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『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』後半へ
Disney+のオリジナルドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』はMCU最新作。第4話でいよいよ全6話の後半戦に突入し、2021年6月11日(金)から配信を開始する次作のドラマ『ロキ』も公式予告編が公開された。
物語はクライマックスへ向けて突き進んでいく。今回は『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第4話をネタバレありであらすじと共に解説していく。
以下の内容は、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第4話の内容に関するネタバレを含みます。
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第4話ネタバレあらすじ&解説
明らかになるアヨとバッキーの関係
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第3話では、サムとバッキーはジモを脱獄させ、更にシャロンの手を借りて、超人血清を作り出したネルゲイ博士を見つけ出した。全部で20の超人血清が作られたことを確認し、3人は強硬な手段に手を染めるフラッグ・スマッシャーズを追う。一同が向かったリガの街でバッキーの前に現れたのは、ワカンダの国王親衛隊“ドーラ・ミラージュ”のアヨ。ジモを引き渡すようバッキーに申し出るのだった。
第4話のタイトルは「世界注視の中で」。この「世界」とは誰を示しているのか、「注視の中で」ことを起こすのは誰なのか、という点に注目して見てみよう。最初に映し出されるのはワカンダ。映画『ブラックパンサー』(2018) の楽曲が流れている。時は6年前。アヨは「時は満ちた」とバッキーに話しかけている。
6年前といえば、2018年。『アベンジャーズ/インフィニティー・ウォー』でバッキーが再登場を果たし、ティ・チャラからヴィブラニウムの新しい腕を受け取った年だ。アヨはバッキーがもう洗脳から解放されたことを確認している。長年ウィンター・ソルジャーとして操り人形になっていたバッキーの洗脳が解けた背景は描かれてこなかったが、そこにはアヨの助けがあったようだ。
この場面で、アヨは「解放された ( = You are free. = あなたは自由だ。)」とバッキーに語りかけている。バッキーは決して過去を忘れて呪縛から解放されたのではなく、洗脳されながら悪事に手を染めた過去を回想しながら、涙を流して自由を手に入れる。このシーンには、過去と向き合ってこそ先に進めるというメッセージが込められている。このやり取りを経て、ティ・チャラはヴィブラニウムの義手をバッキーに与えることを決めたのだろう。
舞台は現代に戻り、アヨは「なぜ奴を自由に? (How could you free him?)」と、かつてバッキーに語りかけた言葉と対になる質問を投げかける。アヨは、親衛隊の目の前でティ・チャラの父ティ・チャカを死に追いやったジモを解放したことに憤っている。バッキーは、ジモを「目的のための手段だ」と弁明し、アヨはバッキーに8時間の猶予を与える。この時、バッキーがワカンダ語で弁明し、アヨがバッキーを「ホワイトウルフ」と呼んでいるのは、譲れない一線を持ちながらも、まだ互いが信頼関係の中にあるということを示している。
なお、アヨには『ブラックパンサー』で描かれなかったある過去が描かれることに期待がかかっている。詳細はこちらの記事で。
誘惑の“ターキッシュ・デライト”
ジモが用意した部屋に戻ったバッキーは、正直にワカンダがジモの身柄を引き取りに来ていることをサムとジモに告げる。一方、フラッグ・スマッシャーズのカーリは、負傷者11名、死者3名を出す爆破テロを起こし、要求を掲げているという。ジモは、超人的な力を手にしたカーリを、ナチス、ウルトロン、アベンジャーズと並べ、“至上主義者 (supremacist)” だと言い放つ。それが右翼でも左翼でも、各々の正義を掲げる者を嫌う現代人らしい価値観だ。
