【独占インタビュー】『レジェンド・オブ・トゥモロー』本多猪四郎を演じた尾崎英二郎が語る撮影秘話——大役抜擢の裏側で綿密な役作り | VG+ (バゴプラ)

【独占インタビュー】『レジェンド・オブ・トゥモロー』本多猪四郎を演じた尾崎英二郎が語る撮影秘話——大役抜擢の裏側で綿密な役作り

DCドラマ出演の尾崎英二郎に独占インタビュー!

『レジェンド・オブ・トゥモロー』に巨匠・本多猪四郎役で出演

人気DCドラマ『レジェンド・オブ・トゥモロー』シーズン4の第5話に、アメリカで活躍する俳優の尾崎英二郎が、ゴジラの生みの親・本多猪四郎役で出演を果たした。第5話「Tagumo’s Attacks!!! (原題)」は、日本が舞台に。この物語の軸となるゲスト主役での出演となっている。

同エピソードは先日アメリカで放送されたばかりだが、日本でも、ワーナー・ブラザースが運営する“海外ドラマエクスプレス”で視聴することができる。

海外ドラマエクスプレス

舞台裏、撮影秘話を大公開!

今回、VG+編集部では、尾崎英二郎への独占インタビューに成功した。巨匠・本多猪四郎監督という大役を、彼はどのように演じたのだろうか。インタビューを通して見えてきたのは、尾崎自身の綿密で入念な役作りと、制作陣の作品作りに対する積極的な姿勢だ。海外ドラマにおける演技と制作、双方の裏側に迫った貴重なインタビューを、しかとご覧いただきたい。

尾崎英二郎

Q. 今回は巨匠・本多猪四郎監督を演じられました。どのような役柄だったのでしょうか?

まず最も大切だったことは、エグゼクティヴ・プロデューサーであり脚本家であるケト・シミズさんと共同脚本のオバー・モハメドさんが、本多猪四郎監督が生んだ「ゴジラ」や怪獣映画の系譜に対して本当に深い尊敬を抱いていたということです。
それは米国業界で闘う日本人の僕にとってはとても嬉しいことですし、人気ドラマのストーリーの中心に日本人を据えて描くこと自体が滅多にないことですから、これは心して挑まなければと思いました。
本エピソードで展開するお話はもちろんフィクションですが、観る人が見れば本多監督の実際の人生の背景やキャリアについて非常によくリサーチされていて、彼にまつわる様々な出来事や事物が脚本の中に取り込まれていることがわかるはずです。

”特撮”といえば、もちろん円谷英二さんのお名前が日本では最も顕著ですが、海外では本多監督の独自の作家性が高い評価を受け、今も愛されています。
第一作の「ゴジラ」をはじめ、本多監督の怪獣映画やSF映画には、彼自身が第二次大戦中の戦線で経験したもの、目の当たりにした恐怖や残酷さや悲しみがドキュメンタリー的に取り込まれ、街が破壊されていく光景や人々が傷つき苦しむ様子は観る者を震撼させます。そして核兵器開発への警鐘や、人間の愚かさへの風刺の精神なども巧みに織り込まれています。
そういう功績に対し、海外の映像作家たちが敬意を抱いていることがこちらにもひしひしと伝わってくる役柄だったと思います。

“破壊王”とも呼ばれる怪獣たちの作品をこの世に送り出してきた人物を、アメリカのドラマ製作陣がどう描いたか?は、是非このドラマのエピソードをご覧になって確かめていただきたいです。

Q. 本多猪四郎監督という実在の人物を演じるにあたって、実際にどのような役作りを行ったのですか?

オーディション後に合格の知らせが入ってから撮影まで、僕には1週間の準備期間しかありませんでした。
しかもオーディションの時点ではこの役名はまだ極秘に伏せられていたのです。最初に脚本を手にした時、ようやく実在の映画監督を演じるのだと知らされました。

