【全曲解説】映画『ブライトバーン』で流れた音楽まとめ エンディング曲は?【ネタバレ】 | VG+ (バゴプラ)

【全曲解説】映画『ブライトバーン』で流れた音楽まとめ エンディング曲は?【ネタバレ】

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『ブライトバーン/恐怖の拡散者』公開!

「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズのジェームズ・ガンが製作を手がけた映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』が2019年11月15日(金) より日本でも公開された。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー : リミックス』(2017) でエンディング曲「ガーディアンズ・インフェルノ」のMVを手がけたデヴィッド・ヤロヴェスキーによる長編初監督作品だ。

『ブライトバーン/恐怖の拡散者』は、スーパーマンの“地元”としても知られるカンザスを舞台に、スーパーパワーを持つ少年がその能力を開花させ、暴走させていく物語。約90分に凝縮された物語は衝撃の展開の連続で、世界中の人々を驚嘆させている。

『ブライトバーン/恐怖の拡散者』を手がけたデヴィッド・ヤロヴェスキー監督は、ジェームズ・ガンも認める才能の持ち主。やはり、ジェームズ・ガン監督の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズ同様、音楽の使い方にも随所でこだわりが見られた。今回は、『ブライトバーン/恐怖の拡散者』で使用された楽曲を全曲チェックしてみよう。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』の内容に関するネタバレを含みます。

ブランドン到着時に「Fireflies In a Steel Mill」

 

物語の冒頭、子作りに励もうとするトーリとカイルがムードを作ろうとかけている曲は、LAのインディバンド The Electedの「Fireflies In a Steel Mill」(2006)。ムーディな曲だが、ブラントンを運んできた宇宙船が不時着する直前には「if you take it all back (もしあなたが全てを奪い返すなら)」と繰り返し歌われている。この部分の歌詞だけが鮮明に聞こえており、後にブラントンが「take it (世界を奪え)」という声に蝕まれていく未来が示唆されている。もしくは、この曲のこの歌詞こそがブラントンを呼んだのか……。

なお、「Fireflies In a Steel Mill」はThe Electedが2006年1月に発表したアルバム『Sun, Sun, Sun』に収録されている。『ブライトバーン』の冒頭シーンはブランドンが0歳の時点=2006年に設定されており、時代設定に齟齬が生まれない選曲になっている。

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かくれんぼシーンで「In Here」

ブランドンの母となったトーリが、彼とかくれんぼをしているシーンでは、フィラデルフィアのインディバンド Sixteen Jackiesの「In Here」(2007) が流れている。「They can’t take it from you (彼らは君からそれを奪えない)」と歌われており、トーリとブランドンの幸せな時間が表現されている。なお、Sixteen Jackiesはアメリカでも非常にマイナーなバンドで、実に渋い選曲となっている。

なお、「In Here」が収録されているSixteen Jackiesのアルバムのタイトルが『Movie Was Bad (映画はサイアクだった) 』なのは、偶然か、それともヤロヴェスキー監督なりのブラックジョークだろうか。

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ブランドンが目覚める夜に「Better the Silence」

ブランドンの力が目覚める夜、トーリは趣味の絵を描いている。この時ラジオから流れている曲はJon Dix&Beck Goldsmithの「Better the Silence」(2018)。この曲では「ボートを戻して、家に帰るから」「私を起こして、長い間夢を見ていた」と歌われており、この世界はブランドンが属している世界ではないということが示唆されている。「あなたがくれた愛情よりも良いもの」というフレーズが哀しい……。

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トーリが口ずさむ「Three Little Birds」

トーリが我に返ったブランドンをベッドで寝かしつける時に口ずさんでいる曲はBob Marley&The Wailersの「Three Little Birds」(1977)「何も心配ない、すべてうまくいく」と繰り返す歌詞は、現代ではあまり聞かれなくなった真っ直ぐなポジティブさと強さを兼ね備えている。ブランドンに対するトーリの真っ直ぐな愛情が表現されているとも言える。

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平和なシーンの「Our World」

トーリとブランドンが仲睦まじくアーケードゲームに興じるシーンで流れ出すのは、Sonny Clevelandの「Our World」(2015)。こちらもインディーバンドからの選曲だ。ストレートに「ここは私たちの世界」と歌われており、愛情と喜びに溢れた二人の世界が表現されている。

