ネタバレ解説&考察『アソーカ』第3話 ジェダイの訓練、グローグーとサビーヌの対比 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&考察『アソーカ』第3話 ジェダイの訓練、グローグーとサビーヌの対比

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ドラマ『アソーカ』第3話はどうなった?

ドラマ『アソーカ』は「スター・ウォーズ」シリーズの最新作。2023年8月23日(水) よりディズニープラスで独占配信されている。『アソーカ』では、アニメ『スター・ウォーズ 反乱者たち』(2014-2018) で活躍を見せたアソーカ・タノ、サビーヌ・レン、ヘラ・シンドゥーラ、チョッパーらが登場。新共和国時代を舞台に新たな冒険が描かれる。

初週に第1話と第2話を配信した『アソーカ』は、全8話で構成される。今回は第3話の各シーンをネタバレありで解説していこう。以下の内容は必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『アソーカ』第3話の内容に関するネタバレを含みます。

『アソーカ』第3話「飛び立つ時」ネタバレ解説

アソーカの訓練

『アソーカ』第1話と第2話では、スローン大提督の居場所を示す鍵がモーガン・エルズベスの一派に奪われてしまう。一方でかつてアソーカの弟子だったサビーヌが再びパダワンとなり、ヘラとチョッパーが取り付けた発信機を辿って、アソーカとサビーヌはモーガン一派を追うことになった。

第3話の冒頭ではサビーヌはヒュイヤンから、「キーレイ」「ガイキー」「ヨーキー」「ヤーテイ」という専門用語を使いライトセーバーの訓練を受けている。アソーカは「基本を覚えていたね」と話しかけているが、『反乱者たち』シーズン3では、サビーヌはダークセーバーを操るためにジェダイの生き残りだったケイナン・ジャラスとその弟子のエズラ・ブリッジャーにライトセーバーによる殺陣の基本を教わっている。

アソーカは、サビーヌに必要なこととして、「心を開く」「己を捧げてフォースを操る」ことを挙げるのだが、これは遠回しに「ジェダイにあってマンダロリアンにはないもの」を指摘してもいる。『マンダロリアン』(2019-) では、「固執しない/愛着を捨てる」というジェダイの掟に囚われないマンダロリアンの絆が描かれていただけに、指揮を執るデイヴ・フィローニなりにバランスをとっていることが窺える。

そしてアソーカがサビーヌに課したのは伝統の目隠し訓練だ。『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977) ではルーク・スカイウォーカーが、『スター・ウォーズ エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』(2019) ではレイが目隠し訓練に取り組んでいる。

サビーヌに課した訓練の方法はアソーカオリジナルのやり方だが、その中でフォースのバランスをとることを教えていく。師と弟子の間で1対1で行われる厳しい訓練は、やはりマンダロリアンにはないものだ。閉鎖的な空間で師が弟子を追い込むジェダイのやり方は、フォースとの繋がりを強化する最適な方法なのだろうが、やはり同時に感情を制御して物事のバランスをとることの重要さを感じさせる。

元老院とヘラの衝突

ヘラが元老院へ報告するシーンでは、モン・モスマ議長が登場。モン・モスマはドラマ『キャシアン・アンドー』(2022-) に続く登場になる。アニメ『反乱者たち』では、モン・モスマが帝国元老院を離脱して反乱活動に入る際にヘラが率いたスペクターズがモスマを救出している。『キャシアン・アンドー』ではモスマが家族と地位を捨ててでも反乱に向かっていくようになった背景が描かれている。

そして、モスマの隣にはハマト・ジオノ議員の姿も。アニメ『スター・ウォーズ レジスタンス』(2018-2019) の主人公だったカズーダ・ジオノの父親だ。ここで名前が挙がるジェイセンは、ヘラとケイナン・ジャラスの間の息子のこと。チョッパーが遊び相手になっているようで微笑ましい。

