映画『マッドマックス:フュリオサ』公開
映画『マッドマックス:フュリオサ』が2024年5月31日(金) より全国の劇場で公開された。本作は2015年公開の映画『マッドマックス 怒りのデスロード』に続く「マッドマックス」フランチャイズの最新作。前作で注目を集めたフュリオサのオリジンを描く作品だ。
一方、『フュリオサ』で注目を集めたのは新キャラであるジャックというキャラクターだ。トム・バーク演じる警備隊長のジャックは『フュリオサ』のキーキャラクターとして活躍を見せている。今回は、そのジャックというキャラクターについて、作中の描かれ方と俳優のインタビューを通して深掘りしていこう。以下の内容は本編のネタバレを含むので、必ず劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『マッドマックス:フュリオサ』の内容に関するネタバレを含みます。
『フュリオサ』に登場したジャックとは何者か
フュリオサにとってのジャック
『マッドマックス:フュリオサ』で初登場を果たしたジャックは、本作の中盤でイモータン・ジョーが仕切るシタデルの警備隊長として存在感を発揮した。ジャックの仕事はシタデルで取れた食料を武器工場のバレット・ファームや油田のガスタウンに運び、そこから武器やガソリンを持ち帰ること。「マッドマックス」の世界では道中での襲撃が日常茶飯事であるため、運転手である警備隊長には相当な腕が求められる。
貴重な資源を任されるほどイモータン・ジョーの信頼を受けているジャックだが、明らかに他の部下たちとは異なる雰囲気を持っている。ジャックは完成したトラック〈ウォー・タンク〉が襲われた際に、そこに潜んでいたフュリオサと共闘すると、故郷を目指すフュリオサに協力的な姿勢を見せ始める。
一時はトラックからフュリオサを放り出したジャックだったが、荒野で孤立したフュリオサを徒歩で迎えに行くと、その腕を見込んで自分と手を組んで脱出の準備をしないかと持ちかける。ここまでフュリオサは、ディメンタスからは“娘”として、イモータン・ジョーからは“妻”として、つまり女性であることを理由に“所有物”としての視線を受けてきた。だが、ジャックはフュリオサが女性であることを知っても、属性とは関係なくフュリオサの“力”を買ってオファーを出すのだ。
こうしたジャックの姿は、「マッドマックス」シリーズの主人公であるマックスと重なるものがある。フュリオサにとっては、ここで信頼できる男性と出会っていたことが、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でマックスと共闘する結果につながったのではないだろうか。
ジャックとフュリオサの関係は?
では、ジャックとフュリオサの関係は正式にはどのように設定されているのだろうか。米Vanity Fairによると、二人の間にロマンスがあるかどうかについてはチーム内で多くの議論があったという。トム・バークが最初に読んだ脚本のドラフトでは早い段階で二人のロマンスが提示されていたが、バークはこれを「よくない」と感じたと話している。
最初の段階では二人ともアセクシャル(無性愛者)の傾向があったのではないか、とも話しており、トム・バークは二人の関係について様々な可能性を考えていたようだ。ジャックとフュリオサの関係については、ジョージ・ミラー監督とフュリオサ役のアニャ・テイラー=ジョイと三人で話し合いを重ねたとも話している。
ジョージ・ミラー監督は二人の間にロマンスのようなものがあると考え、アニャ・テイラー=ジョイは二人の関係を一種の婚姻関係と考えたが「非常に注意深くあらなければならない特殊な環境でのこと」という留保をつけた。一方でトム・バークは、二人はより安全な環境に身を置くまではロマンスのことは脇に置いているという意見を主張したという。三者三様の意見の中で、フュリオサとジャックの関係は様々な捉え方ができる開かれたものになったと言える。
ジャックのバックグラウンド
ジャックの両親は?
気になるのは、ジャックのバックグラウンドについて。『マッドマックス:フュリオサ』では、ジャックはフュリオサに自分の両親が兵士だったと話している。戦闘シーンを見るとジャック自身も相当な戦闘スキルの持ち主であり、軍人の家系であることを窺わせている。
『フュリオサ』で新たにイモータン・ジョーを演じたラッキー・ヒュームは、公式パンフレットの中で、イモータン・ジョーがかつて“ジョー・ムーア大佐”と呼ばれる軍人だったこと、ジャックの父がジョー・ムーア大佐に仕えていたことを明かしている。また、前述のVanity Fairによると、ジャック役のトム・バークはジョージ・ミラー監督から、ジャックの両親は共に軍人でかつてのイモータン・ジョーのことを知っていたという背景の説明を受けたという。
ジョージ・ミラー監督は「マッドマックス」シリーズに厳密な年表は存在しないと話しているが、予告編では『フュリオサ』の舞台は世界の崩壊から45年後とされている。映画公開時点でジャック役のトム・バークは42歳なので、ジャックが大体40歳前後だとすると、ジャックは世界の崩壊後に生まれた子どもということになる。
また、パンフレットではトム・バークはジャックが独裁者になる前にイモータン・ジョーのことを知っており、大勢の人々と避難してシタデルに来たと話している。軍人だったジャックの両親は上司であるジョー・ムーア大佐と共に崩壊後の世界で人々を助けていたのだろう。
『フュリオサ』の中でも描かれたように、イモータン・ジョーは限られた資源の管理のために独裁的な振る舞いを強めていったのかもしれない。ジャックはその中で軍人だった両親の誇りを失わず、イモータン・ジョーに善人だった過去の面影を見ながら彼に仕えていると考察できる。
ジャックのその後
ジャックは死んだ?
そんなジャックの物語は今後も描かれることになるのだろうか。お気づきの方もいるだろうが、実は『マッドマックス:フュリオサ』の劇中においては、ジャックが明確に死んだという描写はない。フュリオサと共にディメンタスに捕まり、かつてのマックスと同じようにバイクに縄で手をくくりつけられて引きずり回される様子が描かれたが、しばらくしてフュリオサが腕を断って脱走していたことにディメンタスが気付き、ジャックの状況は有耶無耶になっていた。
ということは、ジャックはまだ生きていて、ジャックを主人公としたスピンオフの制作もあり得るのでは……? と思ってしまうのがファン心理というものだ。この疑問に対して、ジャック役のトム・バークはハッキリと答えを示している。
米GQのインタビューに応えたトム・バークは、脚本を読んだ段階ではジャックが「死んだ」という文字は目にしなかったと語っている。しかし、最終的にジャックは死んだのかとジョージ・ミラー監督に尋ねると、「あぁ、そうそうそう」という答えが返ってきたという。トム・バークはカムバックもあり得るかもしれないと思い一応確認しておいたということだが、ジャックがその後「生きていた!」という展開はなさそうである。
それでも、『フュリオサ』のようにそのオリジンを描くスピンオフならあり得るかもしれない。『フュリオサ』はフュリオサが大隊長になるまでの物語だったが、ジャックが警備隊長になるまでの物語も見てみたい。『フュリオサ』にさらなる魅力をもたらしてくれたジャックとトム・バークのカムバックに期待しよう。
映画『マッドマックス:フュリオサ』は2024年5月31日(金)より全国の劇場で公開。
「マッドマックス」は過去4作を収録した「マッドマックス」アンソロジー4K Ultra HD BOXが発売中。
『マッドマックス:フュリオサ』のサントラは配信中。
Source
Vanity Fair / GQ
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