勝山海百合「あれは真珠というものかしら」英中訳公開
SFメディアVG+ (バゴプラ) が主催し、2020年6月〜8月に開催された第1回かぐやSFコンテストの大賞受賞作品「あれは真珠というものかしら」(勝山海百合 著) の英語訳と中国語訳 (簡体字・繁体字) 、そして表紙イラストを公開しました。
かぐやSFコンテストでは、日本SFを世界に発信していくことを目標に、大賞作品への副賞を“英語と中国語への翻訳”とし、それぞれイーライ・K・P・ウィリアムさん、田田さんという実績のある二人の翻訳家に「あれは真珠というものかしら」を翻訳していただきました。英語版「あれは真珠というものかしら」のタイトルは「Dewdrops and Pearls」に、中国語版のタイトルは「那是珍珠吗」(簡体字)「那是珍珠嗎」(繁体字) となっています。翻訳者のお二人のプロフィールは以下のリンク先からご覧ください。
また、副賞であるイラストを手掛けたのは、かぐやSFコンテストでは審査員を務めた井上彼方さん。イラストレーターとしても活動されており、作中に登場するキャラクターの碩堰 (せきせき) と貝殻を繊細なタッチで描き出しています。装丁デザインは、米フレズノ大学をグラフィックデザイン専攻で卒業し、現在は国内で活動する浅野春美さんに手掛けていただきました。日本語・中国語・英語の三言語に対応するユニバーサルなデザインになっています。
勝山海百合「あれは真珠というものかしら」は、「未来の学校」をテーマに2,000字〜4,000字のSF短編小説を募集した第1回かぐやSFコンテストで大賞を受賞した作品。計416編の応募の中から、英語圏と中国語圏に発信されることを前提とした審査が行われ、審査員長・橋本輝幸、審査員・井上彼方、バゴプラ編集部の合議で大賞を決定しました。「あれは真珠というものかしら」は、一足早く翻訳家のToshiya Kameiさんの手でスペイン語に翻訳され、Nagari Magazineに掲載されました。「あれは真珠というものかしら」は、商業出版を経ず一気に、日本語、英語、中国語 (簡体字・繁体字)、スペイン語で読めるグローバルな作品となりました。
勝山海百合さんの「あれは真珠というものかしら」の日本語バージョンは、以下のリンク先からお読みいただけます。
第一回かぐやSFコンテストの“その後”
第一回かぐやSFコンテストの最終審査で橋本輝幸さんが特に推薦した大竹竜平さんの「祖父に乗り込む」には審査員長賞が贈られ、こちらの作品も副賞として英語と中国語に翻訳され、10月30日(土)に公開される予定となっています。また、かぐやSFコンテストでは、最終候補作品11編が筆者匿名で公開され、読者投票にかけられました。この投票で最多得票を得た佐伯真洋さんの「いつかあの夏へ」に読者賞が贈られています。そして、審査員・井上彼方さんが特に推薦した坂崎かおるさんの「リモート」に審査員特別賞が贈られました。審査員特別賞を受賞した坂崎かおるさんは、SF同人誌の『SFG Vol.03』とバゴプラに書き下ろし短編を掲載するという副賞を発表しています。
第一回 #かぐやSFコンテスト
「リモート」で審査員特別賞を受賞した坂崎かおるさんへの副賞は「後日決定」としていましたが……「書き下ろし短編小説をバゴプラ及び『SFG Vol.03』に掲載」に決定しました👏
新作二編をそれぞれバゴプラとSFG @SFGeneration に掲載します!https://t.co/UwvZxNlqPA
— VG+ (バゴプラ) (@vagopla) October 10, 2020
かぐやSFコンテストは、応募者が海外へ発信するという前提で作品を執筆し、Honorable Mention (選外佳作) に選ばれた作品を誰でも読める状態にしたことで、Toshiya Kameiさんが次々と作品を翻訳されるなど、新たな展開に発展していきました。短い作品でも評価される場所を創り、日本SFを海外に発信していく——この二つの目標を一定達成することができたと言えます。
しかし、バゴプラの取り組みはこれで終わりではありません。今回翻訳された作品をより多くの読者の皆さんに届けること、こうしたプロジェクトに継続的に取り組んでいくこと、そして、かぐやSFコンテストを通して見えてきた問題点 (2020年9月18日のツイートを参照) に具体的に取り組んでいくこと……まだまだやるべきことは山積みです。引き続き、2020年以降の日本SFを豊かなものにしていくためのバゴプラの取り組みを応援していただけますと幸いです。