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『バッド・バッチ』第11話配信開始
「スター・ウォーズ」シリーズに登場するクローン兵の不良分隊、バッド・バッチを主役に据えたDisney+のアニメシリーズ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』は、クローン戦争後を舞台に銀河を渡り歩くバッド・バッチの戦いを描いていく。『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』(2008-2020) と『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005) のその後を描くシリーズとあって、過去作も多くのキャラクターが登場。各キャラクターの“その後”や今後の「スター・ウォーズ」シリーズに続いてく伏線も散りばめられている。
今回は、全16話で構成される『バッド・バッチ』の第11話をネタバレありで解説していこう。前回はついに分離主義勢力が登場し、ハンターは新たな決断を下した。今回はどんな冒険が繰り広げられるのだろうか。
以下の内容は、アニメ『バッド・バッチ』第11話の内容に関するネタバレを含みます。
第11話「悪魔の契約」あらすじ&ネタバレ解説
舞台は惑星ライロス
『バッド・バッチ』第11話のタイトルは「悪魔の契約」。冒頭、バッド・バッチを抜けたクロスヘアーは惑星ライロスで、『クローン・ウォーズ』シーズン1で初めて登場したゴビ・グリーの姿を確認する。民衆は“ター”に対する不満を漏らしているが、これは『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(2001)、『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002) にも登場した汚職政治家のオーン・フリー・ターのことだ。共和国時代からパルパティーンの派閥に入り、私服を肥やしていた。
ターと共にいるのはランパート中将。珍しく惑星カミーノを離れているらしい。帝国がライロスの雇用を増やしたにもかかわらず、指示が得られていないことにご立腹の様子だ。帝国成立の14年後を舞台にしたテレビアニメ『スター・ウォーズ 反乱者たち』(2014-2018) のメインキャラであるヘラ・シンドゥーラの母のエレニ・シンドゥーラは、帝国に媚を売るターに話を合わせている。クローン戦争で革命の指導者だったチャム・シンドゥーラ将軍も同様だ。
戦争が終わり、ライロスには平和が訪れたがそれは同時に帝国による支配を意味していた。“戦後”のライロスの人々は、政治と折り合いをつけながら生きているようだ。ターは、帝国によるクローン軍の派遣を頼りに軍事的役割から退くことを民衆に説く。反発する市民に語りかけるのはチャムの役割。武器を捨ててクローンと協調し、平和を謳歌することを説いて喝采を浴びる。
帝国はクローン製造から手を引くつもりだが、既存のクローン兵については傘下の惑星に配備していくつもりのようだ。これにより各惑星を“武装解除”するというアメリカのようなやり方である。
ライロスの“戦後”
その頃ヘラは、帝国が建設した精製所の偵察をしていた。戦争が終わり平和な空を楽しむヘラだったが、トルーパーに捕まってしまう。ヘラを偵察に送ったゴビは武装解除に納得できない様子。戦争の終結と引き換えに自由を差し出すことについて、ライロス内でも意見が分かれていることが分かる。チャムもまた帝国の精製所には何かがあることは知っているようだが、“政治家”としての判断を下している。ゴビは帝国の狙いを「あなたがただ直視したくないだけ (You just don’t wanna see it.)」と指摘するのだった。
ターはチャムの民への影響力を気にしている。クロスヘアーは副官であるゴビが真の脅威であると助言するなど、ブレーンとしての能力の高さも見せている。チャムとヘラの親子は、「平和な国」だが国民の表情は晴れていないということについて話し合う。チャムはゴビと自分は「やり方が違うだけ」と話し、「戦いには代償が生じる」とヘラを説得する。
ランパート中将は、帝国が精製しているのがドゥーニウムだと紹介する。ドゥーニウムは、映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の前日譚にあたる小説『カタリスト』(2017, 来安めぐみ 訳) で初めて言及された金属でデス・スターの素材としても使用された。帝国はデス・スターをはじめとする建造物の製造ために、銀河中の惑星からこうした素材を収集していた。ランパート中将は「銀河各地の復興に役立つ」と話すが、もちろんこれは嘘だ。エレニもやはり“平和の代償”を考えるべきとチャムに進言するのだった。
バッド・バッチ(ようやく)登場!
