『アクアマン』&『ブラックパンサー』——“トランプ時代”に抗うスーパーヒーロー達

ライター

2018年を代表する作品となった『アクアマン』&『ブラックパンサー』

DC映画 No.1ヒットを記録した『アクアマン』

DCEU最新作『アクアマン』は、2018年12月7日に中国で封切りされて以降、数々の興行収入記録を叩き出している。2019年1月末には、『ダークナイト ライジング』(2012) を超えてDC映画史上No.1のヒットを記録。2018年公開の映画としては、興行収入10億ドル超えを達成した5つの映画の内の一本に仲間入りを果たした。

『アクアマン』は約7割が海外収益

興行収入の割合を見てみると、『アクアマン』は約7割がアメリカ国外での収益となっている。2018年にアメリカ国内で最大のヒットを記録した『ブラックパンサー』はといえば、国内の収益が52%、海外が48%となっている。中国での大ヒットが『アクアマン』の大ヒットを牽引したことは確かだが、なぜここまでの違いが生まれているのだろうか。

二つの作品の共通点

『アクアマン』と『ブラックパンサー』を鑑賞された方はご存知の通り、両作品の物語には共通点が存在する。それは、ヒーローが“国王”になる物語という点だ。アクアマンことアーサー・カリーは異父兄弟の王・オームの暴走を受けて、ブラックパンサーことティ・チャラは父・ティ・チャカ王の死を受けて、それぞれ国王の座をかけてヴィランと対峙する。そして、そこで描かれた物語は、他でもない“トランプ時代”へのアンサーとなるものだった。

―以下の内容は、映画『アクアマン』及び『ブラックパンサー』の内容に関するネタバレを含みます―

『アクアマン』が提示した“英雄論”

「国の為に戦う王ではなく——」

『アクアマン』では、正当な王であるオームことオーシャンマスターが、海を汚し続けてきた地上人に対して、海底から総攻撃を仕掛けることを画策する。海底人であるアトランティス人を地球上で最も優れた人種だと考え、他の海底王国を力で統率、地上人の社会を侵略しようと企むのだ。これに対し主人公のアクアマンは、前女王である母・アトランナから、国の為に戦う王ではなく、人々の為に戦うヒーロー (英雄) になるよう助言を受ける。このほかにも、王ではなく、民の共存の象徴としての役割を期待されるシーンや、海と陸は異なる世界ではなく、一つの世界だというメッセージが、『アクアマン』の作中に散りばめられている。

「信じられないくらいタイムリー」

これらのメッセージが持つ政治性は、他でもないジェームズ・ワン監督自信が認めているところだ。ワン監督は、英SciFiNowのインタビューで以下のように話している。

彼 (オーシャンマスター/オーム) のキャラクターと、アトランティス人が持つナショナリズムを結びつけて考えると面白いんですよ。彼らが自分たちをいかに優れた人種だと考えているか、つまり、いかにこの地球上で最も強い国だと考えているか——信じられないくらいタイムリーな話題ですよね。

アメリカのトランプ大統領の登場に端を発した、自国優先主義が世界へと広がる時代において、「国を守る王ではなく、民を守る英雄を」というメッセージは、国境を超えて共有されるテーマだったのではないだろうか。とりわけ中国で大ヒットを記録したという点は、特筆すべき事実だろう。

『ブラックパンサー』が問うた“罪”

「自分の国を守る」の弱さ

一方で、『ブラックパンサー』は自国の繁栄を謳歌してきたワカンダ王国の“罪”を問うストーリーだ。王の座についたブラックパンサーに、ワカンダの閉ざされた政治の闇を背負って生きてきたアメリカ育ちのキルモンガーが、王座をかけた戦いを挑む。「自分の国を守る」という王としての理念は、一見して正しい正義感のようにも思われていたが、「黒人が戦った時、ワカンダは何をしていた?」という問いかけや、「弱者に武器を」というキルモンガーの“正義”は、ティ・チャラの王としての姿勢を揺るがせる。

アメリカ国内で年間最大のヒットに

クライマックスで飛び出した、「危機にある時、賢者は橋をかけ、愚者は壁を作る」という映画史に残るティ・チャラのスピーチは、アメリカとメキシコの国境に壁を築こうとするトランプ政権への痛烈なメッセージであった。こうしてアメリカの負の歴史と、同国が今現在直面する問題を取り上げたブラックパンサーは、アメリカで大きな共感を生み、国内では『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を超える大ヒットを記録したのだった。

 

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両作の政治性から何を読み解くか

時の政治を問う作品性

もちろん、アクアマンもブラックパンサーも、数十年前に登場した時から架空の国の王様という設定であった。二人の王が、奇しくも同じ2018年に実写映画化されることになったのだ。どの時代においても、王の誕生を描く為に、時の政治のあり方を題材にすることは賢明な選択だと言える。

日本ではどうか

最後に、この二つの映画が持つ“政治性”は、日本においても吟味されなければならない。入管収容所での外国人虐待問題にも通底する排外主義は、この国にも確かに存在する。『アクアマン』と『ブラックパンサー』を単なるおとぎ話としてではなく、SFを通した思考実験として捉えられた時、日本のエンターテイメントの在り方は、一歩、前進するだろう。

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via: © 2018 Marvel『アクアマン』公式サイト ©2019 Warner Bros. All Rights Reserved.
– Source –
SciFiNow

齋藤 隼飛

齋藤 隼飛

VG+編集長。社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。
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