ブラックマンタの兵器は実現可能か『アクアマン/失われた王国』ネタバレ考察 | VG+ (バゴプラ)

ブラックマンタの兵器は実現可能か『アクアマン/失われた王国』ネタバレ考察

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DCEU最後のヴィラン、ブラックマンタ

2024年1月12日より全国公開される『アクアマン/失われた王国』をもって、約10年の歴史に幕を下ろすDCEU(DCエクステンデッドユニバース)。その最後のヴィランとしてジェイソン・モモア演じるアクアマンの前に立ちふさがるのがヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世演じるブラックマンタだ。

『アクアマン/失われた王国』では呪われた武器ブラックトライデントを手にしたことで、ブラックマンタことデイビッド・ケインは前作『アクアマン』(2018)以上に様々な兵器を用いてアクアマンを倒そうとする。本記事では、その中でもブラックマンタが切り札として用いている兵器にフォーカスをあて、それが実現可能か考察していこう。なお、本記事では『アクアマン/失われた王国』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『アクアマン/失われた王国』の内容に関するネタバレを含みます。

アクアマンと対をなす兵器

アクアマンのスーパーパワー

まずはブラックマンタにとって宿敵であるアクアマンのスーパーパワーについて考察していこう。アクアマンことアーサー・カリーの持つスーパーパワーと言えば、アトランティス人の血を引いているがための怪力、水中呼吸、頑強さなどが挙げられる。しかし、その最大の武器はアクアマンの声だと考察できる。

アクアマンは比喩ではなく、その声でヴィランを圧倒することが出来る。アクアマンはすべての海洋生物と対話することが可能で、それによって5億の軍隊を率いることが可能だ。そのため、アクアマンと海中で対峙するヴィランはこの声を攻略しなければならない。

前作『アクアマン』ではパトリック・ウィルソン演じるオーシャンマスターことオーム・マリウスは、他の6つの王国の実権を握ることで軍団を手に入れてアクアマンの声に対抗した。他の軍団を用意するぐらいしなければ、海中でアクアマンに勝つことは不可能に近い。

ブラックマンタの切り札

そのようなアクアマンの声に対して、ブラックマンタはランドール・パーク演じるシン博士が南極に眠る暗黒都市ネクラスで発見した武器で対抗した。それがブラックマンタの潜水艦に搭載されているソニック砲だ。ブラックマンタはシン博士に対し、ソニック砲を発見してくれて感謝する旨の発言をしている。そのため、ソニック砲は暗黒都市ネクラスの王であり、アトラン王の弟コーダックスの兵器だと考察できる。

ソニック砲は超音波を発生させ、相手の神経をかき乱し混乱状態に陥らせる兵器だ。シンプルな波動を生み出す兵器としても優秀で、アトランティス王国を守るハイドロ砲を一撃で破壊している。そして、アクアマンやアンバー・ハード演じるメラ、ニコール・キッドマン演じるアトランナなどアトランティス王国の守護者たちを迎撃することにも成功している。

まさしく、すべての海洋生物と対話することが出来るアクアマンの声と対をなす兵器と言えるソニック砲。すべての海洋生物と対話できるために優れた聴覚を持つアクアマンはその衝撃波によって神経をかき乱され、大いに苦しめられた。しかし、最後はその音波を利用するという特性を逆手に取られ、アクアマンが呼び集めたクジラやイルカ、シャチといった海洋哺乳類の大合唱によって破壊されてしまった。

音響兵器

そのような音を利用したソニック砲だが、現実的にそのような兵器は可能なのだろうか。実はかねてよりソニック砲とまではいかなくとも音響兵器は非殺傷兵器と呼ばれ、暴動の鎮圧から海賊対策にいたるまで幅広く運用されている。その中には相手の平衡感覚を奪うと言われるものまで存在しており、ソニック砲はそれをモデルにしたと考察できる。海賊対策の兵器を海賊であるブラックマンタが使用しているのは皮肉な演出だ。

音響兵器の代表格がLRAD(Long Range Acoustic Device)と呼ばれるもので、2004年にはイラク駐在アメリカ軍に配備されたという報道もあった。LRADは強力な指向性スピーカーのようなもので、長距離かつ特定の範囲にのみ有効になるように設計されている。そのため、暴動の中の特定の人物や海上の特定の船にのみ有効な音響兵器として幅広く運用されている。

