ネタバレ考察『アバター3』はどうなる?『アバター2:ウェイ・オブ・ウォーター』の今後に注目 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察『アバター3』はどうなる?『アバター2:ウェイ・オブ・ウォーター』の今後に注目

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『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が公開され、第1作目の『アバター』(2009)から13年の時を経て全5部作へと歩み始めた「アバター」シリーズ。ジェームズ・キャメロン監督はすでに海以外に砂漠や山、北極のような極地の景色をつくり、それに関する文化や生物など設定を考えているとインタビューに答えているが、それでは直近で公開されるとみられる『アバター3』はどのような展開になるのだろうか。現在公開されている情報はおそらく2年ずつぐらいのペースでの公開になること、そして喜劇王チャールズ・チャップリン氏の孫であるウーナ・チャップリン氏やデヴィッド・シューリス氏が参加することぐらいである。

今回は『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を観て、その感想を通して『アバター3』及び今後の「アバター」シリーズの展開について考察していきたい。なお、本記事には『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の内容に関するネタバレを含みます。

映像美と生々しい植民地支配

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』でイーディ・ファルコ演じるフランシス・アードモア将軍率いるRDA社が地球からの移住政策で焦っていることが語られた。『アバター』から『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の間には10年の開きがあるとのことだが、その間に地球はかなり深刻な環境汚染に陥っていることが容易に想像できる。すでに『アバター』の時点で人類は地球の資源を食い潰し、壊滅的な状況に陥っていることが語られている。その頃は同化政策など投資家の顔色をうかがいながらの手法でナヴィを支配しようとしていたが、人類にはもうその猶予すら無いように思える。

奇しくも、2022年には同じく先住民族と入植者という名の侵略者との対立、そして欧米列強に支配されずに成長した「もしも」の世界を描いた『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022)が公開された。更にネイティブ・アメリカンの少女の視点から描かれた『プレデター:ザ・プレイ』(2022)もヒットするなど、ある意味で欧米諸国が植民地政策に向き合うときが来たのかもしれない。そこで描かれた部分が今後の「アバター」シリーズにも現れるのではないかと考える。

あり得るものとして、同化政策を『アバター』で描いた以上、『アバター3』では疫病などの故意の蔓延などもあり得るのではないだろうか。特に感染症に関してはこの数年、人類は痛いほど恐ろしさを思い知らされた。病気だけではなく、それがもたらす分断や対立、差別などの恐怖もよみがえらせたのだ。

RDA社はナヴィと人間のDNAを掛け合わせたアバターを生み出すほどの科学力を有しているため、彼らが何らかの疫病を生み出すこともあり得るだろうし、人類側には免疫などがあってもナヴィたちにとっては未知のウイルスを故意に撒くことすら厭わない可能性も十分にあり得る。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』ではナヴィがもう支配対象ではなく殲滅対象に移行しつつあることも語られている。

また、アメリカバイソンのような惑星パンドラの生物の乱獲による絶滅も展開として十分にあり得るだろう。『プレデター:ザ・プレイ』でも白人の入植者が与える一種の絶望として、そこら中に放置されたアメリカバイソンの死体が描写され、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』でもタルカン(トゥルクン)の脳から僅かな抗老化物質アムリタを採取すると、それ以外の死体は捨てるというマッコウクジラに対するアメリカ式捕鯨を想起させる場面も見られた。ここで重要になるのは生命の均衡、命の調和というナヴィたちの考えだと思われる。

自然の支配者になろうとする人間たち

アメリカバイソンを例にあげたが、アメリカバイソンをネイティブ・アメリカンの人々が全く狩らなかったわけではない。たとえば平原で暮らしていたスー族とされる人々もアメリカバイソンを食用とし、毛皮は衣服に、骨は鏃に活用してきた。

しかし、白人が入植すると猟銃で乱獲をはじめ、更にはネイティブ・アメリカンの飢餓作戦として積極的に乱獲を行い、ときには狩猟ツアーをはじめることすらあった。さらに言えば、捕鯨反対国のアメリカにも先住民生存捕鯨は是認しているなど、先住民族の人々の獲物を横取りするように乱獲し、それによって支配を試みた歴史が現実に存在している。

ナヴィの世界観では命は借り物であり、いずれ返さなければならないという循環の形をとっている。しかし、人類側にはそんなことは知ったことではない。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』でも語られたが、儲かればいい、それ以外に命の価値を測る定規がないような資本主義が極まった人間の醜さが表現されている。RDA社ならば飢餓作戦として動物の絶滅を図ってもおかしくはないし、『アバター3』で惑星パンドラへの入植が成功しているアピールとして投資家向けにRDA社主催の惑星パンドラ狩猟ツアーすら開いてもおかしくはない。

しかし、前述した通り地球は壊滅的な状況であり、人類側にそのような娯楽の余裕がないという考え方もあるだろう。だが、この点も前述したが命の価値は平等ではないのである。それは人類とナヴィとの間だけではなく、人類間でもあり得ることだ。『アバター』の時点で投資家の存在が示され、元海兵隊員たちは医療格差を語っていた。あの世界には地球側で激しい格差があることは明らかだ。滅亡しかけた地球から惑星パンドラに行ける人間の基準にもそれが関与していてもおかしくはない。

