2期11話/23話ネタバレ感想&解説『機動戦士ガンダム 水星の魔女』ベルメリア覚醒 | VG+ (バゴプラ)

2期11話/23話ネタバレ感想&解説『機動戦士ガンダム 水星の魔女』ベルメリア覚醒

© 創通・サンライズ・MBS

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第2期放送中!

2023年4月9日(日)より、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』2期が放送中だ。ガンダムテレビアニメシリーズ初の女性主人公作品ということでも話題を呼んだ本作も、いよいよクライマックス直前。前回、ようやく起動したガンダム・キャリバーンだが、エアリアルとの戦いでは防戦に徹しており未だその真価を発揮していないようだ。最終回ではいかなる活躍を見せるのだろうか? ネタバレありで早速2期11話/23話「譲れない優しさ」の感想、および解説をしていきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、TVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』2期11話/23話の内容に関するネタバレを含みます。

クワイエット・ゼロ停止に向かうミオリネたち

母プロスペラを止めるべくガンダム・キャリバーンでクワイエット・ゼロへと向かったスレッタの前に立ちはだかる姉、エリクト=エアリアル。互いに相手を説き伏せようとしつつも、MSという強大な力を持つ者同士の衝突は避けられない。データストームの負荷に耐えながら、スレッタは驚異的な操縦能力でエアリアルのガンビットを躱す。

一方、ミオリネをはじめとする地球寮メンバーはチュチュとニカの操るデミバーディングにによってクワイエット・ゼロへの侵入に成功する。停止コードを打ち込むものの、浮かび上がるのはエラー表示のみ。そこへ現れたプロスペラは、不敵な笑みを浮かべ停止コードは変更済みだと告げる。

ここまでの感想として、やはり一番気になるのはクワイエット・ゼロの機能についての説明が不足している点だ。劇中、パーメットを使用する機械をすべて制御下に置けるということが示唆されていた。ということは、プロスペラがクワイエット・ゼロを用いて実現しようとする「争いのない世界」というのは、単純に兵器をすべて自らの管理下に置くことによって物理的に争う手段を無くすという力業なのだろうか?

だが、それでも自動小銃などの銃器や単純なナイフなどの機械化されていない武器には当然パーメットは使われていないだろうし、厳密な意味では争いを無くすことはできない。それにはやはり人間から‟争う意思”そのものを取り除く必要があるのではないだろうか。そのためにデータストーム領域というギミックが用意されたのだと思うが、結局のところそれによって実現される世界が如何なるものなのかは謎のままだ。

クワイエット・ゼロが本領を発揮した結果、世界から争いはなくなるが、例えば個人の自由意思も同時に消滅してしまう。そのような致命的な弊害が提示されればこそ命懸けで母と姉を止めに行こうとするスレッタの姿に胸を熱くさせることができるが、実際のところクワイエット・ゼロが世界にとってどの程度有害なものなのかが明示されていないため、せっかくの姉妹対決という熱い展開もいまいち上滑りしてしまっている感想を持った。

エアリアルとの戦いにおいてはほとんど防戦に徹していたガンダム・キャリバーンだが、最終かいでの活躍に期待したい。エアリアルの頃とは違い、ガンビット任せの遠隔攻撃を行うのではなく、むしろ自らの操縦によってガンビットを躱すスレッタの姿からは確かな操縦技術が窺える。ガンダム・キャリバーンの全性能を引き出して戦うスレッタの姿に期待したい。

ラウダとグエルの兄弟対決

一方、ガンダム・シュバルゼッテで襲い来るラウダを、兄としてグエルはディランザで止めようとする。しかしさすがにパイロットとしての技量以上に、最新鋭機であるガンダム・シュバルゼッテとディランザでは性能差があるようだ。ディランザの脚部を切断され、徐々に追い詰められていくグエル。

ラウダとグエルの兄弟対決への感想としては、確かにそれを観たい気持ちはあった。だが、例えばグエルがシャディクと対決した時に較べるとどうしてもドラマとしての盛り上がりに欠けるという感想だ。グエルとシャディクは同輩であり、互いに相手を認める部分がありつつも、であるが故に決定的な違いが尖鋭化していった末に実力をぶつけ合うこととなった。

しかし、ラウダは物語初期から兄に心酔する様子のみが描かれていて、その下の兄グエルに対するコンプレックスや複雑な感情というものが汲み取れる様子が描かれてこなかった。そもそもガンダム・シュバルゼッテで出撃したのも、元はグエルではなくグエルを奪ったミオリネへの敵愾心が発端だった筈だ。だが、グエルがミオリネを庇った為に矛を交えることとなった。

あれだけ兄に心酔しているならば、グエルがディランザで立ち塞がった時点で大人しく引き返して然るべきだろう。そのグエルさえも打ち破りたいということであれば、やはりその野心や欲望をこれまでの物語で十全に示しておくべきだっただろう。それがなかったために、‟兄弟対決”を描くために取って付けられた展開という感想を抱いてしまう。