帝国の残党による工作を報告された元老院議員の一人は「僻地の話」と事態を軽視したり、ジオノはヘラによるスローン帰還への対策をエズラ・ブリッジャー捜索という私的な目的だと疑ったりする。『マンダロリアン』シーズン3に続き、新共和国の危うさを示す場面だ。映画続三部作でも新共和国はファースト・オーダーの脅威に対応せず、レイア・オーガナ将軍の私設軍隊が対応にあたった。

一方で、ヘラは『反乱者たち』ラストでのエズラの失踪後もエズラの捜索を続けていたことが明らかになっている。この場面では帝国軍と戦い革命を成就した歴戦の戦士、将軍として元老院議員にマウントをとる姿も。政治家と軍部の対立だ。

議員の一人は「民は紛争を望まない」と語るが、このくだりはファースト・オーダー台頭時の元老院の対応を別の形で見せてくれているのかもしれない。一方でヘラはスローンとの戦いで、息子ジェイセンの父であるケイナンをはじめとする仲間たちを失っている。ヘラたちに助けられたモスマもスローンの恐ろしさはよく分かっているはずだ。

人生の大半を戦争に投じてきたヘラは、新たな戦争を阻止するために戦おうとしている。日本の立場から見ると“好戦的”にも見えるかもしれないが、米国は100年以上にわたって各世代で戦争を起こしている国だ。それを阻止するために新たな戦いに身を投じるというのがヘラの姿勢なのだろう。

そして、ヘラとケイナンの子どもであるジェイセンが登場。肌の色はケイナンと同じだが、『反乱者たち』のラストで赤ん坊として登場した際には耳の先がヘラと同じく緑色になっていた。実写版では髪が伸びて耳の先が見えないようになっている。

ジェイセンはサビーヌがジェダイになるとチョッパーから聞き、自分もジェダイになりたいと言う。ケイナンの素質を受け継いでいれば、ジェイセンはフォースセンシティブなのだろう。ヘラはケイナンのことを思い出しているのだろう。嬉しそうに「だよね」と答えている。

ジェダイにならざる者たち

一方、フォースセンシティブではないと思われるサビーヌは、早く上達したいと焦っているが、フォースが使えないことを正直に吐露する。これは『反乱者たち』でもエズラとの比較で描かれてきたことである。アソーカも、フォースを使うために才能は必要だと答えるが、成否を分けるのは訓練と集中力だと語る。つまり、努力する才能も必要ということだろう。

『マンダロリアン』ファンとしてちょっと引っかかるのは、アソーカが「フォースを操る鍛錬に耐え得る者は限られる」と話したことだ。グローグーのことを言ってないか? ドラマ『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021-2022) では、グローグーはルーク・スカイウォーカーからジェダイの訓練を受け、アソーカはそれを見守っていた。結果、グローグーはジェダイではなくマンダロリアンになる道を選んでいる。

アソーカはサビーヌに「小さな事から始めて」と助言しているが、グローグーにも操縦桿のボールを操ることから始めさせていた。旧ジェダイ・オーダーに仕えてきたヒュイヤンは、サビーヌは才能がないため「ジェダイ・オーダーなら受け入れなかった」と話す。ジェダイ・オーダーが犠牲を払いながら守り抜いたがジェダイにならなかったグローグーと、ジェダイ・オーダーが受け入れなかっただろうがジェダイになりたいサビーヌ対の存在として描かれているように思える。

ヒュイヤンは「マンダロリアンのジェダイは歴史上ごく少ない」と語る。『反乱者たち』や『ボバ・フェット』では、歴史上初めてジェダイ・オーダーに加わったマンダロリアンとしてター・ヴィズラが紹介されている。サビーヌのことを「ジェダイにはしない」と語るアソーカは、一度はジェダイ・オーダーを追放された身だ。ジェダイに対する愛憎がある。