非殺傷兵器と称しているが無害というわけではなく、長時間放射され続けると聴覚障害などを引き起こす危険性がある。LRADはソニック砲と同じく、対象者の神経をかき乱すのだ。2005年にはアメリカの民間・商用豪華客船がソマリア沖で武装海賊の襲撃を受けた際にLRADが使用されており、日本も反捕鯨団体を相手に使用している。

LRADはあくまでも非殺傷兵器やデバイスとされており、長距離の特定の相手のみに情報を伝達する手段としても用いられるが、聴覚障害などの危険性があるのも事実だ。2009年にはアメリカでデモに向けてLRADが使用され、見物人が聴覚障害を被ったとして裁判が起こされている。

また、イスラエルはスクリームという非殺傷兵器を2005年にヨルダン川沿いのデモ隊に向けて使用した。スクリームはLRADと同じく音響兵器に区分されるが、内耳に被害が及び吐き気や目まいを伴うとされている。当時取材中だったAP通信の記者は耳を塞いでも音が鳴りやまなかったとコメントしている。その他にもヨーロッパで移民に対して音響兵器が使用された例なども存在しており、民間人に使用された例も散見される。

分断の象徴か

LRADやスクリームは海賊対策といったものよりも、デモ隊などを攻撃する「分断」の象徴となりつつある。そのためソニック砲は、オリハルカムで大量に温室効果ガスを排出しながら他国を恐れ、市民を魔物に変えたコーダックスが持っていてもおかしくないものと考察できる。

それに対して海洋哺乳類の大合唱で対抗し、破壊したというのは『アクアマン/失われた王国』の持つ「団結」のメッセージに繋がっているようだと考察できる。『アクアマン/失われた王国』のメッセージ性についてはこちらの記事が詳しい。

かつて敵対し、戦争を引き起こしたオームとアクアマンが和解し、コーダックスを倒したが、ブラックマンタはソニック砲をコーダックスの遺産から手に入れている。そのため、ブラックマンタの持つ秘密兵器ソニック砲は実現可能なものというだけではなく、現在実際に起きている分断を表現しているということが考察できる。

現実の音響兵器はソニック砲ほどの威力はないが、ソニック砲もアクアマンやメラにとどめを刺せるほど強くなく、メラが致命傷を負ったのはソニック砲よりもブラックマンタのビームだ。そのことからも、ブラックマンタの切り札であったソニック砲とは気候変動といった社会問題を目の前にしても分断し続ける現実の象徴であったと考察できる。

そして、それを打ち破ることが出来るのは「団結」だけであり、その団結によりブラックマンタの潜水艦は爆発して海の底に沈んでいった。以上のことからソニック砲は現実的にほぼ可能であり、そのような音響兵器による破壊が分断を象徴し、それが敗れ去ることで団結の重要性を象徴していると考察できる。このような現実の社会問題の比喩がDCU(DCユニバース)では登場するのだろうか。今後のDCの動向に注目していきたい。

『アクアマン/失われた王国』は2024年1月12日より全国公開。

Source
超音波暴露調査研究委員会活動報告/Huffpost/CBS News/AP通信

『アクアマン/失われた王国』公式サイト

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『アクアマン/失われた王国』のサウンドトラックは配信中。

¥1,700 (2024/04/29 05:04:55時点 Amazon調べ-詳細)

『アクアマン/失われた王国』ラストとポストクレジットの解説はこちらの記事で。

『アクアマン/失われた王国』ラストから読み取るメッセージの解説はこちらから。

『アクアマン/失われた王国』の音楽解説はこちらの記事で。

『アクアマン/失われた王国』のホラー映画要素はこちらの記事で。

環境戦士としてのオーシャンマスターについての解説はこちらの記事で。

オーシャンマスターを演じたパトリック・ウィルソンを含む前作『アクアマン』の豪華キャストのまとめはこちらの記事で。

同年に登場した『アクアマン』と『ブラックパンサー』に共通するメッセージについての解説はこちらから。

映画『ザ・フラッシュ』ラストのネタバレ解説はこちらから。

映画『シャザム! 〜神々の怒り〜』ラストのネタバレ解説はこちらの記事で。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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