【全曲解説】『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』で流れた音楽まとめ【ネタバレ】

ライター

『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』で流れた楽曲をチェック!

『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』公開!

全世界に衝撃を与えた『アベンジャーズ/エンドゲーム』に続くMCU最新作にして、MCUフェイズ3の最終作『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』が遂に公開された。日本と中国では世界最速の2019年6月28日(金)に封切りとなり、7月2日(火)の全米公開に先駆けて大いに盛り上がりを見せている。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』で大きな注目を集めたのが、劇中に使用された楽曲だ。3時間に及ぶ上映時間中、一つの無駄もない選曲で物語を盛り上げ続けた。一つ一つの曲に込められたメッセージは、以下の記事からご確認頂きたい。

『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』においても、効果的な音楽の使い方は変わらず。軽快なテンポのストーリーに合わせて様々な楽曲が投入されている。今回は、『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』で流れた音楽を全曲解説付きでご紹介しよう。選曲に込められたメッセージが分かれば、ストーリーの見え方も変わってくるかもしれない。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』の内容に関するネタバレを含みます。

冒頭流れたアノ曲は

『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』の冒頭、誰もが聞いたことのあるアノ曲が流れ出す。ホイットニー・ヒューストンの「オールウェイズ・ラヴ・ユー (原題: I Will Always Love You)」(1991) だ。ホイットニー・ヒューストン自身が主演も務めた映画『ボディガード』(1991) の主題歌として広く知られている。

この曲に合わせてアイアンマンことトニー・スターク、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース、ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ、そしてヴィジョンの顔写真が映し出されていく。同曲は「いつまでもあなたを愛している」という歌詞も歌われるが、本来は「私はあなたの邪魔になるからあなたから離れる」という内容のラブソング。

少しずれた選曲のようにも感じれられるが、設定上はミッドタウン高校の生徒が作った映像であること、そして何よりも『ボディガード』の音楽を手がけた人物が『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) と『エンドゲーム』で音楽を手がけたアラン・シルヴェストリであることで、説明がつくだろうか。

ヨーロッパを代表する楽曲が次々登場

イタリアのベネチアに向かう飛行機のシーンで流れ出す曲は、イタリア人歌手ウンベルト・トッツィの「Stella stai」(1980)。実はこの曲、プエルトリコ出身のボーカルグループ・メヌードが「Claridad」のタイトルでスペイン語のカバー曲を発表し、1980年代に全米で大ヒットを記録している。アメリカで広く知られる80年代の大ヒット曲から、作品の舞台となるイタリア発の原曲をセレクトしたようだ。

曲名の「stella」は「star」、「stai」は「stay」を意味する。歌詞では「私の星よ、私の頭上にとどまって」と、スペイン語の歌詞では「光/明瞭さよ、彼女のことを忘れさせてくれ」と、星/光に助けを請うている。MJの隣に座ることができず、9時間のフライトに耐えなければならなかったピーターの恋心を表現する選曲だ。

カテリーナ・ヴァレンテの「Bongo Cha Cha Cha」(1959) は、一行がイタリアに到着したときに流れている楽曲だ。カテリーナ・ヴァレンテはフランス生まれの歌手だが、フランス語とイタリア語を操れるバイリンガルシンガーとして活躍した。ヨーロッパ中で人気を博した50〜70年代のスターだ。

なお、カテリーナ・ヴァレンテは、日本の音楽デュオ、ザ ・ピーナッツの「恋のバカンス」(1963) をいち早くイタリア語でカバーしたことでも知られる。「Bongo Cha Cha Cha」でも、「南米について教えて」という内容が歌われており、『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』のインターナショナルな雰囲気に調和する一曲だ。

研修旅行の自由時間が始まれば、ミーナの「Amore Di Tabacco」(1964) が流れ出す。イタリア人歌手のミーナの音楽は、1960年代に日本でも人気を呼び、前述のザ ・ピーナッツもミーナの曲をカバーしている。イタリアでは79のアルバム、71のシングルでチャート入りを果たした大スター。1963年には既婚者との間に子ども持ったことがカトリック人々の怒りを買いマスメディアから追放されるが、その後堂々の復活を果たす。この一件の翌年に発表された「Amore Di Tabacco」は、明るい曲調で「あなたの愛はタバコの煙のようなもの」と若い男性をたしなめる一曲だ。

ニック・フューリーがピーター・パーカーの旅行をハイジャック。一行がチェコのプラハへ向かう道中で流れるのは、Marcela Laiferováの「Slnko」(1973)。Marcela Laiferováはチェコ・スロバキア時代のスロバキア出身の歌手だ。「Slinko」は、スロバキア語で「太陽」を意味する。「太陽は燃やすことも育てることもできる」という内容の陽気な曲だ。

