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迫る『トランスフォーマー/ビースト覚醒』米公開
実写版「トランスフォーマー」シリーズ第7作にあたる『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』(1996-1997)を下敷きにした最新作『トランスフォーマー/ビースト覚醒』がアメリカでは2023年6月9日、日本では8月4日に公開される。そして本国アメリカでの公開が迫る中、監督や俳優陣によるインタビュー映像が解禁された。
2023年5月9日に解禁された本編映像とは、また違った形でキャラクターたちの掘り下げがなされた今回の『トランスフォーマー/ビースト覚醒』のインタビュー映像。本記事では監督や俳優たちがどのような想いでキャラクターたちを創り上げ、そして演じているのだろうか。なお、以下の内容は公式から発表されている範囲のキャラクターの設定に関する情報を含むので、情報を入れずに鑑賞したいと思われている方は注意していただきたい。
キャラクターたちの背景
背負うには若すぎるノアの重荷
『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の人間側の主人公の一人、ノアを演じるアンソニー・ラモスは舞台となるニューヨーク州ニューヨーク市ブルックリン区の生まれで、アフリカ系、ラテン系、プエルトリコ系にルーツを持つ俳優だ。『トランスフォーマー/ビースト覚醒』はニューヨークを中心にそうした有色人種の人々の中で生まれたポップカルチャーと組み合わされた作品であることがスティーヴン・ケイプル・Jr監督の口から明かされている。
予告編第1弾では『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の舞台となる1994年に発表されたブルックリン区出身のノートリアスB.I.G.の自身の半生を綴った楽曲「Juicy」が用いられ、予告編第2弾にはDMXが1998年に発表した「ラフ・ライダーズ・アンセム(Ruff Ryders’ Anthem)」が用いられている。新ポスターの中にはペルーの伝統的な芸術を模したものだけではなく、ストリートアートにオートボットの合言葉「宇宙を一つに(TIL ALL ARE ONE)」と書かれたもの存在している。
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— Transformers (@transformers) May 10, 2023
そうした1990年代のポップカルチャーを取り入れた『トランスフォーマー/ビースト覚醒』だが、取り入れられたバックグラウンドはそのようなものだけではない。それは前述の人間側の主人公のノアの過去だ。ノアはまだ若者(Kid)と呼ばれる年齢にもかかわらず、元軍人であり、戦争の最中のトラウマに悩まされ、戦地の悲惨な記憶の中に引き戻されてしまう。
おそらくノアは時代背景から考えるに1990年から1991年に起きた湾岸戦争に従軍したと考えられる。このような退役軍人や元軍人の抱えるPTSDはアメリカの社会問題であり、特に貧困家庭などを狙って一定期間従軍すれば学費が免除されるなどの制度によって多くの若者が戦地に送られ、心に深い傷を負った。この戦争の傷がノアと劣勢で母星を捨てることになったオートボットの若い兵士と絆を生むきっかけになるのかもしれない。
オートボットの異端児、ミラージュ
劣勢の末に母星を捨てて宇宙に散り散りになり、各地に亡命したオートボット。その中でも異端児とされるのが『トランスフォーマー/ビースト覚醒』のオートボット側の主人公の一人、ミラージュだ。スティーヴン・ケイプル・Jr監督曰く、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)でブラックガードを演じたピーター・デヴィッドソンが声優を務めるミラージュは「反抗期の子どものよう」と評されており、扱いづらいトランスフォーマーとなっている。
ミラージュの行動は勝手にノアをオートボットの隠れ家に連れてきた挙句、「お前良い奴だな!」と呼び、「さあて、これで俺たちダチだな!」と言い切るなど、子供っぽい仕草が目立っている。それによってディセプティコンたちに殆ど母星である惑星サイバトロンを占拠され、レジスタンスとなっているオートボットたちにとってミラージュは一種の清涼剤となっている。
スティーヴン・ケイプル・Jr監督が『トランスフォーマー/ビースト覚醒』を「アクションあり、ユーモアあり」と語っていたが、その要素を象徴するのがミラージュだと言えるだろう。
『トランスフォーマー:ウォー・フォー・サイバトロン:シージ』
『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の立ち位置はどうなる?
『トランスフォーマー/ビースト覚醒』はリブート作品?
『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の監督を務めるスティーヴン・ケイプル・Jr監督は、「映画『トランスフォーマー』シリーズでは第2作目にあたり、90年代が舞台の『バンブルビー』直後の物語なのです」と発言している。
このことから、『バンブルビー』を単なるスピンオフとしてだけではなく、実写映画「トランスフォーマー」シリーズの前日譚だと考えていることがわかる。これは当初の『トランスフォーマー/ビースト覚醒』が実写版「トランスフォーマー」のリブートとなるという発表と概ね同じだ。
しかし、これまでの実写版「トランスフォーマー」シリーズでプロデューサーを務めたロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラは『トランスフォーマー/ビースト覚醒』が第1作目『トランスフォーマー』(2007)に繋がると語っている。ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラは、第1作目から『トランスフォーマー/最後の騎士王』(2017)の通称“ベイバース”と同じ世界観になる可能性を示唆している。
ユニクロンはどうなる? 第1作目はどれ?
そうなると問題になるのがユニクロンの描写と時系列における第1作目の存在だ。『トランスフォーマー/ビースト覚醒』ではユニクロンが登場し、ユニクロンの部下であるユニクロン・スポーンたちに対して、オートボットと動物に変身するマクシマルが地球を守るべく戦うという物語なることが予告編からわかっている。ユニクロンとは惑星に変形し、惑星を捕食する混沌や闇の神とも称される巨大なトランスフォーマーだ。
だが、そうなると『トランスフォーマー/最後の騎士王』で地球の核こそがユニクロンだったという『超ロボット生命体 トランスフォーマー プライム』(2012-2013)で描かれたものに似たガイアユニクロンの設定と誤差が生じる。『トランスフォーマー/ビースト覚醒』ではユニクロンは外部から襲撃してくる巨大な敵として描かれているのだ。この矛盾をどうするのか注目が集まる。
また、スティーヴン・ケイプル・Jr監督は時系列を基に『トランスフォーマー/ビースト覚醒』を映画「トランスフォーマー」シリーズの第2作目と定義しているが、ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラは2024年に公開されるタイトル未定の長編アニメ映画が、若き日のオプティマス・プライム(オライオン・パックス)と若き日のメガトロン(メガトロナス)の友情と政治劇を描くものになるとしている。
それを考えると映画「トランスフォーマー」シリーズの第1作目は時系列的に2024年公開のタイトル未定の長編アニメ映画になり、『トランスフォーマー/ビースト覚醒』は第3作目になる。この点から『トランスフォーマー/ビースト覚醒』は実写版「トランスフォーマー」シリーズにおける“ソフト”リブートになるのではないかと期待されている。まだまだ未発表の情報が残されている『トランスフォーマー/ビースト覚醒』。その今後に注目していきたい。
また、「トランスフォーマー」シリーズにはじめて触れる人にもおすすめな『トランスフォーマーサイバーバース』(2019-)がYoutubeで無料配信されているので、これを機にぜひ「トランスフォーマー」シリーズに触れてみてほしい。
映画『トランスフォーマー /ビースト覚醒』は、2023年8月4日(金)日本公開。
ノア役の日本語吹き替え声優はSexy Zoneの中島健人が務めることが発表された。詳しくはこちらから。
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