一方のヒュイヤンはアソーカを「型破りなジェダイ (non-traditional Jedi) の系譜」と呼ぶ。non-traditionalなジェダイということで言えば、シスにはならないダーク・ジェダイにあたると思われるベイラン・スコールとシン・ハティとも、グラデーション上は近いところにあるのかもしれない。

圧倒の戦闘シーン

ヘラは委員会から拒否されて今回の任務に加われないと通信を入れる。モン・モスマをもってしても元老院を動かすことはできなかったのだろうか。あるいは、モスマには別の考えがあるのかもしれない。デナブ星系に入った一行は通信を絶たれると、シン・ハティとマロックの部隊から急襲を受け、サビーヌが銃座に回ることに。

ヘラが操縦してサビーヌが銃座で対応するというシーンは『反乱者たち』でも描かれた。チーム戦はサビーヌの方が慣れている。アソーカとサビーヌのコンビネーションも良いのだが、フォースや訓練の話じゃなくなれば全て順調にいってしまうのは、何とも言えないところだ。

敵を撃墜していく一行の前に現れたのは、巨大なシオンの目。ヒュイヤンはこれを「ハイパースペース・リング」と呼ぶ。ハイパースペース・リングとは、ハイパードライブを搭載していない船もそのリングを通ることでハイパースペース移動ができる便利な代物だ。モーガンは別の銀河へ行くための巨大なハイパースペース・リングを作っていたのだ。

シオンの目にはターボ・レーザー(大型の艦船やデス・スターに搭載されていたレーザーキャノン)が付けられており、一行の船は集中砲火を浴びるが、その間にヒュイヤンがシオンの目をスキャン。このシーンの緊迫感はすごい。映画館で観たいクオリティだ。ヒュイヤンは攻撃で破壊されてしまうが、サビーヌはヒュイヤンの修理を優先しようとしている。才能がないと言われていたのに、優しい。

一方のアソーカは、サビーヌが船を修理している間に宇宙服を着て船外に登場。宇宙空間で二刀流のライトセーバーを握り、敵船を迎え撃つまさかの作戦。サムライだ。アソーカは敵船のレーザーを弾きながらライトセーバーで一機を撃墜。強すぎる。この時点で銀河最強のジェダイの一人と言っていいだろう。

攻撃を加えたシン・ハティの敗因は、執拗にアソーカを狙い撃ちしたことだろう。3機で船本体を狙えばよかったものを、ハティはジェダイであるアソーカを仕留めることに執着したのではないだろうか。結果、アソーカを狙ったレーザーは船を外すかアソーカのライトセーバーに弾かれてしまっている。

パーギルが鍵に?

そして登場したのはパーギルの群れだ。パーギルとはクジラのような見た目のハイパースペースを移動できる生物で、アニメ『反乱者たち』では何度も登場した。ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』(2022) ではベイル・オーガナがレイアに「パーギルを追う人生」を計画していたと話し、『マンダロリアン』シーズン3ではハイパースペース内でグローグーがパーギルの群れを眺めていた。

『反乱者たち』のラストでは、主人公のエズラ・ブリッジャーがパーギルの群れにスローン大提督の戦艦を捕らえさせてハイパースペースジャンプを敢行。エズラとスローンはパーギルの群れと共に行方不明になった。パーギルがロザルを救った後、サビーヌは自分たちの船であるゴーストにパーギルの絵を描き加えている。また、エズラはフォースの力を通してパーギルとの絆を形成していた。ジェダイという括りでは、パーギルは仲間なのだ。

一行は修理のために一時着陸。復活したヒュイヤンにアソーカは「死にかけた」と言い笑顔を見せ、ヒュイヤンも「標準手順だな」と返している。アソーカは『クローン・ウォーズ』と『反乱者たち』で実際に2度死んでおり、そのせいか余裕が感じられる。

