ネタバレ解説『モービウス』ポストクレジット&エンディングの意味は? ラストと今後を考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『モービウス』ポストクレジット&エンディングの意味は? ラストと今後を考察

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映画『モービウス』公開

ソニーが展開するSSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)の最新作『モービウス』が2022年4月1日(金) より日米同時公開された。『モービウス』は、『ヴェノム』(2018)、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021) に続き「スパイダーマン」関連キャラクターを主人公に据えた作品。ジャレッド・レト演じるマイケル・モービウスの苦悩と戦いを描く。

『モービウス』の指揮を執ったのは『チャイルド44 森に消えた子供たち』(2015) でトム・ハーディを主演に起用したダニエル・エスピノーサ監督。血液の難病に苦しむ天才医師マイケル・モービウスは、コウモリの血清を自らに投与するという危険な治療に挑む。

そして『モービウス』で待っていたのは、意外なラストだった。今回は映画『モービウス』のクライマックスからポストクレジットまで、その意味を解説&考察していこう。

以下の内容は映画『モービウス』の結末部分に関する重大なネタバレを含むので、必ず劇場で作品を観てから読んで頂きたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『モービウス』の結末に関する重大なネタバレを含みます。

『モービウス』のエンディングは?

マイケルが得た力

映画『モービウス』の本編は単純明快で、血清で得た吸血コウモリの力のコントロールに苦悩するマイケルと、その親友で同じく血清を打ったがこの変化を“進化”と考えるマイロの戦いが繰り広げられた。血を求める衝動をコントロールできないマイケルがその力を捨てようとするのに対し、マイロは積極的に人を襲い、マイケルにもその“進化”を受け入れることを求める。

マイケルを誘き出すため、マイロはマイケルが愛するマルティーヌの血を吸って重傷を負わせる。マイケルがマルティーヌのもとに駆けつけると、マルティーヌは死ぬ直前にマイケルの唇を噛んでその血を体内に取り込んだ。大方の予想通り、これによってマルティーヌは吸血コウモリの血清の力を得て、マイケルとマイロの戦いの後に蘇ることになる。

一方のマイケルはマルティーヌの血を飲み、“レッド(天然の人間の血)”の力を得てマイロに戦いを挑む。マイロは力を得たことを自分自身の“進化”だと捉えていたが、マイケルは逆に自身に力を与え受け入れてくれたコウモリの力を借りる。身体をコントロールするのではなく、自然や自分以外の存在というより大きな力に助けを得てマイロを越えていく。これは、マイケルが地下鉄の風やビル風を利用して空を飛ぶ力を得ていたことと地続きの展開だ。

コウモリの一斉攻撃を受けたマイロに、マイケルは“血清の血清”を投与してその力を奪う。元々マイケルとマイロは難病を患っていたことから死が近かったという設定であるため、吸血コウモリの力を失ったマイロは命を落としたようだ。

ルーシェンという名

25年前にギリシャの病院でマイロの命を救ったマイケルは、最後にもう一度マイロのことを「ルーシェン」と呼ぶ。難病の自分だけが(医者よりも長く)病院に残る生活の中で、隣のベッドに入院する子どもを皆「マイロ」と呼んできたマイケルは、ルーシェンに対してもマイロと名付けた。だが同じ難病を患うこのマイロは、生涯マイケルと行動を共にすることになった。

マイケルは幼い頃に機械のトラブルでマイロが死に瀕した時も、マイロのことを一度だけ「ルーシェン」と呼んでいた。そしてこのラストの場面でも死に瀕したマイロを「ルーシェン」と本来の名前で呼んだのだった。

なお、ドラマ『ドクター・フー』(1963-) の11代目ドクターとして知られるマット・スミスが演じたマイロのモデルは、原作コミックのハンガーというヴィランだ。原作ではロクシアス・クラウンという名前だが、映画版ではマイケルから名前をもらい、マイロ・モービウスという名前になっている。マイロのルーシェンという元の名前には、原作のロクシアス(ルーシャス)の名残がある。

一方、米ComicBookによると、当初マット・スミスはロクシアス・クラウン役で『モービウス』登場する予定だったが、モービウスに近い能力のオリジナルキャラクターに変更になったという。もしかすると、今後ハンガーことロクシアス・クラウンは違う形で映画に登場するのかもしれない。

マルティーヌはどうなる?