サムは平和的な解決を求めるが、ジモは、超人になりたいという願望がカーリを暴走させると説く。だが、バッキーは「スティーブは決して歪まなかった」と、かつての親友を引き合いに出して反論する。意外にも、ジモはあっさりこれを認めるが、スティーブの再来はないとも言い切る。
サムは、カーリが助けるよう要請していたドンニャが、難民のコミュニティの中心人物だったと述べ、死者をとむらう弔問が行われているはずだと推理する。このシーンでジモはターキッシュ・デライト(ロクム)という名のお菓子をサムに勧める。これは「ナルニア国物語」にも登場する“禁断のお菓子”で、その甘さから、「誘惑に負けてしまう」というイメージをもって語られることが多い。ここでは、ジモはスーパーパワーの隠喩としてターキッシュ・デライトを提示したのだろう(前知識がないと『ワンダヴィジョン』のCMを思い出させる演出にも思えてしまうが……)。
カーリの正義
爆破されたGRCは、旧来の国境を復活させる施策を進めることを決定。指パッチン以前の世界に戻すことを「正常回復」と呼んでいる。指パッチン後の世界を取り戻すことを目指すフラッグ・スマッシャーズにとって、「正常」とは人々が消えていた時期を意味しているはずだ。そして、SNSから台頭したフラッグ・スマッシャーズは、今や世界で危険な存在と認知されるまでになっていた。
難民キャンプになったリガの街について、ジモは変容を「嘆かわしい」と語る。そこで暮らす人々の生活を想像できない、“ザ・金持ち”なセリフだ。ジモの描写が少々意地悪になってきているのは、この後ワカンダに引き渡される伏線だろうか。
サムとバッキーはドンニャについて聞いて回るが、明らかに避けられている。ようやく口を開いた人物は、ここの人々はよそ者を信じていないと語る。GRCの支援の約束も守られておらず、「助ける」という人物は口だけだとサムを遠ざける。一方のジモは、先ほどのターキッシュ・デライトを利用して、子ども達から情報を聞き出すことに成功していた。
部屋に戻ったサムは、カーリの活動に理解を示し始める。世界の危機によって壁を作っていた国々が一つになり復興を目指していたが、『エンドゲーム』での人々の復活により、それが一瞬で元の世界に戻ってしまったのだ。バッキーは、目的が正しくてもそれは手段の正当化であり、これまでの敵と何ら変わらないと主張するが、サムは「動機が別物」とこれを譲らない。
ジモは迷いながらもドンニャの弔問に関する情報を得たことを明らかにする。「切り札」としてこの情報を隠すジモに対抗し、サムが頼ったのはシャロンだった。シャロンは衛星にアクセスしてみるという。パワー・ブローカーは血眼になってカーリを追っている。カーリと残された血清がパワー・ブローカーの手に渡れば、またしても超人血清が複製されてしまうかもしれない。やはり、シャロンは正義のために動く人物だ。
サムとカーリの対話
カーリが訪れていたのは超人血清の隠し場所。フラッグ・スマッシャーズのメンバーは、「真っ当な人間」と思えたのはキャプテン・アメリカとカーリだけだと話す。人々が求めるのは「手を汚すヒーローになれる統率者」。カーリは、キャプテンの盾は過去の遺物であり、破壊されるべきだと、サムと同じ考えを口にする。
一方、サムとバッキーの前に現れたのは二代目キャプテン・アメリカことジョン・ウォーカーと、バトルスターことレマー・ホスキンス。大声で話し、目立つコスチュームに身をまとっているので、街を行く人々に注目されている。サム・バッキー・ジモは私服なので目立たないが、少し前のアベンジャーズは“あちら側”だったのだから、不思議なものだ。
サムは、カーリを諭すことを考えていたが、ジョン・ウォーカーはもうその段階ではないと憤る。しかし、意外にもサムの味方をしたのはレマー・ホスキンス。ドンニャの葬儀に潜入した5人は、対話を求めるサムを送り込む。
葬儀のシーンで明らかになるのは、カーリが孤児であったという事実だ。それを助けたのがママ・ドンニャで、多くの人々がドンニャに救われたという。サムの姿を認めたカーリは、「彼らは苦境を強いて、私たちが抗えば罪人と断じた」とスピーチをする。助け合うのは彼らが助けてはくれないから——サムはカーリにどのような言葉をかけられるのだろうか。
カーリと対話を始めたサムは「世界はともかく君のことは分かる」と、「苛立ちや無力感」に理解を示す。ここまで『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』で語られてきた、アメリカ黒人としてのサムの無力感が重ね合わせられる場面になっている。
