【アイアンマン編】『アベンジャーズ/エンドゲーム』は“ビッグ3”をどう描いたか Part.3【ネタバレ】

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「インフィニティ・サーガ」最終章

『アベンジャーズ/エンドゲーム』が全世界で公開され、驚異の大ヒットを記録している。『アイアンマン』(2008) から始まった「インフィティ・サーガ」の第22作品目となる今作は、11年間の集大成として見事なエンディングを観客に提供してくれた。2019年6月28日(金)には、MCU23作品目となる『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』が公開され、「インフィニティ・サーガ」は幕を閉じる。MCUのフェーズ4以降は、より多様な属性を持つヒーロー達が中心となり新たな「サーガ」を創り出していく。

VG+では、「『エンドゲーム』は“ビッグ3”をどう描いたか」と題して、キャプテン・アメリカ、ソー、アイアンマンの三人からなる“ビッグ3”に焦点を合わせた『アベンジャーズ/エンドゲーム』の解説をお送りしてきた。「インフィニティ・サーガ」を牽引してきたこの三人の存在無しには、同作を語ることはできない。最終回となる今回は、MCU第1作目から中心的な役割を果たしてきたアイアンマンが、『アベンジャーズ/エンドゲーム』でどう描かれたのかを考察する。

ここから先の内容は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』のストーリーに関する重大なネタバレを含むため、同作を未見の方はご注意いただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』の内容に関するネタバレを含みます。

全ては『アイアンマン』から始まった

アメコミ映画ブームの起点に

『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、ビッグ3の物語を“閉じる”作品であった。ビッグ3は、長くマーベルコミックの主力ヒーローとして活躍を続けてきた。スパイダーマンやブラックパンサーも人気キャラクターではあったが、ビッグ3の作中での実力は飛び抜けており、『アイアンマン』の映画化成功がMCUでの三人の立ち位置を揺るぎないものとした。2008年に『アイアンマン』が公開された2ヶ月後には、マーベルのライバル会社であるDCコミックスの『ダークナイト』が興行収入10億ドル超の大ヒットを記録。アメコミ映画界に最盛期をもたらした。

目立ちたがり屋のヒーロー

同時期に成功を収めたアイアンマンとバットマンという二人のヒーローは、大企業の経営者で白人男性であるという共通点からよく比較された。だが、むしろ際立ったのはその相違点の方で、バットマンことブルース・ウェインは自己犠牲をいとわない英雄として、アイアンマンことトニー・スタークは自己中心的な目立ちたがり屋として、それぞれ人気を集めていった。ヒーローはその正体を隠すという定石を覆したアイアンマンは、DC映画とは一線を画すポップさをアメコミヒーロー作品にもたらした。

人間らしさと自己犠牲

人間臭いヒーロー

一方で、“軍需企業のCEO”という現代資本主義における悪の権化のようなアイアンマンの設定は、彼の物語を単なる“罪滅ぼし”に貶めてしまいかねなかった。だが、MCUのユニバースの中でトニー・スタークは様々な仲間達と出会い、彼なりのキャラクターを獲得していった。それは、“人間らしい等身大のヒーロー”であり続けるということだ。バットマンも同じくスーパーパワーを持たないスーパーヒーローではあったが、人間離れした高貴さが彼にはあった。わがままでお調子者で、時に傲慢なアイアンマンの態度は、“古き良きアメリカ”をレペゼンするキャプテン・アメリカの高潔な性格の対極に置かれた。

歴代「アベンジャーズ」で見せた自己犠牲

だが、アベンジャーズが、そして世界が危機に陥った時には、アイアンマンは自己犠牲をいとわなかった。『アベンジャーズ』では核ミサイルごとワームホールに突っ込み、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』では天空から落下するソコヴィアの街を下から破壊するなど、いざという時には危険を一身に背負って人々を守ってきた。それが当たり前の行動だと言わんばかりに。

『エンドゲーム』はアイアンマンをどう描いたか

生活を優先

『アベンジャーズ/エンドゲーム』においても、ペッパーとの間に子どもが生まれたトニー・スタークは、「今の自分の生活を守る」と、一度はアベンジャーズへの合流を拒否する。「Family comes first (家族が第一)」は、アメリカにおける働き方の鉄則だ。いつポジションを奪われるか分からないメジャーリーガーでさえ、家族の一大事には試合を休む。家族を優先するという選択自体は、人として当たり前の行動だった。

「アイ・アム・アイアンマン」の意味

それでも、やはりアイアンマンは、物語の最後には自らの命を犠牲にしてまで世界を救った。最後に放った「アイ・アム・アイアンマン」というセリフは、MCU第1作目『アイアンマン』におけるラストシーンと同じセリフだ。『アイアンマン』では自分の正体を世間にバラすためのセリフであり、その姿はただの目立ちたがり屋にも映った。だが、その人間臭いセリフは、『アベンジャーズ/エンドゲーム』では“自己犠牲”の代名詞として使用された。目立ちたい、生活を守りたいと思った自分も、世界を救いたいと思った自分も、矛盾なく“アイアンマン”であるというメッセージが、そこには込められている。

物語を閉じたビッグ3

ビッグ3の中で唯一スーパーパワーを持たない、もっとも人間らしいアベンジャーであったアイアンマンが最大の自己犠牲を払い、これまで人間らしく生きる選択肢を持たなかったキャプテン・アメリカとソーに、人間らしい人生を与えた。多様性の時代が到来し、ビッグ3が各々の物語を閉じる時、アイアンマンは残りの二人を支え、送り出す役割を担った。
ビッグ3なきアベンジャーズは、果たしてどのような物語を紡いでいくのだろうか。「インフィニティ・サーガ」を締めくくる映画『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』は、2019年6月28日(金)より、日本で世界最速での上映を予定している。

映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、2019年4月26日(金)より全国で公開。

齋藤 隼飛

齋藤 隼飛

VG+編集長。1991年生まれ。
社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。
編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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