2021年7月2日、コロナ禍における公開延期を経て『ゴジラvsコング』が遂に公開された。ゴジラとコングの戦いに決着がつけられるという触れ込み通りの展開を見せた同作だが、やはり注目したいのはアイツの存在だ。今回は過去作を振り返る形でアイツの歴史を深掘りしていく。
ここから先の内容は、『ゴジラvsコング』のネタバレを含むので、注意していただきたい。
以下の内容は、映画『ゴジラvsコング』の内容に関するネタバレを含みます。
今回フォーカスするのは、事前情報によってその登場が広く知られていたメカゴジラ。ここでは過去のメカゴジラとともにその足跡を辿りたい。
メカゴジラの歴史
『ゴジラ対メカゴジラ』
メカゴジラが初めてスクリーンに登場した記念すべき第一作目は『ゴジラ対メカゴジラ』(1974)だ。今作のメカゴジラは何と体内に全自動ミサイル製造工場を備え、無尽蔵の弾頭供給が可能であるらしい。恐ろしいことだ。劇中でも圧倒的な火力で一時ゴジラを追い詰めたものの、最後は雷の力で身体を電磁石化させたゴジラとキングシーサーの連携攻撃によって撃破されてしまう。
余談だが、『キングコング対ゴジラ』(1962)においてはむしろゴジラは高圧電流に怯み、雷の力を得てパワーアップしたのはキングコングの方だった。『ゴジラvsコング』においてもその前例を踏襲して瀕死のコングはヒーヴの爆破による電気ショックによって復活する。
パワーアップ方法も作品によってご都合主義、もとい変幻自在なゴジラ怪獣たちである。
『メカゴジラの逆襲』
続く『メカゴジラの逆襲』(1975)登場のメカゴジラは俗に”メカゴジラ2″と呼称される。
その名の通り前作『ゴジラ対メカゴジラ』に登場した初代メカゴジラの残骸を改修したものだ。前回、ゴジラに頭部をもぎ取られコントロールを奪われた反省からサイボーグである桂にコントロール装置を埋め込み、桂の脳波とリンクさせることで操縦していた。
だが、最後は桂の自決によりコントロールを失い、ゴジラによって撃破された。
このように人間の脳波を用いたコントロールという発想は『ゴジラvsコング』にも引き継がれている。しかし『メカゴジラの逆襲』においてメカゴジラの操縦者に仕立てられてしまった桂の悲劇がストーリーの軸にあったのに対し、『ゴジラvsコング』においてメカゴジラのパイロットを務めた小栗旬演じる芹沢蓮には、モンスターバースにおける前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』において設定上の父である渡辺謙演じる芹沢猪四郎がゴジラに対して抱いていた想いのようなドラマがメカゴジラやゴジラに対して用意されておらず、単なる生体パーツ然としてしか描かれなかったことは残念だ。
『ゴジラvsメカゴジラ』
『ゴジラvsメカゴジラ』で平成”vsシリーズ”に登場したメカゴジラ。
こちらはvsシリーズ第二作『ゴジラvsキングギドラ』(1991)登場のメカキングギドラの残骸を分析し、ゴジラ対策機関である”G対策センター”が建造したものだ。初の「人類の味方」、というより人類側の兵器としてのメカゴジラである。
昭和期の比にならず戦闘的なデザインへと進化したゴジラに合わせて、こちらもてんこ盛りの武装でゴジラを苦しめる。特に支援兵器”ガルーダ”と合体した”スーパーメカゴジラ”状態での火力は圧巻だ。新たに設定されたゴジラの「第二の脳」を破壊して一時は行動不能にまで追い詰めるものの、瀕死のラドンが生命エネルギーを分け与えたことにより復活したゴジラによって最終的には撃破されてしまう。
余談だが、スーパーファミコン用ソフト『ゴジラ 怪獣大決戦』にはこの時点で登場した昭和版、vs版の二種類のメカゴジラが登場していた。昭和版は飛行形態への変形が可能であり、必殺技は全身の火器を撃ち尽くすフルバーストだった。
vs版は空は飛べないものの単純な動きが昭和版よりも俊敏で、格闘戦においては使い易かった。こちらは通常装備の必殺技はひたすら相手を殴り続ける格闘コンボだったが、隠しキャラのスーパーメカゴジラ状態での必殺技は昭和版同様全身の火器を撃ち尽くすものだったと記憶している。
昭和版が離れたところから一方的に撃つために避けたり防いだりすることが比較的容易だったのに対し、スーパーメカゴジラは一度ワイヤーで相手を固定してからビーム類を放つために最初のワイヤーに捕まってしまえば全ダメージをまともに食らってしまうということが恐怖でもあり、また頼もしくもあった。
『ゴジラ×メカゴジラ』
