政治的じゃなさすぎる? ドラマ『スペース・フォース』が米国で評価されない理由【Netflix】VG+ (バゴプラ) | VG+ (バゴプラ)

政治的じゃなさすぎる? ドラマ『スペース・フォース』が米国で評価されない理由【Netflix】

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『スペース・フォース』が5月29日配信開始

大作SF映画が次々と公開延期になる中で、AmazonとNetflixの快進撃が続いている。このコロナ禍にあってもAmazonの『アップロード 〜デジタルなあの世にようこそ』やNetflixの『イントゥ・ザ・ナイト』『スノーピアサー』など、次々とSFドラマ作品が公開されている。

そして満を持して登場する予定だったのが、2020年5月29日(金)配信開始のNetflixオリジナルドラマ『スペース・フォース』だ。SFコメディ『アップロード』を大成功に導いたプロデューサーのグレッグ・ダニエルズが手掛けるコメディ、それも“宇宙軍”を舞台にした作品とあって、大きな期待が寄せられていた。

同作のあらすじは以下の記事に詳しい。

さらに、人気コメディシリーズ『The Office』(2005-2013)でグレッグ・ダニエルズとタッグを組んだスティーヴ・カレルが主演兼製作を務めるという。Netflixの人気シリーズになることは間違いないと思われていた。

まさかの軒並み低評価

だが、配信開始直前、アメリカの各メディアが投稿したレビューには、「失敗」「失望」「不点火」と、軒並みネガティブなレビューが並んでいた。そして、批評家たちが『スペース・フォース』を批判していた原因は明白だった。それは、簡単に言えば「政治風刺が弱い」ということだった。

「職場コメディに過ぎない」

USA Todayは「『スペース・フォース』の打ち上げ失敗に失望、スティーヴ・カレルにもね」と見出しを付け、Kelly Lawler記者は「宇宙軍を笑いものにしたいのか、敬意を払いたいのか、脚本家たちも分かっていない」と批判する。

Vultureは「『スペース・フォース』はとてつもない不発」と題したレビューを投稿。Jen Chaney記者は、「明らかに現実に触発されているが、政治風刺は弱い」とし、できるだけ早くアメリカの新たな組織を舞台にした職場コメディを作ったに過ぎない、と批判している。

同記者は、『スペース・フォース』はイギリスで大人気になった『The Office』のアメリカ版に過ぎず、Netflixが期待していたものを作ったに過ぎないのではないかと疑問を呈す。一方で、ホワイトハウスへの当てつけや、民主党のアレクサンドリア・オカシオ=コルテスを想起させるキャラクターが登場するなど、政治に対する“ジャブ”もあることも指摘している。だが、現実に起きていることの方が滑稽さで上回っていると結論づけている。

「飼いならされている」

同記者はドラマ内にドナルド・トランプ大統領の名前が登場しないことも指摘しているが、ComicBook Resourcesでは、Josh Bell記者を同様の指摘を行なっている。加えて、「『スペース・フォース』の笑いは、残念ながら飼いならされている」「クリエイターたちは科学的・軍事的なコンサルタントを雇い、作品としては風刺や社会的なメッセージになることを恐れ過ぎているように見える」と、風刺の少なさを批判している。

Rolling StoneのAlan Sepinwall記者もまた、「映画『博士の異常な愛情』のような喜劇的な雰囲気はあるが、全てがドタバタの徒労に終わってしまう」「大統領の名前は登場せず、現政権についてのジョークは少ない」と残念がった。

ポテンシャルには期待

以上のように、アメリカの批評家たちは、『スペース・フォース』が単なる“職場コメディ”で終わってしまったことに失望している。

一方で、ジョン・マルコヴィッチの演技たスティーヴ・カレルとのコンビネーションは好評だ。ジョン・マルコヴィッチは右翼的な発言でも知られている人物だが、批評家たちはフェアな評価を下している。

また、グレッグ・ダニエルズとスティーヴ・カレルがタッグを組んだ『The Office』も最初のシーズンは不発だったとの擁護の声もある。The Washington PostのHank Stuever記者は「打ち切りにするには勿体無い」と、“宇宙軍”という設定が持つポテンシャルを評価している。

風刺の弱さはマイナス要素

コメディと社会風刺・政治風刺の関係性は、近頃の日本でも話題にあがるところだ。コメディ自体が権力者や社会に対する批評であり、優れたコメディとは人々の共感を呼ぶものだ。コメディドラマを批評的に見るときに、風刺の弱さがマイナスの要素になるのは当然のこと。アメリカ政府が新設したばかりの“宇宙軍”を舞台にした作品であればなおさらだ。

とりわけ、『スペース・フォース』の監督であるグレッグ・ダニエルズは、Amazonドラマ『アップロード』で巨大企業やデジタル社会への風刺の効いたジョークとストーリーを展開したばかりだった。

一方で、『スペース・フォース』は配信開始直後、アメリカの視聴ランキングで第1位を獲得した。詳細は以下の記事からご覧いただきたい。

『アップロード』は日本でも人気の作品となったが、米国で政治風刺が弱いと指摘された『スペース・フォース』は、著名人の政治的発言が度々槍玉に挙げられる日本では、どのように受け止められるのだろうか。

ドラマ『スペース・フォース』は2020年5月29日(金)よりNetflixで配信開始。

『スペース・フォース』(Netflix)

あらすじは以下の記事に詳しい。

Source
USA Today / Vulture / ComicBook Resources / Rolling Stone / The Washington Post

齋藤 隼飛

1991年生まれ。
社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。
編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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