一方、やはりジッとしていられないのがジョン・ウォーカーだ。サムの説得を待たずに突入しようとするウォーカーに、バッキーが立ちはだかる。バッキー以上に頼りになる警備員はいない。それにしてもウォーカーは、異様に苛立っており、精神的に不安定な状態にあるように見える。
サムは、ジモの言葉を借り、彼がカーリのことを「至上主義者」と呼んでいたと告げる。カーリは至上主義を倒すために戦っていると反論する。カーリにとっての至上主義者は大企業の経営者。だが、フラッグ・スマッシャーズが軍勢を増やし、邪魔者を殺していくのだとすれば、そこに違いはあるのか、というのがサムの問いだ。一方で、自分の姉もカーリと同じ疑問を持っていると、アメリカ国内で国や資本に見捨てられ、それでもヒーローとして戦う自身の矛盾を認める。
「君の戦いには賛同する。戦い方に反対なだけだ」と告げ、カーリとサムが心を通わせたかに見えたその時、やはりジョン・ウォーカーが突入。これを罠だと断じたカーリは、ジョン・ウォーカーを吹っ飛ばして逃げ出すが、ジモに見つかり、脇腹を撃たれてしまう。超人血清を見つけたジモはこれを破壊。カーリはなんとか逃げ出すが、ここにジョン・ウォーカーが現れ、ジモを気絶させる。そして、唯一残った超人血清を拾い上げる。先ほど超人兵士であるバッキーに足止めをされ、カーリに吹っ飛ばされたジョン・ウォーカーは、より力を求めているのだろうか。冒頭のターキッシュ・デライトの隠喩が思い出される。
「流血は解決策じゃない」
味方が欲しいと語るカーリに、超人血清を返すよう迫るパワー・ブローカーから脅迫のメッセージが届く。だが、カーリはパワー・ブローカーを後回しにすることに決め、サムとジョン・ウォーカーを分断して戦わせることを決める。まさに『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) でジモがとった作戦である。
ジモはサムに、超人血清をオファーされたら打ったかという質問に、「No」と即答する。これに気を良くしたのか、ジモは「超人兵士(スーパー・ソルジャー)は存在してはならない」と語るが、即座にサムに「それこそ神の口調だろ」と突っ込まれる。至上主義者が至上主義者を非難するという構図はよくあることだ。一方、今回のサムは「流血は解決策じゃない」と、かつてのスーパーヒーローでは考えられない姿勢を打ち出している。
帰ってきたバッキーは、ジョン・ウォーカーについて「いかれた奴は見れば分かる。俺も同類だからな」と、“至上主義者の押し付けあい”をするカーリとジモとは真逆の態度をとる。「自分は壊れているかも知れない」というバッキーの自己批判的な態度が、複雑さを増す今回の戦いの鍵になるのかも知れない。
三つ巴の戦い
ここに突入してきたのはジョン・ウォーカーだ。ジモを引き渡すよう求めるが、サムは戦力にすると譲らない。盾を置いて戦おうとするジョン・ウォーカーの目の前を通り過ぎたのは一本の槍。ドーラ・ミラージュだ。アヨは時間切れだとジモの引き渡しを迫る。「行ける範囲すべてがドーラ・ミラージュの管轄」という名言を残す。ジョン・ウォーカーが馴れ馴れしくアヨの肩に手を置いたのを合図に、ヴィブラニウム製の槍と盾、バッキーの腕が交錯する。その隙に姿を消すジモ。
バッキーの左腕を取り外したアヨは、ワカンダ語で何かを告げ、「ジェームズ」とバッキーに呼びかける。ジェームズとはバッキーの本名だ。冒頭では、ワカンダで与えられた名前である“ホワイトウルフ”と呼んでいたのだから、今アヨがバッキーをアメリカ名で呼ぶということ、そしてワカンダ語に字幕がついていないことは、ワカンダとバッキーの決裂を意味する。
それでもアヨは、ティ・チャラが与えたバッキーの義手を奪うことはしなかった。また、ヴィブラニウム製のキャプテン・アメリカの盾も「不要」と置いていくように隊員に指示している。盾を巡って大騒ぎをしているアメリカ人達に対して、ワカンダの“余裕”が見えないだろうか。なお、この場面で、バッキーが左腕を装着するレアシーンが映し出されている。後ろから振りかぶって装着完了になるようだ。
圧倒的な力の差を見せつけられたジョン・ウォーカーは、苦渋の表情を見せる。ジモは部屋に作っていた隠し通路から逃げ出していた。それでも、レマー・ホスキンスは血清の製造元と血清が全て失われたことに安堵していた。
