【全曲解説】『レディ・プレイヤー1』で流れた音楽まとめ【80年代ヒット曲、シャイニング、ゴジラ、バック・トゥ・ザ・フューチャー】 | VG+ (バゴプラ)

【全曲解説】『レディ・プレイヤー1』で流れた音楽まとめ【80年代ヒット曲、シャイニング、ゴジラ、バック・トゥ・ザ・フューチャー】

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『レディ・プレイヤー1』で流れた曲は?

アーネスト・クラインのSF小説『ゲームウォーズ』(2011)をスティーヴン・スピルバーグ監督が実写映画化したSF映画『レディ・プレイヤー1』(2018)。『シャイニング』(1980)や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)、『AKIRA』(1982-1990)、「ゴジラ」シリーズなど、数多くの名作SFとコラボレーションを果たし、5億8,000万ドル (約620億円) もの興行成績を叩き出した。

豪華だったのは映画や漫画とのコラボだけではない。その音楽も、80年代のヒット曲を中心に、往年のクラシックがふんだんに使用された。そして、劇中で使用された音楽は、もちろん物語とも深い繋がりを持っていた。今回は、映画『レディ・プレイヤー1』で流れた音楽に焦点をあててみよう。

『レディ・プレイヤー1』で流れた曲まとめ

冒頭で流れる「Jump」

オープニングシーンで流れるのはヴァン・ヘイレン「Jump」(1983)。軽快な音楽に似つかわしくないスラム街が映し出され、2045年を舞台にしながら1980年代の楽曲で物語は幕をあける。実はこの曲のタイトルである「ジャンプ」という言葉が『レディ・プレイヤー1』の物語のテーマの一つとなっている。

「Jump」では、「跳ぼう!」「やってみないと分からない」と歌われている。この曲の内容について、ヴァン・ヘイレンのボーカルであるエドワード・ヴァン・ヘイレンは、「ジャンプ」という行為を「誰かとつながること」と定義している。『レディ・プレイヤー1』の主人公ウェイドは最後のシーンで、オアシスの創始者であるハリデーができなかった「ジャンプ」を試みる。ストーリーのオープニングでの選曲とエンディングのシーンが繋がる演出になっているのだ。

ハリデーの紹介シーンで「Everybody Wants To Rule The World」

ウェイドがオアシスの創始者ハリデーについて紹介するシーン、ここで流れているのはTears For Fears「Everybody Wants To Rule The World」(1985)。この場面では、ハリデーがオアシスに遺した遺産、鍵を見つけたプレイヤーが支配できるというゲームのルールも説明される。

「Everybody Wants To Rule The World」の歌詞では、「それは私のデザイン」「みんながこの世界を支配したがっている」と歌われている。シンプルにこのシーンと連動しているようにも見えるが、同時に「それは私の後悔」「永遠に続くものはない」「部屋にいても光は見えない」「哀しいけどもう消えないと」という内容も歌われており、ハリデーが抱く後悔の念をも表現している。

レースの説明シーンで「I Hate Myself for Loving You」

レース前、シクサーズやノーラン・ソレントの説明が入り、デロリアンが組み上がるシーンで流れているのはジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツ「I Hate Myself for Loving You」(1988)。「あなたに夢中な自分が嫌い」「毎晩あなたの夢を見てる」と歌われており、ハリデーのゲームに夢中のウェイドの心境が表現されている。

エイチの工場で「I Wanna Be Your Lover」

ウェイドとエイチ、アルテミスの三人がエイチの工場に入っていくシーンで流れているのはプリンス「I Wanna Be Your Lover」(1979)。「私はお金もないし、あなたの周りにいるようなタイプでもない」「あなたの恋人になりたい」と歌われており、アルテミスと話して心拍数が上がるウェイドの心境を表現している。

口論シーンで「Just My Imagination (Running Away With Me)」

エイチの工場でウェイドとアルテミスが口論になるシーンでは、The Temptations「Just My Imagination (Running Away With Me)」(1971)が流れている。好きな相手との良好な関係がただの妄想だったという内容の曲で、「彼女は私のもの」「私は彼女と結婚する」「それは単なる妄想だった」と歌われている。先ほどまで「あなたの恋人になりたい」と歌われていたのに……。音楽だけ聴いているとものすごい急展開である。

ハリデー年鑑で「Faith」

ウェイドが最初にハリデー年鑑をチェックしに行く場面で流れているのはジョージ・マイケル「Faith」(1987)。「Faith」とは「信念」という意味の言葉だが、同時に「信仰心」も意味しており、ハリデーを信奉するウェイドの心情を表現している。

「Faith」は恋愛ソングだが、「あなたがプレイするゲームを全て知ってる」「なぜなら私もプレイしたから」と、ハリデーのことを知り尽くすウェイドにぴったりの歌詞が歌われている。

買い物シーンで「Stand On It」

一つ目の鍵を手に入れた後、10万コインを手に入れたウェイドは買い物を楽しむ。このシーンで流れているのはブルース・スプリングスティーン「Stand On It」(1986)。「どうしたらいいか分からなくなったら、とにかく踏ん張れ」というマッチョな内容が歌われている。ウェイドは、ゲームが詰んだかに思われた時でも諦めなかった。

ファンに囲まれるシーンで「One Way or Another」

最初に鍵を見つけてスターになったウェイド。ハリデー年鑑でファンに囲まれるシーンで流れるのはブロンディ「One Way or Another」(1979)。大ヒット曲として知られているが、「私はなんとしてでもあなたを捕まえる」「私はあなたのバスをダウンタウンまで追いかける」「手段は選ばない」と、恐ろしい内容が歌われている。熱狂的なファンに囲まれたウェイドにはぴったりの曲だ。

