゴジラvsコング』ではタイトル通り両者の”決着”が描かれた訳だが、その一方で気になることがあるのも事実。以下、ネタバレありで感想を述べつつ、最後に続編への期待を書いてみたい。未見の方は劇場へと急いでもらいつつ、既にゴジラとコングの勇姿をその目に刻んだ方はぜひ筆者の妄想にお付き合い頂きたい。
以下の内容は、映画『ゴジラvsコング』の内容に関するネタバレを含みます。
『ゴジラvsコング』 振り返り&続編予想
「人間ドラマ」を捨てるという判断
まずは簡単に『ゴジラvsコング』を振り返ろう。『ゴジラvsコング』はまさにゴジラとコングの”決着”を描く物語としては満点だった。
しかし、どうしても消化不良を感じてしまう点があるとすればそれはやはり人間ドラマが余りにもご都合主義的に展開されたことだろう。それこそ、今や新設のビルは殆どセキュリティカードなしでは入館もできない時代だ。タワーマンションは三重ロックが当たり前、自転車で料理一つ届けるのだって一苦労である。
そんな中でメカゴジラという文字通りの最高機密を取り扱う企業が、たとえゴジラによって施設が蹂躙された後とは言えああも容易くスパイごっこに興じる素人三人組をその秘密の中枢へと案内するとは思えない。
が、そこを精緻に描こうとすればする程三人はメカゴジラの秘密から遠ざかり、いつまで経ってもそこにアクセスできなくなってしまうだろう。そのようなストレスを観客に与えることは『ゴジラvsコング』という作品の本意ではないとアダム・ウィンガード監督は判断したのかも知れない。その判断は、結果的に奏功したと筆者を含む観客の多くは受け止めたに違いない。
個人的には、丁度今年TVアニメとして放映された『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』の方が人間ドラマの置き去り感は気になった。そこでは「破局」から世界を救うという目的の下に人々は一致団結して行動を起こしていたが、個々人の欲望やそこへ至る動機が描かれることはなかった。
従ってそこには欲望を巡る他者との軋轢や価値判断の対立といった「ドラマ」が存在せず、あれだけ多数登場した人物キャラクターが押し並べて舞台の書割のような平板な印象となってしまった。このことについてはこちらの記事で詳しく書いたので、興味のある方は一読してもらえると嬉しい。
対して『ゴジラvsコング』では、バーニーがステレオタイプな陰謀論者として振る舞わされていたり、ジョシュが典型的な”ナード”として描かれる一方で”ヒーロー”たる主人公の博士であるネイサンには白人男性であるアレクサンダー・スカルスガルドが配役されるなど「これまでに何度も観させられた」ものを再び見せ付けられているようで目新しさは感じられなかった。
だが、モンスターバースにおける前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』においてキングギドラの脅威から救ってもらったことでゴジラに対して思い入れを持つようになったマディソンには少なくともあれだけ無茶な行動をする”動機”は設定されていた訳で、登場人物が何故そのような行為に及ぶのかという話の流れは十分観客に伝わるものとして描かれていた。
芹沢蓮(小栗旬)のリベンジなるか?
