ネタバレ!『マダム・ウェブ』にスパイダーマンは登場した? 監督の発言、『スパイダーマン4』との関係は | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ!『マダム・ウェブ』にスパイダーマンは登場した? 監督の発言、『スパイダーマン4』との関係は

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映画『マダム・ウェブ』スパイダーマンは登場した?

コミックシリーズの「アメイジング・スパイダーマン」で初登場を果たしたマダム・ウェブを主人公に据える映画『マダム・ウェブ』が2024年2月23日(金・祝) より劇場で公開された。本作は「スパイダーマン」関連キャラの映像化の権利を持つソニーが展開するソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)の最新作でもあり、独立して楽しめる作品でありながら世界観のコネクションも楽しめる作品になっている。

気になるのは、『マダム・ウェブ』にスパイダーマンは登場したのかどうかということ。今回は、『マダム・ウェブ』とスパイダーマンの繋がりについて、ネタバレありで解説していこう。以下の内容は本編の重大なネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『マダム・ウェブ』の内容に関するネタバレを含みます。

『マダム・ウェブ』に登場したあの人たち

ピーター・パーカーの周辺の人々

正直に言うと、映画『マダム・ウェブ』にはスパイダーマンは登場したとも、登場していないとも言える。皆さんお気付きの通り、『マダム・ウェブ』には「スパイダーマン」シリーズにおける「ベンおじさん」ことベン・パーカーが主人公キャシーの相棒として登場したことは確かだ。

キャシーとベンが休憩中にベンの新恋人について話をする場面では、ベンがメイと出逢ったことが示唆されている。茶化されたベンの反応を見たキャシーは、「今回は本気なんだね」と、その出会いが特別なものであることを思わせるセリフを残している。言わずもがなだが、ベンとメイは両親を亡くしたピーター・パーカーを育てる養父母になる。「スパイダーマン」でお馴染みの二人が『マダム・ウェブ』と繋がったことでワクワクした人も多いだろう。

だが、サプライズはそれだけではなかった。『マダム・ウェブ』でベンの妹として紹介されるのが妊娠したメアリー・パーカーだ。メアリー・パーカーは原作コミックにおけるピーター・パーカーの母親である。『マダム・ウェブ』の劇中で、夫のリチャードの名前を挙げているが、リチャード・パーカーもまたコミックにおけるピーター・パーカーの父の名前だ。

この二人が映像化作品に登場するのは「アメイジング・スパイダーマン」シリーズに続いて2度目。今回リチャードは姿を見せなかったが、エマ・ロバーツ演じるメアリーは『マダム・ウェブ』で度々姿を見せることになった。

呼ばれない「ピーター」の名前

よその家であっても家族との関わりを持ちたくないキャシー・ウェブは、嫌々ながらもメアリー・パーカーのベビーシャワーに参加する。ベビーシャワーとは、出産を控えた妊婦と赤ちゃんを祝福するイベントで、そこではこれから生まれる赤ちゃんの性別を披露する習慣もある(この風習は性別二元論に基づいているとして近年では批判がある)。

性別披露の儀式では、非常にステレオタイプなやり方だが、女の子ならピンクの風船などが、男の子ならブルーの風船などが用意され、箱を開けて風船の色を見たり、ケーキを切って断面の色を見たりする形で性別を知ることになる。キャシーがベビーシャワーに到着した頃には、青い風船などのアイテムがメアリーの周りに多数置かれており、既に性別披露を終えていることが分かる。ここでメアリーが妊娠しているのが男の子であることが明かされ、その子がピーター・パーカーである可能性を示す演出となっている。

さらに、メアリーの子どもの名前を当てるクイズゲームが始まると、「スティーブン」や「リチャード Jr.」「ベン」といった名前が不正解の解答として挙げられていき、徐々にその名前が「ピーター」である可能性が高まっていく。だが、結局ここではその名前は明かされずじまいだった。

次にメアリーが登場するのは、ベンがジュリア、マティ、アーニャの3人を預かった後。ベンは3人を匿っていたが、メアリーが破水して予定より1ヶ月も早く出産の時を迎える。ベンはジュリア、マティ、アーニャと共に自分の車でメアリーを病院に連れていくのだが、マティの顔が防犯カメラに捉えられたことでエゼキエルに居場所がバレてしまう。

しかし、ペルーから帰ってきたキャシー・ウェブが3人の少女を引き取る形でベンとメアリー、そしてお腹の中の子どもはエゼキエルから引き離されて病院に向かうことができた。お腹の中の子どもがピーター・パーカーだったとすれば、キャシーは未来のスパイダーマンを救ったことになる。

ラストのシーンでは、病院で無事に出産したメアリーと生まれてきた赤ん坊が映し出されている。しかし、最後までこの子の名前が呼ばれることはなかった。誰がどう見ても、どう考えてもスパイダーマンになるピーター・パーカーなのだが、SSUとしてはMCUとの関係も含めて保険を作っておきたかったのだろうか、敢えてピーターとは確定させずに終わらせたように思える。

