重厚なドラマを見せる『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
Disney+オリジナルのMCUドラマとして『ワンダヴィジョン』に続いて配信を開始した『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』。シットコム風の演出で製作された『ワンダヴィジョン』とは打って変わり、重厚なドラマを展開する『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は、過去にトラウマを抱えるバッキーと、アメリカで黒人ヒーローとして生きていくサムの苦悩と葛藤に焦点を当てたシリーズになっている。
第2話のラストでは遂にあの人が登場。今回はこの人物が歩んできたこれまでの経緯について解説していく。
以下の内容は、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第2話までのMCU作品の内容に関するネタバレを含みます。
MCU二度目の登場を果たしたジモ
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第2話のラストでは、歴史の闇に葬られた超人兵士の真実に迫るため、バッキーとサムはヘルムート・ジモに会いにいくことを決意する。そして、このシーンで流れ出す音楽は音楽はモーツァルトの「レクイエム 涙の日」。哀しげな姿を見せるジモにぴったりの選曲だ。では、ジモはなぜここに拘留されているのだろうか。これまでの経緯を振り返ってみよう。
ヘルムート・ジモがMCUに初登場を果たしたのは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) でのこと。ジモは、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015) におけるソコヴィアでのアベンジャーズとウルトロンの戦いに巻き込まれる形で、父、妻と息子を失い、ヒーロー達を憎むようになった。ソコヴィアの特殊部隊で大佐 (=バロン) を務めていたジモは、単独でアベンジャーズ同士を仲違いさせる計画を実行する。
ジモは、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースの親友で、かつて“ウィンター・ソルジャー”としてヒドラのために働いていたバッキーを再洗脳し、再びウィンター・ソルジャーとして破壊工作を実行させる。スティーブはバッキーの側に付くが、アイアンマンことトニー・スタークはウィンター・ソルジャーに両親を殺されたことを知り、アベンジャーズは真っ二つに分裂してしまう。
ブラックパンサーことティ・チャラに自害を食い止められたジモは、厳重な警備の施設に収容されるが、『ブラックパンサー』(2018) でも活躍したエヴェレット・ロスに作戦が失敗に終わったと指摘されると「失敗かな?」と意味深な返事をしている。ジモの言う通り、これでアベンジャーズは分裂し。そして、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) では、地球に危機が迫る中、トニーとスティーブの軋轢が致命的な出遅れを生む。
その結果として、サノスが“指パッチン”に成功し、2024年のMCU世界の社会的分断が生まれるきっかけになったのだから、ジモは「アベンジャーズを殺し合わせる」という当初の目的以上の余波を世界に与えてしまったことになる。
信念のヴィラン、ジモ
なお、ジモは『シビル・ウォー』で、バッキー以外に冷凍保存されているウィンター・ソルジャーを復活させることを企んでいたかに思われていたが、実はトニーとスティーブをおびき寄せることが目的で、世界の脅威になりうる残されたウィンター・ソルジャー達はきっちり殺してしまっている。過激ではあるが、自分なりの信念に基づいて行動してきたヴィランなのだ。
“亡くした家族のための復讐”が結果的に“世界の分断”を生み出してしまったと、ジモがそう考えているのであれば、その罪滅ぼしとして、ジモがサムとバッキーの仲間に加わる可能性は十分にあるだろう。それに故チャドウィック・ボーズマンが演じたティ・チャラが、ジモに告げた言葉は「生きて罪を償え」だった。これは、死んで復讐の連鎖を終わらせようとするジモに対し、ティ・チャラが「終わらせること」ではなく「積極的に行動すること」を求めたと見ることもできる。
そして、そのテーマはスティーブの盾を政府に譲り渡し、不本意な事態を招いたサムの行動にも直結するテーマではないだろうか。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第2話の最後に登場したジモは、「レクイエム 涙の日」の音楽をバックに、今も何かについて考え続けているように見える。“信念のヴィラン”であるジモは、自身がきっかけになって生まれた分断の時代をどのように生きるのだろうか。
ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』はDisney+で独占配信中。
ジモ以外のヴィラン候補については、こちらの記事に詳しい。
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第2話のあらすじ&ネタバレ解説はこちらの記事から。
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第3話のあらすじ&ネタバレ解説はこちらの記事から。