気になるのはマイケルとマイロの戦いの直後に目を覚ましたマルティーヌだ。マルティーヌ・バンクロフトはコミック「アメイジング・スパイダーマン」で1971年に登場したキャラクター。コミックではマイケル・モービウスのフィアンセとして登場し、モービウスの犠牲者になった後にヴァンパイアに生まれ変わる。

コミック版ではスパイダーマンやモービウスとも対立する展開が待っているが、SSUでの再登場に期待したい。なお、既にSSUの作中で触れられ、今後の登場が期待されているキャラクターには、シー・ヴェノムとトキシンがいる。

モービウスはなぜ?

映画『モービウス』のラストで十分に説明がなかった要素の一つは、マイケル・モービウスはマイロ用の力を奪う血清以外に自分用の血清を用意していたが、結局自分には使用しなかったという点だ。コウモリとの調和を経て、力をコントロールできると判断したのだろうか。あるいは、マイケルはマルティーヌが死んだと思っているので、その死(血)を無駄にしたくないと考えているのかもしれない。

いずれにせよ、他の多くのスーパーパワーを持つキャラクターとは違い、自分の力を奪う術を持っているマイケル・モービウスは、マーベルのマルチバースの中でも異色のキャラクターになっていくだろう。マイケルが自ら力を持ち続けることを選んだのだとすれば、ヴェノムが悪人を食べるようにモービウスも悪人の血を摂取することになるのだろうか。

また、力を与えるオリジナルの血清についても二つの予備がラボに置かれていたことにも注目したい。マイロが一つ使用したとして、もう一つの血清はまだ存在しており、新たなヴァンパイアが生まれる可能性があると考えてよいのだろうか。一方で、マルティーヌのようにマイケルの血を投与することでヴァンパイアが生まれうるのならば、可能性は無限大だ(他のキャラクターたちはモービウスの血を体内に取り込まないように気をつける必要があるだろう)。

ポストクレジット徹底解説&考察

ミッドクレジットの展開は?

そして、これらのまだ答えがない問いをかき消すようなポストクレジットシーンが待っていた。厳密には、『モービウス』にはエンドクレジット後のポストクレジットシーンはなく、ミッドクレジットシーンが二つ挿入されていた。『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』も同じく“おまけ”はポストクレジットではなくミッドクレジットのみとしており、これはSSUの方針なのかもしれない。

なお、以下の内容は映画『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』や『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2022) といった作品のネタバレを含むので、注意して頂きたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』『モービウス』の内容に関するネタバレを含みます。

『モービウス』の一つ目のミッドクレジットシーンは、ニューヨークの空に紫の亀裂が入る場面から始まる。多くの方がハッとしたことだろう。これはMCU映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で見た光景だ。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』では、スパイダーマンことピーター・パーカーがドクター・ストレンジに人々の記憶からスパイダーマン=ピーター・パーカーという記憶を消すことを依頼した結果、呪文は失敗してマルチバースの扉を開いてしまう。逆に他のユニバースからスパイダーマン=ピーター・パーカーという事実を知っているヴィラン達がMCUのユニバースに集結するという大事件が発生する。

『ノー・ウェイ・ホーム』のミッドクレジットシーンでは、SSUからヴェノムとエディ・ブロックもMCUの世界に飛ばされていたことが明かされた。一方で、最後にドクター・ストレンジがマルチバースの扉を閉じる呪文を唱えたことで、ヴェノムらは元の世界に戻っている。

スパイダーマンと出会っていないヴェノムが召喚された理由はこちらの記事に詳しい。

一方、『モービウス』のラストでは、ニューヨークの刑務所に映画『スパイダーマン:ホームカミング』(2017) のメインヴィランであるヴァルチャーことエイドリアン・トゥームスが登場。MCUのユニバースからSSUに転送されたのだ。

ヴァルチャーが転送された理由は?