ナヴィの分断

『アバター』ではサム・ワーシントン氏演じる主人公のジェイク・サリーがトゥルーク(最期の影)と呼ばれるグレート・レオノプテリックスに乗り、トゥルーク・マクトとなって一時的に複数の部族をまとめ上げて人類を撃退したが、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』ではナヴィ内に分断の気配が漂い始めている。人類との戦いに関して海の民(リーフ・ピープル)は「自分たちは関係ない」と否定的な対応を示しているのもあるが、アバターの血縁者とそうでないものや、各部族の身体的特徴から互いに際どい関係性になっていることも描かれている。

ナヴィは本来、親指も合わせて指は4本だが、人類の遺伝子が加わったアバターは親指と合わせて人類と同じく5本指である。これをナヴィたちは悪魔の血が流れている証拠とし、ジェイクなどアバターの血縁者は忌避されている描写があった。また、海の民には尾びれがあり、肌の色が淡い水色だが森の民は尾で肌は濃い青色など住む地域ごとに差がある。

これは人類と同じだが、それゆえにお互いにその身体的特徴を理由に嫌悪しあっている描写も存在する。狡猾なRDA社がそこに付け込まない手はないだろう。『アバター3』では、そういった部族間の諍いを利用する展開や、それを諫めてジェイクが部族たちをまとめていく展開もあり得るだろう。

現実の歴史でも、植民地支配に部族間対立を利用した例は枚挙にいとまがない。近年の例ではルワンダで起きたフツ族過激派によるツチ族とフツ族穏健派の大虐殺「ルワンダ虐殺」があげられるだろう。この虐殺が起きた背景には植民地支配を行う際に両部族を隔て、ツチ族を優遇したことが原因の一つにあると考えられている。ジェームズ・キャメロン監督が『アバター3』以降の作品で砂漠や山、極地などのナヴィの登場を想定しているとすれば、そのような文化の差を利用したRDA社の植民地支配も想像に難くない。

奴隷化されるナヴィ

ここまで現実の事例を交えながら『アバター3』やそれ以降の「アバター」シリーズで起きてもおかしくない可能性をあげたが、この事例をあげないわけにはいかないだろう。植民地化された先に待っている最悪の未来の一つが奴隷化である。

ナヴィたちもその例外ではないと考えられる。惑星パンドラの大気は人類に合わないが、ナヴィたちは強靭な肉体を持ち、なおかつ大気にも適応しており、労働力としては持ってこいの存在である。すでに『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の中で海の民を拘束する際に電気ショック棒や拘束器具が登場しており、ナヴィを抑え込む装置は揃いつつある。

完全な奴隷化までとはいかなくとも、『アバター3』の時点でジェイクの知らないナヴィの一部族がRDA社に隷属させられる可能性も十分あり得る。『アバター』よりも過去の時点で英語など人類側にとって都合の良い教育を行う学校を作って頓挫していたことが語られており、オマティカヤ族の一部が英語を話すことができるのはそれがあったからとされる。

ジェイクらの世代よりも下の世代がRDA社による同化政策により、隷属に近い環境に置かれる可能性やジェイクらが彼らを解放するために活動する可能性もあり得る。もしかすれば彼らの信仰心をエイワからRDA社に都合の良いキリスト教などへと改宗させる教育がなされる展開もあるかもしれない。

人類側のアイデンティティ

問題はナヴィだけではない。ナヴィと人類のDNAを掛け合わせたアバターの誕生を更に推し進め、倫理観を無視する域にまで達したリコン計画(プロジェクト・フェニックス)により、RDA社は死者の復活とそれによる労働力の製造を可能とした。だがそれは計画の参加者のアイデンティティを揺るがしかねないものである。シガニー・ウィーバー氏演じるキリが同氏演じるグレイス・オーガスティン博士のアバターが意識なく妊娠して出産したが故に家族の繋がりを求めてもがいているのに、リコン計画の参加者が同じような状況に陥らないわけがない。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』ではマイルズ・クオリッチ大佐が最初は自分がマイルズ・クオリッチ大佐だと考えていたが、リコン計画を知り、自分の息子であるジャック・チャンピオン氏演じるスパイダーとの関係の中で何かもがき、クオリッチ大佐がクオリッチ大佐を演じるという精神的苦痛を生み出した。

このように「どこでもドア問題(スワンプマン問題)」のような、同じ記憶を持っていれば同一人物と呼べるのか否かという問題に発展し、『アバター3』では単なる対立構造ではなくRDA社、ナヴィ、リコン計画参加者の三すくみに陥るかもしれない。これは『アバター』でのIT長者、エッセンシャルワーカー、ナヴィの三すくみを彷彿とさせる。

『アバター3』に求める可能性

「アバター」シリーズがCGI映画だとか、VFX映画と呼ばれる映画の金字塔であり、映画史の転換点であることに変わりはない。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』はその単なる続編ではなく、「アバター」シリーズによって植民地支配など欧米列強や先進国と発展途上国の間で起きている問題、そして経済活動と自然との共生共栄について考え直すときが来ていることを敢えて最新技術を通して見せてくれた。筆者としてはより我々人類が犯した罪と自然の豊かさと向き合えるような映画としての『アバター3』を求めたい。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は2022年12月16日(金)より劇場公開。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』公式サイト

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のオリジナル・サウンドトラックは発売中&配信中。

『アバター』はエクステンデッド・エディションのBlu-rayが発売中。

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『アバター2』のネタバレ解説&考察はこちらの記事で。

ジェイクが見せた家父長的態度についてのネタバレ考察はこちらの記事で。

ジェームズ・キャメロン監督が語った『アバター3』のあらすじの一部はこちらから。

前作『アバター』のネタバレ解説&考察はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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