監督の意図は

実は、『マダム・ウェブ』を手掛けたS・J・クラークソン監督は、「ピーター・パーカー」の名前が登場しなかった理由について米メディアで発言している。

Total FilmのYouTubeチャンネルで公開されたインタビュー動画では、インタビュアーが「ベンおじさんとメアリーが登場し、赤ちゃんも生まれますが、敢えてあれがピーターだとは言われていません」とした上で、スパイダーマンとのリンクを見せたり見せなかったりすることのバランスについて問われ、同監督はこう答えている。

私にとって重要だったのは、マダム・ウェブのストーリーと彼女のキャラクターを作ることでした。彼女が生まれたのは「アメイジング・スパイダーマン」のコミックですから、それには敬意を払わなければいけません。彼女は「スパイダーマン」の世界からきたのですが、彼女は彼女自身のキャラクターを持っており、私が探究したかったのはその世界における彼女の思いと他のスパイダーマウーマンたち、そしてエゼキエルの思いでした。

あくまで監督としてはマダム・ウェブの物語が優先であり、ピーター・パーカーの誕生が前面に出ることは避けたかったということだろう。もちろん、こうしたクロスオーバー要素は監督の一存で決められることではなく、スタジオの意向も取り入れる必要があったと考えられる。ソニーとしては今後どのようなプランを持っているのだろうか。

『マダム・ウェブ』と『スパイダーマン4』をめぐる攻防

『スパイダーマン4』に関する報道

映画『マダム・ウェブ』の日本公開の直前、米国ではMCUの『スパイダーマン4』の制作に関する噂が話題になった。それは、ソニーが2025年中の『スパイダーマン4』公開を目標とすることを求めているが、マーベル・スタジオは2026年公開を目指したいと考えており、意見の相違が生まれているというものだ。

また、その前には、ソニーは『スパイダーマン4』をマルチバースにまたがるクロスオーバー作品にしたいが、マーベル・スタジオはストリートレベルの物語を展開したいと考えているという報道もあった。これらの情報が全て事実だとすれば、「スパイダーマン」を最大限に活用したいソニーと、慎重な姿勢を崩さないマーベル・スタジオの間で次期「スパイダーマン」作品に対する考え方には溝があることになる。

マーベル・スタジオはドラマ『エコー』(2024) によって、VFXを多用しないストリート・レベルのヒーロー作品に比重を移すことが報じられている。キングピンをニューヨーク市長として、ゆくゆくは映画作品でスパイダーマンと対決させる展開がマーベルにとっては理想的な形になるだろう。とりわけスパイダーマンに関してはマルチバース要素は抑えて、デアデビルらストリート・レベルのヒーローの中の“大トリ”としてスパイダーマンを扱いたいはずだ。

だが、分があるのは破産前のマーベルから「スパイダーマン」関連作品の映像化の権利を買い取って今もそれを保持しているソニーの側だ。サム・ライミ版や「アメイジング」のように、ソニーはソニーで独自のスパイダーマンを作り出すことができる。

『マダム・ウェブ』のラストで生まれた赤ん坊は、2003年生まれということになるので、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2018) で写ったパスポートに2001年8月10日生まれと記されていたMCU版ピーター・パーカーとは別人だろう。敢えて『マダム・ウェブ』の舞台を2003年に設定した理由は、現代を舞台にした作品で大人になったSSU版ピーター・パーカーを描くためだとも考えられる。

「なかったこと」になる可能性も?

実際にソニーが『スパイダーマン4』の早期の公開を求めているとすれば、その理由は同作でSSU版ピーター・パーカーとトム・ホランド版ピーター・パーカーの絡みを作りたいからかもしれない。そうなると、『マダム・ウェブ』でピーター・パーカーの誕生年を2003年と設定してしまったことが大きな制約になる。2025年が舞台であればピーターは22歳、2026年が舞台になればピーターは23歳だ。大学生の歳かどうかで設定は大きく変わることになるだろう。

スケジュールが不明確な中で、『マダム・ウェブ』では生まれた赤ん坊がピーター・パーカーであるとは明言されず、しかも本作自体は「ヴェノム」などのSSU作品と同じユニバースであるとも言われていない。そうしておくことでマダム・ウェブを他ユニバースに絡ませるにしてもピーターの誕生は無かったことにできるし、それどころかソニーは『マダム・ウェブ』の物語自体を正史としないカードも保持したまま、『マダム・ウェブ』を公開したように思える。

『マダム・ウェブ』が成功すれば正史に、失敗すれば正史としない——そんな思惑というか保険が「ピーター・パーカー」の名が使われなかった背景には感じられないでもない。今回ピーターが生まれたかどうかは『スパイダーマン4』というビッグタイトルの効果を最大化できるかどうかで決まるのだろうか……これがただの杞憂か否かは、今後のSSU作品が証明してくれるだろう。

映画『マダム・ウェブ』は2024年2月23日(金・祝) より劇場公開。

『マダム・ウェブ』公式サイト

Source
Total Film

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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