『マダム・ウェブ』に登場した蜘蛛はなぜ重要か スパイダーマンにも繋がる? ネタバレ考察&解説 | VG+ (バゴプラ)

『マダム・ウェブ』に登場した蜘蛛はなぜ重要か スパイダーマンにも繋がる? ネタバレ考察&解説

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蜘蛛を通じて繋がるスパイダーウーマンたち

2024年はMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の映画作品は『デッドプール&ウルヴァリン』の1つしか公開されない。それに対してSSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)は3作品公開される。それは『クレイヴン・ザ・ハンター』と『ヴェノム3』、そして2月23日(金・祝)に公開された『マダム・ウェブ』だ。

これまでの『マダム・ウェブ』はSSU作品と異なり、ヴィランの映画化ではなく、スパイダーマン側の映画化作品となる。そして、共通しているのは登場人物がスパイダーマンと同じく蜘蛛のパワーを得たスパイダーピープルだということだ。本記事では『マダム・ウェブ』に登場したパワーを与えてくれた蜘蛛について考察していこう。なお、本記事は『マダム・ウェブ』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『マダム・ウェブ』の内容に関するネタバレを含みます。

スパイダーマンとスパイダーウーマンを繋げる蜘蛛の意味とは何か

ペルーから来た蜘蛛の行方

『マダム・ウェブ』において物語の鍵を握るのがタヒール・ラヒム演じるエゼキエル・シムズが所持していた特殊な蜘蛛だ。元々はダコタ・ジョンソン演じるカサンドラ・“キャシー”・ウェブの母親であるコンスタンス・ウェブがペルーの奥地で発見した蜘蛛であり、その毒には蜘蛛の力を持った超人であるラス・アラニャスを生み出す効果があった。

この蜘蛛はSSUにおいて重要な意味を持つと考察できる。この蜘蛛によって生み出されるラス・アラニャスこそ、SSUにおけるスパイダーマンやスパイダーウーマンなどスパイダーピープルだと考察できる。スパイダーマンやスパイダーウーマンはこれまで研究所から逃げ出した放射性の蜘蛛に噛まれて変異することが多かった。しかし、この蜘蛛は自然由来の蜘蛛である。

そして、映画『マダム・ウェブ』で重要なポイントはこの蜘蛛はどの時間軸においてもエゼキエルのもとから逃がされる運命にあったということである。エゼキエルはこの蜘蛛を独占し、自分だけがラス・アラニャスであり続けようとしていた。しかし、約10年後にシドニー・スウィーニー演じるジュリア・コーンウォールとセレステ・オコナー演じるマティ・フランクリン、イザベラ・メルセド演じるアーニャ・コラソンの3人のスパイダーウーマンによって蜘蛛は逃がされる。

エゼキエルは蜘蛛が逃がされる際に自分が死ぬ運命を幻視し、食い止めるべくジュリアたちを殺害する計画を立てる。キャシーはその殺害計画に巻き込まれるのだが、キャシーが介入したことで3人が救われた未来でキャシーが蜘蛛を手に這わせていることから、キャシーがマダム・ウェブになった未来でも蜘蛛は逃がされていることが考察できる。つまり、映画『マダム・ウェブ』において、どの時間軸でも蜘蛛は必ず逃げる運命にあるのだ。

カノンイベント説

映画『マダム・ウェブ』のラストシーンでジュリアたち3人のスパイダーウーマンとキャシーのアストラル体が登場するが、キャシーの手には蜘蛛の力を持つ超人であるラス・アラニャスを生み出す蜘蛛が這っている。そのため、この蜘蛛が逃げるというのがSSUにおけるカノンイベントだと考察できる。

カノンイベントとはスパイダーマンやスパイダーウーマンが避けることのできない出来事の総称だ。『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023)で詳しく語られている。『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のカノンイベントに関してはこちらの記事から。

スパイダーマンにおけるカノンイベントはいくつか存在しており、「ベンおじさんの死」や「身近な警部の死」、「グウェン・ステイシーに恋をする」、「ヴェノムに寄生される」などが『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』で語られている。SSUも同じだと考察できる。これまでの映画作品では研究所から逃げ出してきた蜘蛛にピーター・パーカーは噛まれている。そのため「逃げ出した蜘蛛に噛まれる」というのがカノンイベントだったと考察できる。

「ヴェノムに寄生される」というカノンイベントはピーター・パーカーではないが、「ヴェノム」シリーズでエディ・ブロックに発生したと考察できるため、「逃げ出した蜘蛛に噛まれる」という次のカノンイベントが発生したと思われる。

カノンイベントの条件

エゼキエルは約10年後にスパイダーウーマンたちが自分を襲撃し、ラス・アラニャスを生み出す蜘蛛が逃げ出す幻視を見ている。この運命はキャシーの未来予知と介入により確定した。つまり、2013年頃にラス・アラニャスを生み出す蜘蛛は絶対に逃げ出していると考察できる。そこに関係してくるのがピーター・パーカーの存在だ。『マダム・ウェブ』ではピーター・パーカーの母親メアリー・パーカーの出産は2003年の出来事とされている。

