ヘンリー・カヴィルとスーパーマンを巡るDCスタジオの人事 これほどにまで炎上した経緯まとめ | VG+ (バゴプラ)

ヘンリー・カヴィルとスーパーマンを巡るDCスタジオの人事 これほどにまで炎上した経緯まとめ

DCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)と呼ばれたユニバースから「ガーディアン・オブ・ザ・ギャラクシー」シリーズや『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)を代表作とするジェームズ・ガン監督を新CEOの一人に迎え、名称もDCU(DCユニバース)と変更し、新たな展開を見せたDCコミックスの映画シリーズ。ジェームズ・ガン監督はマルチバース展開も視野に入れると発表したが、すでに暗雲が立ち込めており、炎上騒動が続いている。これはDCのみではなく、ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーにも原因があるが、ここ最近、もっとも注目を集めているのがヘンリー・カヴィル氏のスーパーマン降板騒動だろう。

現在も情報が錯綜し、何が真実で、何が嘘なのかもわからない状況が続いているが、現在わかっている限りで、ここに至るまでの経緯をまとめていきたいと思う。なお、この記事には現在公開されている『ブラックアダム』に関するネタバレ情報があるため、読む際には注意していただきたい。また、記事の内容も2022年12月17日時点で公開されている情報をまとめている点も留意していただけると幸いである。

放置され続けたスーパーマン

ヘンリー・カヴィル氏はイギリス出身の俳優で、『マン・オブ・スティール』(2013)でスーパーマン/クラーク・ケントを演じた。その甘い顔立ちと185㎝という体格から彼の演じるスーパーマンは一躍人気となり、『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)と『ジャスティス・リーグ』(2017)でもスーパーマンを演じ、好評を博した。ここで注意すべきは、この時点でDCEUの舵取りを主に担っていたのはザック・スナイダー監督とワーナー・ブラザーズ・ピクチャーズ社長であったウォルター・ハマダ氏の両名である点だ。

当初、ザック・スナイダー監督は『マン・オブ・スティール』と『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』、『ジャスティス・リーグ』の3部作を含む5本の映画を基礎として企画していた。その内容は陰鬱なものから希望に満ちた展開へと変化していくものだったが、『ジャスティス・リーグ』の制作は難航。さらにはザック・スナイダー監督の身内の不幸もあり、ザック・スナイダー監督が降板してジョス・ウェドン監督に変更される。これで完成した『ジャスティス・リーグ』は興行不振となり、継ぎ接ぎのようにちぐはぐだという批判も受けた。

この『ジャスティス・リーグ』は署名活動を受けて、オリジナル版である『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』(2021)が配信。これ以降DCEUは単独作品を重視する姿勢が目立ち始める。その間、スーパーマン役のヘンリー・カヴィル氏は放置され、この時点で既に同役を降板していると言われていた。

『シャザム!』(2019)では首から下だけ、ジェームズ・ガン監督作品『ピースメーカー』(2022)ではシルエットのみなど、ヘンリー・カヴィル氏のスーパーマンは明確に登場しなかった。その間もヘンリー・カヴィル氏はスーパーマンに関して言葉を濁しながらも人気を博し、本人もファンだと公言しているNetflixドラマ『ウィッチャー』(2019-2023)で演じた主人公のリヴィアのゲラルトで熱狂的な人気を獲得した。

その最中、『ブラックアダム』で主人公テス・アダムを演じたロック様ことドウェイン・ジョンソン氏らの尽力もあり、ヘンリー・カヴィル氏演じるスーパーマンの復帰が果たされた。ヘンリー・カヴィル氏はInstagramにて、これを「新たなる希望の夜明け」「辛抱してくれてありがとう。きっと報われることを約束する」と投稿し、ファンも実際のスーパーマンが到来したかの如く沸き立ったが、その直後にスーパーマンの降板と『マン・オブ・スティール2』の白紙化、ジェームズ・ガン監督の描く新作スーパーマンにヘンリー・カヴィル氏は出演しないことが発表された。

ジェームズ・ガン監督らDCとワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーはクラーク・ケントが若き新聞記者として活躍し、スーパーマンになる姿を描くとしているが、それこそが『マン・オブ・スティール』の物語であり、なおかつファンとしては彼のオリジンはいくつも描かれてきたため、食傷気味だった。MCUでは「スパイダーマン」シリーズでベンおじさんの死を、同じDCの『ザ・バットマン』ですらウェイン夫妻の死を描きつくされた食傷気味の部分としてカットしたのにも関わらず、この判断を下して、その末にヘンリー・カヴィル氏を降板させたことが混乱を呼んだ。