ゴビは、ヘラにパイロットをやらせることを餌に武器の調達に連れ出す。合流地点にやってきたのは、バッド・バッチの一行。シドからの仕事で武器を持ってきたようだ。それにしても第11話はバッド・バッチが出てくるまでが長かった。
ヘラはバッド・バッチのシップに興味を持ち、オメガとの交友を深める。第2話では世間を知らなかったオメガはロクウェインの子ども達から受け入れてもらっていたが、今回はヘラにシップのことを教える立場になっている。オメガの成長が垣間見える展開だ。なお、ヘラは後に優秀なパイロットになる。
ヘラについては、『反乱者たち』のシーズン2第3話でクローンについて「無数の命を救った。私も含めて」と語っていた。これはクローン戦争中の話ではあるが、バッド・バッチとオメガとの交流も踏まえての発言だったのかもしれない。
反乱の始まり
ゴビは無事に武器を手に入れるが、このシップを狙っていたクロスヘアーは一発でシップを撃墜。ターとランパート中将を呼び寄せると、ターはヘラを含む三人を逮捕してしまう。裁判を経ずに反逆で有罪を言い渡されたヘラを、チャムは躊躇なく助けに行く。さすがに娘が“平和の代償”になることは容認できなかったか。
流石の腕前で輸送の戦車を襲撃したチャムらに対し、ランパート中将は降伏することを決断。ランパートが若くして中将になった背景には、この辺りの判断力もあってのことなのだろう。強気な態度を崩さないターだったが、チャムらが反逆した時点で帝国にとってはお払い箱。ランパート中将はクロスヘアーにターを殺させ、その罪をチャムになすりつけることでライロスの政治を掌握する準備を整える。
ヘラは隙を見て逃げ出していたが、政権幹部の家族から一夜にして一追われる身に。家族は逮捕され、一人になったヘラの不安げな表情と共に『バッド・バッチ』第11話は幕を下ろす。
『バッド・バッチ』だから描ける物語
『バッド・バッチ』第11話のタイトル「悪魔の契約」とは、クローン戦争下の苦しい時期を経て帝国との協調から緩やかな独立を目指そうとするチャム・シンドゥーラの状況を説明したものだった。
アメリカは侵攻した国々を占領してきた歴史を持つが、侵攻と占領と共にライロスと似たような“戦後”も経験した日本から見ると複雑な心境になるエピソードだった。代償を支払ってでも守れるならば平和を維持し、徐々に良くしていけばいいというチャムの価値観には共感できるものがある。
一方で、命を賭してでも自由を重んじるアメリカ的な態度を見せたのがゴビだ。共に民のことを考えた“政治”のぶつかり合いは、今回の物語の中では決着することはなかった。戦争が終わっても全てが終わりになるわけではなく、そこにとどまる人々にとっては新たな“戦後”が始まるだけだ。“スター・ウォーズ”というタイトルを冠しながら、戦争と戦争の間を描く『バッド・バッチ』は、確かに重要な物語を描いている。
一方で、第11話はほとんどバッド・バッチが登場しない回になった。第10話で借金が帳消しになったので小休憩というところだろうか。まだ今回も運び屋という仕事を受けたようだが、やはり対帝国の人々を助ける内容の仕事を受けているあたり、ハンターなりの正義が貫かれているように思える。そして残り5話を残して、オメガもすっかり明るい性格で他者に接するようになった点も喜ばしい。
相変わらずクロスヘアーは暗躍しているが、バッド・バッチの物語にはどのような決着がつけられるのか、引き続き注視していこう。
『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』はDisney+で独占配信中。
『バッド・バッチ』第12話のネタバレ解説はこちらの記事で。
第1話のネタバレ解説はこちらから。
第2話のネタバレ解説はこちらから。
第3話のネタバレ解説はこちらから。
第4話のネタバレ解説はこちらの記事で。
第5話のネタバレ解説はこちらの記事で。
第6話のネタバレ解説はこちらの記事で。
第7話のネタバレ解説はこちらから。
第8話のネタバレ解説はこちらの記事で。
第9話のネタバレ解説はこちらの記事で。
第10話のネタバレ解説はこちらの記事で。