MCUのトム・ホランド版ピーター・パーカーは2001年生まれであり、SSUのピーター・パーカーと生まれ年は異なる。そこに加えてスパイダーマンをストリートレベルのヒーローにしたいMCUと、スパイダーマンをマルチバースを股にかけるヒーローにしたいSSUの関係性は途絶えたように思えた。

しかし、そのような意見が対立している状態で『マダム・ウェブ』はピーター・パーカーの誕生を描いた。このことから対立した意見を脇に置き、SSUもMCUと同じトム・ホランド版ピーター・パーカーにしようとしている可能性が出てきた。もし、MCUとSSUのピーター・パーカーが同一人物だとすれば明らかになっていないものが一つある。それはピーター・パーカーを噛んだ蜘蛛はどこから来たのかということだ。

原作コミックやこれまでの映画では明確に放射性の蜘蛛に噛まれたことでピーター・パーカーはスパイダーマンになっている。しかし、SSUにはラス・アラニャスという古代より存在している蜘蛛の超人が存在しており、神秘的なパワーでスパイダーマンやスパイダーウーマンになることが出来る。科学的なパワーで蜘蛛の力を得てきたこれまでのスパイダーマンと神秘的なパワーで蜘蛛の力を得てきたSSUのスパイダーマンやスパイダーウーマンは違うように思える。

しかし、共通点としてどちらも逃げ出した蜘蛛であることが挙げられる。そのことから、SSUにおいてスパイダーマンやスパイダーウーマンの誕生には放射性の蜘蛛に噛まれることよりも、逃げ出してきた蜘蛛に噛まれることがカノンイベントとして重要なのかもしれない。

プロデューサーのエイミー・パスカルが、2代目スパイダーマンであるマイルズ・モラレスの実写化について、あと2本映画がつくられた後だと答えたことを『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のプロデューサーであるクリス・ミラーがSNSに投稿している。そのため、本格的にSSUでスパイダーマンを登場させるために蜘蛛が逃げ出すというカノンイベントを起こしたのではないだろうか。

パワー源の違い

また、前述の通り、SSUにおけるスパイダーピープルは放射性の蜘蛛ではなく、全員神秘的なパワーを有していることが考察できる。映画『マダム・ウェブ』では放射性の蜘蛛は登場せず、ジュリアたち3人のスパイダーウーマンもラス・アラニャスを生み出す蜘蛛によってパワーを得たと考えられる。

この蜘蛛によって力を得たラス・アラニャスたちは神秘的なパワーを持つとされ、エゼキエルも同じ蜘蛛によってパワーを得たと思われる描写があった。原作コミックでのエゼキエルは初登場の『Amazing Spider-Man Vol.2 #30』(2001)で放射性の蜘蛛に噛まれたのではなく、蜘蛛のトーテムによってパワーを得たとされる。

また、『Amazing Spider-Man #210 』(1980)で初登場したマダム・ウェブことキャシー自身も予知、透視、遠隔視、テレパシー、アストラル体の分離(幽体離脱)が出来る。これらのパワーは重症筋無力症と視覚障害と向き合った結果として手に入れた神秘のパワーとされる。

『マダム・ウェブ』で登場したエゼキエルとキャシーは同じ種類の蜘蛛からパワーを得たラス・アラニャスであり、放射性の蜘蛛に噛まれてパワーを得たこれまでのスパイダーマンやスパイダーウーマンとは違う神秘的なパワーの持ち主だと考えられる。この蜘蛛と神秘のパワーの関係性はMCUのトム・ホランド版スパイダーマンとアストラル体の関係性に近い。詳しい記事はこちらから。

SSUの世界ではこの神秘的なパワーを持つ蜘蛛が逃げ出して、誰かを噛むことがスパイダーマンやスパイダーウーマンを生み出すのかもしれない。今後のSSUでは神秘的なパワーとカノンイベントを持つキャラクターが増えると思われる。今後のSSUの展開と逃げ出した蜘蛛の行方について注目していきたい。

映画『マダム・ウェブ』は2024年2月23日(金・祝) より劇場公開。

『マダム・ウェブ』公式サイト

『マダム・ウェブ』ラストのネタバレ解説&考察はこちらの記事で。

『マダム・ウェブ』でのアストラル体のネタバレ解説&考察はこちらの記事で。

劇中で流れた音楽の紹介&解説はこちらから。

ベン・パーカー登場の意味と過去作での描かれ方の解説、今後についての考察はこちらから。

 

映画『モービウス』ラストのネタバレ解説&考察はこちらの記事で。

『ヴェノム3』と今後についてプロデューサーが語った内容はこちらから。

8月米公開予定のSSU映画『クレイヴン・ザ・ハンター』予告の解説&考察はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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