封切されたワーナー100周年記念映画
2023年6月16日、DCEU(DCエクステンデッドユニバース)からDCU(DCユニバース)への再構築となるワーナー100周年記念作品『ザ・フラッシュ』が全世界同時公開された。主演のエズラ・ミラーの12歳の少女へのグルーミングの告発や逮捕に有罪判決、アンディ・ムスキエティ監督のこれまでドラマ展開してきたアローバースのファンの神経を逆なでするような失言やネタバレなど、公開前には様々な不祥事やトラブルに見舞われた『ザ・フラッシュ』。劇場公開から約1年後の2024年3月6日にNetflixでの配信も決定した。
しかし、現在ではワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーの肝いり案件ということもあり、全世界同時公開にまで漕ぎつけた。そのような『ザ・フラッシュ』だが、初見でわかりづらいのが物語の中核となるキーワードで、フラッシュたちを指す「スピードスター」だ。
本記事ではフラッシュたちスピードスターの能力について解説と考察をしていこう。なお、本記事は映画『ザ・フラッシュ』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。
以下の内容は、映画『ザ・フラッシュ』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
そもそもスピードスターとは何者か
スピードスターとは
そもそも、スピードスターとは何者なのだろうか。スピードスターとは超高速で移動できる者の総称であり、DCコミックスでは主に運動エネルギーに満ちた別次元の世界「スピードフォース」からエネルギーを引き出して高速移動する者を指す名称だ。
そのため、単なる超高速移動能力とは異なり、スピードフォースのエネルギーによってある程度の物理法則を無視した加速が可能になっている。マーベルコミックやMCUにもクイックシルバーやマッカリーといったスピードスターが存在しているが、DCコミックのスピードスターとは根本的に原理が異なっている。
また、このスピードフォースには人格があるような描写があり、アローバースの『THE FLASH/フラッシュ』(2014-2023)ではスピードフォースが一種の神のようなものとして登場し、さらにはスピードフォースを安定させるためにスピードフォースの檻と言われる空間にスピードスターを閉じ込めてバランスを取る必要がある、スピードスターから時間軸を守るためのタイム・レイスやブラック・フラッシュといった恒常機能が存在している。
スピードスターの能力
物質のすり抜け(フェイジング)
スピードスターの能力は高速移動だけではない。その代表例が高速移動を応用した分子レベルでの振動だ。分子レベルで振動させ、空気などの周波数と一体化することで壁や床をすり抜けることができる。これは『ザ・フラッシュ』でも見せた能力で、フェイジングと呼ばれるものだ。
また、この物質すり抜け(フェイジング)は壁や床などだけではなく、様々な応用が可能だ。『ザ・フラッシュ』でもクリプトン人の兵士相手の心臓を貫くといった技が可能である。アローバース『THE FLASH/フラッシュ』では、悪役のスピードスターが他者を殺害する際によく用いている。
このすり抜けは分子レベルで振動しているため、対象の硬さなどは関係なく、アローバースのクロスオーバー『クライシス・オン・アースX』(2017)では、ナチスが勝利した世界「アースX」からやってきたナチス版スーパーガールであるオーバーガールの心臓手術のために、リバース・フラッシュ/イオバード・ソーンが如何なるメスも通さない鋼鉄の皮膚をすり抜け、スーパーガールの心臓を摘出しようとしている。
電気を帯びる
超高速移動により、全身に電気を帯びるのもスピードスターの特徴で、フラッシュをはじめとするスピードスターたちが走ると稲妻が発生する。それを利用し、フラッシュなどは敢えて助走をつけ、それによって全身に電気を帯び、それを敵に浴びせるという技を有している。
アローバースではこの稲妻の色がスピードスターの性質を表すものとして重要な意味を持つほか、キッド・フラッシュことウォーリー・ウェストが稲妻と禅の精神を組み合わせることで超高速移動の稲妻を睡蓮の花の形に変える、手裏剣のように扱うなどしている。また、フラッシュとリバース・フラッシュ、そしてゴッドスピードという3名のスピードスターはこの稲妻を剣に変えて切り合いをした。
超人的な新陳代謝と再生能力
スピードスターたちは新陳代謝や細胞分裂のスピードも速く、大怪我を負っても数時間で治ってしまうのも特徴の一つだ。しかし、マーベルコミックのウルヴァリンやデッドプールのヒーリングファクター(超再生能力)とは異なり、腕や脚が吹っ飛んでしまっても生えてこない。あくまでも人体が修復可能な範囲の傷が、超高速で治るというだけである。
また、新陳代謝のスピードの速さにより、大量の酒を飲んでもすぐにアルコールを分解してしまうため、酔うことができない。アローバースの『THE FLASH/フラッシュ』ではカルロス・バルデ演じる友人の科学者シスコ・ラモンに一時的にこれを抑える薬を作ってもらったことで酒に酔う場面が登場している。
時間や次元を超える
スピードスターの最大の能力の一つが分子レベルの振動と光速を超えるスピードでの移動によりタイムスリップや、別次元への移動を可能としていることだ。『ザ・フラッシュ』のメインテーマにもなっている能力だが、この能力により、フラッシュはDCコミックの宇宙規模の事件の中心になることが多い。
また、時間移動や次元を可能にする装置としてDCコミックではクロノボウルのモデルになったコズミック・トレッドミルという装置も登場している。コズミック・トレッドミルは早い話がスピードスター用のランニングンマシンのようなもので、この上で、超高速で走り続けることで時間移動や別次元への移動を可能としている。
スピードスターの弱点
1日1万キロカロリーの消費
3代目フラッシュのウォーリー・ウェストから登場した設定で、スピードスターとして活動するためには1日に1万キロカロリーを必要としている。『ザ・フラッシュ』でもこの設定は存在しており、エズラ・ミラー演じるフラッシュ/バリー・アレンは手元のスマートウォッチで常に消費カロリー数を気にし、痩せの大食いと呼ばれている。
アローバースの『THE FLASH/フラッシュ』ではグラント・ガスティン演じるフラッシュ/バリー・アレンが低血糖により倒れてしまい、とてつもないハイカロリーのエナジーバーで1日1万キロカロリーを補っている。
虫を食べてしまう
『ザ・フラッシュ』では未来のフラッシュ/バリー・アレンが超高速移動中に虫を食べてしまうことを話している。車のフロントガラスに虫が張り付くのと同じ原理だ。アローバースの『THE FLASH/フラッシュ』でもフラッシュが移動中にどれだけの虫が口に飛び込むかはネタにされており、友人の科学者の間で虫の繁殖期も考慮すべきなどと議題に挙がっている。
また、他にもアローバースの『THE FLASH/フラッシュ』では超高速移動中は頬が空気摩擦で焼ける感覚がするなど、スピードスターならではの悩みが複数存在しており、今後のDCUの展開でそれらの点が回収されるのか。DCUのスピードスターの行く末に注目していきたい。
『ザ・フラッシュ』は2024年3月6日よりNetflixにて配信開始。
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