2期10話/22話ネタバレ感想&解説『機動戦士ガンダム 水星の魔女』ガンダム・キャリバーン初出撃 | VG+ (バゴプラ)

2期10話/22話ネタバレ感想&解説『機動戦士ガンダム 水星の魔女』ガンダム・キャリバーン初出撃

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2期10話/22話ネタバレ感想&解説『機動戦士ガンダム 水星の魔女』ガンダム・キャリバーン初出撃

2023年4月9日(日)より、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』2期が放送中だ。ガンダムテレビアニメシリーズ初の女性主人公作品ということでも話題を呼んだ本作も、いよいよクライマックス直前。ガンダム恒例のラスボス巨大要塞ことクワイエット・ゼロが起動し猛威を振るう中、遂にスレッタの最終搭乗機であるガンダム・キャリバーンが動き出した。ネタバレありで早速2期10話/22話「紡がれる道」の感想、および解説をしていきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、TVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』2期10話/22話の内容に関するネタバレを含みます。

恐怖、起動クワイエット・ゼロ

ビームを弾き、ミサイルはジャックして撃ち返してしまうクワイエット・ゼロの前に宇宙議会連合の艦隊は為す術がない。まさに圧倒的な戦力を誇るクワイエット・ゼロだが、果たしてガンダム・キャリバーンを持つとは言え地球寮=株式会社ガンダムチームで太刀打ちすることは可能なのだろうか。

ここまでの流れを振り返った感想としては、序盤からのプロスペラの悪役然とした描かれ方の一方で実際に何か悪事に手を染めた訳ではないという‟溜め”がやはり少々長過ぎたのではないかというものだ。何かを企んでいるようだがその何かが分からない。その時間が長く描かれ、遂に目的が明かされた時には既にクワイエット・ゼロが完成していた。

あんな巨大な要塞を宇宙議会連合やベネリットグループにバレずに建造することは可能なのか、ということは誰もが疑問に思うだろう。それを物語の都合と割り切るにせよ、プロスペラのベネリットグループ内の立ち位置が如何なるものなのかということが描かれぬままに‟ラスボス”として振舞うのはちょっと味気ない印象だ。

例えば、シャディクはアーシアンとスペーシアンの格差是正という政治目標の達成の為に、権謀術数を巡らせ暗躍していた。結果的に目論見は未遂に終わるが、目的と手段がきちんと繋がって描かれていたので物語として盛り上がった。しかし、プロスぺラにそのような描写はなかった。最初はデリングへの復讐が目的なのかと思わせつつ、途中でデリングと手を組む描写が見られ、その真の目的は謎に包まれていた。

だが、デリングと手を組む描写はそれまでの‟復讐”という視聴者の予想を裏切るものだ。それ自体がインパクトのある展開なので、改めて考えるとそこにはやはりその時点ではっきりと理由が描かれるべきだったとの感想を抱く。デリングと手を組むのはプロスペラ自身がベネリットグループの総裁の座を狙っているからだ、とすればそれなりに納得できただろう。

だが、そこでまた一つの疑問が浮かぶ。では、プロスペラは何故ベネリットグループ総裁の座を狙うのか、と。それはやはりデリングをベネリットグループ総裁の座から引き摺り下ろすという復讐の為なのかと視聴者を再びミスリードすることもできただろう。そうした中でクワイエット・ゼロという真の目的が明かされれば、デリングへの復讐でもなく、ベネリットグループ総裁の座への固執でもないということで、プロスペラの目的の描写には二重の裏切りが仕込まれることになる。

そのようなサスペンスが続く中で、遂にプロスペラはベネリットグループ総裁の座に就くという展開も考えられたのではないだろうか。ベネリットグループを掌中に収めればこそ、総力を挙げてクワイエット・ゼロの建造を命じることができるだろう。そうなれば、宇宙議会連合とプロスペラ率いるベネリットグループという対立構造もはっきりする。

しかし、現状はミオリネが一応のベネリットグループの総裁に位置付けられており、プロスペラ一派はベネリットグループ内における立ち位置が不明のままだ。仮に反乱軍扱いであるにせよ、であればミオリネ自身がベネリットグループを代表して宇宙議会連合と協約を結ぶなりして一枚岩の勢力としてプロスペラと対峙すべきだろう。だが、今のところ作中でもたらされる‟危機”の大きさに対して、主人公側の勢力が小さ過ぎる

クワイエット・ゼロの機能は人類の強制進化?