『ゴジラ×メカゴジラ』(2002)において遂にメカゴジラには“機龍”という名の固有名詞が与えられた。こちらもvs版同様、”特生自衛隊”というゴジラ対策組織により造られた人類の兵器としてのメカゴジラである。デザイン面では設定上も「ゴジラの熱線を弾く」とされたように全身に突起が少なくスマートだったvs版から、全身に刺々しく細かいディテールが配され昭和版への先祖返りを感じさせるものとなった。
何と言っても機龍の特徴は胸部に装備された3式絶対零度砲、通称“アブソリュート・ゼロ”である。絶対零度の光弾で物体を一瞬で凍結する上に少しの振動で分子規模まで破壊するというその設定から如何にゴジラと言えども直撃すれば死は免れ得ないかに思われたが、劇中ではゴジラに致命傷とは言わないまでも胸に大きな傷を負わせることにより退散させるに留まった。やはりオキシジェン・デストロイヤー以外の兵器によって殺されるゴジラは見たくないのが人情というものだろう。
そして、忘れてはいけないのが機龍には“初代ゴジラ”の骨が用いられているという設定である。ゴジラは作品ごとに様々な時系列へと分岐しているが、『ゴジラ×メカゴジラ』は初代『ゴジラ』(1954)から地続きの世界線ということだ。
この怪獣(ゴジラ)の骨を組み込んでメカゴジラを造るという設定は、先頃最終回を迎えたアニメ作品『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』に登場したメカゴジラ、更にキングギドラの骨を操縦システムに組み込んだ『ゴジラvsコング』登場のメカゴジラにも踏襲されている。
『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』
『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003) に登場のメカゴジラは例によって前作『ゴジラ×メカゴジラ』登場のメカゴジラ、機龍の改修型だ。こちらはアブソリュート・ゼロに代わって3連装ハイパーメーサー砲を備え、新型バックユニットや右腕にスパイラル・クロウを装備するなど武装が大幅に見直され、名称も“3式機龍〈改〉”と改められた。
モスラも参戦した戦いの中で自我に目覚め、最後は幼虫モスラの糸によって身動きの取れなくなったゴジラと共に日本海溝深くへと姿を消す。
『ゴジラvsコング』
ようやく本作『ゴジラvsコング』登場のメカゴジラの紹介である。
まず最初に言いたいのは、強い、強いぞメカゴジラ余りにも強過ぎる。
あんな、ろくな装甲にも覆われていないフレーム剥き出しのメカメカしい外見からは想像もできないようなタフさと素早さで終始ゴジラを圧倒していた。欲を言えばゴジラの熱線で爆散する姿を見たかったものだが、ゴジラの熱線は既に地下空洞までの出入り口を作るという見せ場を与えられていた。
ゴジラの首を両断することの叶わなかったコングの戦斧にも相応の見せ場は必要だろう。コングに四肢を切断されるメカゴジラは、『ゴジラvsコング』のフィナーレを飾るに相応しい噛ませ犬だった。
劇中ではパイロットである小栗旬演じる芹沢蓮が、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)でゴジラに倒されたキングギドラの三体の頭部の内の一体の頭部の骨を用いた操縦システムを介してメカゴジラを動かしていた。これは『ゴジラvsメカゴジラ』(1993)におけるメカゴジラが『ゴジラvsキングギドラ』(1991)でゴジラに倒されたメカキングギドラを解析して造られたことのオマージュだろう。どちらもキングギドラがメカゴジラという形で間接的に復活している。
しかし『ゴジラvsコング』においてキングギドラは最早頭部の骨しか残されておらず、そもそも『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)においてキングギドラは跡形も残さずゴジラに焼き尽くされてしまっていたので、今後の”モンスターバース”において「メカキングギドラ」として復活する見込みは薄いか。
以上、主だったゴジラ映画に登場した歴代のメカゴジラをざっと振り返ってみた。
あなたのお気に入りのメカゴジラはどれだろうか?
『ゴジラvsコング』は2021年7月2日(金)より全国でロードショー。
『ゴジラvsコング』の勝敗についてはこちらの記事で論じている。
『ゴジラvsコング』の気になるポイントについてはこちらの記事で。
『ゴジラvsコング』における「重さ」にフォーカスした解説記事はこちらから。
『ゴジラvsコング』で流れた楽曲についての解説はこちらの記事で。
無料公開されている『ゴジラvsコング』のサントラはこちらから。