混迷を極めるDCとワーナー

DCEUは「シャザム!」シリーズや「ワンダーウーマン」シリーズや「アクアマン」シリーズ、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』を撮り続け、それぞれが好評を得るも、『ザ・バットマン』(2022)や『JOKER』(2019)などの単独作品も増えて一つ一つの作品の繋がりは希薄になっていった。その最中、ワーナー・メディアとディスカバリーが統合されてワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーとなり、デヴィッド・ザスラフCEOが就任し大規模な改革に乗り出した。しかし、これがユニバース全体の混乱のはじまりだった。その最たる例が『バットガール(原題:Batgirl)』のお蔵入り騒動である。

撮影がほぼ完了し、ジェームズ・ゴードン役にJ・K・シモンズ氏、バットマン役にあのマイケル・キートン氏が起用されていた意欲作の『バットガール』が節税を理由にお蔵入りにされたことは制作陣に多大なる影響を与えた。アディル・エル・アルビ監督とビラル・ファラー監督両名にすら知らされていなかったお蔵入りには、デヴィッド・ザスラフCEOの差別的な思想が反映されているとまで疑われ、現在は配信から劇場公開へと変更して公開が決定した『ブルービートル(原題:Blue Beetle)』のアンヘル・マヌエル・ソト監督がラテン系が主人公なのを理由にお蔵入りされるのではと不安になったのか、その手に関するツイートをイイネするという事態も起きた。

クリエイターたちへの不義理に満ちたこの改革をウォルター・ハマダCEOも知らず、ウォルター・ハマダCEOは現行の最新作の時点で『ブラックアダム』でDCEU及びDCUから辞任寸前だったことが明かされている。それによって『ブラックアダム』以前の旧体制と以降の新体制の間で歪かつ深い溝が生じるようになる。更にはサイボーグ役のレイ・フィッシャー氏やワンダーウーマン役のガル・ガドット氏らの『ジャスティス・リーグ』の現場でのハラスメントの告発、フラッシュ役のエズラ・ミラー氏の止めどない不祥事の山によってジャスティス・リーグは空中分解の危機を迎える。

再建されるはずだったDCU

「ワンダーウーマン」シリーズや「アクアマン」シリーズは好評を得たものの、ユニバースとしての展開は絶望的にも思える状況に陥ったDCU。その再建のためにワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーやDCの上層部はMCUを成功に導いたケヴィン・ファイギのような人材を探し求め始める。しかし、そのような天才的な人材などそう簡単には見つからず、いくつもの検討を経て、最終的にジェームズ・ガン監督に白羽の矢が立ったDC共同CEOにジェームズ・ガン監督が就任したことでファンは胸をなでおろし、彼はファンが不安視していたドラマシリーズなどにも言及し、それらを可能な限り守ると発言した。

しかし、その期待は裏切られることになる。それが『ワンダーウーマン3』の中止発表だ。皮肉にも主演のガル・ガドット氏が次回作への意気込みを語った直後に発表がなされ、その責任は「ワンダーウーマン」シリーズの監督を務めたパティ・ジェンキンス監督にあるという噂が蔓延し、同監督がこれを否定する声明を出すなど事態は混迷を極めた。ジェームズ・ガン監督も「みんなを幸せにはできない」「DCUのために尽くす」と声明を出したが、焼け石に水という印象だ。この不幸はドミノ倒しのように続き、好評だった「アクアマン」シリーズの主演のジェイソン・モモア氏がリキャストされ、宇宙の賞金稼ぎロボ役に変更になるという噂も広がり、ファンの不安はより一層高まっていく。

その直前に発表されたのがヘンリー・カヴィル氏のスーパーマン復帰。スーパーマンが市民の希望であるように、『ワンダーウーマン3』を失ったファンにとってヘンリー・カヴィル氏はDCの希望になると思われた。『ブラックアダム』での主演のドウェイン・ジョンソン氏も熱望したヘンリー・カヴィル氏のサプライズ出演でそれは確信に変わったように思われた。だが、前述の通り、『ブラックアダム』は旧体制下でつくられた作品であり、ヘンリー・カヴィル氏は復帰発表直後に降板が発表され、矢面に立たされたジェームズ・ガンCEOは批判を一身に受けることになった。

統制の取れない現場と上層部

このような状況になり、ファンたちも制作陣もいつ自分の作品が打ち切られるかわからない不安に駆られ、過激なファンの中ではジェームズ・ガンCEOの退任を求める声も大きくなっていく。このような持ち上げては落とす展開の繰り返しになり、組織として統制の取れていない状況に陥った理由としては、情報の発信者が三者存在していることが考えられる。それを大まかに分類するとすれば下記のような流れになる。

  • 主演、もしくは監督が作品に対する意気込みを発表
  • 現場に情報を伝えていない上層部が異なる声明を発表
  • ジェームズ・ガンCEOがコメントを出すも火に油を注ぐ形になる。

ガル・ガドット氏とパティ・ジェンキンス監督の『ワンダーウーマン3』の一件も、ヘンリー・カヴィル氏のスーパーマン復帰の一件もこの流れをなぞっているように見える。更にヘンリー・カヴィル氏はこの直前に『ウィッチャー』の主人公リヴィアのゲラルトの降板を発表していたため、「スーパーマンのために降板したのにジェームズ・ガンCEOに捨てられた結果になったのでは?」という憶測を呼んだ。

