ネタバレ解説&考察『マトリックス レザレクションズ』ラストとポストクレジットの意味は? | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&考察『マトリックス レザレクションズ』ラストとポストクレジットの意味は?

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『マトリックス レザレクションズ』公開

1999年に第一弾が公開され、社会現象を巻き起こした「マトリックス」シリーズの最新作『マトリックス レザレクションズ』が2021年12月17日(金) より日本で公開された。アメリカでの公開は翌週22日(金) となっており、日本での公開は世界最速。今や歴史的シリーズとなった「マトリックス」最新作を一足早く味わえる絶好のチャンスとなっている。

『マトリックス レザレクションズ』は、これまでの3作品で指揮をとったラナ・ウォシャウスキー監督が手掛ける。これまで共に監督を務めてきた妹のリリーは本作の制作に参加しなかったが、ネオ役のキアヌ・リーブスとトリニティー役のキャリー=アン・モスが続投し、正統な「マトリックス」最新作となっていることは間違いない。

一度は『マトリックス レボリューションズ』(2003) で完結したかに思われた本シリーズだったが、『マトリックス レザレクションズ』では意外な展開を見せて見事に復活を果たした。今回は、その『マトリックス レザレクションズ』のエンディングの意味を解説していこう。

以下の内容は、『マトリックス レザレクションズ』の結末部分についてのネタバレを含むため、必ず本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『マトリックス レザレクションズ』の結末部分の内容に関するネタバレを含みます。

『マトリックス レザレクションズ』のラストの意味とは

『マトリックス レザレクションズ』は、前作『マトリックス レボリューションズ』のラストから60年後の物語だった。かつて、ネオは自身と対の存在で、マトリックスにとって脅威になるスミスを倒すことを条件に、ザイオンに侵略しようとするマシン・シティと和解。しかしその平和は長くは続かず、電力不足によって機械同士の戦争が勃発し、2200年代後半の現実世界は良くも悪くも様変わりしていた。

今や伝説となったネオの存在を信じるバッグス達は、アナリストが支配する新たなマトリックスからネオを救出。だが、前任者のアーキテクト(設計者)とは違い、事実ではなく感情を利用して人々を支配するアナリスト(分析者)は、フィクションの力を使ってネオをマトリックスにつなぎとめていた。加えて、トリニティを“家族”というフィクションを用いてマトリックスにつなぎとめると、更にトリニティの存在を利用してネオをマトリックスにつなぎとめようとする。

なお、アナリストは『マトリックス レボリューションズ』でのネオの死後、ネオを利用して新たなマトリックスを作り上げようとしたが、復活にはトリニティの存在が不可欠であることに気づき、長い年月をかけて二人を蘇生している。

ネオとトリニティは、『マトリックス レボリューションズ』で少女時代の姿が描かれたサティー達の力を借りて、自らの意思でマトリックスを出ることを選択。しかし、今度は『マトリックス』(1999) で一世を風靡した「バレットタイム」(スローモーションで映像を見せることでキャラクターのスピードを際立たせる手法)を逆手にとったアナリストが物理的に優勢に立つ。

この危機を救ったのは、意外にもネオの宿敵であるスミスだった。ネオが自由になったことでスミスはプログラムの支配を逃れ、自由に行動することができるようになっていた。アナリストはネオとトリニティを支配することに注力するあまり、スミスの存在を軽視していたのだろう。

エージェント達が新たなプログラムを走らせ、トリニティとネオを排除しようとするが、最後には力が復活しないネオに代わってトリニティが空を飛び、二人はマトリックスから逃れることに成功する。これまでの三部作ではトリニティがネオを“救世主”だと信じ続けてきたが、トリニティもまたかつてのネオと同様の力を持っていたのだ。

その後、パッチ(バグ修正)から逃れたアナリストのもとをネオと共に訪れたトリニティは、ミソジニー(女性憎悪)を撒き散らすアナリストをボコボコに。「誰もが羊(言いなり)になりたがってる」と強がるアナリストに対し、「この世界を好きに作り直す」「交渉に来たのではない」と言う二人は、「二回目(another chance)」の機会を生んでくれたことへの礼を言い、空へと飛び立っていくのだった。

エンディングに込められた意味を解説&考察

まず、『マトリックス レザレクションズ』のストーリーで最も特徴的だったのは、後半部分ではトリニティが物語の中心に据えられていることだ。これまでのシリーズから一変し、ネオはその力をほとんど防御のために使っていた。そして、本作のヴィランであるアナリストは女性を“手段=ツール”として認識するミソジニストであり、最後までその姿勢を崩さない。

トリニティはアナリストに蹴りを入れて文字通り「顎を外す」が、懲りずに「ビッチ」という言葉を使ったり、男性であるネオに女性であるトリニティの「コントロール」を求めたりと無茶苦茶だ。更に「好きなようにしろ」と言う中で、「空を虹色に塗ればいい」と、セクシャルマイノリティの尊厳と多様性の象徴であるレインボーを揶揄する。ミソジニーだけでなく、トランス差別の姿勢も隠そうとしないのだ。

