『ウエストワールド』は『LOST』を超えられるか——J・J・エイブラムスが次世代に託した“パズルTV” | VG+ (バゴプラ)

『ウエストワールド』は『LOST』を超えられるか——J・J・エイブラムスが次世代に託した“パズルTV”

via: John P. Johnson/HBO ©︎ 2018 Home Box Office, Inc.

大人気SFドラマ『ウエストワールド』

いよいよシーズン2に突入

大人気SFドラマ『ウエストワールド』(2016-)のシーズン2が、2018年11月24日(土)よりAmazonプライムビデオでも配信開始となった。シーズン1では、ドラマの定石を覆す衝撃のラストを迎えた。シーズン2では日本の江戸時代を舞台にした“ショーグンワールド”も登場し、自由と自我を捜し求める“ホスト”の旅路は更なる盛り上がりを見せる。

J・J・エイブラムス製作総指揮

『ウエストワールド』は、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)のJ・J・エイブラムス監督が製作総指揮を務める。現場を取り仕切るショーランナーと脚本を担うのは、『ダークナイト』(2008)、『インターステラー』(2014)で兄のクリストファー・ノーラン監督と共に脚本を手がけたジョナサン・ノーランと、ジョナサンの妻で『バーン・ノーティス 元スパイの逆襲』(2007-2013)の脚本で知られるリサ・ジョイだ。

高い評価を受けている重厚なストーリー

『ウエストワールド』では、人間が“ゲスト”として欲望のままに行動できるテーマパーク、“ウエストワールド”を舞台に、そこに住む“ホスト”と呼ばれるアンドロイドの愛と闘争の物語が描かれる。ホストと向き合う人間の選択や、ホスト自身の葛藤と自問を通して、“人間らしさ”を問うストーリーは、各方面から賞賛を集めている。今後訪れるであろうロボットやAIとの共存の時代を考えるにはピッタリの作品だ。

人呼んで“パズルTV”

インタビュアーの褒め言葉に二人は…

そんな『ウエストワールド』が、本国アメリカでは「パズルTV」と呼ばれていることをご存知だろうか。BFIのインタビューでは、インタビュアーに「(ウエストワールドは、) “パズルTV”という新たなジャンルを作り出した」と切り出され、ジョナサン・ノーランとリサ・ジョイの二人は照れ笑いを見せている。

物語を構成する“ノーラン節”

ホストと人間が混在する『ウエストワールド』の世界では、誰がアンドロイドで誰が人間なのか、そして、その場面がいつの時点の話なのか、敢えて視聴者を混乱させるようなトリックで溢れている。ホストたちは老いることがない一方で、その記憶は頻繁にリセットされる。観ている側が疑心暗鬼に陥りそうにすらなる。ここでも『メメント』(2000)や『プレステージ』(2006)で発揮されていた、“ノーラン節”が利いているのだ。

散りばめられた“パズル”を解くヒント

そんな時に道しるべとなるのが、登場人物達が放つ印象的なフレーズだ。「神を演じれば悪魔とも知り合う」(第2話)、「選択すれば、選択が自分のものではなかったことに気づいてしまう。選択がなかったことを喜べ」(第4話)、「偉大な能力は神から贈られるのではない。人間の精神から来るのだ」(第10話)。善悪の判断や、自我とは何かといった疑問に対し、時に理論的に、時に神学的な視座からヒントとなる言葉を投げかけてくれる。少しずつ、物語だけでなく、視聴者の心の中にも、“パズル”が組み上がっていくのだ。
このような物語の構成と、情緒を司る部分は、ジョナサンとリサの間で見事に役割分担がなされている。これについての詳細は、以下の記事をご一読いただきたい。

J・J・エイブラムスが託した“パズルTV”

かつては、あのドラマの代名詞

実は、“パズルTV”という造語自体は、伝説的SFドラマ『LOST』(2004-2010)にも使われていた言葉だ。全6シーズンをかけ、ジグソーパズルのように組み上げられていく物語は、社会現象になるほどの話題を集めた。そして、当時この『LOST』の監督・脚本を手がけていたのが、『ウエストワールド』で製作総指揮を手がけるJ・J・エイブラムスだったのだ。

『ウエストワールド』ドラマ化の仕掛け人

『ウエストワールド』は、「ジュラシックパーク」シリーズの原作小説を手がけたマイケル・クライトンによる1973年の同名映画をドラマ化した作品だ。そして、この同名映画をドラマで作り直そうと考案した張本人が、J・J・エイブラムスである。実に20年も前にマイケル・クライトンとこの映画について議論を交わしていたというエイブラムス。この作品のドラマ化をジョナサン・ノーランに持ち掛け、『LOST』以来のセンセーションを巻き起こす作品を産み落としたのだ。

『ウエストワールド』が行き着く先は?

J・J・エイブラムスからこの作品を託されたジョナサン・ノーランは、このドラマを「永遠に作り続けたいとは思わない」と話す。旧来のドラマシリーズのように、できる限り継続させようとするような番組作りではなく、一本の映画を作るように製作に取り組んでいるというのだ。これに呼応するように、リサ・ジョイはこう述べている。

このドラマは“傲慢さ”に対する警告の物語でもあるの。ライターとしては、“テレビの神様”から天罰を受けたくはないわ。安定した作品にしたいと思う時もあるけどね

by リサ・ジョイ

『ウエストワールド』という作品では、アンドロイドという新たな命を生み出せるようになり、“神”となった人間の傲慢さに警鐘を鳴らしている。圧倒的な人気と評価を受けて傲慢になり、“テレビの神様”を怒らせては本末転倒ということだ。
ショーランナーを務める二人の引き締まった態度は、ファンにはある種の安心感を与えてくれる。人気シリーズが陥りがちな“蛇足”や“遅延行為”の心配は、この二人の前には不要なようだ。

ジョナサン・ノーランとリサ・ジョイの二人が作るこの作品は、J・J・エイブラムスが打ち立てた『LOST』という金字塔を超えていくのだろうか。エイブラムスが次世代のクリエイターに託した『ウエストワールド』という作品は、どのようなフィナーレを迎え、歴史にその名を刻むのか、しばらく目が離せそうにない。

『ウエストワールド』シーズン2は、Amazonプライムビデオで2018年11月24日(土)から配信開始。DVD&Blu-rayは12月5日(水)に発売されている。

Source
BFI YouTube / The Sydney Morning Herald

VG+編集部

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