無敵のホームランダーの弱点とは?
史上最悪のジャスティス・リーグとも言うべきセブンとの戦いを描いた『ザ・ボーイズ』。『ザ・ボーイズ』では腐敗したヒーローを倒すためならば何でもするボーイズたちの活躍がこれまで描かれてきたが最大の敵であり、邪悪なスーパーマンとも言えるホームランダーの弱点が『ザ・ボーイズ』シーズン4第6話「汚れ仕事」で明らかになった。
本記事では『ザ・ボーイズ』シーズン4第6話「汚れ仕事」で描かれたホームランダーの弱点について、解説と考察を述べていこう。なお、以下の内容は『ザ・ボーイズ』シーズン4第6話「汚れ仕事」のネタバレを含むため、Amazonプライムビデオで本編視聴後に読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4第6話「汚れ仕事」の内容に関するネタバレを含みます。
ホームランダーの弱点についてネタバレ解説&考察
ホームランダーの演説
ホームランダーのモデルになったスーパーマンにクリプトナイトという弱点があるように、ホームランダーにも弱点は存在している。しかし、それはクリプトナイトのような特別な鉱石ではない。それはホームランダーの性格に起因するものだ。
ホームランダーを生み出したヴォート社の科学者で研究所所長であるバーバラから、ホームランダーは誰かに愛されたいという承認欲求や母性愛を渇望するように“設計”されたことが明らかになった。それこそがホームランダーの最大の弱点の1つだ。ホームランダーはすべての人間に愛されたいという欲求があるため、拒絶されることを極端に恐れていることが考察できる。
それもあってか、ホームランダーは支持者向けの演説しかできないという弱点がある。自分のことを手放しで支持してくれる人間相手には彼らを扇動する演説ができるが、質問されてしまう、反論されるなど議論になると突然弱くなってしまうのだ。
大衆からの拒絶
それが顕著に表れたのが『ザ・ボーイズ』シーズン2第5話「行動の時」だ。そこではテロリストの制圧の際に民間人を巻き込んだことが報道され、反ホームランダーのデモ活動が起きていた。ヴィクトリア・ニューマン下院議員が率いるデモの現場に現われたホームランダーだが、そこで自分の支持者向けの演説を行い、反感を買っている。
その素っ頓狂な演説にはアシュリーですら引き気味で、髪を引き抜いてしまっている。当然のようにデモに参加していた大衆からはホームランダーは拒絶されてしまう。ホームランダーは困惑ともパニックとも取れる表情をすると、妄想の中でデモ参加者全員を目から放つレーザーで殺していた。その妄想を行動には起こさなかったが、ホームランダーは何もできずに「君らが真のヒーローだ」と言い訳をして飛び去った。
そのことはストームフロントにも知られ、ホームランダーがすべての人間から愛されたいという欲求を抱えていることを指摘されている。白人至上主義者にしてナチスであるストームフロントはそれを利用し、ホームランダーにそのターゲットを白人に絞らせることでナチズムの広告塔にしようとしていた。
しかし、ストームフロントの計画とは裏腹にホームランダーの弱点はより一層悪化することになっていく。ボーイズやその協力者たちによってストームフロントがナチスであることが世間に公表されると、ホームランダーはストームフロントとの交際を誤りだったと各メディアで謝罪することになった。謝罪の度にホームランダーの精神状況は危ういものになっていく。ストームフロントに依存していたホームランダーは世間からの拒絶によって不安定になり、ストームフロントの自殺によって感情が爆発した。
ヴォート社の支配
『ザ・ボーイズ』シリーズ3ではホームランダーの承認欲求や愛への渇望は限界に達し、ヴォート社を支配しようと試みる。ホームランダーを生み出した人物の1人であるCEOのスタン・エドガーによって、それは阻止された。もちろん、スタン・エドガーが善意でホームランダーの目論見を止めたわけではない。ヴォート社を製薬企業として運営し、時効性Vを軍に売り込もうとしていたスタン・エドガーにとってホームランダーはコンパウンドVの成功例の1つでしかなかったのだ。