そしてサビーヌはパーギルの群れを指して、やはりエズラを思い出すと話す。『アソーカ』でもパーギルがキーになりそうだ。ヒュイヤンの分析によると、シオンの目に取り付けられたハイパードライブは6基で、前回持ち出されたもう1基が設置されている途中だという。

このハイパードライブ・リンクの巨大さは、驚異的な速度と距離のジャンプのためであり、これが完成すれば理論上は銀河間の移動も可能になるという。ヒュイヤンは銀河間のハイパーレーンは記録にもあるというが、銀河間の移動が可能になれば「a long time ago in a galaxy far far away(昔々、はるか彼方の銀河で)」と紹介されてきた「スター・ウォーズ」の前提が大きく変わることになる。

ちなみにハイパーレーンとはハイパースペースに敷設された航路のこと。銀河間に跨るハイパーレーンは、元はパーギルの移動経路だったという。ヒュイヤンはピンときていないが、それは先ほどは電源が落ちてパーギルの群れを見逃していたから。笑みを見せるアソーカとサビーヌは、エズラへの道が近づいていることを感じているのだろう。

ドラマ『アソーカ』第3話のラストシーンは、シン・ハティのマスターであるベイラン・スコールの姿。ドロイドたちを使って森の中からアソーカたちを見つけ出そうとしている。英語では「hunt them down(狩れ)」と指示しており、帝国時代のジェダイ狩りを想起させる。早くもベイラン・スコールとアソーカ・タノの戦いが実現するのだろうか。

『アソーカ』第3話ネタバレ考察&感想

描けなかったものを描いていく

ドラマ『アソーカ』では、第3話まで、サビーヌにはジェダイの素質がないということが繰り返し強調されている。これまでの「スター・ウォーズ」では、アナキンやルーク、レイにカイロ・レン、グローグーなど、(基本的に血筋によって)生まれつき強いフォースの感応者であることがジェダイとして重要な要素になっていた。

もちろんグローグーはそれでもマンダロリアンになることを選んだから尊いのだが、スカイウォーカー家とパルパティーンに頼ってきたジェダイの物語も、血筋に依らない展開を模索しているように見える。

「スター・ウォーズ」のドラマシリーズでは、『マンダロリアン』でジェダイではない集団の価値観を改めて肯定的に描き、『ボバ・フェット』で“野蛮”というイメージをつけられてきたタスケン・レイダーのカルチャーを丁寧に描き出した。『アソーカ』では、サビーヌを通して「スター・ウォーズ」の血統主義を解体していく物語を描くのだろうか。

いずれにしても、「スター・ウォーズ」のドラマシリーズは、トータルで数時間をかけて物語を描いていくことによって、映画シリーズでは触れられなかった価値観やテーマを回収していっているように思える。ディン・ジャリンとグローグーの血縁のない父子関係というのもその一つだ。

その意味では、『スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ』(2017) で触れられはしたが突き詰められなかった「誰でもジェダイになれる」というメッセージが改めて提示されるのかもしれない。今後の展開に期待しよう。

ドラマ『アソーカ』は2023年8月23日(水)より、ディズニープラスで独占配信。

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『アソーカ』第4話のネタバレ解説&考察はこちらから。

『アソーカ』第2話のネタバレ解説&考察はこちらから。

『アソーカ』第1話のネタバレ解説&考察はこちらから。

クワイ=ガン・ジンと同じくライトセーバーで腹部を貫かれたサビーヌが生きていた理由の考察はこちらの記事で。

ドラマ『アソーカ』の時系列についてはこちらの記事で。

 

新キャラたちが並ぶ『アソーカ』のヴィランについての考察はこちらの記事で。

『アソーカ』は『マンダロリアン』と同じく1シーズン8話で構成されることが明らかになっている。詳しくはこちらから。

 

『マンダロリアン』シーズン3最終話のネタバレ解説はこちらから。

 

「スター・ウォーズ」映画の新三部作についての発表の詳細はこちらの記事で。

ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト(原題)』の情報はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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