シークレットキャラクターは何者?
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)とは異なる世界観で「スパイダーマン」シリーズの登場人物を描いていくSSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)の最新作『マダム・ウェブ』が2024年2月23日に劇場公開された。『マダム・ウェブ』では坂本真綾が吹替を務めるシークレットキャラクターがSNSで発表されており、注目を集めていた。
本記事は『マダム・ウェブ』で坂本真綾が吹替を務めたシークレットキャラクターについて考察と解説をしていこう。なお、本記事には『マダム・ウェブ』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。
以下の内容は、映画『マダム・ウェブ』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『マダム・ウェブ』でのパーカー夫妻
メアリー・パーカーはどういう人物?
『マダム・ウェブ』の物語の中で脇に置かれてはいるが重要な役割を果たしているのが、坂本真綾が吹替を務めるメアリー・パーカーの妊娠と出産だ。エマ・ロバーツ演じるメアリー・パーカーのベイビー・シャワーが行なわれており、そこで青い風船が飾られていることから男児を妊娠していることがわかる。そして、『マダム・ウェブ』終盤にはメアリー・パーカーは出産している。
エマ・ロバーツはオーディションなしで監督から指名されたキャスティングであり、カサンドラ・“キャシー”・ウェブを演じたダコタ・ジョンソンと同じ30代の俳優である。そのため、出産して母親になったメアリー・パーカーと仕事に情熱を燃やし家族に対して苦手意識を持つキャシーを対比する意図でキャスティングが行われたと考察できる。
『マダム・ウェブ』の最後では、キャシーはジュリアとマティ、アーニャの3人のスパイダーウーマンと疑似的な家族となっている。キャシーがジュリアたち4人が家族と語っている病室の場面で、メアリーとベンの病室が映されているため、ここでもキャシーとメアリーが対比して描かれていると思われる。
メアリー・パーカーにキャスティングされたときの思い出をエマ・ロバーツは以下のように米Colliderに話している。
本当に予想外でした。ある日、家にいたら、マーベル映画のことで会いたいと電話がかかってきたんです。オーディションのプロセスは? どうすればいいのでしょう? それから監督と話をして、数週間後にはボストンで撮影して、とても楽しかったんです。明らかに素晴らしいキャストだし、マーベル映画のユニークなテイストでした。だからみんなに見てもらうのがとても楽しみなんです。どんなストーリーが展開されるのか、とても予想外の作品になると思いますから。
監督は、仕事に重きを置き、家族愛に苦手意識を持つキャシーと対比になる存在としてのメアリーのキャラクター像に、エマ・ロバーツのイメージが合っていたと考えてオファーを行ったのだろう。では、そのメアリーの夫はどのような人物なのだろうか。
メアリーの夫は誰?
ベイビー・シャワーのシーンでは、メアリー・パーカーの夫の名前が「リチャード」であることが明らかになっている。マーベルの世界においてメアリー・パーカーとリチャード・パーカー夫妻の最も有名な子供の名前はピーター・パーカーであり、後のスパイダーマンだ。そのため、『マダム・ウェブ』のラストで生まれた子供はピーター・パーカーだと考察できる。
謎なのがリチャード・パーカーの職業だ。メアリーはリチャードがムンバイか上海にいると周囲に話している。そして、リチャードは仕事が理由で妻のメアリーが妊娠中でも出張続きであり、居場所を転々とさせていることも語られている。
スパイとしてのリチャード&メアリー・パーカー
妻であるメアリーも所在がつかめないリチャードだが、その職業がコミックで語られたことがある。それは元アメリカ陸軍特殊部隊であり、S.H.I.E.L.D.長官のニック・フューリーによってCIAに起用された人材だった。