僕はロサンゼルスに住んでいますから、手に入る本多猪四郎さんに関する資料は限られています。
まず読んだのが『ISHIRO HONDA A LIFE IN FILM, FROM GODZILLA TO KUROSAWA』(Steve Ryfle and Ed Godziszewski 共著)という伝記でした。本の冒頭にはマーティン・スコセッシ監督から贈られた本多監督への尊敬の言葉が書かれている本です。

300ページありますから、脚本のセリフと格闘しながらすべてを読むのは無理でしたが、本多監督のお人柄やデビュー作『青い真珠』や『ゴジラ』などの作品制作にまつわるお話や、彼ご自身の言葉などを知ることができました。
よかったのは、本の中に1950年代当時の何枚もの貴重なスチール写真(多くは監督の撮影中のもの)が掲載されていて、この写真の中の若き日の本多監督の表情、立ち位置、服装、手に持っているもの、雰囲気…などを知ることもできたことです。

またネット上に、本多監督ご自身の晩年期のインタビューがあり、映画監督としての半生を語られているその端々からお人柄は伝わってきました。『ゴジラ』がなぜ生まれたか?制作にどう取り組んだか?それをご本人の言葉で聴けたのは何よりでした。

もう1つ、非常に役作りの大きな助けになったのは、『無冠の巨匠 本多猪四郎』という書籍をベースにした著者の切通理作さんと映画評論家の町山智浩さんによる対談の動画です。監督が生きて来られた時代や、監督が作品で描いたもの、その意図、登場人物に託された精神などが詳しく長時間にわたり解説されていて、それによって僕自身が今回のドラマの脚本の中の何が事実で何が脚色されているか?がより深く読み取れるようになりました。

海外に拠点を構えている身の上の僕には、ネット上で検索できた数々の参考資料や写真は強い味方で、僕自身の力は微力ですが、少しでもリアリティーを持ち込むという面で多分に活かすことができました。

もう1つの苦労は、やはり英語です。実在の日本人が主人公のエピソードとはいえ、米国ドラマの脚本の言語は英語です。これは大前提で、当然、セリフのやり取りはほぼ英語で進行します。
しかし日本育ちの本多監督が、日本映画の撮影現場でアメリカンな響きの英語の訛りでペラペラと喋りはじめたら、それは日本の視聴者の皆さんの目には不自然に映るはずですし、僕もそんな風に実在の人物を演じるつもりもありません。なので、「日本に住んでいる日本人が丁寧に英語を話している」という語り口で、日本語訛りやリズムや間を混じえて演じることを心がけました。
メインキャラクターのヒーローたちが、1951年の日本にタイムトラベルして直面する空気感や臨場感、ギャップが表現できなければ面白さが出ないと思いましたから。
残念ながら、若い時代の本多監督の映像というのは見つけることができなかったので、ご本人の癖などを研究するまでには至りませんでしたが、たとえ言語が英語でも、話している際の佇まいや身の振り方や表情で、当時の日本人の気高さや羞恥心や背筋の伸びた凜としたものは表現できるはずです。そこに最も注意して演じました。

尾崎英二郎(左、中央)、本多猪四郎(右)

Q. 本多猪四郎監督の作品で、思い入れがあるものはありますか?

初代の『ゴジラ』(1954)ですね。ただ、これは俳優業の道に入ってから観ました。
あの初期のゴジラの恐ろしい、真っ黒でむくむく腫れ上がったような顔つきのデザインに何が込められていたのかを初めて知った時には、本当に深い衝撃を受けました。
当時の映画人の勇気と志の深さ、製作のこだわりには憧れさえ抱きます。

あとは『モスラ』(1961)。巨大怪獣の物語ですが、ここでも人間社会への痛烈な批判があり、モスラ自体には良心さえ垣間見えます。怪獣が成長する、驚くような過程も見せてくれます。この作品の怪獣の造形や市街の破壊の特撮は、本当に素晴らしいです。

