ドラマ『アソーカ』配信中
「スター・ウォーズ」シリーズの最新作ドラマ『アソーカ』は、2023年8月より配信を開始。全8話で綴られるエピソードも第6話まで配信を終えた。アニメ『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』(2008-2020)や『スター・ウォーズ 反乱者たち』(2015-2018) に登場したキャラクターたちが続々実写化されるファンには楽しいシリーズに仕上がっている。
今回注目したいのは、第6話で登場した新キャラについて。『アソーカ』では過去作との結びつきに目が行きがちだが、当該キャラクターについては一味違う趣がある。今回は背あのキャラたちの背景を考察していこう。
以下の内容は、ドラマ『アソーカ』第6話の内容に関するネタバレを含みます。
グレート・マザーズの背景は?
『アソーカ』第6話で新たに登場したのは、モーガン・エルズベスが「グレート・マザー(ズ)」と呼ぶナイトシスターの祖先。モーガン自身は『クローン・ウォーズ』でドゥークー伯爵に滅ぼされた惑星ダソミアのナイトシスターの生き残りであり、別の銀河からのグレート・マザーの導きによってこのペリディアという惑星に辿り着いたのだった。
ナイトシスターの種族であるダソミリアンのルーツは別の銀河にあったという展開だ。ダークサイドのエネルギーと通じてはいるもののフォースとは異なる魔術を操るナイトシスターの力に、「別の世界から来た」という設定を付け加えることで、一定の説得力を持たせることに成功している。
『クローン・ウォーズ』では、ナイトシスターの指導者は「マザー(母)」という称号を持っていたが、『アソーカ』に登場した祖先は「グレート・マザー(偉大な母))」の敬称で呼ばれている。そして注目したいのは、第6話の中では登場しなかったグレート・マザーズの3人の名前である。
ギリシャ神話との繋がり
クレジットによると、グレート・マザーたちの名前はそれぞれ“アクトゥロポー”、“クロソー”、“ラキーシス”となっている。これらはギリシャ神話における“運命の三女神”とほぼ名前だ。ギリシャ神話では、クロソーが運命の糸を紡ぎ出し、ラケシスがその長さを測り、アトロポスがその糸を切り取るとされている。
日本語表記だと分かりにくいが、英語表記では「Klothow」と「Clotho」、「Aktropaw」と「Atropos」、「Lakesis」と「Lachesis」(いずれも前者がキャラクターの名前、後者がギリシャ神話の表記)なっており、意図的にギリシャ神話の三女神の名前をずらして命名していることが分かる。
「スター・ウォーズ」世界では、アミダラ/阿弥陀羅など、日本語をベースにした名前も多く登場する。しかし、グレート・マザーたちはその名前とギリシャ神話の物語に共通する要素がある。三人は、ギリシャの運命の三女神が操る「運命の糸」という言葉を交えて忠告を与えるのだ。
セリフに見るギリシャ神話との関わり
まず、アクトゥロポー、クロソー、ラキーシスの三人の見分け方について整理しておこう。大体真ん中にいるのがクロソー。SF作品ではお馴染みの俳優クラウディア・ブラックが演じている。クラウディア・ブラックは、ドラマでは『ファースケープ』(1999-2003) のエリアン・ソン役、『スターゲイト SG-1』(1997-2007) のヴァーラ・マル・ドラン役、映画では『ピッチブラック』(2000) のシャロン・”シャザ”・モンゴメリー役などで知られる。SFファンにはお馴染みのクラウディア・ブラックが「スター・ウォーズ」に登場したとあって海外でも話題になっている。
話を元に戻そう。眉間に黒い線が入り、泣いているような顔をしているのがラキーシス。そして、頭の被り物の先が二つに分かれているのがアクトゥロポーだ。
三人は交互に話すのが特徴だが、実は微妙に役割分担がなされている。ギリシャ神話では、運命の糸を最初に紡ぎ出す役割を担うクロソーが、モーガンに「呼びかけを夢で聞いたか」「長らくお前を待っていた」と、主導的な役回りを演じている。糸を紡ぎ出す立場とあって、相手を導くようなセリフが多い点がその特徴だ。
ラキーシスは、モーガンからスローンについて聞かれた際に、「待つがいい、やがて現れる」と待つ“長さ”を教えている。また、スローンにはサビーヌについて「予知できなかった“ほつれた糸”だ」と事情を説明。状況の観測に徹している印象を持つが、これはギリシャ神話でもラケシスは、クロソーが紡ぎ出した運命の糸の長さを測る役割を担っているからだろう。
そして、長さを測った糸を切り取る役目のアトロポスがベースになっているアクトゥロポーは、『アソーカ』第6話の中で、サビーヌと対面した際に「ジェダイの悪臭がする」と、やはり切り捨てる役回りを担っている。
クロソーが運命の糸を紡ぎ出し、ラケシスがその長さを測り、アトロポスがその糸を切り取る——『アソーカ』第6話だけでも、この三人はその役割をしっかり示しているのだ。となれば、惑星ペリディアがある新たな銀河は、私たちが暮らす銀河とも繋がりを持っているのだろうか。
「スター・ウォーズ」の舞台設定は、「遠い昔 はるかかなたの銀河系」。そちらの銀河系にも日本文化との共通点はあったが、新たな銀河系は私たちの住む銀河と少し近い銀河なのかもしれない。
グレート・マザーの力は?
『アソーカ』第6話では、スローン大提督が最後にグレート・マザーに対して「再度協力を要請する」と「闇の魔術の力」を借りようとする。グレート・マザーは「運命の糸の要求により応じましょう」と答えており、スローン大提督が更なる力を得ることは確かだ。
気になるのは「再度」という表現。スローン大提督はすでに力を借りたことがあるということだが、これは死んだストーム・トルーパーを蘇らせる、あるいは操り人形にできる力のことではないだろうか。スローン大提督の部隊はスローンを除いて誰もその顔を見せていない。それに奇妙な赤い紐がスーツにまとわりついている。グランド・マザーたちも赤いローブに身を包んでおり、スローンの部隊は既に亡くなっているが、闇の魔力で動かしていると考えることもできるだろう。
第6話では、この場所にある「墓」の存在に触れられていたことも印象的だった。運命の糸に導かれ、スローンを助ける魔術とは、一体どんなものなのか。第7話の展開も注視しよう。
ドラマ『アソーカ』は2023年8月23日(水)より、ディズニープラスで独占配信。
ジェダイ・オーダー離脱後のアソーカを描く小説『スター・ウォーズ アソーカ』( E.K.ジョンストン 著, 村上清幸 訳) は発売中。
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