考察&解説『ブルービートル』予告編公開 ハイメ・レイエスはDCUの救世主となるか | VG+ (バゴプラ)

考察&解説『ブルービートル』予告編公開 ハイメ・レイエスはDCUの救世主となるか

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2023年4月5日、予告編公開

フラッシュ役エズラ・ミラー氏の不祥事に逮捕、シャザム役ザッカリー・リーヴァイ氏の不謹慎発言、パティ・ジェンキンス監督やワンダーウーマン役ガル・ガドット氏らが意気込みの投稿直後に『ワンダーウーマン3』をキャンセルし、『ウィッチャー』(2019-)を降板してまで復帰してくれたスーパーマン役ヘンリー・カヴィル氏を降板させ、ブラックアダム役ドウェイン・ジョンソン氏やサイボーグ役レイ・フィッシャー氏もスタジオを去るなど暗雲立ち込めるDCEU

そのような状況を打破するためか、ジェームズ・ガン共同CEOは『ザ・フラッシュ』(2023)にてDCEUをリセットし、DCUへとリランチ(再構築)することを発表。さらにはロバート・パティンソン氏主演、マット・リーヴス監督作『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022)および「バットバース」やホアキン・フェニックス氏主演『JOKER』はDCエルスワールズとして残すなど、この状況を打破すべくワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーは改革を進めている。

しかし、有色人種の女性ヒーロー『バットガール/Bat Girl(原題)』のお蔵入り騒動や以前からあったデイヴィッド・ザスラフCEOの白人男性優位主義の噂など、作品と関係のないところでのノイズが絶えない。

そのような中、ラテン系・ヒスパニック系のヒーローとして『ザ・フラッシュ』によるDCEUのリランチ、そしてDCUへのリランチの第一作として『ブルービートル/Blue Beetle(原題)』(2023)の配信から映画館での公開に変更され、その予告編も公開された。本記事では『ブルービートル』からわかることの考察と解説をしていこうと思う。

超新星ブルービートル

ブルービートル/ハイメ・レイエスとは

そもそも、ブルービートルとはどのようなヒーローなのだろうか。まず、理解すべきは、ブルービートルはグリーンランタンなどと同じく、襲名制のヒーローということである。『ブルービートル』ではその中でも3代目のヒスパニック系のティーンエイジャーのハイメ・レイエスが主人公となる。ハイメ・レイエスを演じるのは『コブラ会』の主人公ミゲル・ディアス役で注目を集める新進気鋭の俳優のショロ・マリデュエニャ氏だ。

ハイメ・レイエスは家族を支えるために清掃会社で働きながら、大企業での職探しをするブルーカラー(肉体労働者)のヒスパニック系のティーンエイジャーという等身大のキャラクターだ。彼は面接を受けに行ったコード・インダストリーズで謎の女性から謎のハンバーガーの箱を受け取る。命をかけて守ってくれ、しかし箱を絶対に開けるなと言われたのにも関わらず箱を開けてしまう。

それによって魔法のスカラベに選ばれ、顔に飛びつかれた挙句に全身を外骨格が覆い、宇宙までの飛行からイメージした武器を生み出すなど何でもできるスーパーパワーを持ったヒーローのブルービートルになってしまうのだった。ハイメ・レイエスは魔法のスカラベをコントロールできず成層圏から落下する、身を守るつもりがバスを図らずも真っ二つにしてしまうなど困惑する様子が予告編から見てとれる。

予告映像の中ではシカゴ出身のラッパーのリル・ダークが2013年に発表した「Dis Ain’t What U Want」が流れ、その歌詞の中「こんなこと望んでいなかった」という言葉が、突如としてスーパーパワーを持ってしまったティーンエイジャーの心を描写している。

 

先代ブルービートルたち

ブルービートルは前述の通り、原作コミックでは襲名制のヒーローである。ハイメ・レイエスの前にも二人のブルービートルが存在している。初代ブルービートルはダニエル・”ダン”・ギャレットという新米警官で、ビタミン2-Xを摂取することでパワーアップするヒーローだった。出版社がFOXからチャールストン・コミックに移ると設定が考古学者に変更され、魔法のスカラベの力で戦うヒーローとなった。モデルはラジオドラマ「グリーンホーネット」とされる。

二代目ブルービートルはセオドア・スティーブン・コード、通称テッド・コードであり、初代ブルービートルのダニエル・”ダン”・ギャレットの弟子でもある。しかし、テッド・コードは正義と勇気を持ち合わせていたものの魔法のスカラベに選ばれず、コード・インダストリーズの社長として頭脳と技術力、財力を活かして戦うバットマンやアイアンマンに近いヒーローとなっている。

テッド・コードは他のヒーローと関わりが深く、ジェームズ・ガン共同CEOが発表した「10年計画『神々と怪物』」の中で映画化が決定している未来から来たお調子者のヒーローのブースターゴールドとは親友であり、バットマン/ブルース・ウェインにはコード・インダストリーズを買収されてしまったりしている。予告編冒頭の富豪に見えるハイメ・レイエスの場面はテッド・コードを意識しているのかもしれない。

それを思うと予告の最後の「バットマンの基地みたい」「バットマンはファシストだ」という会話は、バットマンが白人で莫大な財力を有していることへの皮肉だけではなく、バットマンの表の顔であるブルース・ウェインの会社のウェイン産業がコード・インダストリーズを買収し、「ヒーロー活動と表の顔は別」といってテッド・コードを突っぱねたメタ的なジョークのダブルミーニングなのかもしれない。

