ドラマ『ラスアス』はなぜ成功したのか ゲームの実写化に最適解示す | VG+ (バゴプラ)

ドラマ『ラスアス』はなぜ成功したのか ゲームの実写化に最適解示す

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ドラマ『ラスアス』シーズン1完結

2023年1月からHBO Maxで、日本ではU-NEXTで配信されたドラマ『THE LAST OF US』シーズン1は高い評価を得たまま日本時間3月13日(月) に最終回となる第9話の配信を迎えた。シーズン1が完結し、既に製作が発表されているシーズン2に期待がかかっている。

原作ゲームの「The Last of Us」は2022年12月の時点で、シリーズ累計3,700万本以上の売り上げを記録する大人気作品。ドラマ配信後には英国でゲーム版の売り上げが2倍以上に上昇するなど、ドラマとゲームの間で相乗効果をもたらしている。

ドラマ版『ラスアス』の米国内の視聴者数は、第1話の58万人からスタートし、第8話では103万人にまで膨れあがった。第2話「感染」の配信後には、早くもシーズン2への更新を発表。第3話「長い間」が「エミー賞確実」「ドラマ史上最高のエピソード」という声を受けて大きな注目を集めると、その後も毎週高いクオリティのエピソードを配信し続けた。

『ラスアス』には熱心なファンも多いことから、当初は実写化に不安の声もあがっていた。しかし、蓋を開けてみれば絶賛の声があがり、高評価のままシーズン1のフィナーレを迎えている。誰がどう見ても“成功”と言う他ない結果を残した本作。『ラスアス』の実写化が成功した理由はどこにあるのだろうか。

『ラスアス』実写化はなぜ成功したのか

ドラマ『ラスアス』は、ゲーム作品の実写化はドラマというフォーマットが最適解であるということを示したと言える。これまで、ゲームの実写化は映画化が多く、10時間以上、場合によっては数十時間かけてクリアする内容をたった2時間に押し込めてしまうという難点があった(Netflixではドラマ『バイオハザード』が配信されたが、原作とは違う物語が描かれた)。

ゲーム作品を2時間に収めるのは流石に無理があり、そのまま実写化してもダイジェスト版のようになってしまう。ゲームでプレイヤーが数日〜数週間かけて体験するストーリーは薄いものとなってしまうため、ゲームの実写化映画では設定やストーリーを大きく変更するという手法が取られてきたように思える。

だが、『ラスアス』は1シーズンに10時間近くを費やせるドラマでの実写化を選んだ。その上でゲームの物語は変えず、むしろ余っている時間でゲームの物語を強化するバックグラウンドを描いていくという手法をとった。これにより、ドラマ作品としても様々なキャラクターの視点を取り入れた重厚な内容になる上、ゲームプレイ済みの視聴者にとっても、ゲームで描ききれなかった物語を補完する同人誌、またはスピンオフ的な役割を果たすことになった。

この『ラスアス』のストーリーは変えず、たっぷり時間を使ってゲームで描ききれなかった部分を強化していくというスタイルは、ゲーム実写化の一つの指針になるのではないだろうか。

映画並みのクオリティ

加えて、ドラマ『ラスアス』はゲームプレイ済みで次の展開が分かっていても各エピソードが楽しめる仕掛けがあった。それは、毎週入れ替わりで実績のある監督が各エピソードを指揮するというものだ。その中には映画監督も含まれており、各エピソードが短編映画のような重厚さを持って描かれることになった。

脚本家のクレイグ・メイジンが監督を務めた第1話「闇の中にいる時こそ…」に続き、第2話「感染」ではゲーム原作者のニール・ドラックマンが初めてドラマ監督を務め、第3話「長い間」ではドラマ『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』(2020) のピーター・ホアー監督、第4話「この手につかまって」と第5話「耐えて生きぬけ」ではドラマ『アンブレラ・アカデミー』(2019-) などで知られるジェレミー・ウェッブ監督、第6話「親族」では映画『アイダよ、何処へ?』(2020) のヤスミラ・ジュバニッチ監督、第7話「残されたもの」ではNetflix『デッド・トゥ・ミー 〜さようならの裏に〜』(2019-) のリサ・ジョンソン監督、第8話「困っている時は」と第9話「光を探せ」では映画『ボーダー 二つの世界』(2018) のアリ・アッバシ監督が指揮をとった。

エピソードの長さも第1話は80分、第3話は75分という長尺になっており、制作費は1話あたり10億円以上が費やされているなど、まさに映画並みの作り込み方となっている。つまり、『ラスアス』はミニ映画9本分で実写化されたと捉えることもできる。濃厚なストーリー体験で高い評価を受けたゲームこそ、予算と時間をたっぷりかけて実写化されるべきだ。そしてそのフォーマットは『ラスアス』が見事に示した。次に続くのはどのゲームだろうか?

ドラマ『THE LAST OF US』シーズン1は全9話がU-NEXTで独占配信中。

原作ゲームの『The Last of Us』はPS5リメイク版が発売中。

『The Last of Us』と続編『The Last of Us II』はPS4でも発売中。

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【ネタバレ注意!】ドラマ『THE LAST OF US』最終話第9話のネタバレ解説はこちらから。

シーズン2決定の情報はこちらから。

シーズン2についてエリー役のベラ・ラムジーは、シーズン1とは「違うもの」として意気込みを語った。詳しくはこちらから。

シーズン2について製作陣が語った内容はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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