そもそもグエルは、主人公であるスレッタを差し置いて‟ライバル”と戦わされ過ぎだ。ソフィとノレアガンダム・ルブリス・ウル/ソーンもせっかく‟敵”側のガンダムとして登場したにもかかわらず、スレッタ駆るガンダム・エアリアルと正面から戦って勝敗を決することはなく、半ば自滅によって物語から退場してしまった。正直な感想としては、こんな取って付けた兄弟対決を描くくらいならばスレッタの戦いとその中での成長をもう少ししっかりと描いて欲しかった

とはいえ、満を持して描かれたガンダム・シュバルゼッテの戦闘シーンは迫力満点だった。父殺しと重ね合わせられるように、ラウダによって機体を貫かれたグエルが爆死する前にディランザに向けて消化弾を撃ち込んだフェルシーも大活躍だ。最終回では、弟とバトンタッチしたグエルが満を持してガンダムに乗り活躍してくれることだろう。

ベルメリア覚醒

迫るプロスペラを前に、懸命にクワイエット・ゼロの停止方法を探るミオリネ。だが、そんなミオリネに向けてプロスペラは躊躇いなく銃口を向ける。万事休すかと思われたその時、遂にベルメリアが覚醒した。逃げない覚悟を決めたベルメリアが、照準を合わせることすらままならぬままそれでもプロスペラに向けて銃を放ったその一瞬の隙を突いて、エラン(5号)がプロスペラのヘルメットを正確に射撃し、遂にエルノラとしての素顔を晒したプロスペラ。

クワイエット・ゼロへの侵入に際して、ケナンジから銃を持たされたベルメリアを見た時には嫌な予感がしたものだ。これまで正面から状況に対して戦いを挑むことなく、逃げの一手で生き延びてきたベルメリアだ。いきなり戦う為の武器を渡されたって使いこなせる訳がない。どうせ奪われて逆にピンチに陥るのがオチだろうと思っていた。

ところがどっこい、子供たちを守るべく遂に戦う覚悟を決め、大人としての責任を果た為に話の通じない‟先輩”であるプロスペラに銃口を向けるのみならず実際に発砲してみせた。その弾は当たることはなかったが、それによって確かにミオリネの命は救われ、エラン(5号)による反撃の契機を掴んだ。これまで「逃げることしかできない人物」として描かれていたが故のこの‟裏切り”は感動を呼んだ

個人的には、今回のMVPはベルメリアだという感想だ。それどころか、これまで描かれた卑怯で臆病な大人という‟溜め”が見事に覆されるドラマティックな展開は、本来主人公にこそ用意されて然るべき作劇ではないか。一瞬、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』という作品の主人公はベルメリアだったのか? と錯覚するほどだ。

ベルメリアの活躍によってプロスペラを制し、見事クワイエット・ゼロを機能停止させることに成功したミオリネたち。躊躇いなく自らに銃口を向けたプロスペラに、それでもミオリネは手を差し伸べる。感想としては、このミオリネの覚悟を見せ付けられることで、改めてプロスペラの「争いをなくす」という理想が如何に口先ばかりで薄っ平いものであるかを思い知らされた。本当に争いをなくすつもりの大人は、子供に銃など向けないのだ

クワイエット・ゼロを止められて大団円。とはどうやらいかないらしい。かねてよりベネリット・グループの力を疎んじていたのであろう宇宙議会連合は、クワイエット・ゼロ抑止を口実として惑星間送電技術を転用した巨大ビーム兵器を使用する決断を下す。その第一射を文字通り身を呈して防いだエリクト。しかし、その‟身体”であるエアリアルは大破してしまう。

姉に庇われる形となったスレッタのガンダム・キャリバーンは辛うじて稼働可能な状態のようだ。最終回での物語の落としどころは果たしてどこになるのだろうか。たとえビーム兵器を破壊できたとしてもスペーシアンとアーシアンの対立の根本解決にはもちろん繋がらない。ここまで描かれてこなかった‟水星”の事情が最終回で突然絡んでくることもないだろう。

残り1話となっても全く予断を許さない状況の『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。ガンダム・エアリアルもこのまま退場ということでは寂しいが、さすがに最終回の1話の内に修復、スレッタが再び乗り込んで最終決戦に臨むという展開は厳しいだろう。3期、ないし劇場版といった発展へも期待しつつ、残り1話となった物語の結末を楽しみに待ちたい。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season2は、毎週日曜午後5時~MBS/TBS系全国28局ネットで放送中。バンダイチャンネル、ガンダムファンクラブ、dアニメストア、アニメタイムズ他各種配信サイトでも配信中。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』公式サイト

2期1話/23話はAmazonプライムビデオ他で配信中。

1期はAmazonプライムビデオ他で配信中。

第12話 機動戦士ガンダム 水星の魔女

Blu-rayはvol.1〜4が発売中。

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2期1話/13話のネタバレ感想&解説はこちらから。

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腐ってもみかん

普段は自転車で料理を運んで生計を立てる文字通りの自転車操業生活。けれど真の顔は……という冒頭から始まる変身ヒーローになりたい。文学賞獲ったらなれるかな? ラップしたり小説書いたりしてます。文章書くのは得意じゃないけどそれしかできません。明日はどっちだ!
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