その設定が明かされたコミックではメアリーもCIAの職員である。2人は職場で出会い、結婚したとコミックで語られている。そこではカナダでエージェント・テンと呼ばれていたウルヴァリン/ローガンと共に活動し、バロン・フォン・ストラッカーと戦っている。
バロン・フォン・ストラッカーはMCUでは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)で本格的に登場したヒドラの幹部の1人であり、ニック・フューリーの宿敵だ。リチャードとメアリーはバロン・フォン・ストラッカーの手からウルヴァリン/ローガンを救出する任務に就いている。
リチャードとメアリーは夫妻での諜報活動の間、幼いピーターを兄弟であるベン・パーカーとメイ・パーカー夫妻のもとに預けることが多かった。そのため、リチャードとメアリーの死後、ピーターはベンとメイ夫妻に引き取られることになったのである。
リチャード・パーカーのもう一つの顔
研究者としてのリチャード・パーカー
アンドリュー・ガーフィールドがスパイダーマン/ピーター・パーカーを演じた「アメイジング・スパイダーマン」シリーズでは、メアリーとリチャードはスパイという設定ではない。その代わりにリチャードは科学者であり、自身の死を偽装してまで研究内容を秘密にして守ろうとしていたことが『アメイジング・スパイダーマン2』(2014)で描かれている。
『アメイジング・スパイダーマン2』では、キャンベル・スコットが演じたリチャード・パーカーはノーマン・オズボーンが率いるオズコープ社の研究員だった。ノーマン・オズボーンといえばスパイダーマンの宿敵であるグリーンゴブリンの正体としても知られる。「アメイジング・スパイダーマン」シリーズではノーマン・オズボーンはグリーンゴブリンではないが、息子のハリー・オズボーンがグリーンゴブリンに変身している。
パーカーの遺伝子に反応する蜘蛛
リチャードはオズコープ社で蜘蛛の遺伝子に改良を加える実験を行なっていたが、その途中で蜘蛛の遺伝子を操作する実験が軍事転用される危険性に気づいた。そして妻のメアリーと共に逃亡する中でメアリーは死亡してしまい、リチャードは死を偽装して逃げ続けていた。
「アメイジング・スパイダーマン」シリーズのリチャードは自分を蜘蛛の遺伝子操作の被検体としており、自分と同じ遺伝子情報を持つ人物にしか蜘蛛の毒による突然変異の効果が出ないように仕込んでいた。そのため、リチャードの息子であるピーターに蜘蛛の毒の突然変異の効果が現われ、ピーターはスパイダーマンになったのである。
『マダム・ウェブ』ではベイビー・シャワーの際にキャシーが自分の母親が出産のときに死亡したことを話してしまい、空気が重くなるシーンがある。もしかすると、この時点で既にリチャードは追われる身であり、それで出張という名目で各地を転々としているのかもしれない。そして、キャシーの言葉は今後メアリーに降りかかる運命を、キャシー本人すら知らない内に示していたと考察することが出来る。
SSUにオズコープ社は存在する?
『マダム・ウェブ』でもリチャード・パーカーは秘密の多い人物として描かれている。メアリー・パーカーもピーターを妊娠しているということ以外、詳しく語られることはない。「アメイジング・スパイダーマン」シリーズではリチャードが蜘蛛の研究をしていたオズコープ社が、『マダム・ウェブ』の世界であるSSUの世界にもあるかどうかは不明であり、SSUにはオズコープ社が存在しない可能性もある。
一方で『モービウス』(2022)の予告編の削除されたシーンでは、「アメイジング・スパイダーマン」シリーズのオズコープ社のビルが映し出されているため、存在を否定することもできない。2003年のリチャードが何をしているのかは依然として不明である。
SSUの世界でリチャード・パーカーとメアリー・パーカーは何をしている人物なのか。ここではただの一般人であり、ピーター・パーカーというスパイダーマンの運命の一部でしかないのかもしれない。運命の織り手と呼ばれる『マダム・ウェブ』の世界におけるリチャード・パーカーとメアリー・パーカーに注目していきたい。
『マダム・ウェブ』は2024年2月23日(金・祝)より劇場公開。
Source
Collider
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