【全曲解説】『スパイダーマン: ホームカミング』で流れた音楽まとめ【ネタバレ】 | VG+ (バゴプラ)

【全曲解説】『スパイダーマン: ホームカミング』で流れた音楽まとめ【ネタバレ】

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『スパイダーマン: ホームカミング』の音楽に注目

2017年にMCUの第16作品目として公開された『スパイダーマン: ホームカミング』。ソニーが映画作品を製作してきたスパイダーマンが遂にマーベル・シネマティック・ユニバースに合流した記念すべき作品として、多くのファンに愛されている。

『スパイダーマン: ホームカミング』では、主人公のピーター・パーカーを新たにトム・ホランドが演じ、ジョン・ワッツ監督が指揮をとった。2019年には続編の『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』が公開され、2021年公開予定のMCU「スパイダーマン」第3作目にも注目が集まっている。

MCU作品で重要になるのは、劇中に流れる音楽だ。『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』でも劇中の音楽に様々なメッセージが込められていた。詳細は以下の記事に詳しい。

今回は、『スパイダーマン: ホームカミング』で流れた曲に注目してみよう。記念すべきMCU第一弾の「スパイダーマン」映画には、音楽にも多くの仕掛けがあったのだ。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『スパイダーマン: ホームカミング』の内容に関するネタバレを含みます。

映画『スパイダーマン: ホームカミング』で流れた音楽まとめ

冒頭で「Can’t You Hear Me Knocking」

エイドリアン・トゥームスがチタウリの残骸を使ったビジネスを思いついた8年後、武器を製造し商売を繁盛させているトゥームスらの姿が映し出される。ここで流れているのはローリング・ストーンズの「Can’t You Hear Me Knocking」(1971)だ。

労働者階級を立場を代弁してきたローリング・ストーンズは、中小企業を運営するトゥームスの声を代弁している。「私がノックしている音が聞こえるか」と歌われたところで場面は移り変わるが、「Can’t You Hear Me Knocking」では終始「助けてくれ」「見て見ぬ振りをするな」という内容の歌詞が歌われている。政府にも大企業 (スタークインダストリー) にも切り捨てられながら、なんとかビジネスを回すトゥームスの心情が読み取れる。

『スパイダーマン: ホームカミング』では、ヴァルチャーことトゥームスと、アイアンマンことトニー・スタークの対比が物語の重要な要素となる。物語の冒頭で労働者階級の曲を歌うローリング・ストーンズを登場させることで、トゥームスの立場が庶民側にあることを示している。

オープニングタイトルで「Theme (From “Spider Man”)」

オープニングタイトルと共に流れるのはオーケストラ演奏による「Theme (From “Spider Man”)」。1967年にロバート・ハリスとポール・フランシス・ウェブスターによって作曲されテレビアニメシリーズで使用されていたおなじみのテーマ曲を復活させている。『スパイダーマン: ホームカミング』がマーベルの正当な「スパイダーマン」の系譜にあることを示しながら、新たな時代の幕開けを感じさせるダイナミックな一曲となっている。

クイーンズで「The Underdog」

スタークインダストリーでの“インターンシップ”を終えたピーター・パーカーは地元に戻るが、ハッピーに自分の状況を知らせ続ける。この時流れている曲はスプーンの「The Underdog」(2007)だ。「負け犬」を意味するこのタイトル通り、アベンジャーズとして活動できない鬱屈した日々を過ごすピーター・パーカーの心情を表現している。「仲介人 (middleman) はもういいよ」と、トニーとピーターの間に入るハッピーを揶揄する歌詞も歌われている。

デルマーのお店で「A Buena Vista」

クイーンズで営業しているデルマーのお店でかかっている曲はSoneros De Verdadの「A Buena Vista」。「私をブエナビスタへ連れて行って」と歌われており、スペイン語を話すデルマーがキューバ出身である可能性も示唆されている。このシーンではピーター・パーカーの叔母であるメイがイタリア系であることにも触れられているが、ニューヨークは多様な人々が住む街なのだ。

ヒーロー活動中に「Blitzkrieg Bop」

「Hey ho, let’s go!」の掛け声から始まるラモーンズの「Blitzkrieg Bop」(1976) は、ピーターがスパイダーマンに変身して街で人助けをする際に流れている。その歌詞は「さぁ、やろう、電撃戦だ」と歌われているこの曲は、『スパイダーマン: ホームカミング』のテーマ曲にもなっている。ラモーンズにとってもデビューシングルの曲であり、スパイダーマンの新たな“デビュー”を飾るにふさわしい曲になっている。

タイ料理店で「Moon over Bangkok」

ピーターがメイおばさんとタイ料理を食べるシーンで流れているのはMatt Hirtの「Moon over Bangkok」(2017)。インストゥルメンタルの曲で、そのタイトルの通り、このレストランがタイレストランであることを示している。

パーティで「Maximum Effort」と「Rise to the Top」

リズのホームパーティでDJを務めるフラッシュが流している曲はFlipboisの「Maximum Effort」(2017)。後にドラマシリーズ『iゾンビ』(2015-2019)でも使用されたアゲアゲな一曲だ。ピーターがスパイダーマンのスーツに着替えるシーンでは、パーティ会場でラッパーKiL the Giantの「Rise to the Top」(2018)が流れている。フラッシュは意外とセンスが良いのかもしれない。