ヴァルチャーは『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019) 以前にスパイダーマンの正体を知っていた数少ないキャラクターの一人。「スパイダーマン=ピーター・パーカーということを知っている人間」なのでドクター・ストレンジの呪文に何らかの影響を受けたと考えることもできる。ヴェノムがSSUからMCUユニバースに、そしてMCUからSSUユニバースに飛ばされたことの副作用として、ヴァルチャーは飛ばされたのかもしれない。

ヴァルチャーは『ホームカミング』のミッドクレジットシーンで、刑務所で出会ったスコーピオンことマック・ガーガンからスパイダーマンの正体を聞かれる。ヴァルチャーは「知ってたら殺してる」と答え、自分を見捨てず命を救ったピーターのことをかばう。ヴァルチャーはMCUピーターが救った最初のヴィランでもあるのだ。

一方で、MCUでは世界中の人がスパイダーマン=ピーター・パーカーという事実を知っている。どのような理由でヴァルチャーが転送されたのかは監督らの説明を待ちたいところだ。

なお、MCU「スパイダーマン」のミッドクレジットシーンは、『ホームカミング』ではヴァルチャーがピーターをかばい、『ファー・フロム・ホーム』ではJ・ジョナ・ジェイムソンがスパイダーマンの正体を暴露(『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』と共有されることになる)し、『ノー・ウェイ・ホーム』ではヴェノムの転送が描かれている。SSUのミッドクレジット戦略はMCUでも徹底されていたのかも?

ヴァルチャー復活

『モービウス』に登場したヴァルチャーは、『ホームカミング』の時と同じく白の囚人服を着ている。そして、ヴァルチャーは別のユニバースに飛ばされたことをあっさりと受け入れる。空に紫の亀裂が入っていることから、ヴァルチャーが転送されたのはドクター・ストレンジが二度目の呪文を唱えた時だということが分かる。ヴァルチャーは、元のユニバースにスパイダーマンの敵達が流入したことを知っていて、自分の身に降りかかったことにも合点がいったのだろうか。

空の房に突如として現れたヴァルチャーを、このユニバースの警察は事情聴取を行った後で即時釈放してしまう。法律はユニバースごとに適用するしかないだろうし、ヴァルチャーが自分の犯罪を正直に話すとも思えない。ヴェノムやモービウスが現れる世界では色々なことがありうると、人権優先の処理がなされたのだろう。保護観察くらいしてもいいものだが……。

『モービウス』の舞台は『ホームカミング』『ノー・ウェイ・ホーム』と同じニューヨーク。ヴァルチャーは、同じニューヨークにいたと思われるマイケルに会いにいく。『ホームカミング』の時とは少し違う形になったエグゾスーツ(ウィングスーツ)を身にまとっている。自分で作り直したのだろうか。なお、『ホームカミング』では、『アベンジャーズ』(2012) で襲来したチタウリの兵器の残骸を利用してスーツを作っていたため、このエグゾスーツはオリジナルのものよりも耐久性などは劣ると思われる。

ヴァルチャーはマイケルに今回の件にはスパイダーマンが関係していることと、チームを組めば面白くなると告げる。マイケル・モービウスを演じるジャレット・レトは、公式の予告映像で「マルチバースは正式に開かれ、ヴィランたちが顔を合わせる機会はいくらでもあります」と語っていたMCUでアベンジャーズの存在を知るヴァルチャーが、SSUにチームアップという概念をもたらしたのだ。

ヴァルチャーの目的は?