偶然にもスタン・エドガーという義理の父親の支配から脱却したかったヴィクトリア・ニューマン下院議員によって、ホームランダーはヴォート社の重要な地位を得る。これによってホームランダーの欲望が満たされるはずだった。だが、前述の通りホームランダーは支持者向けの演説しかできない。
ヴォート社の重役たちは当初こそホームランダーのイエスマンだったが、じわじわとホームランダーに詳しいヴォート社の経営について質問し始める。税率や収益報告などについて細かく女性の重役が質問するとホームランダーの顔は引きつり、自分の知性や権威などを批判していると考えて敵意を抱くようになる。
このようにホームランダーは自分を支持しない人間からの意見に上手く反論できない。正常に議論というものが行なえず、自分に敵意を持っているのだと論点をすり替えて考えるのがホームランダーなのだ。そのため、『ザ・ボーイズ』シーズン4になると周囲は完全にイエスマンのみになり、ホームランダーはその状況に嫌気がさしていたが、それ以外の環境には適応できない人物になっていた。
協力者の登場
流石にイエスマンに囲まれた状況をまずいと考えたホームランダーは、自分に意見を言える人間を探すようになる。ホームランダーの傲慢な性格上、普通の人間が意見することは許すことが出来ない。そこで白羽の矢が立ったのがコンパウンドVによって世界一の頭脳を得たシスター・セージだ。世界一の頭脳を持っている人間ならば、ホームランダーも反論されたとしても納得できるというわけだ。
ホームランダーはシスター・セージが張り巡らす策略によって、支持者を増やして地位を盤石なものにしていく。それによって、ホームランダーは支持者の前でのみ、演説すれば良い状況が生み出されていく。シスター・セージの計画によりホームランダーの支持者は増え、支持者が増えると支持者向けの演説が求められる。そして、シスター・セージの計画の上でホームランダーが支持者向けの演説を行なうと、また支持者が増える。ホームランダーにとって好循環が続いた。
露になる弱点
その好循環は長く続かなかった。その破綻が起きたのが『ザ・ボーイズ』シーズン4第6話「汚れ仕事」だ。ホームランダーはロバート・シンガー大統領への謀反計画について有力者たちに演説する計画を立てていたが、反論に対する受け答えを担うはずだったシスター・セージが頭部にMMの撃った銃弾を受けたことでロボトミー手術後の状態になっていた。
ホームランダーはその傲慢さ故に引くに引けなくなっていた。そんな状況で演説を始めたのだから、当然怪盗はちぐはぐなものになっていく。ホームランダーに「それはヴォート・ニュース・ネットワークの信者の戯言ではないか」「司法省はどうするのか」「軍隊への対処はどうするのか」「OPEC(石油輸出国機構)の反応はどうか」「市場への影響は考えたのかどうか」「公務員が一斉退職してしまう可能性を考慮したか」と数々の質問が飛ぶ。それにホームランダーが答えられるはずもなく、ホームランダーは涙を浮かべて何も言えなくなっていた。
この傲慢さ、そして議論ができないこと、自分に反論する人間は敵だと考えることがホームランダーの最大の弱点と言える。ソルジャー・ボーイと時効性Vを投与したビリー・ブッチャーの連携攻撃を受けてもホームランダーは倒されなかった。しかし、議論を持ち掛けられた途端にホームランダーは目に涙を浮かべて、まるで幼い子供のようになってしまうのである。
この反論を敵意だと考えるなどの性格は、現実でも見られるものである。それは政治の場などでも見られ、正常な議論をかき乱す。ホームランダーはそのような性格を体現した人物だと考察することが出来る。果たして、ヴィクトリア・ニューマン副大統領とシスター・セージの後ろ盾無しにホームランダーはこの弱点を克服できるのだろうか。『ザ・ボーイズ』シーズン4の今後の展開に注目していきたい。
ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4はAmazonプライムビデオで配信中。
原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから第6巻まで発売中。
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