ベネリットグループという宇宙を股にかける巨大企業グループの中では、ほとんど政治的影響力を持たないとされる‟辺境”の地である水星出身の一企業であるシン・セー開発公社およびその社長であるプロスペラが何故クワイエット・ゼロを建造できたのか。そもそもそのアイデアはミオリネの母であるノートレット・レンブラン発案のものであり、それをデリングが継承したということだった。プロスペラはどこでそれを知ったのだろうか

プロスペラがクワイエット・ゼロによって成し遂げたいことは、どうやら世界、即ち人類の生活圏を地球と宇宙の別なくデータストームで覆い尽くすことらしい。しかし、それはあくまでもエリクトを生かすためであった筈だ。実際、既に覚醒したエアリアルをエリクトは自らの‟身体”として動かすことができるようになり、であればこそスレッタは用済みとされエアリアルから降ろされた筈だ。

その上で、わざわざ全人類を巻き込んで世界をデータストームで覆う必要とは何なのだろうか。プロスペラは、それによって争いのない世界に書き換えるというようなことも言っていたが、それはエリクトを生かすこととは直接的には関係がない筈だ。エリクトが‟ガンダム”の中でしか生きられなくなってしまいその解決法を探っていた時期に、偶然プロスペラはクワイエット・ゼロの存在を知りそれを利用できると考えたのだろうか。

人類がデータストームの中でしか生きられなくなれば、それはつまり全人類がエリクトと同様に肉体を失い、機械の中に自我を移植して生きるということを意味するのだろうか。そうなれば人類は意識や感情をまさにインターネット上のデータのやり取りのように手軽かつ高速で行え、誤解や争いの余地がなくなるということだろうか。いわば初代『機動戦士ガンダム』(1979~1980)で描かれた‟進歩した人類”であるニュータイプを物理的に再現するとでもいうような。

改めて重みを持つデリングの言葉

いずれにせよ、己の欲望のために圧倒的な軍事力で世界を支配したいということではなく、プロスペラはプロスペラなりに‟正しさ”を実現したいと考えているらしい。だが、有限な肉体を持つことこそが人間の生の基盤であるとすれば、プロスペラの理想は人間から‟生きる意味”そのものを奪い去ることに繋がってしまうかも知れない。

ここで、PROLOGUEにおいて悪役を演じたデリングの言葉が改めて重みを持つ。PROLOGUEでは、むしろ圧倒的な軍事力を背景として、自分は手を汚さずに安全圏から命令を下すだけのデリングの言葉は軽薄に聞こえた。兵器は敵を殺すことだけを目的とすべきだ、人の命を奪うことの罪は人自らが引き受けるべきだと言われても、ノレアじゃないが「どの口で」という感想にしかならなかった。

だが、肉体を持ち絶対的に個として存在するが故の悲劇は、やはりそれぞれの個人が引き受けるしかないのではないか。生きることに喜びがあるとすれば、それはこのような悲しさと裏表の関係にある筈だ。その負の側面のみをご都合主義的に切り取ってなかったことにしてしまえば、その時同時に生きる喜びも損なわれてしまうのではないか。デリングがこのことを危惧し敢えて手を汚したのだとすれば、まさにそれは今現在敢えて手を汚しているプロスペラとの対比となっている。

どちらの立場にも一応の理が認められはするものの、それが正面からぶつかり合ってしまえばどちらかが滅びるまで殺し合うしかない。スレッタやミオリネはガンダムを人を救う力として再定義しようとした。殺し合う以外の回答を、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が提示してくれることに期待したい。

覚悟を決めたスレッタ

母と姉を止めるべく覚悟を決めたスレッタは、ガンダム・キャリバーンでの出撃前に部屋に閉じ篭るミオリネに会いに行く。その前に立ちはだかるグエルはミオリネに会いたければ自分と決闘しろと言う。口上を述べ、二人はフェンシングで決闘する。

結果、グエルからホルダーの座を奪い返したスレッタは白い制服でミオリネの部屋へと赴く。この時のグエルはわざと負けたのだろうか。もちろん、何としてもスレッタをミオリネに会わせまいという気持ちでいた訳ではない。だが、ミオリネの今のパートナーは自分だという気持ちも確かにあっただろう。それに、スレッタをミオリネに会わせることで二人が現状に対していよいよ引き返せない地点まで足を踏み入れてしまうことへの危惧もあったかも知れない。

何より、不本意な形でスレッタからホルダーの座を奪ったことへの負い目もあっただろう。グエルの胸中はかように複雑だった筈だ。手は抜かない。それはスレッタへの非礼だ。とは言え自分に‟勝ち”への執念がある訳でもない。これは俺の戦いじゃない、という気持ちもあっただろう。だから、スレッタの覚悟が自分を上回るならば、必然的に自分は負けるだろう。それで構わない。そんな気持ちでスレッタを決闘へと誘ったのかも知れない。

とは言え、元より既にミオリネの花婿の座を巡る決闘はシステムとしては意味を失っていた。やはり、スレッタに後腐れのない状態でミオリネに会ってほしいというグエルなりの優しさだったのだろう。だが、アスティカシア高等専門学園における決闘制度とは単に生徒同士の揉め事を解決するための手段であり、ミオリネが花嫁として賭けられていたのは決闘そのものの仕組みとは無関係な筈だ。