そしてテッド・コードの最大の特徴はチャールストン・コミックからDCコミックに移った際に登場したザ・バグというコガネムシ型の巨大なVOLT機であり、このザ・バグは動く研究所の役割も兼ねている。これを活かしてジャスティス・リーグを手助けすることも多々あった。予告映像ではハイメ・レイエスの家族がザ・バグを操縦している場面が登場するため、テッド・コードも登場する可能性は捨てきれない。

新人ヒーローに立ちふさがる壁とその先にあるもの

立ちふさがるヴィランたち

『ブルービートル』にもヒーロー映画だけにヴィランも登場するが、ヴィランもかなり興味深い。アメリカとカナダの先住民文化のダンスを披露する舞台芸術会社のアメリカン・インディアン・ダンス・シアターで振付師兼共同監督を務めたラウル・トルヒーヨ氏が演じるのは不死身の男のカラパックスだ。カラパックスは初代ブルービートルのダニエル・“ダン”・ギャレットのライバルのため、ダニエル・”ダン”・ギャレットの登場の可能性もある。

ほかにも女性版テッド・コードというべきヴィクトリア・コードが、かつて『ロッキー・ホラー・ショー』で主演を務めたスーザン・サランドン氏が演じることも発表されている。テッド・コードは未熟で悩み苦しむティーンエイジャーであるハイメ・レイエスを経験者として指導するが、ヴィクトリア・コードはヴィラン寄りの人物とされる。

『ブルービートル』の予告編でも魔法のスカラベの危険性を指摘しながら回収を試みる人物として描かれている。ある意味ではテッド・コードが抱いていた「正義と勇気を胸に危険に身を投じているにも関わらず魔法のスカラベには選ばれなかった上、見ず知らずの少年が偶然に選ばれた」という心の負の面が強調された人物なのかもしれない。

立ちふさがる社会の壁

ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー100周年記念動画の最後に登場するなど100周年記念という社運を背負うためか、グルーミング(子供への性犯罪などにおいて、巧みに被害者の心をつかんで接近する準備行動、幼い子どもの従順さや思春期特有の悩みにつけ込み、被害者と信頼関係を結ぶこと)暴行事件、強盗などをしながらもワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーとDCに庇われていたフラッシュ/バリー・アレン役のエズラ・ミラー氏

成年後見人である父から虐待的な行為を受け続け、父と裁判を戦ったブリトニー・スピアーズ氏を揶揄する内容を投稿するなど不謹慎な発言を繰り返しインセル(望まない禁欲主義者、アンチ・フェミニストなど)のヒーローと称されるジョーダン・ピーターソン氏を支持し、ワクチン陰謀論を拡散したジョー・ローガンのポッドキャストに出演したザッカリー・リーヴァイ氏など、前述の通りDC映画では映画外でのノイズが尽きない。

またアンヘル・マヌエル・ソト監督が『バットガール/Bat Girl(原題)』のお蔵入り騒動の中で「同じく有色人種が主人公のブルービートルもお蔵入りにしないで」といった旨のツイートを「いいね」するなど、その波紋は制作現場にも広がっている。

その中でもファンの間でささやかれている大きなノイズが白人男性のヒーローが優遇されているのではないかというものだ。しかし、完全にそのような状況なわけではなく、『ブラックアダム』(2022)のワールドプレミアではホークマン役のオルディス・ホッジ氏が非白人の子供と触れ合い、有色人種のヒーローの存在が現実でも非白人の人々に与える影響をしめした。他にもMCUの「ブラックパンサー」シリーズなどもその例の一つだろう。

『ブルービートル』においても、社会的な壁である人種問題をぶち壊すヒーローとしてのブルービートルについても言及されており、主演のショロ・マリデュエニャ氏はヒーロー映画にラテン系文化を取り入れることができることを喜び、アンヘル・マヌエル・ソト監督は脚本家のガレス・ダンネット=アルコセル氏がラテン系・ヒスパニック系の家族の絆を作品の核にしているとを述べている。

他にもショロ・マリデュエニャ氏はラテン系・ヒスパニック系が主人公の最初のDC映画だと喜び、スーザン・サランドン氏は一部にスペイン語での会話が用いられていると明かした。その点ではラテン系・ヒスパニック系の人々にとっても、そして悩みごとの多いティーンエイジャーにとっても等身大のヒーローとしてブルービートルが描かれるのかもしれない。

また、容姿もスーパー戦隊や仮面ライダーなどに近く、日本人にも受け入れやすそうなので、それらの点も踏まえて今後の展開に期待したい。『ブルービートル/Blue Beetle(原題)』は2023年8月18日よりアメリカで公開される。

『ブルービートル/Blue Beetle(原題)』オフィシャルTwitterはこちらから。

同日に予告が公開された『ブルービートル』と『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』に共通するテーマの解説はこちらから。

DC10年計画『神々と怪物』に関する記事はこちらから。

グリーンランタンに関する記事はこちらから。

『バットガール(原題:Batgirl)』のお蔵入りに関する記事はこちらから。

ヘンリー・カヴィル氏を巡るスーパーマンの騒動に関する記事はこちらから。

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鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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