ラストシーンの意味とは?『トランスフォーマー/ビースト覚醒』ネタバレ解説&考察 | VG+ (バゴプラ)

ラストシーンの意味とは?『トランスフォーマー/ビースト覚醒』ネタバレ解説&考察

(c)2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO.(c)2023 HASBRO

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』が2024年4月4日(木)よりNetflix配信開始!

2007年にマイケル・ベイ監督、スティーブン・スピルバーグ製作で始まった実写映画版「トランスフォーマー」シリーズ。マイケル・ベイ監督作品のユニバース、通称“ベイバース”は『トランスフォーマー/最後の騎士王』(2017)で幕を閉じたが、マイケル・ベイは製作側に回り、スピンオフにしてリブート第1作であるトラヴィス・ナイト監督作『バンブルビー』が2019年に公開された。

トラヴィス・ナイト監督は映画『バンブルビー』で舞台設定を1987年に設定し、80年代ポップカルチャーに加え、トランスフォーマーたちのデザインもアニメーション第1作『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』(1985-1986)に寄せ、カット割りや演出面でも最初の長編アニメーション映画である『トランスフォーマー ザ・ムービー』(1989)に強く影響を受けたものになった。

このように初期の作品群であるジェネレーション1、通称“G1”ルックを重視した新しい展開を見せる実写映画「トランスフォーマー」シリーズ。2023年8月4日に全国公開された『トランスフォーマー/ビースト覚醒』は“G1”ルックに加え、監督を務めるスティーヴン・ケイプル・Jr監督が青春を過ごした1994年に舞台は移り、90年代に大ヒットした『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』(1997-1998)に強い影響を受けた作品となっている。その『トランスフォーマー/ビースト覚醒』が2024年4月4日(木)よりNetflixにて配信開始される。

本記事では『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の中で描かれた90年代ポップカルチャーやラストシーンについて解説と考察をしていこう。なお、本記事は『トランスフォーマー/ビースト覚醒』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の内容に関するネタバレを含みます。

新たなるトランスフォーマーの物語のイースターエッグ

マクシマルとテラーコンの戦い

物語はトランスワープキーを狙うユニクロンの配下のテラーコンと、ユニクロンの魔の手からそれを死守しようとするマクシマルの戦いから始まる。トランスワープキーとは宇宙空間のどこにでも自由に移動できるようになる物語の文字通りの“鍵”であり、それがユニクロンの手に渡ればユニクロンはどの星でも捕食できるようになってしまうことを危惧されていた。

トランスワープキーの元ネタになったのは『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』をはじめとする「ビーストウォーズ」シリーズに登場するトランスワープであり、これはワープ航法というだけではなく、繰り返すことで時間ですら超えてしまうものである。

「ビーストウォーズ」シリーズではトランスワープ航法を繰り返した結果、現代より遥か遠い未来のトランスフォーマーたちであるマクシマル(サイバトロン)とプレダコン(デストロン)が惑星エネルゴアと呼ばれる古代の地球に不時着した。『ビーストウォーズメタルス 超生命体トランスフォーマー』(1999-2000)では“G1”のオートボットやディセプティコンと、マクシマルとプレダコンが出会う場面も描かれている。

トランスワープキーを用いたことで時間移動したと思われる描写は『トランスフォーマー/ビースト覚醒』でも見受けられる。マクシマルのリーダーのオプティマス・プライマルがオプティマス・プライムに出会った際、「オプティマスという名前はオプティマス・プライムから受け継いだ」といった旨の発言をしている。

その後、オプティマス・プライマルはオートボットを守ることに固執しているオプティマス・プライムに対しても、エアレイザーに思っていたような人物ではないと漏らしている。このことからオプティマス・プライマルが語るオプティマス・プライムとは『トランスフォーマー/ビースト覚醒』などの冒険を経て成長したオプティマス・プライムのことだと考えられる。

オートボットと人間との出会い

1994年のニューヨーク州ニューヨーク市ブルックリン区。主人公のアンソニー・ラモス演じるノア・ディアスは電子工学に秀でた元陸軍二等兵だが、退役後に職に就けず、血液の病気を抱える弟のために今すぐ大金を必要としていた。冒頭で小遣い稼ぎに作っていたケーブルテレビの受信機の画面にはミュージックビデオが映っており、おそらく当時の流行の中心であるMTVを映していたと思われる。