なお、「One Way or Another」は2013年にOne Directionがチャリティソングとしてカバーし、当時のキャメロン首相が出演したMVが話題になった。

服を選ぶシーンで「Can’t Hide Love」

アルテミスにデートに誘われたウェイドがエイチと話しながら服を選ぶシーン。ここで流れているのはEarth, Wind & Fire「Can’t Hide Love」(1976)。「私の愛が欲しいんでしょ」「愛を隠すことなんてできない」「私は隠せない」と歌われている。またもウェイドのハートに火がついたようだ。

クラブで流れる「ブルー・マンデー」

デートに出かけたウェイド、クラブで流れている曲はニュー・オーダー「ブルー・マンデー」(1983)。ニューオーダーは、この曲のヒットがきっかけになり、クラブシーンでの人気に火がついた。映画『ワンダーウーマン 1984』でも作曲家ハンス・ジマーによるアレンジ版が起用されている

ウェイドの選曲は「Stayin’ Alive」

クラブでウェイドが選んだ音楽は、ビー・ジーズ「Stayin’ Alive」(1977)。言わずと知れたディスコシーンの大ヒット曲だが、その歌詞の内容は「みんな生きてる、生きていくんだ」「どうなるか分からない人生」「誰か助けて」「ただ生き延びるんだ」と、厳しい現実が歌われている。仮想空間で踊りながら、厳しい現実を生きているウェイドとアルテミスの状況を見事に示す選曲だ。

“ゼメキスのキューブ”のシーンで「DeLorean Reveal」

ウェイドが“ゼメキスのキューブ”を使うシーン、一瞬だけだが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)の「DeLorean Reveal」が流れる。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の音楽を手がけたアラン・シルヴェストリは、『レディ・プレイヤー1』のサントラも手がけている。

“ゼメキスのキューブ”の「ゼメキス」とは、アラン・シルヴェストリの盟友で、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズを手がけたロバート・ゼメキス監督のことだ。“ゼメキスのキューブ”は時間を60秒もどすことができるアイテムで、タイムスリップをテーマにしたSF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を絡ませる小ネタを仕込んでいる。

『シャイニング』のシーンであのテーマ

一同がスタンリー・キューブリック監督の映画『シャイニング』の世界に入っていくシーン、おなじみの『シャイニング』のテーマが流れている。なお、2019年に公開された『シャイニング』の続編『ドクター・スリープ』では、アップデートされた『シャイニング』のテーマが使用されている。

『レディ・プレイヤー1』では原作者のスティーヴン・キングが映画版『シャイニング』を嫌っていたことに言及されているが、『ドクター・スリープ』はもキングも納得の一作に仕上がっている。

パーティルームで「真夜中に星々と君と」

ゾンビたちが踊るパーティルームに着いた一同、ここで流れているのはアル・ボウリー「真夜中に星々と君と」(1932)。映画『シャイニング』でも続編の『ドクター・スリープ』でもエンディング曲に使用された一曲だ。「何があっても君のことを忘れない」という内容が歌われており、ハリデーの想いとリンクしている。

突入シーンで「We’re Not Gonna Take It」

アルテミスがシールドを破り、プレイヤーたちがなだれ込むシーンで流れているのはトゥイステッド・シスター「We’re Not Gonna Take It」(1984)。「私たちはやらないよ」「その手には乗らない」「あんたは私たちのことを何も知らない」「私たちは戦う」と、IOIの誘惑と策略を拒否したプレイヤー達の声が表現されている。このタイトルは、「ゲームに勝つのではない」という勝ち負けから外れるオアシスの攻略法にもつながる表現だ。

メカゴジラのシーンで「Looking for a Truck」

メカゴジラの登場シーンでは、伊福部昭が作曲した「ゴジラのテーマ」に似た曲が流れている。この曲は、アラン・シルヴェストリが『レディ・プレイヤー1』用に「ゴジラのテーマ」を弾き直した一曲だ。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「アベンジャーズ」のテーマ曲を手掛けたシルヴェストリの貴重なアレンジが聴ける。

エンドクレジットで「You Make My Dreams」

エンドクレジットで最初に流れるのはダリル・ホール&ジョン・オーツ「ユー・メイク・マイ・ドリームス」(1980)。「あなたが私の夢を叶える」「ずっと待っていた」「私はあなたを待っていた」と歌われている。重要なラインは「悪い夢で叫び声をあげる夜、夢を追う人といれば笑い飛ばせる」。仲間達と壮大なゲームをクリアーする『レディ・プレイヤー1』にふさわしい一曲だ。

おまけ「Take On Me」

劇中歌としては登場しないが、エイチの工場でウェイドとアルテミスが会話するシーンでは、ハリデーが好きなPVとしてa-ha「テイク・オン・ミー」(1985)が挙げられている。この曲のPVは漫画で描かれたキャラクターが実写化し、実写の人物が漫画の中に入っていくという演出が取り入れられている。確かに、ハリデーが好みそうな演出だ。

以上が、映画『レディ・プレイヤー1』に登場した全ての楽曲だ。80年代のヒットソングをふんだんに起用しながら、徹底的に映画のストーリーとリンクした選曲を行なっていることが分かる。音楽の意味を理解した上で再度鑑賞すると、少し見え方が変わるかもしれない。

『レディ・プレイヤー1』からは、劇中歌が収められた「ソングアルバム」と、アラン・シルヴェストリが作曲したサウンドトラックがユニバーサル ミュージックから発売中。

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映画『レディ・プレイヤー1』は4K ULTRA HD&ブルーレイセットが発売中。

VG+編集部

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