アナリストはプログラムであるため、実際にそのような思想を持っているというよりも、マトリックスで生きる人々の憎悪を扇動したり、二人から強い感情を引き出すためにこのような振る舞いを身につけているのかもしれない。アナリストは、二人が何をやろうと「人々は自由になりたがらない、支配されることを望んでいる」と言い放ち、二人もまたポッドに戻ることになると言い切る。だが、二人はアナリストの言葉に苦笑すると、空に虹をかけたり、世界に少し手を加えたりして、「好きなように作り直す」ことを宣言する。

この一連のシーンは明らかに、ラナ・ウォシャウスキー監督からの私たちが生きる現実世界に対するメッセージになっている。「マトリックス」三部作を監督したウォシャウスキーの二人は、後にトランス女性であることを表明。妹のリリーは2020年にNetflixのインタビューで、「マトリックス」はトランスジェンダーの人々の物語であり、当時の社会と業界はまだ準備ができていなかったと語った。

「マトリックス」三部作には、社会は偽物であり、自分の選択によって“現実”を生きることができるというメッセージが込められていた。一方で、ストーリーや設定はキリスト教とユダヤ教の救世主伝説を想起させるものになっており、主人公の白人男性が世界を救うという内容が物語の大筋になっていたことは確かだ。

故に「マトリックス」のアイデアは2015年以降にはオルタナ右翼によって簒奪され、陰謀論にも利用された。トランプ大統領の娘であるイヴァンカ・トランプとテスラのCEOであるいーロン・マスクがTwitterで「赤いピル」を引用したやり取りをした際には、リリー・ウォシャウスキーは「Fuck both of you」とツイートしている。

ウォシャウスキー姉妹の思いとは裏腹に、日本の映画業界やメディア業界においても、ミソジニー発言が飛び交っている現状は言うまでもない。アナリストは、トリニティーの新たなマトリックスの名前に、フェミニズムの観点から批判されることも多い映画『ティファニーで朝食を』(1961) から“ティファニー”を選んだことを「娯楽(アミューズメント)」だとヘラつく。そのようにして、人の尊厳を奪う差別はスナックを食べるようにカジュアルに行われる。

世界はより悪くなったようにも思える。だが、ラナ・ウォシャウスキー監督がこの状況に礼を言うことがあるとすれば、もう一度「マトリックス」をやり直す理由を与えてくれたことだろう。オルタナ右翼による「マトリックス」の利用を止めさせるには、白人男性の救世主が世界を救う話ではなく、女性が主人公になりその力を目覚めさせる物語、そして空をレインボーで塗り替えると言い切る物語を描き直す必要があった。だからこそ、トリニティーの最後のセリフは、「二回目(another chance)」の機会を与えてくれたことへの礼だったのだ。

世界を悲観する人が現れようと、人々が憎悪の感情に服従しようと、少しずつ改善して、あとは好きにやる。そんなラナ・ウォシャウスキー監督の言葉が聞こえてくるようである。『マトリックス レザレクションズ』のエンディングは、ネオ=救世主の“レザレクション(復活)”ではなく、「マトリックス」自体が本来あるべき姿へと復活したことを示して幕を閉じるのだった。

ポストクレジットシーンの意味は?

そして、意外にもエンドロールの後には近年の映画業界では“流行り”のポストクレジットシーンが待っていた。それは、序盤で登場したトーマス・アンダーソンとしてのネオが働くゲーム会社デウス・エクス・マキナの従業員達の会話シーンだった。アナリストの言う通り、従業員達は引き続き飼い慣らされた羊のように新作ゲームについての議論を続けている。

「映画は死んだ。ゲームも死んだ。物語も死んだ」と言う二人は、これからは「シリーズものの猫動画」を出していくべきだと主張。その名を「マトリックス」からとった「キャットリックス」にすると宣言するのだった。

『マトリックス レザレクションズ』の本編では、アナリストはフィクション(物語)の力を利用しようとしていたが、私たちが生きる世界では物語すら力を失いかけている。この従業員達が議論している内容は、もはやゲームの話ですらない。この一連のやり取りは、「メタルギア ソリッド」シリーズのような買い切りの大作ゲームよりも、課金式のアプリゲームがゲーム業界で重宝されるようになった流れを想起させる。

『マトリックス レザレクションズ』でも、これまで少ししか登場する機会がなかった黒猫のデジャヴュの登場シーンが大幅に増えた。人々の感情を動かすためにキーワードや煽り文句を必要とするこの世界では、アイキャッチとしての“猫”の存在もこれまでとは違った意味を持ち始めている。ラナ・ウォシャウスキー監督は、ポストクレジットシーンまで徹底的にメタを敷き詰めて、改めて「マトリックス」第4作目『マトリックス レザレクションズ』の幕を閉じる。

これをただのフィクションと笑うのか、「マトリックス」の世界を“鏡”と考えて現実を生きるのか、その選択は私たちの手に委ねられている。

映画『マトリックス レザレクションズ』は2021年12月17日(金) より日本公開。

『マトリックス レザレクションズ』公式サイト

「マトリックス」トリロジーの4K ULTRA HD + Blu-rayボックスセットは発売中。

新たにスミス役を演じたジョナサン・グロフの撮影秘話はこちらから。

ストーリーとメッセージの解説&考察はこちらの記事で。

『マトリックス レザレクションズ』のサントラは全曲無料で公開中。詳しくはこちらから。

 

映画『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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