「血清が打てたら打てるか」という問いに即座に「Yes」と回答するホスキンス。「力によって自分の本質が出るだけ」と語るように、力を得て変化するわけではないというのがホスキンスの持論だ。軍人として戦場で名誉勲章三つを手にしたウォーカーだが、「アフガンで決行したことは名誉とは程遠い」と語る。「血清があればあの日多くの命を救えた」というホスキンスの言葉に、何かを決意したようだ。
またも衝撃のラスト
その頃、サムの姉であるサラの元に、カーリから着信が入る。サムを庇うサラに、カーリはサムと二人で会えるよう手配を要求する。サムが裏切った時には、サラとサラの子ども二人に危害が及ぶことを示唆して。カーリは、善良な市民への脅迫という一線を超えてしまう。この知らせを受けたサムは、サラに逃げるように助言する。サムはファルコンのコスチュームに身をまとい、カーリとの話し合いの場にバッキーと共に現れる。
カーリは、サムが「旧体制の道具だが権力を盾にしていない」と、仲間になるか、カーリを見逃すか選ぶよう迫る。その時、衛星で状況を監視していたシャロンからジョン・ウォーカーが動いたとの連絡が入り、ファルコンとバッキーは現場に向かう。
超人兵士の前に、レマー・ホスキンスはあっという間に拘束されるが、ジョン・ウォーカーはフラッグ・スマッシャーズと対等に渡り合う。超人血清を打ったようだ。フラッグ・スマッシャーズとバッキーとジョン・ウォーカー、超人兵士たちが入り混じる乱闘に。ここにカーリが到着するが、ウォーカーを助けようとしたホスキンスを力一杯殴りつけ、ホスキンスは石柱に身体を強打する。動かなくなったホスキンスの姿に、一同は動揺を隠せず、フラッグス・マッシャーズはその場を後にする。
治まらないのはジョン・ウォーカーだ。誰も死なせないために超人の力を手に入れたにもかかわらず、相棒を失ってしまった。お馴染みのキャプテン・アメリカの着地ポーズを見せてフラッグ・スマッシャーズの一員を追うジョン・ウォーカー。音楽と相まって、とんでもないことが起ころうとしている/今まさに起きているという(言い方は悪いが)最高の演出が展開されている。
そして、ジョン・ウォーカーはこの人物を惨殺してしまう。世界が見ている目の前で。街の人々はスマホでこの様子を撮影していた。そう、第4話のタイトル「世界注視の中で」とは、スマホを握る市民の前で、ヒーローとしての信頼を失墜させる暴力を行使したジョン・ウォーカーのことを指していたのだ。
そして、この第4話のラストは『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』(2019) と『ワンダヴィジョン』をつなぎ、MCUフェーズ4の方向性を決定づけるものになると考えられる。詳細な考察はこちらの記事で。
アヨが「不要」と切り捨てたあの盾は、今や血に塗れた象徴となってしまった。ジョン・ウォーカーはこのままキャプテンでいられるのか、そして、この盾に再び信頼や正義が宿るのだろうか。サムは盾を破壊すると主張してきたが、一層、その可能性が現実味を帯びてきた。そして、暴力と暴力がぶつかり合う中で、「流血は解決策ではない」とするサムの信条は果たされるのだろうか。
また、ついに逃げ出したジモと、いまだに姿を現さないパワー・ブローカー、一転してアシスタント的な役回りに立ったシャロンの次回以降の活躍にも期待したい。壮絶な展開が続く『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』だが、第4話を終えて残りはたったの2話。一瞬たりとも逃さず見守ろう。
第4話のシャロンの活躍で見えた可能性についてはこちらの記事で解説している。
ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』はDisney+で独占配信中。
第5話のネタバレ解説はこちらの記事で。
最終話 第6話のネタバレ解説はこちらの記事で。
第1話のネタバレ解説はこちらの記事で。
第2話のネタバレ解説はこちらの記事で。
第3話のネタバレ解説はこちらの記事で。
シャロンに関する解説はこちらの記事で。
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のヴィランに関する考察はこちらの記事から。
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』の吹き替えキャストと出演俳優はこちらに詳しい。