だがしかし。
それでもなおどうしても腑に落ちないことがある。
そう、言うまでもなく小栗旬演じる芹沢蓮の”空気”感だ。事前情報によって芹沢蓮(小栗旬)の登場を期待して劇場へと足を運んだファンは拍子抜けしてしまうだろう。
『ゴジラvsコング』を観て芹沢蓮というキャラクターを設定したことの必然性が腑に落ちる人間はそう多くはないだろう。作劇上、芹沢蓮の果たした役割は限りなくゼロに近いと言っていい。単にメカゴジラのパイロットが必要という話であれば、むしろエイペックス社に捕えられたマディソン、バーニー、ジョシュの三人の内の誰かが生体ユニットとしてメカゴジラに組み込まれてしまうとでもした方が遥かにドラマは動いたことだろう。
ゴジラとコングの怪獣チームはメカゴジラを物理的に破壊するというミッションを、対して人間チームは仲間をメカゴジラから救出するというミッションを負うことになるのだから。手持無沙汰のバーニーチームになけなしのオチを付けるべく、ジョシュにメカゴジラの脳波リンクを遮断するために制御コンピューターにバーニーのウィスキーをぶち撒けさせるというような、まるで昭和のブラウン管テレビを「叩いて直す」かの如きお粗末なシーンよりも見応えのあるものになったのではなかろうか。
さて、そんな芹沢蓮だが、大した役回りもなくメカゴジラのコクピットで感電して退場というのでは余りにも寂しい。メカゴジラと言えば続編でのパワーアップが定石である。今回は謂わば”ゲスト”枠での『ゴジラvsコング』への参加となったが、遂に次作でゴジラと対等に主役を張るという可能性もあるのではないだろうか?
そしてその時こそ、遂に芹沢蓮自らの口から思想、目的が語られることを期待したい。
続編予想はずばり『ゴジラvsメカゴジラ』!!
そう、つまり続編があるとすればずばり『ゴジラvsメカゴジラ』であると予想したい!英語タイトルは『メカゴジラの逆襲』やガンダムシリーズ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』にちなんで『Godzilla vs Mecha Godzilla Mecha Godzilla’s counterattack』とでもしておきたい。
四肢を切断され、研究施設も破壊されたメカゴジラだが、パーツ単位では無事な筈である。香港の惨状をその目に焼き付けた芹沢蓮が「人間の手による怪獣の制御」という使命感に目覚め、そのための手段としてメカゴジラの復活を目論む。
そこへ異星人が接触し、技術提供を申し出る。一見友好的な異星人の技術によって復活したメカゴジラは怪獣と過度に敵対することなく、むしろ人類の生活圏に現れた怪獣を地下空洞へと誘う役割を果たすことで人類と怪獣との棲み分けに貢献する。
そしてメカゴジラの有用性が人類に広く知れ渡った段階で、異星人によってメカゴジラに仕込まれたある装置が発動する。異星人の正体はX星人だろうか? それともキラアク星人? いずれにせよ彼らの目的は地球の支配であり、そのためにメカゴジラを利用すべく芹沢蓮に接触したのである。
かつてキングギドラを操った彼らの技術によって、メカゴジラは巨大な翼と三つの首を持つ「キングメカゴジラ」へと変貌を遂げる。飛行能力を得て縦横無尽に攻撃を繰り出すキングメカゴジラに、ゴジラとコングの最強怪獣コンビも為す術がない。果たして地球はこのまま異星人の手に落ちてしまうのか?
誰もが神に祈りを捧げたその時、海中から突如姿を現したのは巨大な甲羅を纏い、四肢を収納した穴からバーニアのように炎を噴き出しながら回転飛行するあの・・・
と、妄想はこのあたりにしておくとして、折角のモンスターバースである、勿論新怪獣も見たいが本邦ではゴジラやウルトラマンの人気に水をあけられているあの怪獣のこのような形でのサプライズ復活も見てみたいものだ。
実現すれば、ゴジラとコングの対決に続くまさに“夢”の共演となるだろう。
残念ながら、国産作品では目下共演どころか単体でのスクリーン復活さえ目途が立っていない状況のガメラである。外国作品に夢を託すしかないのが物悲しくはあるが、しかしこの際「シン」でも「モンスターバース」でもいいから是非とも新作を拝ませて頂きたい。よろしくお願いします!
ゴジラvsコング』は2021年7月2日(金)より全国でロードショー。
『ゴジラvsコング』の勝敗についての感想はこちらの記事で。
メカゴジラの過去作での活躍はこちらの記事で。
『ゴジラvsコング』のバトルシーンを中心とした要チェックポイントの解説はこちらから。