コスモの性別について回答
映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』は2023年5月3日(水・祝) に公開されると、国内興収は10億円を突破し、シリーズ最高興収も見えてきた。好調を維持する『GotG3』だが、Twitterではユーザーがジェームズ・ガン監督にある問いかけを行い、それに対する同監督の回答が注目を集めている。
ジェームズ・ガン監督はTwitter上で積極的にファンの質問に回答することで知られる。そのガン監督が、ロケット・ライラ・フロア・ティーフのモーションキャプチャ撮影時の画像をTwitterに投稿したところ、あるユーザーから「なぜコスモを雌にしたんですか。彼は(原作で)ずっと男の子だったのに」という質問が投じられた。
会話の流れも何もあったものではないが、ガン監督は親切にもこう回答した。
Because Cosmo is based on Laika, the Russian dog, who was a female, so I gender-swapped her back.
— James Gunn (@JamesGunn) May 14, 2023
なぜならコスモはライカをベースにしているからです。ライカはロシアの犬で、雌でした。なので彼女の性別を戻したんです。
ライカはソ連の宇宙船スプートニク2号に乗せられて宇宙へ送り出された実在の犬。地球軌道の周回に成功した最初の動物とされており、打ち上げから10日後に安楽死させられたとも、4日目には死んでいたともされている。いずれにせよコスモが『GotG3』の劇中で話す通り、死ぬと分かっていて人間によって宇宙へ送られた犬なのだ。
宇宙犬コスモの設定は、宇宙に打ち上げられた後に宇宙線を浴び、特殊な力を得て生き延びたというもの。現実には救われることなく、人間の身勝手によって命を失ったライカの“もしも”の姿がコスモなのだ。
アダプテーションの議論に?
だが、ジェームズ・ガン監督のこの回答に納得いかない別のユーザーは「でも……なぜ? なぜコミックに忠実にしなかったんですか?」と食い下がる。「原作コミックでは雄犬で、それを“戻した”ことにはなりません。なぜなら最初から雌ではないからです。(ライカには)インスパイアされただけです」と畳み掛ける。これに対し、ガン監督はこう回答している。
I’d rather honor the real dog who died in outer space. Cosmo would not exist without Laika. By the way, I changed Mantis, Drax, High Evo, and others from humans to aliens, which seems a bigger change. Why does it upset you so much?
— James Gunn (@JamesGunn) May 14, 2023
むしろ宇宙で亡くなった本物の犬に敬意を払いたいです。コスモはライカなしでは存在していません。ちなみに、私はマンティス、ドラックス、ハイ・エボリューショナリーや他の人々を人間からエイリアンという設定に変更しました。そっちの方がより大きな変更です。なのに、なぜそのこと(コスモの性別変更)があなたをそんなに怒らせるんですか?
動物への虐待と動物の権利は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』のテーマでもある。実在したライカへのリスペクトを払った変更に対してやたらと噛み付いてくるユーザーに、ガン監督は丁寧にも他のキャラクターの設定変更例も挙げて「なぜそんなに怒ってるの?」と問いかけている。
それに、最初に質問がついた元のツイートはライラ達の撮影シーンであり、コスモの性別とは何の関係もない。コミックで雄だった設定が映画で雌に変わった件にだけ執拗にこだわる背景には、犬にまで及ぶミソジニー(女性嫌悪感情)があるのだろう。もはやアダプテーション論の議論にもなっていない。
だが、同じユーザーは「アデプテーション(脚色・映像作品などへの改作)のポイントはアダプト(適応)することです。私が言ったように、あなたは原作をアダプトするんです。そして、私はコミックで確立されたキャラクターが変更されることが嫌いです(マルチバース的なものであることを明記しない限り)」と食い下がる。これに対し、ガン監督はこう返している。
It’s always a multiverse thing. That’s what the MCU is – a different version of Earth 616. And, again, you should look up the meaning of “adapt.”
— James Gunn (@JamesGunn) May 14, 2023
ずっとマルチバース的なものですよ。それがMCU——異なるバージョンのアース616——です。それから、「アダプト」の意味を調べてください。
「実写化」「映像化」「ノベライズ」などに伴う「原作改変」をめぐるアダプテーション論については、議論は十分に蓄積されている。優れたアダプテーションは原作の再現ではなく、各メディアの特性、時代やユーザー層に応じた作品に作り変えることであるという考えは、今では一般的だ。
原作の再現だけを求めるのであれば、MCUに限らず、現代のエンタメコンテンツはあまり楽しめないだろう。原作ゲームファンを喜ばせたドラマ『THE LAST OF US』(2023-) でさえ、ドラマというメディアに適したアダプテーションが行われていた。
それにしても、「雄から雌へ」の部分にだけ執拗に噛み付くユーザーに最後まで相手をするジェームズ・ガン監督もなかなか我慢強い。そんなガン監督が次にアダプテーションに挑むのは、2025年7月米公開予定の『スーパーマン:レガシー(原題)』だ。はっきりした基準を持って制作に臨む同監督の次回作に期待しよう。
映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』は2023年5月3日(水・祝) より劇場公開。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』のオリジナル・サウンドトラックは発売中&配信中。
ジェームズ・ガン監督「はブラープのお気に入りの曲」についてもTwitterで回答している。詳しくはこちらから。
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