弟のクリス・ディアスのTシャツや部屋のポスターには、90年代に玩具店の前に渋滞をつくるほど大ヒットしていた『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』(1993-1996)が描かれているのが見て取れる。ノア・ディアスが面接を受けに行った企業の警備員がO・J・シンプソン事件のニュースを見ているなど、冒頭からここが1994年のニューヨークのブルックリンであることを強調している。

他にも無線でノアとクリスがお互いをソニックとテイルズと呼ぶのはSEGAの人気ゲームシリーズで、同じく90年代にこのシリーズを運ぶために飛行機を飛ばしていると言われるほどヒットした「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズの登場人物から来ている。後にミラージュは「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズから取られたナックルズという愛称で通信を受けている上、クリス・ディアスはゲームボーイに熱中していることからかなりのゲーム好きであることがうかがえる。

そしてノア・ディアスは悪友リークに誘われてシルバーのボディにブルーストライプのポルシェ・911(964型)カレラRS3.8を盗む計画に加担することになる。ポルシェ・911(964型)カレラRS3.8は世界に55台しかないと言われ非常に価値が高い。しかし、そのポルシェ・911(964型)カレラRS3.8こそがミラージュだったのだ。ミラージュに乗ってしまったが最後、ノア・ディアスは警察とのカーチェイスに巻き込まれてしまう。

ミラージュにポルシェ・911(964型)カレラRS3.8が選ばれた理由はスティーヴン・ケイプル・Jr監督が映画業界を志したきっかけとなったマイケル・ベイ監督長編デビュー作『バッドボーイズ』でウィル・スミス演じる主人公がポルシェ911に乗っていたことから来ている。また、ミラージュがなんにでも変形できることを表現する際にF1カーに変形するのは、『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』でミラージュがリジェJS11というF1カーに変形していたことから来ていると思われる。

エクセルスーツ装着

ペルーでのトランスワープキーによって宇宙に開いた穴を閉じるための戦いの中、ミラージュは親友であるノア・ディアスを庇い、命を落とす。しかし、今際のときにハンドルをノアに託すといい、ミラージュはエクセルスーツに変形するのであった。

エクセルスーツ(エグゾスーツ)は、『トランスフォーマー ザ・ムービー』で登場したもので、装着することで小型のトランスフォーマー並みの力と変形能力を人間に付与することのできるパワードスーツである。これを装着することで、ノア・ディアスはトランスフォーマー並みの力を手にすることができた。

この姿のノア・ディアスは既に商品化が決まっており、そこでは戦闘機に変形できるようになっている。人間が戦闘機に変形するというと、「トランスフォーマー」シリーズでは人間に擬態できるプリテンダーという種族のリーダーで、『トランスフォーマー 超神マスターフォース』(1988-1989)に登場する人気キャラクターのメタルホークを想起させる展開だ。

宇宙を一つに

死に際にスカージがトランスワープキーの制御盤を破壊したことで、穴を閉じることができなくなってしまったオートボットとマクシマル。オプティマス・プライムはトランスワープキー破壊の大爆発に巻き込まれる覚悟で自分以外の全員の撤退を命じ、トランスワープキーを破壊する。故郷に帰る唯一の道を破壊するというのは、オプティマス・プライムにとって大きな決断だと考えられ、実写映画版「トランスフォーマー」シリーズが持つ難民や移民の要素が感じられる。

この実写映画版「トランスフォーマー」シリーズが持つ「トランスフォーマーという種族そのものが難民や移民である」といった要素は映画全体に存在し、ノア・ディアスがなかなか就職できなかったり、エレーナ・ウォレスが優れた才能を持ちながら白人の研究員の小間使いのようなインターンしか任されなかったりと90年代の有色人種の生きづらさも作品内には散りばめられている。

空に開いた巨大な穴に全てが吸い込まれ、オプティマス・プライムも吸い込まれそうになる中、手を伸ばしたのはエクセルスーツを身にまとったノア・ディアスであり、彼の手から離れそうになるとオプティマス・プライマルがオプティマス・プライムの手を掴み、3人は「宇宙を一つに」という言葉のもとで団結する。

「宇宙を一つに」というのは『トランスフォーマー ザ・ムービー』で多用されるオートボットのモットーであり、戦争によって混迷した宇宙が一つになるまでは圧政や独裁者、侵略者と戦い続けるという信念から来ているものである。この「宇宙を一つに」をここで持ってきてくれるのは“G1”ファンにとっては熱い展開であり、なおかつ有色人種の生きづらさを散りばめておいたこともあって、その言葉がより胸にしみる展開となった。

また、初期構想ではこのままオプティマス・プライムが空の穴に吸い込まれ、ユニクロンのもとにいってしまうという案もあった。他にもスカージがプライムの称号についてプライマスという名を引き合いに出している。プライマスはトランスフォーマーを創造したと言われる善なる神でユニクロンの対となる存在だ。もしかすると、初期案ではプライマスの直系の子孫であるプライムがユニクロンに乗っ取られるクリフハンガーな結末になるはずだったのかもしれない。

謎の組織はいったい?