ピーターの携帯から「Yodeler’s Dance」

スパイダーマンが武器の取引に出くわすシーン、ピーターの携帯から鳴り出すのはJerry Kimbrough&Randy Hartによる「Yodeler’s Dance」(2017)。裏声を織り交ぜながら歌う“ヨーデル”の歌声は、皆さんの耳にも強く印象に残っているだろう。

テレビから流れる「Oh Yeah」

スパイダーマンが悪者を追いかけるシーン、民家の庭をドタバタと駆け抜けていくのだが、ある家のプールサイドでは1986年のコメディ映画『フェリスはある朝突然に』が流れている。この時に流れている曲が、同作で使用されたYelloの「Oh Yeah」(1985)だ。

スパイダーマンが人の家の庭を駆け抜けていくこのシーンは、『フェリスはある朝突然に』のワンシーンへのオマージュだ。『スパイダーマン: ホームカミング』のジョン・ワッツ監督は、『フェリスはある朝突然に』や『ブレックファスト・クラブ』(1985)の監督として知られ、「ホーム・アローン」シリーズの脚本も手がけたジョン・ヒューズの大ファンであることを公言している。

バスで流れる「Going Up The Country」

学力大会が開かれるワシントンD.C.に向かうバスのシーンで流れているのはキャンド・ヒートの「Going Up The Country」(1968)。約50年前に世界中で大ヒットを記録したこの楽曲では「この街を離れるよ」「今日出発するんだ」「新しいゲームを楽しみたいんだ」と歌われており、クイーンズを離れるピーターの状況が示されている。

ワシントンD.C.からの帰還シーンで「Cineramascope」

生徒たちがワシントンD.C.から帰還したシーンで流れているのはアメリカのバンド・ギャラクティックの「Cineramascope」(2010)。インストゥルメンタルの楽曲だが、中心メンバーのジェフ・レインズ (ギター) とロバート・マーキュリオ (ベース) がワシントンD.C.育ちという細かいポイントも見逃してはいけない。

尋問シーンで「La Consequencia」

ドナルド・グローヴァー演じるアーロン・デイヴィスをスパイダーマンが尋問するシーン。ここで流れているのはSWJ Mafiaの「La Consequencia」(2017)。アーロン・デイヴィスは『スパイダーマン: スパイダーバース』(2019)の主人公でもあるマイルス・モラレスの叔父の名前だが、『スパイダーマン: スパイダーバース』でも90年代ヒップホップの空気感を作品にもたらしている。

『スパイダーマン: スパイダーバース』で流れた“アーロン叔父さんのプレイリスト”は以下の記事に詳しい。

メイおばさんと「Save It for Later」

リズとホームカミングを過ごすことになったピーターは、メイおばさんの助けを借りてオシャレにキメる。ここで流れている曲はThe English Beatの「Save It for Later」(1982) だ。ティーネイジャーから20代に入っていく人物の心情を描いた曲であり、大人の階段をのぼるピーターの状況を表している。

車の中で「Low Spark of High Heeled Boys」

ピーターとリズを送るトゥームスの車で流れているのはトラフィックの「Low Spark of High Heeled Boys」(1971)。UKバンドのトラフィックを代表する曲の一つだ。非常に抽象的な歌詞が並ぶこの曲は、「スーツを着た男が新しい車をくれたが、今日その男は死んでしまった」などと歌われている。恋をした相手の父親が悪党だと知り混乱するピーターの心情を表現しているようでもある。

パーティ会場で「Space Age Love Song」

パーティ会場で流れているのはフロック・オブ・シーガルズの「Space Age Love Song」(1982)。「あなたの目を見て、私は笑顔になる。少しの間、私は恋をしていた」というシンプルなリリックが綴られている。そう、ポイントは「少しの間、恋をしていた (For a little while, I was falling in love)」と過去形で歌われている点だ。

ピーターは、リズとの関係を少しの間の恋だったと諦め、ヒーローとして果たすべき義務に身を投じるのだ。

ここからは怒涛の展開。オリジナル曲がクライマックスを盛り上げる。『スパイダーマン: ホームカミング』の音楽を手がけたのはマイケル・ジアッチーノ。ドラマ『LOST』(2004-2010)や映画「ジュラシック・ワールド」シリーズの音楽を手がけ、『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009)では第82回アカデミー賞作曲賞を受賞した人物だ。

エンドクレジットでは再びテーマ曲のラモーンズ「Blitzkrieg Bop」が流れる。『スパイダーマン: ホームカミング』の音楽は、全体を通して70年代、80年代のUK・USの楽曲を中心に構成されている。続編の『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』ではこの雰囲気がどのように転換されたのか、以下の記事から確認してほしい。

映画で使用された音楽についてより深く知ることで、更に物語を楽しむことができる。だから映画は面白い。

『スパイダーマン: ホーム・カミング』のサウンドトラックはSMJから発売中。

映画『スパイダーマン: ホーム・カミング』『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』は、ブルーレイ・DVD・MovieNEX・デジタル配信で発売中。

VG+編集部

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