『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』にアヨ登場
Disney+オリジナルのMCUドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は、シットコムのテイストを取り入れて制作された前作『ワンダヴィジョン』から一転、全6話で構成される骨太なストーリーで人気を集めている。
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』の魅力は、新キャラだけでなく、過去のMCUから再登場する意外な面々だ。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) に登場したジモとシャロン、そしてワカンダの国王親衛隊ドーラ・ミラージュのメンバーであるアヨまで登場。アヨは『シビル・ウォー』登場後、もちろん『ブラックパンサー』(2018) にも登場している。そして、『ブラックパンサー』では、アヨに関するある物語が消された過去がある。
以下の内容は、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第3話までの内容に関するネタバレを含みます。
アヨの消された過去とは
映画『ブラックパンサー』から消されたアヨの消された物語とは、ドーラ・ミラージュ隊長オコエとのロマンスだ。コミックシリーズの『ワールド・オブ・ワカンダ (原題: World of Wakanda)』(2017) では、アヨとオコエのロマンスが描かれ、二人がクィアであることが示された。映画『ブラックパンサー』の公開前には、映画版にもストーリー内に同コミックシリーズの設定が取り入れられているという報道がなされていた。
だが、マーベル側はコミック『ワールド・オブ・ワカンダ』は映画の題材になっていないと発表し、実際に映画内にはそのような描写は存在しなかった。ところが、映画『ブラックパンサー』の共同脚本家の一人であるジョー・ロバート・コールは、元々の脚本にはコミック版におけるアヨとオコエの関係を想起させるような、親しげにやり取りを行う場面が存在しており、後に削除されたと米Screen Crushの取材に対して認めている。
この一件には、“削除されたクィアネス”として批判が起きた。MCU映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017) に登場したヴァルキリーは、公式にはバイセクシャルという設定ながらも、作中ではその事実が語られなかった。ルーカスフィルムでは2019年末に公開された映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』まで、ディズニー/ピクサー映画では、2020年に公開された映画『2分の1の魔法』まで、セクシャルマイノリティのキャラクターが明示的に描かれることはなく、大作映画内でクィアの表象が“避けられてきた”歴史があるからだ。
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』にかかる期待
こうした経緯があり、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でアヨが再登場を果たしたことで、一度はなかったことになったアヨのクィアネスが改めて描かれるのではないかという期待が持ち上がっている。
特に『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では、異性愛を前提としたロマンスが描写されるシーンがほとんど登場しない (バッキーが日本食屋でデートする場面くらいだろう)。ロマンスに関する描写を通してでなくとも、異性愛者の価値観を中心とした展開に終止符を打ってくれる可能性はあるだろう。
なお、2021年12月公開を予定しているMCU映画『エターナルズ』には主要キャラクターにクィアの人物が登場することが明らかになっており、フェーズ4に入ったMCUは、変化の時期を迎えている。フェーズ3では初の黒人主人公と初の女性主人公を誕生させたMCU。確かな前進を見せてくれることに期待しよう。
MCUドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』はDisney+で独占配信中。
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第4話ラストから読み取る今後の展開については、こちらの記事を。
第5話「真実」で生まれた『ブラックパンサー』との繋がりについてはこちらの記事で。
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第3話のネタバレ解説はこちらから。
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第4話のネタバレ解説はこちらから。
再登場を果たしたシャロンの謎はこちらの記事で解説。
第4話のシャロンの活躍で見えた可能性についてはこちらの記事で。
ジモについての考察はこちらから。