ノア・ディアスを勧誘する秘密組織

ラストシーンでは、ノア・ディアスが面接を受けに行った際、相手側が政府の人間であり、これまでの通信をすべて傍受していたこと、そして大きな戦いになるため優秀な人材を欲していることが語られる。そこで彼が手渡された名刺に書かれていたのが「G.I.ジョー」の文字だった。同じハズブロ社製の「トランスフォーマー」シリーズと「G.I.ジョー」シリーズだが、両者には深い関係性がある。

「G.I.ジョー」シリーズは1964年に発売された米軍兵士をモチーフにしたアクション・フィギュアで、当時流行していたマテル社の「バービー」シリーズの影響を受け、男の子向けの商品でもそのような商品展開が可能だと考えたハズブロ社の商品だ。顔に傷があるなど、リアリティのあるデザインが高い人気を博した。

「G.I.ジョー」シリーズは日本にも輸出されたが、そのリアルすぎるデザインがハズブロ社の想定を下回る売り上げとなったと言われている。そこで当時のタカラ社が考えた戦略が透明なボディのSFのキャラクターにしてしまうというものだった。それが「ミクロマン」シリーズである。

「ミクロマン」シリーズは大ヒットし、展開が広がる中でラジカセや拳銃など実物大の道具がロボットに変形する商品が販売される。さらに、同時期にタカラ社はリアルな自動車や戦闘機に変形する玩具「ダイアクロン」シリーズを販売開始する。おもちゃショーでこれらを目にしたハズブロ社は二つを組み合わせた商品展開を考えた。

そこでハズブロ社が頼ったのがマーベル・コミックスだ。当時の編集長で、物語づくりに定評のあったジム・シューターに企画を持ち込み、作家のボブ・バディアンスキーがキャラクター設定を考えた。それによって誕生したのが「トランスフォーマー」シリーズである。つまり、「トランスフォーマー」シリーズと「G.I.ジョー」シリーズは親兄弟のような関係にあるのだ。

実際に『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー2010』(1986-1987)の第22話「人間トランスフォーマー」では、スネークという偽名で「G.I.ジョー」シリーズのメインヴィランのコブラコマンダーが出演するなど、世界観が共通しているかのような演出が過去にはある。

実写映画での2つのシリーズ

実写映画でも「トランスフォーマー」シリーズと「G.I.ジョー」シリーズは深い関係性がある。それはもともと映画第1作『トランスフォーマー』(2007)は「G.I.ジョー」シリーズの実写映画化になるはずだったからだ。しかし、中東情勢の悪化で計画が変更され、実写映画版「トランスフォーマー」シリーズの歴史がはじまった。ジョシュ・デュアメル演じるウィリアム・レノックスや彼の率いる特殊部隊「N.E.S.T」などはその名残だと言える。

現在、『バービー』(2023)に合わせ、マテル社は急速な勢いで自社の玩具の実写映画化を進めているが、ハズブロ社も負けずに“ベイバース”をさらに広げ、トランスフォーマー・ユニバースだけではなくハズブロ・ユニバースを築こうとしているように思える。2024年にはオプティマス・プライムとメガトロンの過去を描いたアニメ映画『トランスフォーマー ワン(原題:Transformers One)』が公開予定なので、今後に期待していきたい。

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』は2023年8月4日(金)より全国公開。

映画『トランスフォーマー /ビースト覚醒』公式サイト

オプティマス・プライムのカットされた場面解説はこちらから。

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』で描かれた人種問題についてはこちらから。

『トランスフォーマー /ビースト覚醒』予告映像の第2弾はこちらから。

中島健人と仲里依紗による吹替声優決定に関する記事はこちらから。

オリエンタルラジオ藤森慎吾ら追加の吹替声優決定に関する記事はこちらから。

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の解禁された本編映像に関する記事はこちらから。

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の解禁されたインタビュー映像に関する記事はこちらから。

『トランスフォーマー /ビースト覚醒』の下敷きとなった『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』のキャラクター紹介記事はこちらから。

『バンブルビー』振り返り記事はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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