ネタバレ解説『ザ・バットマン』ラストについて監督が意図を語る「それがこの映画のメッセージ」 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『ザ・バットマン』ラストについて監督が意図を語る「それがこの映画のメッセージ」

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『ザ・バットマン』の衝撃

DC映画最新作にして、マット・リーヴス監督による新たな「バットマン」ユニバースの第一章『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が2022年3月11日(金) より日本の劇場で公開された。本作は、「ワンダーウーマン」「アクアマン」シリーズなどでDCが拡張するDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)には属さない完全新作として製作され、バットマンになってから2年という若き日のブルース・ウェインをロバート・パティンソンが新たに演じる。

新たな「バットマン」シリーズの序章に相応しい仕上がりとなっていた本作は、ミステリー色の強い展開を見せ、ラストでは“なぞなぞ”のヴィランであるリドラーを通してある疑問を投げかけた。マット・リーヴス監督は、どのような思いでこのラストを用意したのだろうか。

以下の内容は、映画『ザ・バットマン』の結末についての重大なネタバレを含むため、必ず劇場で本作を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・バットマン』のラスト

映画『ザ・バットマン』のラストでは、リドラーが“復讐”を掲げて自警行為に勤しむバットマンに共鳴して犯行に及んだこと、バットマンを仲間だと思っていたことが明らかになった。

リドラーは、自らが育った孤児院のための基金が権力者たちによって食い物にされていることを法廷会計士として知った。そして、この街の権力者たちに復讐するためにバットマンと同じくマスクを被った復讐者として暗躍するようになったのだ。

自らが権力者でもあるブルースはそうした痛みに無自覚で、自分の両親が殺されたことに対する復讐心から街に恐怖を与えて犯罪を減らそうとしていた。しかし、「俺は復讐だ」という自らと全く同じセリフを吐くリドラーの仲間を見て、自らがやるべきことは復讐ではなく、自分と同じように傷ついたゴッサムの希望の光になることだと気づく。

監督がラストの意図を語る

このラストについて、マット・リーヴス監督は米ニューヨーク・タイムズでその意図を解説している。バットマンが自らの正義に対する考えを改める展開はどのようにして生まれたのだろうか。

いちファンとしての自分にとってもそうなのですが、誰かが復讐を果たす姿を見たいと思う部分がある。願望充足というやつです。重要なことは、観る人に疑問を抱いてもらうことです。「待って、これって正しいのかな?」「本当にそうすべきなのかな?」ってね。

『ザ・バットマン』のラストの展開は、人々の中にある「復讐を果たしてほしい」という欲望を相対化し、観る人に疑問を抱かせることが目的だったという。マット・リーヴス監督は、若きバットマンを追い込むことによって、その目的を果たしたのだ。

彼(バットマン)には、自分自身と向き合ってほしかったんです。仮面を被ることなど、たくさんの手段について調べました。匿名であることによって、ある種の権力や無責任さが生まれ、同時にその匿名性が寛大さを生むこともあります——それは明るい側面ですね。バットマンにはその事実を何度も否定させ、最後には否定できなくなるようにしたかったんです。

匿名であることによって、人は寛容に振舞うことができる、つまり人助けや正義のために動きやすくなる側面もある。寄付を匿名で行うのもその例の一つだろう。一方で匿名であることによって、その行動は本当に正しいのか、その行いによってどんな影響が起こりうるのかという問いからも逃れることができる。リドラーを通してバットマンにその事実を突き付けることが、マット・リーヴス監督の狙いだったのだ。

バットマンの変化

そのようにして『ザ・バットマン』における象徴的なセリフとして機能した「俺は復讐だ」という一節は、実はコミック版やアニメ版でもバットマンが口にするセリフだ。マット・リーヴス監督は、今回あえて「俺は復讐だ」をヴィラン側に言わせたことについて、以下のように語っている。

アニメ『バットマン』ではケヴィン・コンロイ(バットマンの声優)が「私は復讐だ。私は夜だ。」と言うのですが、私にはその言葉が響きました。彼は自分の身に起きたことに復讐するために敵を倒します。

それが復讐の形なのですが、復讐だけでは不十分です。彼はそれ以上に成長しなければならない。それがこの映画のメッセージです。私は彼に、復讐心を剥き出しにする人間から、この暗闇の中にも希望があるということを皆に伝える人間になってほしいんです。それが彼に起きる内的な変化なのです。

バットマンというキャラクターは、個人的な復讐が行動原理になった“小さな正義”がその特徴だった。自分の過去とゴッサムの街にこだわるバットマンと、アメリカという国や世界を救おうとするスーパーマンの“大きな正義”は対比して描かれてきた。時には協力を要請するスーパーマンと対立することもあった。

映画『ザ・バットマン』では、若い頃のバットマンに正面から「それでいいのか」という問いかけを行い、バットマンを変化/成長させる作品だった。三部作の製作が予定されているマット・リーヴス監督の「バットマン」シリーズは、本作を船出の作品として、成長していくバットマンの姿を見せてくれるのかもしれない。

かつて、クリストファー・ノーラン監督は、《ダークナイト》トリロジーを一人の監督で作れた時代を振り返り、「あんな特権と贅沢を享受することはもうないでしょう」語った。その後に登場する「猿の惑星」新三部作も「スター・ウォーズ」続三部作も、公開スケジュールのタイトさが原因で、同じ監督が一貫して指揮を執ることはできなかった。

しかし、今回のマット・リーヴス監督版「バットマン」シリーズは、種を撒き、芽を育て、花を咲かせる行程を丁寧に経ていく“映画の時代”を取り戻そうとしているように思えてならない。スピンオフドラマも含め既に4作品の新作が予定されている『ザ・バットマン』のユニバースは、ロバート・パティンソンのブルース・ウェインを、どんなバットマンに育てていくのだろうか。

『ザ・バットマン』の続編とスピンオフに関する詳しい情報はこちらから。

『ザ・バットマン』終盤の徹底解説はこちらの記事で。

リドラーの職業から考える本作のキーワードとメッセージについてはこちらから。

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映画『THE BATMAN -ザ・バットマン-』は2022年3月11日(金)より日本全国で劇場公開。

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』公式サイト

Source
The New York Times

『ザ・バットマン』がDCEUに属さない理由はこちらの記事で。

10人目のキャットウーマン役、ゾーイ・クラヴィッツが語った思いはこちらの記事で。

本作でのバットモービルへのこだわりはこちらから。

全曲無料公開されている『ザ・バットマン』のサントラはこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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