今更だが、仮に1話の時点でグエルとの結婚を不服とするミオリネがグエルに決闘を申し込んで勝ったとすれば、それでグエルとの婚約は解消されたということではないだろうか。当初は曰くありげに登場した決闘委員会も、特に成員同士で目的を共有している訳でもなく、むしろグエルもシャディクも自社の経営に奔走しており本当にただの委員会でしかなかったらしい。

主役機であるガンダム・エアリアルの鮮烈なデビュー戦を飾り、かつこれまでのガンダム作品とは毛色を異にする‟決闘”が物語の本筋には絡まない単発的なギミックとして終わってしまったことは少々残念だ。過去にガンダム同士の決闘を描いた『機動武闘伝Gガンダム』(1994~1995)ではオリンピックのように四年に一度開かれるガンダムファイトは世界の支配権を賭けたもので、戦争と決闘を物語上で上手く結び付けていた。

余談だが、グエルとスレッタが生身で決闘したフェンシングのシーンは、初代『機動戦士ガンダム』のラスト、互いの乗機を失ったアムロとシャアが生身のフェンシングで勝負したシーンのオマージュだ。もっとも、この時のアムロとシャアは互いに本気で相手を殺そうとする命のやり取りをしていた訳だが…

ガンダム・キャリバーン初出撃

エリクトがデータストームの負荷を引き受けていてくれたエアリアルと違い、自分自身の身体をデータストームの負荷に晒しながらスレッタはガンダム・キャリバーンの出撃準備を進める。パーメットスコア5をクリアし、いよいよ準備は整った。

まさに‟魔女”の箒を思わせる巨大なビームライフルを携え、ガンダム・キャリバーンを駆りスレッタはクワイエット・ゼロへと肉薄する。迎え撃つガンドノードたちをビームライフルで一蹴するスレッタには待ち望んだ主人公の風格がある。惜しむらくは、どれだけ活躍しようとも残り2話しか活躍機会が残されていないことだが…

エアリアルに乗っていた頃、スレッタの実力は正直なところよく分からなかった。基本的にはガンビットによる遠隔攻撃が中心で、それを操る空間把握能力は凄いのかも知れないが、やはりガンダム本体を動かして攻撃を避けたり敵に攻撃を当てたりしないと‟強さ”はなかなか伝わり難い。それに、エアリアルの‟中の人”は序盤から匂わされてもいたため、それがエアリアルの強さなのかスレッタの強さなのかが分からなかった

それに較べると、データストームの負荷に耐えながら自分の力で敵陣に乗り込み次々と敵機を撃破するガンダム・キャリバーンの姿からは、スレッタ自身のパイロットとしての操縦能力の高さがストレートに伝わってくる。スレッタを迎え撃つべくエリクト=エアリアルも戦場に姿を現した。戦いの果てに、姉妹は、母子は、分かり合うことができるのか

一方、ガンダム・シュバルゼッテに乗り込んだラウダはミオリネにより変えられてしまった兄を憎み、銃口を向ける。愛が憎しみへと転じた瞬間だ。1話でエアリアルに‟ダルマ”にされてしまって以来、グエルがダリルバルデに乗り換えたこともあり出番のなかったグエル専用ディランザのまさかの再登板にも胸が熱くなった。こちらの兄弟対決にも注目したい。

ここまで開発途中から描かれてきたガンダム・シュバルゼッテが、グエル専用ディランザとの対決で撃破されてお役御免という訳でもないだろう。ディランザでシュバルゼッテに勝ち、弟を説得したグエルが最終搭乗機として乗り込みクワイエット・ゼロを巡る最終決戦に参戦するのではないだろうか。

そして、ミオリネに取り引きを持ち掛けられたシャディクは果たしてどのように罪を贖うのだろうか。同じく‟ダルマ”にされたミカエリスを修復し、ミオリネ、グエルとともに最終決戦に臨むのだろうか。ガンダムには乗りたくないと言っていたエラン(5号)にもやはりファラクトで参戦してほしい。そしてしれっと生き延びてくれ…

残り話数も2話となり、主役機の交代も行われいよいよ最後の盛り上がりを見せる『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。スレッタが、ミオリネが、グエルが、戦いの先に掴むものとは何だろうか。次回を楽しみに待ちたい。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season2は、毎週日曜午後5時~MBS/TBS系全国28局ネットで放送中。バンダイチャンネル、ガンダムファンクラブ、dアニメストア、アニメタイムズ他各種配信サイトでも配信中。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』公式サイト

2期10話/22話はAmazonプライムビデオ他で配信中。

1期はAmazonプライムビデオ他で配信中。

第12話 機動戦士ガンダム 水星の魔女

Blu-rayはvol.1〜4が発売中。

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腐ってもみかん

普段は自転車で料理を運んで生計を立てる文字通りの自転車操業生活。けれど真の顔は……という冒頭から始まる変身ヒーローになりたい。文学賞獲ったらなれるかな? ラップしたり小説書いたりしてます。文章書くのは得意じゃないけどそれしかできません。明日はどっちだ!
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