一行がプラハに着く頃に流れているのはザ ・マタドールズの「Snad Jednou Ti Dám」(1966)。こちらも陽気な曲調で、「あなたの腕の中で眠りたい」と歌われている。ザ ・マタドールズも同じくチェコスロバキア出身のバンドだが、こちらはチェコはプラハの出身。チェコに向かう道中だけで、チェコ・スロバキア双方の有名歌手の曲をカバーしているのだ。『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』製作陣のヨーロッパ愛がうかがえる。

ピーターとミステリオが会話を交わすバーの場面でかすかに聞こえてくる曲は、ザ ・ジャムの「悪意という名の街 (原題: Town Called Malice)」(1982)。タイトルの通り、ミステリオに加えてバー全体に悪意が存在していることが示唆されている。1982年にイギリスでナンバーワンヒットを記録したこの曲では、「やってもないことに謝罪するな」「だって時間はないし、人生は残酷だ」「それを変えられるかどうかは自分たち次第なんだ、この悪意と呼ばれる街ではね」と歌われている。この後のミステリオの演説とリンクする内容だ。

「アイアンマンを継ぐ者」を表現したAC/DC

そして、全てのMCUファンの心に刺さったであろう『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』屈指の名シーン。トニーが残してくれたスーツをピーターが選ぶシーンで、ハッピーが「音楽は私に任せろ」と流す曲が、AC/DCの「バック・イン・ブラック」(1980) なのだ。ハッピーが長年仕えたトニーの影をピーターの姿に見出した瞬間だ。

AC/DCの音楽は、アイアンマンの代名詞とも言えるものだ。『アイアンマン2』(2010) ではAC/DCの楽曲が全面的にフィーチャーされ、同作のサントラにはAC/DCの作品が15曲収録された。『アベンジャーズ』(2012) においても、アイアンマンの登場シーンにはAC/DCの「スリルに一撃 (Shoot to Thirll)」(1980) が使用されている。

『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』で使用された「バック・イン・ブラック」は、『アイアンマン』(2008) の冒頭、米軍車両の中でも流れている。「バック・イン・ブラック」の歌詞は「私は戻ってきた、そうだ、戻ってきたんだ」と繰り返す内容なのだから、ファンには涙ものである。「霊柩車はいらない。私は決して死なないからだ」と歌われたところでシーンが切り替わるのだから確信犯。完全に泣かせにきている。

なお、トニーやハッピーとは世代が違うピーターは、AC/DCのこの曲を聞いて「ツェッペリン大好き!」と反応する。レッドツェッペリンの「移民の歌」(1970) がテーマソングに採用されているのは、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017) である。

“恋”と“バケーション”にも音楽を

ピーターとMJの恋が成就した後に流れるのは、ラモーンズの「I Wanna Be Your Boyfriend」(1976)。「僕のことが好き? 君のボーイフレンドになりたいんだ」というストレートな歌詞。ラモーンズは、DCEUの『シャザム!』(2019) でもエンディング曲に「大人になんかなるものか」(1979) が使用されたばかりだ。

『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』のエンディングで流れてくるのは、ゴーゴーズの「ヴァケーション (原題: Vacation)」(1982)。日本でスズキのCMにも採用されていたこの曲は、サビで「バケーション、ずっと欲しかった。バケーション、終わらなきゃいけない。バケーション、それは一人で過ごすこと」と歌われている。ピーターの心境の変化を表す楽曲だ。

ポストクレジットシーンの後、ニック・フューリーに化けたタロスが運転する車の車中で流れているのは、イギリスの2トーンスカバンド・The Specialsの「A Massage to You, Rudy」(1967) 。Rudy=不良に対して「面倒を起こすのはやめさない」「将来のことを考えた方がいい」と語りかける曲だ。ニック・フューリーの趣味ではないということは明らかで、本物のニック・フューリーではないということが示唆されている。『キャプテン・マーベル』でも彼の音楽趣味が明らかになっていたことも伏線になっている。

以上が『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』で流れた音楽たちだ。『スパイダーマン: スパイダーバース』(2018) では新旧ヒップホップが、『キャプテン・マーべル』(2019) では90年代ヒットソングがフィーチャーされたが、『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』ではヨーロッパの往年の名曲がメインに使用された。一方で、AC/DCの楽曲で「アイアンマンを継ぐ」というテーマに深みを与え、最後には「ピーターの恋」と「夏休み」というテーマについても音楽を活用して表現している。

音楽の持つ意味を捉えた上でもう一度鑑賞してみると、一味も二味も違った楽しみ方ができるだろう。

『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』は2019年6月28日(金)より、全国でロードショー。

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© & ™ 2019 MARVEL. ©2019 CTMG.

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