『マッドマックス:フュリオサ』に登場した○○○に注目集まる
1979年にメル・ギブソン主演、ジョージ・ミラー監督作として公開された『マッドマックス』。それ以降、「マッドマックス」シリーズは拡大し、2015年にはトム・ハーディ主演の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が公開された。
そこから9年越しにシャーリーズ・セロンが演じた人気キャラクターの警備大隊長フュリオサの前日譚である『マッドマックス:フュリオサ』がアニャ・テイラー=ジョイ主演で2024年5月31日(金)に公開された。
『マッドマックス:フュリオサ』で登場したあるキャラクターに注目が集まっている。そのキャラクターとは何者で、どのような役割があるのだろうか。本記事では『マッドマックス:フュリオサ』に登場したキャラクターについて考察と解説をしていこう。
なお、以下の内容は『マッドマックス:フュリオサ』本編のネタバレを含むので、必ず劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『マッドマックス:フュリオサ』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『マッドマックス:フュリオサ』に登場したマックス・ロカタンスキー
V8インターセプターとロードウォーリアー
『マッドマックス:フュリオサ』終盤でディメンタスとの戦いにより腕が千切れたフュリオサ。彼女が砦〈シタデル〉に向かうのを崖の上から1973年製フォードファルコンXB GTクーペを改造したV8インターセプターの横で見つめている男が登場する。
この男はドッグフードらしき缶詰を食べており、それらの特徴から「マッドマックス」シリーズの主人公でロードウォーリアーと呼ばれるマクシミリアン・“マックス”・ロカタンスキーだと考察できる。マックスは『マッドマックス2』(1981)で愛犬を連れており、そこでドッグフードを食べている。
愛犬がいないことからこのときのマックスが第3作『マッドマックス/サンダードーム』と第4作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の間であることが考察できる。ここでマックスを演じているのは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や「ヴェノム」シリーズでトム・ハーディのスタントダブルを担当しており、トム・ハーディの親友でもあるジェイコブ・トムリだ。
この後、フュリオサは意識を失い、老婆のもとまで引きずられていく。老婆はフュリオサが幼少期の頃もフュリオサを自分の穴倉に引きずり込もうとした人物で、人間の死体で蛆虫を育てて食糧にしている。フュリオサは偶然にも蛆虫に壊死組織を食べさせ患部を清浄化し、正常な肉芽組織の再生を促す方法であるマゴット療法によって腕の傷を治した。
この際に老婆は「ここは安全だ」と言って出ていこうとするフュリオサを引き留めるが、フュリオサはその手を振りほどいて出ていっている。それではいったい誰がフュリオサをこの穴倉まで引きずっていったのだろうか。
フュリオサを救ったのはマックス?
フュリオサが意識を失ったのは砦〈シタデル〉からある程度距離があるところで、老婆がそこまで行ってフュリオサを連れて帰ったとは体力的に考え難い。そこで浮かび上がってくるのが「マックスが砦〈シタデル〉まで連れて行ったのではないか」という考察だ。
マックスは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で砦〈シタデル〉の周辺にいるところをウォー・ボーイズに捕まっており、輸血袋にされてしまっている。そのため、『マッドマックス/サンダードーム』以降のマックスは砦〈シタデル〉の周辺を拠点に活動していたことが考えられる。
そうなると興味深いのが、マックスがフュリオサと面識があったことになる点だ。左腕のない戦士フュリオサという人物はマックスの印象に強く残ったことが考えられる。
マックスは基本的に残酷な文明崩壊後の世界で人間不信になり、守れなかった人々の幻影に悩まされているキャラクターである。そのため、フュリオサをある程度信頼できそうな老婆の住む穴倉までは連れて行ったが、そのあとの治療まではしなかったと考察できる。
『マッドマックス:フュリオサ』でのマックスのバックグラウンド
マックスはフュリオサを知っていた?
しかし、左腕を失った戦士の存在はマックスの中でも印象に強く残ったのであろう。マックスは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の冒頭で「この荒れはてた地で俺に残された本能が叫ぶ。“生きろ”と」とナレーションで語っている。
過去の経験からマックスは他者に対して懐疑的になり、救えなかった人々の亡霊に悩まされていることで他者を救うことからも身を引いていた。それでもマックスは、紆余曲折在りながらもフュリオサとイモータン・ジョーの子産み女にされていた妻たちのワイブズを助ける道を選んだ。そこには、かつて助けたフュリオサの影があったのかもしれない。
フュリオサがマックスを信用した理由はジャック?
一方でマックスをフュリオサが信用したのには、警備隊長ジャックの影響があったのかもしれない。マックスとジャックの共通点は多い。フュリオサを無条件で助け、そして感謝も求めず去っていく。
それはジョージ・ミラー監督が参考にしたアメリカ合衆国の神話学者ジョーゼフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』で語られた貴種流離譚(本来は高い身分の者が不幸な境遇に置かれ、そこで冒険などを通して正義を果たすという英雄譚、もしくはヒーローズ・ジャーニーの総称)をもとにしたキャラクター造形だと考察できる。
マックスとジャック。フュリオサとの別れ方は違ったが、本来は暴走族専門の特殊警察メイン・フォース・パトロール(M.F.P.)の隊員のマックスと、本来は軍人家系のジャックがフュリオサを助けて感謝を求めないというのは神話の英雄そのものである。ジャックは犬に食べられて生死不明だったが、フュリオサはジャックの面影をマックスに見て、それによってイモータン・ジョーとの戦いにマックスの協力を求めたのかもしれない。
『マッドマックス:フュリオサ』のマックスは英雄?
ジョージ・ミラー監督が描く貴種流離譚の英雄
『マッドマックス:フュリオサ』に出演したマックスも、人間への懐疑的な部分があるかもしれないが、何も言わずにフュリオサを助けて感謝を求めず去っていくなど、神話の英雄の要素を備えている。ジョージ・ミラー監督の描くマッドマックス・サーガという荒廃した近未来を舞台にした神話の世界では、マックスは貴種流離譚の英雄を体現している存在だと考察できる。
『マッドマックス:フュリオサ』はカメオ出演であってもマックスという存在の神話性を崩すことはなく、それを怒りの体現者であるフュリオサと絡めたのは素晴らしい。マッドマックス・サーガが広がっていく中で、マックスの存在はどのように変化していくのだろうか。ジョージ・ミラー監督はマッドマックス・サーガを広げていくことに乗り気であり、マックスは今後もカメオ出演するのかに注目が集まる。
映画『マッドマックス:フュリオサ』は2024年5月31日(金)より全国の劇場で公開。
「マッドマックス」は過去4作を収録した「マッドマックス」アンソロジー4K Ultra HD BOXが発売中。
『マッドマックス:フュリオサ』のサントラは配信中。
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ジョージ・ミラー監督はMCU映画『ソー5』にも興味を示している。詳しくはこちらから。
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