ノートパソコンから流れる「Send Her To Me」

ブランドンがケイトリンの部屋に侵入する場面では、一転してWayne Chanceのクラシック「Send Her To Me」(1964) が使用されている。ケイトリンのノートパソコンから流れるこの曲はもちろんブランドンからケイトリンへのメッセージとなっている。一度目の歌詞は「もし真実の愛を探している人を知っていたら私に紹介して」と、二度目の歌詞は「もし孤独な涙を流している人がいたら私に紹介して」と歌われている。

狙われるエリカと「Heaven」

ケイトリンの母エリカがダイナーでレジの精算を行うシーンでは、The Paper Chain Gangの「Heaven」(2017) が流れている。ブランドンがエリカの命を狙っているこのシーンに似つかわしくない穏やかな楽曲だ。だが、「あなたが私を天国に連れていく」という歌詞は、この後ブランドンに殺されるエリカへのメッセージか……。

『ブライトバーン』の物語はここから緊迫の場面の連続。意識的に邪魔者を排除するようになったブランドンの凶行を重厚なサウンドが支える。『ブライトバーン/恐怖の拡散者』で音楽を担当したのは、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズにも参加しているティモシー・ウィリアムズだ。そして、物語がどんどんエスカレートした末に、エンディングで流れてくるのがあの曲だ。

エンディングテーマはビリー・アイリッシュの「bad guy」

映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』のエンディングで流れ出すのは、同作のテーマ曲でもあるビリー・アイリッシュ (Billie Eilish) の「bad guy」(2019) 。『ブライトバーン』の米国公開から2ヶ月前の2019年3月にリリースされたばかりで、ビリー・アイリッシュが2000年以降に生まれたアーティストとして初めて全米チャート1位を獲得した楽曲だ。

ブランドンの「本当は良いことがしたい」という母トーリへの言葉が受け入れられることはなく、彼は遂に完全な悪の道に堕ちる。「私は私のしたいことを私のしたい時にする」「私は君のママを悲しませるタイプの悪」「私は悪い奴」と繰り返すビリー・アイリッシュの「bad guy」は、今や悪に染まったブランドンの心情と同期する。

「あなたに役割を演じさせてあげよう、あなたのペットになる」という歌詞は、これまでの家族の愛の物語を完全に覆すラインだ。一方で、「私の母は私と歌を歌うのが好き、でもこの曲は歌わない」とは、幼少の頃の母との思い出がブランドンの中に残っている証拠。作中では、ブランドンが凶行に走る以前の母トーリとのシーンで多くの音楽が使われていた。幼少の頃の母との思い出を音楽と結びつけるというやり方は、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズのジェームズ・ガン監督の手法を想起させる。

「bad guy」の終盤の「私の良いところは“悪い”ということだけ」という歌詞は、「本当は良いことがしたい」という希望が破れたことの裏返しであり、「あなたが孤独で嬉しい」という歌詞はケイトリンの部屋でブランドンが流した「Send Her To Me」の歌詞「もし孤独な涙を流している人がいたら私に紹介して」と求めた繋がりが絶たれたことへの裏返しでもある。

最後に「私は悪い奴だ、私は悪い奴だ」と繰り返して終わる「bad guy」の歌詞は、孤独になったブランドンがそれを自分に言い聞かせているようにも聞こえる。

このように、『ブライトバーン/恐怖の拡散者』では、音楽が物語とリンクする形で活用されていた。非常に芸の細かい選曲は、もちろんデヴィッド・ヤロヴェスキーの手腕に他ならないが、そのこだわりぶりには、ジェームズ・ガンの影響も感じさせる。多くを語らないブランドン少年だが、楽曲が彼を代弁していると考えれば、より深い世界観が楽しめるだろう。

『ブライトバーン/恐怖の拡散者』のサウンドトラックは、Sony Classicalから発売中。

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『ブライトバーン/恐怖の拡散者』でブラントン少年を演じたジャクソン・A・ダンを含む俳優陣の詳細は、以下の記事に詳しい。

ブラントンを演じたジャクソン・A・ダンが出演、ジェームズ・ガンが製作総指揮に名を連ね、『ブライトバーン』同様、音楽が重要な意味を持っていた『アベンジャーズ/エンドゲーム 』(2019) の音楽解説は以下の記事から。

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