ネタバレ考察『ムーンナイト』に征服者カーンの影? アメミットのアバターとは 第3話の少年に注目 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察『ムーンナイト』に征服者カーンの影? アメミットのアバターとは 第3話の少年に注目

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ドラマ『ムーンナイト』はMCUでも重要な作品に?

MCU第33作目となるドラマ『ムーンナイト』は、ロンドンとカイロを舞台に、複数の人格を持つ主人公スティーヴン・グラント/マーク・スペクターの物語を描いている。本作の魅力の一つは、ミステリ要素が強く、なかなか物語の背景が見えてこないことにある。

毎週少しずつ新事実が明らかになり、考察が弾む展開はファンにとっては嬉しい部分もある。そして、今回は海外ファンの間でも話題になっているあるセオリーについて考察していこう。これまでのMCUシリーズとは切り離されて展開されてきた『ムーンナイト』だが、MCUの中で意外と重要な役割を担っているのかも……?

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ムーンナイト』第3話までとドラマ『ロキ』最終話までの内容に関するネタバレを含みます。

ドラマ『ムーンナイト』にカーンが関与?

『ムーンナイト』第3話で話題になっているのは、前半で登場したチンピラの少年のジャケットだ。マーク・スペクターはカイロの街である人物に発掘現場について聞こう追いかけるが、三人のアメミット信者がこの人物を殺してしまう。

マークはこの三人と戦いを繰り広げることになるのだが、この中で最年少と思われる少年のジャケットの背中にあるマークがデザインされていることが分かる。後の崖のシーンでより鮮明に映るこのマークは、凸型の冠のように見える。

© 2022 Marvel

この冠がドラマ『ロキ』に登場したカーンが原作コミックで被っている冠とそっくりなデザインなのだ。原作コミックの征服者カーンは、MCUと同じく31世紀の科学者という設定で、エジプトにタイムトラベルする。エジプトではラマ・タトという名前でエジプトを征服。まさに『ムーンナイト』の主演を務めるオスカー・アイザックが映画『X-MEN:アポカリプス』(2016) で演じたアポカリプスを配下に置いて、古代エジプトを手中に収めようとするのだ。

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この時、ラマ・タトがエジプトの王として身につけている冠が、『ムーンナイト』第3話に登場した少年のジャケットに描かれている絵と同じ形をしている同じエジプトを舞台にして、征服者カーンを思わせる表象が登場したことは、偶然なのだろうか。

ドラマ『ロキ』との共通点

これだけでは少々無理矢理な感もあるだろう。だが、『ロキ』と『ムーンナイト』の共通点を考えれば、この件が話題になっていることが突拍子もないことではないことが分かる。

全6話で構成されるドラマ『ムーンナイト』は、第3話までに、主人公スティーヴン・グラントとマーク・スペクターの人格が共存していたこと、マークは月の神コンスのアバター(化身)として、アメミットの復活を企むアーサー・ハロウを止めようとしていること等が明かされた。

重要なポイントは、アーサー・ハロウが復活させようとしているアメミットは、その人物が将来犯す可能性がある罪も含めて悪人であるかどうかを裁く神である、という点だ。“未来の罪を裁く”というアメミットに対し、スティーヴンは罪のない子どもまで殺さなければいけないのか、と反発する。

マーベルヒーローの活躍を描くMCUにおいて、“何が正義か”という問いは常につきまとう。『ムーンナイト』においては、将来罪を犯す(と考えられる)人間を先んじて罰することは正義か否かという問いが物語のテーマになっている。こちらの記事で論じた通り、この問いはアメリカで広く知られる“共謀罪”についての議論をベースにしたテーマだ。

そしてこのテーマは、ドラマ『ロキ』の物語を想起させる。『ロキ』では在り続ける者ことカーンが、未来を把握しており、TVAを通して神聖時間軸に混沌をもたらす者を先んじて裁いていた。その運命論に逆らい、タイムラインに混沌をもたらしたのがシルヴィとロキであり、「未来の罪を裁く」というテーマは『ロキ』で既に扱われているのだ。

アメミットのアバターはカーン?

つまり、アメミットとカーンは基本的にやっていることは同じということになる。ここで、『ムーンナイト』第3話のラストで、コンスが2,000年前の夜空を復活させたことが思い出される。そう、エジプト神話の神々は古代から存在している。そして、第1話の終盤では、アーサー・ハロウはアメミットがかつてのアバターに裏切られたと話していた。

そのアメミットのアバターとは、同じ目的を持ち、2,000年前にタイムトラベルした征服者カーンことラマ・タトだったのではないだろうか。アメミットがアバターに裏切られた理由は謎だが、カーンならばアメミットを出し抜いて封印してしまうくらいのことはやりそうだ。また、『ムーンナイト』第3話では、神の一人であるオシリスのアバターが「人間が神を見捨てた」と話していた。カーンが神に頼らずに自らの手でタイムラインを支配することにしたのだとすれば、この説明にも納得がいく。

ドラマ『ムーンナイト』とドラマ『ロキ』が「未来の罪を裁く」という同じテーマを扱っていることと、かつてアメミットを出し抜いたアバターがいたこと、原作コミックで征服者カーンがエジプトに登場した時の冠のマークが『ムーンナイト』第3話に登場したことは、単なる偶然の一致なのだろうか。

一方で、ドラマ『ムーンナイト』はこれまでのMCU作品とは交わらないことが明言されており、それを売りの一つとしている。このまま独立した物語を続けていくのか、それともサプライズ展開が待っているのか。『ムーンナイト』後半戦も目が離せない。

なお、第4話は監督が「大きなサプライズ」があると話している。詳しくはこちらから。

ドラマ『ムーンナイト』は2022年3月30日(水)よりDisney+で独占配信。

『ムーンナイト』(Disney+)

『ムーンナイト』の原作コミックは堺三保による日本語訳全2巻が発売中。

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『ムーンナイト』と『ロキ』の共通点について詳しく論じた記事はこちらから。

『ムーンナイト』第3話のネタバレ解説はこちらから。

第3話で示唆された三人目の人格についての考察はこちらから。

『ロキ』脚本家が語ったカーンの設定はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

第2話のMr.ナイト登場シーンの裏側はこちらの記事で。

マークがサノスの指パッチンを生き延びたことを示唆したシーンの解説はこちらから。

『ムーンナイト』第1話のネタバレ解説はこちらから。

『ムーンナイト』第1話の海外での評価はこちらの記事で。

『ムーンナイト』シーズン2についての情報はこちらから。

アーサー・ハロウを演じたイーサン・ホークのこだわりはこちらの記事で。

アーサー・ハロウの設定変更について製作陣が語ったエピソードはこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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