『アクアマン/失われた王国』で流れた音楽まとめ ネタバレ解説 | VG+ (バゴプラ)

『アクアマン/失われた王国』で流れた音楽まとめ ネタバレ解説

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DCEUの最後を飾る名曲たちをリストアップ

『マン・オブ・スティール』(2013)で描かれたスーパーマン誕生から約10年の時を経て、終わりを告げたDCEU(DCエクステンデッドユニバース)。その最後を飾るのが2024年1月12日に公開される『アクアマン/失われた王国』だ。『アクアマン/失われた王国』は作中でメインになる音楽が登場するなど、様々な音楽に彩られている。

本記事では、そのような『アクアマン/失われた王国』を彩った音楽を解説していこう。なお、本記事では『アクアマン/失われた王国』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『アクアマン/失われた王国』の内容に関するネタバレを含みます。

アクアライドと共に観客が“乗った”音楽たち

ステッペンウルフ「ワイルドでいこう!(原題: Born to Be Wild)」(1968)

アクアマンが冒頭で海賊と戦い、そして家事や育児、アトランティス王としての政務に就いている際に流れていた楽曲がステッペンウルフの「ワイルドでいこう!(原題: Born to Be Wild)」だ。映画『イージー・ライダー』(1969)の冒頭で主人公たちがバイクで疾走する場面で流れることで知られる。ステッペンウルフ最大のヒットソングであり、数々の記録を打ち破った。60年代を代表する楽曲であり、ヒッピー文化の絶頂期を彩った。

その歌詞ではワイルドに生きることや自由、愛を歌っており、「すべての銃をぶっ放せ、宇宙まで爆発させろ」とまで言い放っている。その様子はまさしく息子と玉座を手にしたことで愛や守るべきものが増え、その自由のために戦うアクアマンの音楽にふさわしいと考察できる。

バンド名のステッペンウルフとは荒野の狼を意味し、結婚前の孤独を愛していた頃のアクアマンの姿と重なる。また、DCにおいてステッペンウルフといえば『ジャスティス・リーグ』にも登場したダークサイドの部下の名前であり、DCEUでヒーローたちを一つにしたヴィランと同じ名前のバンドの楽曲をDCEU最後の映画の冒頭に持ってくるという憎い演出になっていると考察できる。

ステッペンウルフ「ワイルドでいこう!(原題: Born to Be Wild)」はラストシーンでも流れており、愛で世界を抱きしめるという歌詞通り、アトランティスの存在が公になったことで世界が一つになったことに繋がっている。通常版以外にもMath Club Remixも流れるなど、『アクアマン/失われた王国』を代表する楽曲となっていると考察できる。

 

ノーマン・グリーンバウム「スピリット・イン・ザ・スカイ」(1969)

デザーター王国に幽閉されているパトリック・ウィルソン演じる異父弟オームを救い出しに行く際に流れている音楽で、その歌詞はイエス・キリストに対する賛歌である。実際、オームは髭も髪も伸び放題で瘦せ細り、処刑直前のイエス・キリストのような姿をしていた。この楽曲自体、厳格なユダヤ教徒であるシンガーソングライターのノーマン・グリーンバウムが書いたものであり、皮肉的な側面を持つ。

しかし、イエス・キリストには異父弟がいたのは事実だ。そして罪人として処刑されたのも事実であるため、アクアマンとオーシャンマスターではなく、アーサー・カリーとオームの関係性をイエス・キリストに重ねたと考察できる。DCEUではスーパーマンを神聖視した他、『アクアマン/失われた王国』のラストでアクアマンが自分の父親の文化であるハカを教える場面が描かれるなど様々な文化がミックスされているため、その可能性も考察できる。

トーンズ・アンド・アイ「HI、E、IL」(2024)

『アクアマン/失われた王国』に合わせて発表された楽曲で、まだ発売されてはいない。『アクアマン/失われた王国』は60年代後半の音楽と最新の音楽をミックスさせているのが特徴的な映画だ。トーンズ・アンド・アイの「HI、E、IL」はその代表例だと言える。

トーンズ・アンド・アイは2019年にデビューしたシンガーソングライターで、Youtubeでも精力的に音楽配信をしている。ストリートパフォーマーの大会「Battle of the Buskers」でチャンピオンになり、ソニーミュージックと契約を結んだ叩き上げのミュージシャンだ。

また、トーンズ・アンド・アイはその特徴的な歌声が魅力的なだけではなく、地球温暖化や気候変動、銃社会などの社会問題をテーマにした楽曲も歌っているのも魅力的だ。その点では地球温暖化による地上の気候変動と海底の疫病の蔓延を描いた『アクアマン/失われた王国』にはぴったりのミュージシャンと考察できる。

X・アンバサダーズ「DEEP END」(2023)

こちらも『アクアマン/失われた王国』に合わせて発表された楽曲で、サウンドトラックに収録されている。歌詞の内容は沈みゆく友人のもとに泳いで駆けつけるというアクアマンとオームの関係性を想起させるものになっている。

X・アンバサダーズは2009年から活動しているバンドで、現在のバンド名になったのは2013年からだ。その後、2015年にはティーン・チョイス・アワード、2016年にはビルボード・ミュージック・アワードにノミネートされており、今後の音楽界を背負って立つバンドだ。そのため10年の歴史の幕を閉じようとしているDCEUにとっては、DCUへの新たなる幕開けとして最適なバンドだと考察できる。

DCEUの最後を飾る『アクアマン/失われた王国』を彩った楽曲は時期的にはアクアマンの活躍した1950年代中頃から1970年代、もしくは1986年という所謂「シルバーエイジ」を彩った楽曲でもあると考察できる。その反面、シルバーエイジのアクアマンとは全く異なるジェイソン・モモアのアクアマンの特色を残したのが2010年代から活躍しているミュージシャンの起用だとも考察できる。

そのようなシルバーエイジから現行作品まで戦い抜き、そしてDCEUの幕引きを担ってくれた「アクアマン」シリーズ。2度目の鑑賞は音楽とミュージシャンに注目してみるのはいかがだろうか。

『アクアマン/失われた王国』は2024年1月12日より全国公開。

『アクアマン/失われた王国』公式サイト

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『アクアマン/失われた王国』ラストとポストクレジットの解説はこちらの記事で。

『アクアマン/失われた王国』のラストに関する感想と考察はこちらから。

環境戦士としてのオーシャンマスターの解説はこちらの記事から。

オーシャンマスターを演じたパトリック・ウィルソンを含む『アクアマン』の豪華キャストのまとめはこちらの記事で。

DC映画における『アクアマン』の位置づけについてはこちらから。

同年に登場した『アクアマン』と『ブラックパンサー』に共通するメッセージについての解説はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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