実際、ジェームズ・ガンCEOはあくまでも共同CEOであるため、決定は彼一人の一存ではない可能性は高いがジェームズ・ガンCEOが新しいスーパーマンの脚本を執筆していること、そこにヘンリー・カヴィル氏を別の役でリキャストする可能性を匂わせているため、余計に怒りを買った。ファンとしてはリキャストされたところでヘンリー・カヴィル氏のスーパーマンは帰ってこないし、『ウィッチャー』のリヴィアのゲラルトは既にクリス・ヘムワーズの弟リアム・ヘムワーズが新しくキャスティングされているため復帰もあり得ず、DCファンだけではなく『ウィッチャー』ファンからも怒りを買ってしまった。

最悪のタイミングで公開されたワーナー100周年記念動画

ワーナーはこのタイミングで100周年記念動画を発表。この動画自体は以前より計画されていたものだと考えられ、一連の騒動とは関係ないように思えるが動画の内容が問題だった。動画はワーナーの映画からドラマまで傑作の名場面を流し、「未来へ進もう」という言葉で締めくくられたものだったが、最大の問題は最後だ。動画の最後を締めたのはエズラ・ミラー氏演じるフラッシュの映像だった。

エズラ・ミラー氏は数えきれないほどの重大な問題を起こしながら、『バットガール』のお蔵入りや『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム(原題)』におけるマイケル・キートン氏版バットマンがカットされた問題、『ワンダーウーマン3』中止やヘンリー・カヴィル氏の降板、ジェイソン・モモア氏のリキャストの噂など人気の映画や名優たちが悲劇的な状況に置かれているにも関わらず、エズラ・ミラー氏は会社に徹底的に守られているように感じられる状況にある。

更にエズラ・ミラー氏が問題を起こしていた際に会社はそのことを知らないとされていたが、報道でエズラ・ミラー氏の問題を会社は知っていて見て見ぬふりをしていたことが明らかになっている。そこに加え、エズラ・ミラー氏が主要キャストを務めていた「ファンタスティックビースト」シリーズも業績不振で続編が消え、『ザ・フラッシュ(原題:The Flash)』でユニバースを清算したい思惑があるのかもしれないが、バットガール役のレスリー・グレイス氏にマイケル・キートン氏、ジャスティス・リーグを切り捨ててまでエズラ・ミラー氏を守ることにファンは困惑を隠せずにいる。また、レスリー・グレイス氏が『バットガール』の撮影風景を投稿したことで「このタイミングでの投稿はDCへの反発があるのでは?」という憶測を呼んでいる。

ヘンリー・カヴィル氏降板で再認識されたDCとワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーの改革の問題点

ヘンリー・カヴィル氏の降板問題は彼のキャリアを傷つけ、DCファンだけではなく、『ウィッチャー』ファンをも怒らせる結果になった。今更、ジェームズ・ガンCEOがヘンリー・カヴィル氏を何らかの形でリキャストしても怒りと困惑が収まることはないだろう。更にはワーナー・ブラザース・ディスカバリーのデヴィッド・ザスラフCEOが「ハリーポッターやスーパーマンの新作を作りたい」と発言するも、それが「ファンタスティックビースト」シリーズや『マン・オブ・スティール』のことは忘れているかのようにとれ、炎上は悪化の一途をたどっている。

他にもワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーの改革の中では数多くの名作アニメーションを生み出してきたカートゥーンネットワークスタジオをワーナー・ブラザーズ・アニメーションと合併させて終了させること発表し、「#R.I.P.CartoonNetwork」をトレンド入りさせるなど問題は悪化しているように見える。更に有色人種の女性ヒーローやセクシュアルマイノリティの人々が活躍する『バットガール』のお蔵入りや、セクシュアルマイノリティのキャラクターを多く生み出したカートゥーンネットワークスタジオに対する態度に加えて、デヴィッド・ザスラフCEOが白人至上主義的かつマチズモ的な対応を匂わせる行動を起こしていることから、差別思想が絡んでいるのではとまで噂されている。

このようにDCとワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーへの不信感が高まる中で、ヘンリー・カヴィル氏はスーパーマン復帰の希望に満ちた投稿から一転して、寂しげにも思える降板の報告の投稿を行うなど、何とも悲しい結末を迎えた。

この降板騒動に一つ、フォローを入れるとすればヘンリー・カヴィル氏にはAmazon制作のドラマ『ウォーハンマー40,000(原題:Warhammer 40,000)』の主演と製作総指揮があるので、そちらに専念するための降板の可能性もある。目まぐるしく状況が変化し、情報が錯綜する現時点ではわからないことも多いため、今後もヘンリー・カヴィル氏降板騒動に注目していきたい。

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鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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