『ザ・フラッシュ』 最後のあの人は誰?ネタバレ解説&考察 | VG+ (バゴプラ)

『ザ・フラッシュ』 最後のあの人は誰?ネタバレ解説&考察

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2023年6月16日全世界公開開始

主演のエズラ・ミラーの相次ぐ不祥事や、監督のアンディ・ムスキエティの失言など、公開前からトラブルが続いた『ザ・フラッシュ』が2023年6月16日に全世界で公開され、2024年3月6日にはNetflixで配信される。DCEU(DCエクステンデッドユニバース)のリランチ(再構築)の作品であり、ジェームズ・ガン共同CEOが率いるDCU(DCユニバース)の始まりとなる『ザ・フラッシュ』。

そのエンドクレジットは非常に驚きに満ちたものだった。本記事では、そのエンドクレジットで登場したキャラクターについて解説、考察していきたいと思う。なお、本記事は『ザ・フラッシュ』のネタバレと、アローバースの一部ネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ザ・フラッシュ』の内容に関するネタバレを含みます。

変えてはいけなかったもの

トマト缶

『ザ・フラッシュ』の最重要キーワードがトマト缶だ。トマト缶の買い忘れがフラッシュ/バリー・アレンの両親を奪い、未来からやってきたフラッシュがトマト缶を買い物かごに入れたことで世界は崩壊していく。それにより、未来だけではなく、過去すらも変容していくのだ。

未来から来たフラッシュ/バリー・アレンはすべてをもとに戻そうとするが、それはすべて裏目に出る。過去のバリー・アレンをフラッシュにしようとしたことで未来のバリー・アレンは能力を失い、さらに『マン・オブ・スティール』(2013)で起きたゾッド将軍襲撃事件がもう一度起きたのにも関わらず、スーパーマン、ワンダーウーマン、アクアマン、サイボーグとジャスティス・リーグのメンバーは全員消えてしまった。

唯一残されたのが、既に過去の人となっているマイケル・キートン演じるバットマン/ブルース・ウェインだけだった。世界一の探偵である彼の力を借り、サッシャ・カジェ演じるスーパーガール/カーラ・ゾー=エルの救出やフラッシュの力の復活に成功するバリー・アレンたち。だが、何度繰り返してもゾッド将軍率いるクリプトン人たちによってバットマン/ブルース・ウェインとカスーパーガール/カーラ・ゾー=エルは命を落とすのだ。

ダーク・フラッシュ

タイムスリップによるやり直しにこだわりはじめ、狂気を帯び始める過去のフラッシュ/バリー・アレン。それに対して未来のフラッシュ/バリー・アレンは「解けない問題もある」という母親の言葉を思い出し、過去を変えること自体が不可能だった、前へと進むべきだったと悟るのだった。しかし、その言葉は過去のフラッシュ/バリー・アレンの耳には届かない。

そこに謎のスピードスター(超高速移動できる者の総称)のダーク・フラッシュが攻撃を仕掛ける。以前も未来のフラッシュ/バリー・アレンを攻撃して別の時間軸の交差点を生み出したダーク・フラッシュだが、その正体はタイムスリップによるやり直しを繰り返し続けて老人になった過去のフラッシュ/バリー・アレンだった。

ダーク・フラッシュの誕生には「母親を救う」という未来のフラッシュ/バリー・アレンの行動とそれによって「過去のバリー・アレンがフラッシュ」になるという2つが揃うことが必要だった。そのため、ダーク・フラッシュはフラッシュ/バリー・アレンが過去から未来に戻る過程で攻撃して2013年にはじき出し、過去の自分をフラッシュに変えさせる必要性があった。この複雑な「卵が先か、鶏が先か」というタイムループがダーク・フラッシュには必要だったのだ。

この設定はアローバース版『THE FLASH/フラッシュ』で登場したサビターに似ている。サビターはスピードの神を自称するヴィランで、バリー・アレンの婚約者アイリス・ウェストを殺害したヴィランだ。名前はヒンドゥー教の神のサヴィトルから来ている。

サビターの正体は未来のバリー・アレンがサビターを倒すために連れてきた過去のバリー・アレンであった。スピードスターは時空連続体の影響を受けにくく、その性質を利用して過去の自分を連れて来ても今の時間軸への影響が薄いという特徴がある。それを利用して過去の自分を呼び出し、分身か、クローンのように扱うことができるのだ。これらのスピードスターは「残存した時間軸」と呼ばれ、バリー・アレンが婚約者を救うためにフラッシュを大量に呼び出すべく、この性質を活かして過去から何度も自分を連れて来ていた。その中でサビターとの戦いに生き残るも、本物でありながら残存した時間軸という偽物のジレンマに陥ったバリー・アレンがサビターの正体だったのだ。。

THE FLASH/フラッシュ

サビターとループの終わり

アローバースでは、サビターを倒した後に残存する時間軸のバリー・アレンは、本物のバリー・アレンが複数存在するという状況と周囲からの対応で精神的に破綻してしまう。そして未来のフラッシュが過去に戻り、自分を未来に連れてくることで現在の自分である「残存する時間軸」が生み出すために、そのきっかけとなるサビターとなる。複雑なタイムループだ。ダーク・フラッシュもこれと似た複雑なタイムループの中で、過去のバリー・アレンが未来のフラッシュの手でフラッシュになるという事象を引き起こさせることで誕生した存在だと考えられる。

『ザ・フラッシュ』でもサビターを思わせる演出を見ることができ、バリー・アレンの部屋の壁には様々な神話の神々の絵が飾られている。その中でもひと際大きくヒンドゥー教の神々が飾られているのだ。特に母親からのあだ名である猿にこだわりがあるのか猿の姿をしたハヌマーンも飾れている。