では、チームアップを提案したヴァルチャーの目的とは何なのだろうか。ヴァルチャーからすれば、別ユニバースに行ってしまったものの脱獄することはできた。一方でヴァルチャーには家族がいるため元のユニバースに戻りたいという気持ちもあるかもしれない。

また、マイケルの反応を見るに、スパイダーマンはSSUのユニバースにも存在している可能性が高い。ヴァルチャーがスパイダーマンに言及した理由は、転送の原因になったスパイダーマンを探し、元のユニバースに戻るきっかけを探そうとしているのだろうか。

なお、『モービウス』の予告編では「人殺し」と落書きされたスパイダーマンの絵が写り込んでいたが、本編ではこのシーンはカットされていた。MCUユニバースのスパイダーマンと同じく人々から非難の的になっているスパイダーマンがSSUのユニバースにも存在していると見られていたが、今回の『モービウス』ではその事実が示されることはなかった。

一方、モービウスには別ユニバースに行くという動機はある。マイロの殺人は全てモービウスの容疑になっているし、マイロへの殺人の嫌疑もかかっていることだろう。すっかり“お尋ね者”になったマイロは、『ファー・フロム・ホーム』後のピーターのような立場にある。それにエミールとマイロを失い、マルティーヌが復活したことを知らないマイケルは、このユニバースでは全てを失ったと言える。

マイケルと似た状況にあるのがヴェノムとエディ・ブロックだ。『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のラストではヴェノムとエディの逃避行が始まる。こちらは二人でいるので寂しくはないだろうが、本当に誰も自分たちのことを知らない世界に行けるとしたら……? 「別のユニバースに行くこと」がヴェノム、モービウス、そしてヴァルチャーの利害に一致するとなれば、SSUのチームアップは一気に進むことになるだろう。

また、SSUのスパイダーマンが無実の罪で「人殺し」というレッテルを貼られているとすれば、スパイダーマンの方から積極的に別ユニバースへの移動や人々の記憶改変の可能性を探ることもあるかもしれない。MCU版ピーター・パーカーはそれをやってしまったのだから、SSUのピーター・パーカーが同じことをしても不思議ではない。(SSUの流れがマルチバース頼りになってしまうのもどうかと思うが……。)

スパイダーマン=アンドリュー説

これはあくまで仮説だが、アンドリュー・ガーフィールドの「アメイジング・スパイダーマン」の世界がSSUに組み込まれているという可能性も考えておきたい。サム・ライミ版「スパイダーマン」とは違い、「アメスパ」にはヴェノムは登場していないため、整合性は保たれるのではないだろうか。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』では、アンドリュー・ガーフィールドのピーター・パーカーは、「気づけば人を殴り続けていた」と過去作で描写されていないエピソードを吐露していた。もし『アメイジング・スパイダーマン2』(2014) でグウェンを失ったピーターがその後荒れ果て、その後の行動によって嘘か誠かスパイダーマンが「人殺し」というレッテルを貼られているとしたら……。

アンドリュー・ガーフィールドが前向きな姿勢を見せている『アメイジング・スパイダーマン3』の製作は、実際には動いていないとされている。それでもソニーが「アメスパ」を再始動するとすれば、SSUとの兼ね合いを考えることは避けて通れないだろう。

ソニーがSSUへのスパイダーマン登場を特定の意図を持って慎重に進めていることは、『モービウス』で予告の“スパイダーマン”シーンがカットされたこと、それでもヴァルチャーの口を通してスパイダーマンの名を登場させたことから明らかだ。「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」と、ソニーの名を冠したこのユニバースにどんな形でスパイダーマンが登場するのか、あるいはしないのか。モービウス達のチームの今後と共に注目しよう。

『モービウス』の続編とSSU作品の今後については、こちらの記事で考察&解説している。

『モービウス』のポストクレジットについてダニエル・エスピノーサ監督が解説した内容はこちらから。

映画『モービウス』は2022年4月1日(金)より全国の劇場で公開。

『モービウス』公式サイト

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のエンディングからポストクレジットシーンについての解説はこちらから。

『ノー・ウェイ・ホーム』のヴェノム登場について監督が語った内容はこちらから。

『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のエンディング&ミッドクレジットシーン解説はこちらから。

「ヴェノム」第3作目とシリーズの今後についてはこちらの記事で。

エディがヴェノムを愛しているかどうかの答えはこちらの記事で。

 

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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