『機動戦士ガンダム 水星の魔女』放送中
2022年10月2日(日)より放送を開始した『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。第10話「巡る思い」では、起業したミオリネに経営指南を施すなどデリングのこれまでにない娘想いな父親としての面が描かれる一方、ヴィムとサリウスが結託してデリングの暗殺を企てるなど今後の波乱の展開が予想される。新型ガンダムも登場し、一期の最終回に向けてラストスパートの様相を見せる『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。今週もネタバレありで早速第10話を振り返っていこう。
デリング暗殺指令
グラスレー社CEOのサリウスは、ドミニコスにエアリアルに対する「GUNDフォーマット使用嫌疑の審理の申請」を行うが却下される。かつて「ガンダム凍結」の為に特殊部隊ドミニコス隊を率いて実力行使までしたデリングが「株式会社ガンダム」の設立を認めたことに対する疑念は、サリウスのみならず視聴者も共有するものだろう。
デリングの真意を測りかねるサリウスに、ジェターク社CEOであるヴィムはデリングの暗殺を持ち掛ける。思えば第1話の時点でヴィムはデリングの暗殺を謀っていた。決闘を「ごっこ」と呼びながら、しかし息子のグエルがスレッタと再戦する際には乗機のダリルバルデにAIを仕込むなどとにかく勝利の為には手段を選ばない野心家であるようだ。
だが、サリウスはサリウスでヴィムに黙って従うつもりもないらしい。話を聞いた息子のシャディクは計画に一枚噛むことを進言する。とは言えシャディクはシャディクで何かしら思惑があるようだ。どうやら日系人であるニカを介して地球、それも日本の組織と連絡を取りデリング暗殺の手筈を調える。
スレッタ、忘れった
GUND技術を用いた義足の実用試験に臨むスレッタ。しかし株式会社ガンダム広報の為の新作PVの撮影場所を確保しておらず、「スレッタ、忘れった」というギャグでその場を凌ごうとする。普段のキャラと違う為にポカンとする株式会社ガンダムの面々。しかし一番に吹き出したチュチュのお蔭で何とか滑らずに済んだ。こんな時にも頼れるチュチュ先輩である。
一方、ミオリネはデリングの元へ出張に赴き業務内容を報告するとともに経営指南を受ける。出張中、菜園のトマトの世話を任されたスレッタはそれを自らへの信頼の証と受け取り張り切るが、出張から帰ったミオリネは今後は業者に任せると言う。エラン(5号)からのデートの誘いもミオリネの為に断ったと告げるスレッタに、ミオリネは「いいよ、デートして。同僚になるんだから仲良くやってよ」とにべもない。
このシーンなど、独断専行の決定が父であるデリングのワンマン振りに重ねられることの多いミオリネだが、筆者は少し違う印象を持った。第1話で個人的な親愛や恋愛の感情抜きに決闘というシステム上「婚約」という状況に置かれたスレッタとミオリネだが、これまで二人がその状況をどう捉えているのかということが掘り下げられることなく事態が進んできてしまった。
果たして二人は互いの信頼関係の下に結婚を選ぶのか、あるいは打算に基づき結婚するのか。それとも信頼関係故に制度的な結婚を拒絶するのか、はたまた別の思惑によってそれを拒むのか。そこのところの価値判断が曖昧なまま事態が進むことに違和感があったが、ここでようやくその問題に光が当てられた。
ミオリネとしてはスレッタとの婚約はエラン(5号)の言うように「弾除け」としての意味合いが強いようだ。スレッタと婚約している限りにおいて、スレッタが決闘に負けない限りは他の人間に狙われることはなく自らの位置がある程度安定する。しかしスレッタとしてはそういった打算よりもより内面的な繋がりをミオリネに対して感じており、結婚はその証明と捉えているようだ。
ここは現実の人間関係においても非常に複雑な部分で、信頼関係と恋愛感情、それから性欲といったそれぞれ全く異なる基準で動く力学が「結婚」の二文字によって強引に一つのものとしてまとめ上げられてしまっている。ミオリネとしても、スレッタとの結婚が打算に基づくものであれスレッタに何の個人的な感情も抱いていないという訳ではないだろう。
事実、菜園の管理を業者に任せるというのはそうすることでスレッタの負担を減らそうというミオリネなりの思いやりに他ならない。そもそもスレッタとしては元からミオリネと「結婚したい」という意志や欲望があった訳でもない。もしも結婚という形を取らないとしても二人に信頼関係があるならばそれで良いだろうと筆者は考えるが、スレッタにはこれまでの社会関係の乏しさもあり信頼関係の証=結婚という風に短絡してしまっているようだ。スレッタとミオリネが、OPテーマ『祝福』の歌詞にあるように「誰かの選んだステージじゃなく」自分たちで選んだ物語として人生を歩んでいくことを願う。
「宇宙議会連合」や地球の新勢力も登場し、クライマックスに向けて怒涛の展開を予感させる。暫定的にはシャディクが地球の勢力と組み、ミオリネが宇宙の勢力を束ねる展開になるのだろうか。チラッと映った描写からは、どうやら地球の荒廃は想像以上のようだ。宇宙世紀のガンダム作品では基本的には地球が特権階級の住処として描かれていたが、「水星の魔女」ではそれが逆転し地球は宇宙に出られない貧困層の暮らす見捨てられた星であるようだ。
そして、ミオリネがデリングに重なるというよりもむしろミオリネに重なって「狙われる」立場のデリングも当然一筋縄ではいかないようで、プロスペラと組んで一体何を企むのか。プロスペラの復讐もまた単純にデリングの命を奪うということではないらしい。かつてデリングがああまでしてガンダムを封じねばならず、そして今ガンダムを認めるに至った理由、エアリアルに隠された本当の秘密とは何なのか。まだまだ謎の尽きない『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。今後の展開にも注目だ。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』は、2022年10月2日(日)より、毎週日曜午後5時~MBS/TBS系全国28局ネットにて放送中。
Amazonプライムビデオ他でも配信中。
第11話のネタバレ感想はこちらから。
第1話のネタバレ感想はこちらから。
第2話のネタバレ感想はこちらから。
第3話のネタバレ感想はこちらから。
第4話のネタバレ感想はこちらから。
第5話のネタバレ感想はこちらから。
第6話のネタバレ感想はこちらから。
第6話までの振り返りと用語解説はこちらから。
第7話のネタバレ感想はこちらから。
第8話のネタバレ感想はこちらから。
第9話のネタバレ感想はこちらから。