しかし、サビターとの戦いで自分を生み出されるために婚約者アイリス・ウェストを殺害したサビターとは異なり、ダーク・フラッシュの最終目的は完璧なやり直しの遂行だ。タイムループを終わらせようとする未来のフラッシュ/バリー・アレンに危機感を覚えたダーク・フラッシュは彼の殺害を試みるが、自分自身である過去のフラッシュ/バリー・アレンが彼を庇ったことでダーク・フラッシュは消滅していく。

そして大きすぎる犠牲のもとで生き残ったフラッシュ/バリー・アレンは過去へ戻り、自分が買い物かごに入れたトマト缶をあるべき場所に戻し、母親に別れを告げるのだった。

変わったもの

裁判の行方

すべてあるべき状態に戻したはずのフラッシュ/バリー・アレンは、遅刻しながらも母親殺害の容疑をかけられた父親の裁判へ向かう。最初こそ、証拠映像には父親の顔が映っていなかったが、フラッシュ/バリー・アレンがトマト缶をもう一度売り場に戻したことでトマト缶の場所が僅かに変わり、それを取りに来た父親の顔の向きも僅かに変わったことで、顔全体が映るように変わっていた。

トマト缶一つによって裁判結果も変わったのだ。予期せぬ時間軸への影響で裁判が有利に運んだことに歓喜するバリー・アレン。その彼のもとに、証拠映像にも協力したブルース・ウェイン/バットマンが訪ねてくる。

ブルース・ウェイン登場

現れたブルース・ウェイン/バットマンの姿はベン・アフレックでも、マイケル・キートンでもなく、何と『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』(1997)でバットマン/ブルース・ウェインを演じたジョージ・クルーニーだった。『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』はアーノルド・シュワルツネッガー演じるMr.フリーズとユマ・サーマン演じるポイズン・アイビーが登場する作品で、玩具の販促と同性愛の暗喩が批判の的になった作品だ。

ジョージ・クルーニーと言えば自身がバットマン/ブルース・ウェインを演じた『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』に批判的なことで有名である。ジョエル・シュマッカー監督はスーツに乳首をつけるのをギリシャ彫刻的な美だと表現したが、ジョージ・クルーニーは「私たちがフランチャイズを殺してしまったかもしれない」と考え、作品を金の無駄だと言い切るほど批判的だった。そのようなジョージ・クルーニーの再演には驚きをファンとしては隠せない。

変わらないもの

ポストクレジットで、ジョージ・クルーニーの再演という衝撃的な展開に対するファンの意見を代弁するように酔いつぶれたジェイソン・モモア演じるアクアマン/アーサー・カリーにバットマン/ブルース・ウェインが変わったと熱弁するフラッシュ/バリー・アレン。

この場面はファンの意見の代弁と共にアクアマン/アーサー・カリーを引き続きジェイソン・モモアが演じることを表現していた。このポストクレジットによってアメリカで 2023年12月20日公開予定の『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム (原題:Aquaman and the Lost Kingdom)』に対するファンへの不安はひとまずは解消されることになった。

大きすぎたノイズ

映画外での相次ぐ不祥事

この映画を観るにあたって、心のそこから楽しめない、何か喉元に引っかかるような感覚を生じさせる理由として映画外でのエズラ・ミラーの相次ぐ不祥事が映画内でのブラックジョークと最悪の形でリンクしてしまっていることが挙げられる。未成年にちやほやされる場面ではエズラ・ミラーが12歳の少女をグルーミングしたという告発が、赤ん坊や薬漬けに関する場面ではエズラ・ミラーが幼児を大麻と銃の中に放置したという不祥事が浮かんでしまうのだ。

さらには物語の中でブラックジョーク扱いされている精神科でのカウンセリングの話題は、まさしく現在のエズラ・ミラーが置かれている状況だ。さらには最後の場面で酔いつぶれて問題を起こすアクアマン/アーサー・カリーをフラッシュ/バリー・アレンだが、現実でエズラ・ミラーは酒に酔って何度も逮捕され、有罪判決になっているものもある。そのため、作品や俳優を追ってきたファンとしては心の底から笑うことが難しいのだ。

前に進むのか、それとも過去の栄光にすがるのか

未来に進むことをテーマにした『ザ・フラッシュ』だったが、その最後を飾った新しいバットマン/ブルース・ウェインのキャストは新進気鋭の若手や今までやってこなかったキャストではなく、『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』でバットマン/ブルース・ウェインを演じたジョージ・クルーニーというノスタルジーを刺激することを意識したものだった。

前に進むことをテーマにしていた分、そこには少しがっかりしてしまった。ある意味ではジョージ・クルーニーも過去を振り切って前に進んでいることを表現しているのかもしれないが、新キャストを期待していた分の揺り戻しが激しかった印象だ。一方で、ジェームズ・共同CEOはジョージ・クルーニーが新バットマンになることはないとも発言しており、混乱してしまう。こうしたファンの感覚にどう向き合っていくのだろうか。今後のDCUの展開に期待したい。

『ザ・フラッシュ』は2024年3月6日よりNetflixにて配信開始。

ザ・フラッシュ公式サイト

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『ザ・フラッシュ』におけるマルチバースの解説&考察記事はこちらから。

『ザ・フラッシュ』に登場するバットマンについての記事はこちらから。

スピードスターに関する解説記事はこちらから。

『ザ・フラッシュ』のヴィランとスーパーガールについての解説&考察はこちらの記事で。

DCU最初の映画となる『ブルービートル』予告の解説&考察はこちらから。

『ザ・フラッシュ』公開までの経緯のまとめはこちらから。

DCU10年計画『神々と怪物』の全作品の紹介はこちらから。

ヘンリー・カヴィルのスーパーマン降板に関する経緯はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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