第4話ラストはなぜ重要か『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』が加速させる“ヒーロー不信”のMCUフェーズ4 | VG+ (バゴプラ)

第4話ラストはなぜ重要か『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』が加速させる“ヒーロー不信”のMCUフェーズ4

© 2021 Marvel

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第4話の衝撃

Disney+オリジナルで制作されているMCUドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は2021年3月に配信を開始し、4月9日(金)には全6話のうちの第4話が公開された。アメリカ黒人として生きるファルコンことサムや、ウィンター・ソルジャーとして洗脳されていたトラウマを抱えるバッキーを中心に据えながら、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) に登場したジモシャロン、更に強力な新キャラも登場。複数の登場人物の立場から、現代アメリカを映し出す重厚なストーリーが展開されている。

毎度衝撃のクリフハンガーでラストを締めくくる『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』だが、第4話でも意外なラストが待っていた。そして、このラストから見えてきたのは、2019年に公開されたMCU映画『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』と2021年1月に配信を開始したドラマ『ワンダヴィジョン』との繋がり、MCUフェーズ4の指針とも言える世界観だ。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第4話までのMCU作品の内容に関するネタバレを含みます。

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第4話ラストの展開

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第4話のラストでは、二代目キャプテン・アメリカことジョン・ウォーカーが“暴走”。アメリカの象徴でもあるキャップの盾を使ってフラッグ・スマッシャーズのメンバーを惨殺したのだ (第4話終了時点で死亡は確認されていないが)。盾は血に塗れ、ジョン・ウォーカーが我に帰ったときには、周囲の市民がその凶行をしっかりスマホのカメラで捉えていた。SNSの時代、この映像は瞬く間に世界に広がるだろう。

ここで思い出されるのは、『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』のラストシーンだ。ミステリオことクエンティン・ベックはその死の間際でスパイダーマンことピーター・パーカーによって殺されたというフェイクニュースをでっち上げた。

この映像は編集されたもので、MCUの世界の市民もこれを疑うリテラシーを持っていても良いはずだ。だが、ソニーによるマーベル映画『モービウス』(2022) の予告では、壁に描かれたスパイダーマンの絵に「MURDERER (人殺し)」という落書きがされている。『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』以降、スパイダーマンへの信頼は失墜したと見ていいだろう。

では、ジョン・ウォーカーの凶行とスパイダーマンのフェイクニュースはどのように結びつくのだろうか。それは、MCUの時系列を見れば明白である。『ファー・フロム・ホーム』は現時点で公開されているMCU作品の中でも最も遅い時期に舞台が設定されており、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』の舞台は『ファー・フロム・ホーム』のわずか2ヶ月前に設定されているのだ。

『ワンダヴィジョン』を含む『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) 以降のタイムラインはこちらの記事に詳しい。

そして、ドラマ『ワンダヴィジョン』の舞台は『ファー・フロム・ホーム』から約7ヶ月前。この作品ではワンダがウェストビューの街に結界を張る“ワンダ事変”が発生している。世間には、アベンジャーズメンバーが起こした事件として記憶されているはずだ。

そして、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第4話のラストにおけるジョン・ウォーカーの凶行も世界中に拡散されたとすれば、『ファー・フロム・ホーム』の時期にヒーロー不信が高まっていたとしても不思議ではない。スパイダーマンが殺人犯だというフェイクニュースも簡単に受け入れてしまうだろう。

公開順もポイントに

本来、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』はDisney+オリジナルのMCUドラマ第1弾として2020年8月の配信開始を予定していた。新型コロナウイルス感染症の拡大により、第2弾として予定されていた『ワンダヴィジョン』が先に公開され、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は第2弾として配信を開始した。

2021年7月に公開が延期された映画『ブラック・ウィドウ』は、本来2020年5月に公開を予定しており、元々は『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』→『ブラック・ウィドウ』→『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』という公開順が予定されていた。『ブラック・ウィドウ』は過去を描く特別編だとして、“エンドゲーム後”が『ファー・フロム・ホーム』→『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』→『ワンダヴィジョン』という順番で描かれていたらと考えると、『ワンダヴィジョン』における“ワンダ事変”と合わせて、世間のスーパーヒーローに対する疑念が強まっていく過程が逆時系列で描かれていると考えることができるだろう。

“エンドゲーム後を描く”と繰り返し宣伝されてきたMCUオリジナルドラマシリーズは、ゆっくりと、そして着実に“ヒーロー不信”に覆われたフェーズ4のMCU世界を構築しているのかもしれない。

MCUドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』はDisney+で独占配信中。

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『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第4話のネタバレ解説・あらすじ&考察はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』最終話で回収されなかった12の疑問はこちらから。

「エンドゲーム」後のタイムラインについてはこちらから。

第4話のシャロンの活躍で見えた可能性についてはこちらの記事で。

『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』で流れた音楽まとめはこちら

第3話ラストで登場したアヨの“消された過去”についてはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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