Amazonドラマ『ユートピア』が打ち切りに
2020年10月30日(金)より日本で配信を開始したAmazonプライムビデオのSFドラマ『ユートピア~悪のウイルス~』がシーズン1で打ち切りになることが分かった。米The Hollywood Reporterが報じた。
ドラマ『ユートピア』は、『KIZU―傷―』(2006)、『ゴーン・ガール』(2012) といった傑作小説の筆者で、実写映画版『ゴーン・ガール』(2014) では脚本も務めたギリアン・フリンがショーランナーを努めた作品。実力ある作家がイギリスでカルト的な人気を集めた同名ドラマをリメイクするという絶妙な組み合わせのドラマだったが、残念ながらシーズン2の製作はキャンセルとなってしまった。
打ち切りの理由は?
Amazonは『ユートピア』打ち切りの理由を明らかにしていないが、キャンセルの理由はどこにあったのだろうか。批評家による評価が高くなかったことを指摘するメディアもあるが、批評家による評価が低くなったことには理由がある。ドラマ『ユートピア』は、日本では10月末の配信開始となったが、米Amazonでは9月25日に配信を開始し、その内容については少なからず論争が生まれていた。パンデミックについての陰謀論を扱ったテーマが、現実にアメリカで起きている保守派による陰謀論と (意図せず) リンクしてしまったのだ。
パンデミック以前であれば受け入れられたであろう「不運」を嘆きながらも、批評家たちは「今じゃない」と厳しいジャッジを下さざるを得なかった。
この状況を受けてか、ショーランナーのギリアン・フリンはシーズン2の構想について、「新たな目的を立てて、次に進んでほしい」と、シーズン2ではパンデミック以外のテーマを置く方針を示唆していた。
“レビュー数”に注目
各誌の批評やレビューで酷評を受ける一方で、視聴者が評点を投稿できるIMDbでの2020年12月1日現在の『ユートピア』の評価は10点満点中6.7点と、決して悪い数字ではない。だが、問題は評点の投稿数だ。『ユートピア』の評価はわずか8,000件。同じくAmazonオリジナルのSFドラマとして2020年に配信され、シーズン2の製作が発表されていない『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』は7.5点の評価で、評価は約12,500件だ。
一方、同じく批評家から低評価を受けていたNetflix『スペース・フォース』は、6.8点の評価で、42,000件以上の評価がついている。AmazonやNetflixは具体的な視聴者数を発表していないが、レビューや投票の数は、多くの人が鑑賞 (および反応) したかどうかの指標になる。「政治色が薄い」と批評家から酷評されていた『スペース・フォース』のシーズン2製作が決定したことは、批評家からの評価が全てではないということを示していると言える。
(もちろん、批評家の知識と観察眼に裏付けられたオピニオンが世間の評価に与えるインパクトは大きく、顧客の拡大、既存客の満足度の増大とサービス利用の継続を追求する配信プラットフォーム企業のそれとは異なる理論で機能しているということは付言しておく。)
Amazonドラマ『ユートピア』が打ち切りになった理由は、単純に米国では話題になったもののグローバルな規模での視聴者を獲得できなかったか、得られた利益が製作費に見合わなかったためと見られる。近年のAmazonはSFドラマの製作に注力しており、2020年は『アップロード 〜デジタルなあの世にようこそ〜』をヒットさせた。『ユートピア~悪のウイルス~』でショーランナーを務めたギリアン・フリンも、不運なデビューとはなったが、作家以外の新たな才能を発揮した。Amazonの次なる一手とギリアン・フリンの次回作に期待しよう。
『ユートピア~悪のウイルス~』のあらすじはこちらの記事から。
『ユートピア~悪のウイルス~』はAmazonプライムビデオで配信中。
Amazonからは『アップロード 〜デジタルなあの世にようこそ〜』シーズン2、『ザ・ボーイズ』(2019-) シーズン3、『エクスパンス -巨獣めざめる-』(2017-) シーズン6の製作が発表されている。