『ゴジラ』『モスラ』共に、『レジェンド・オブ・トゥモロー』の撮影前に、もう一度しっかりと観直しました。
本多監督の作品は、観ている観客が、人間ではなく怪獣たちの存在に感情移入していってしまうということだけでも、その時代を考えると斬新さと創造性が際立っていますよね。

怪獣単体では、キングギドラの存在の強さも好きです。発する鳴き声も、飛翔できる圧倒的な能力も。
今思えば、子どもの頃の自分にヴィラン (悪役) の魅力や面白さを教えてくれたのはキングギドラかもしれませんね

Q. 撮影中、印象に残ったエピソードなどがあれば教えてください。

日本が舞台の物語であることと、ゲスト主役というポジションのおかげもあったからかもしれませんが、脚本家や監督やスタッフの皆さんが、僕のアイデアや意見に耳を傾けて下さったことですね。
劇中で本多監督が言う、ある非常に重要なセリフを、元々は英語で演じると書かれていたのですが、

「ここは、日本語で(英語字幕を添えて)演じたほうが本物感が増しませんか!?」

と提案したところ、脚本家も喜んでくれて、「それで行こう!!」ってなったんです。こういう瞬間は嬉しかったですね。
それから、このドラマに登場する怪獣の名前タグモ(Tagumo)は、実は一文字だけですが僕のアイデアが含まれているんです。今はその経緯は明かせませんが、ある提案を撮影前にしたところ、

「いいアイデアね!あなた(本多監督)が怪獣を生むんだから、変えましょう」

って言ってくれたんです。このエピソードの題名は「Tagumo Attacks!!!」ですから、タイトルにも変更が加えられたわけです。その日のうちに、怪獣名が一部新しくなった台本が届いたのには感動しました。
もしかしたら、脚本のタイトルが、1文字とはいえ日本人俳優の提案で書き換えられたなんて初めてのことかもしれませんよね!!

そういう、クリエイティヴな自由さ寛大さが実に素晴らしく、”一緒に作っている!”という感覚を沢山いただけた気がします。

Q. 今回の『レジェンド・オブ・トゥモロー』も、シーズン3から出演されている『高い城の男』も、完全なフィクションではなく、現実の歴史を土台に“if”を描いています。そのような作品に出演するにあたって、心がけていることはありますか?

どうしたら観て下さる皆さんに、僕の演技と役柄の境遇を「信じられる」と思ってもらえるか?
その一点に尽きます。
すべての作品において、そこが最も大切です。

Q. 日本のファンに一言!

俳優の醍醐味は、あらゆる役柄を演じることで、その人の生きた道のりや背景を初めて知り、そこに近づこうと全力で取り組み、自分というフィルターを通して、人々に伝えることができることです。

本多猪四郎監督の生きていらした時代を踏まえ、創ることに真面目で、誠実で厳しく、しかし温厚なお人柄を演じることで、少しでも日本や世界の映画・ドラマファンの皆さんに日本を代表する映像作家の遺した偉大な芸術の凄みが伝わり、再認識されることを祈っています

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尾崎英二郎と制作スタッフの本多猪四郎監督への敬意、そして何よりも「良いものをつくろう」という強い想いがひしひしと伝わってくる内容だ。現実とフィクションが織りなす世界を描き出すためには、そうした感覚は不可欠なものだったのだろう。わずか一週間という準備期間での、役作りに対する尾崎のストイックさにも、驚嘆するばかりである。

尾崎英二郎が本多猪四郎役で出演した『レジェンド・オブ・トゥモロー』の「Tagumo’s Attacks!!!」は、ワーナー・ブラザースが運営する“海外ドラマエクスプレス”で視聴することができる。尾崎英二郎と『レジェンド・オブ・トゥモロー』チームが現代に甦らせた本多猪四郎監督の姿を、逃さずチェックしておこう。

海外ドラマエクスプレス

また、ドラマ『レジェンド・オブ・トゥモロー』は、日本ではシーズン3までのDVD&Blu-rayが好評発売/レンタル中。

VG+編集部

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