映画『バービー』公開
世界的に有名な人形のバービーを実写映画化した『バービー』が2023年8月11日(金・祝)より日本でも公開された。映画『バービー』では、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017) などでの名演技で知られるマーゴット・ロビーが主演と製作を務め、『レディ・バード』(2017) や『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019) といった作品で知られるグレタ・ガーウィグが監督を務めた。
一足早く公開された米国では、多くの女性をエンパワメントする映画として高い支持を受け、公開からわずか3週間で興行収入10億ドルを突破。女性監督の映画としては史上最高の興収を叩き出している。イギリスや中国、メキシコでも好調な数字を維持しているという。
映画『バービー』では、様々なバービーが登場する。作品自体にも、いわゆる“ホワイト・フェミニズム”と呼ばれる権力者寄りのフェミニズムではなく、より多くの人を包摂しようとするメッセージが込められている。
以下の内容は、映画『バービー』のテーマに関する若干のネタバレを含みます。ご注意ください。
ハリ・ネフが演じたバービー
多くのバービーの中の一人である医者のバービーを演じたハリ・ネフは、世界最大手のモデルエージェンシーであるIMGと契約した初のトランス女性として知られる。
俳優、ライター、モデルとして多忙な日々を送るハリ・ネフは、最初に『バービー』へのキャスティングを聞かされた時にはスケジュール的に厳しい状況にあったと自身のInstagramに記している。それでも、マーゴット・ロビーとグレタ・ガーウィグが監督に直接手紙を送ってスケジュールを調整したハリ・ネフは、自身が幼い頃から触れてきたバービーになる夢を叶えた。
ハリ・ネフは、セクシュアルマイノリティのニュース・ファッション・エンタメを扱う米OUTマガジンのインタビューで、今回の『バービー』への出演について語っている。ハリ・ネフは、本作には「トランス女性のバービー」として出演したわけではない。劇中でも語られる通りバービーには性器がないことにも触れ、「バービーはバービーです」としている。
また、本作のプロデューサーの一人であるデヴィッド・ハイマンは、キャスティング時にハリ・ネフがトランス女性だと知らなかったのだという。ハリ・ネフが起用されたのは、ただ求めていたバービーのトーンに合っていたからだとしている。ハリ・ネフはこう話す。
私たちは様々な、種類の異なるバービーを見せようとしているのですから、(おもちゃ会社の)マテル社にとって、私を本作に参加させることはポジティブなことだったのでしょう。しかし、私が役を得たのはそれが理由ではなく、私がこの役に合っていたからです。
確かにマテル社は、2022年にトランスジェンダー女性のセレブであるラバーン・コックスをモデルにしたバービーを発売している。だが、今回の映画『バービー』では、“企業の都合”と個々人が抱える問題や理想は別のものであることもテーマの一つになっている。
トランス女性としての私は、“自分がどうなれるか”という大きな理想に囚われがちであると思います。そして、自分は何になれないか、何ができないかという外部からのメッセージや妨害に打ちのめされることは避けられません。完璧を求めて努力することと、拒絶されることに反発することに常にとらわれることになります。それは大変なことです。
本作には、女性であること、女の子であることへの賛美が込められていると共に、チェックリストを手放して、生きること、自分の人生を生きること、自分の身体で、自分のやり方で、自分らしく生きることへの応援も込められていると思います。女性として、トランス女性として、私たちができる最善のことは、互いに寄り添い、誰かの許可を求めることなく、自分自身をありのままに受け止めることです。
これらのハリ・ネフの言葉は、映画『バービー』で語られるメッセージと一致するものだ。そして、そのメッセージは女性を通してしか自己を認識できない男性たちにも届く言葉である。より多くの人々をエンパワメントした映画『バービー』。快進撃はまだまだ続きそうだ。
映画『バービー』は2023年8月11日(金・祝)より全国の劇場で公開。
Source
Hari Nef Instagram / Out
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