ネタバレ『エターナルズ』結末はケヴィン・ファイギの案だった クロエ・ジャオ監督の別案を覆した理由とは | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ『エターナルズ』結末はケヴィン・ファイギの案だった クロエ・ジャオ監督の別案を覆した理由とは

© 2021 Marvel

映画『エターナルズ』公開

2021年11月5日(金)より公開された映画『エターナルズ』は、アカデミー監督賞と作品賞を受賞した『ノマドランド』(2021) のクロエ・ジャオ監督が指揮をとったMCU最新作。MCU初のアジア系主人公作品となった『シャン・チー/テン・リングス』に続き、『エターナルズ』はMCU初のアジア系女性監督作品になる。スタートから13年が経ち、フェーズ4に入ったMCUに革新的な展開をもたらす作品に仕上がっている。

『エターナルズ』で描かれるのは、地球外からやって来て人類の進化の歴史を手助けし、見守ってきた個性豊かな10人のエターナルズの物語。韓国系アメリカ人のマ・ドンソクが演じたギルガメッシュやゲイのファストス、耳が聞こえないマッカリなど、エターナルズにはこれまでのスーパーヒーロー映画では“いない存在”として扱われてきた人々が中心に据えられている。

全く新しいスーパーヒーロー映画の姿を見せた『エターナルズ』だが、そのシナリオにも注目が集まった。2時間半を超える物語に待っていたのは衝撃のラストで、MCU史を巻き込んだ論争と考察を呼んでいる。しかし、クロエ・ジャオ監督はあの結末について、意外な事実を明かしている。

以下の内容は『エターナルズ』の結末に関するネタバレを含むので、必ず本編を鑑賞した上で読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『エターナルズ』の結末に関するネタバレを含みます。

『エターナルズ』結末は?

映画『エターナルズ』のラストは、ユニ・マインドによってエターナルズの力をセルシに結集し、目覚めようとする新たなセレスティアルズ=ティアマトを眠りにつかせるという展開だった。ティアマト自身の意思も手伝い、《出現》をなんとか途中で食い止めたエターナルズ。一件落着かと思いきや、もう一段階の結末が待っていた。

セルシとファストスは愛する人と過ごし、スプライトは人間としての人生を生き、キンゴはボリウッドスターに戻り、セナ、マッカリ、ドルイグは他の惑星のエターナルズに真実を伝える旅に出る——。それぞれの道を生きようとするエターナルズの面々だったが、“生みの親”であるセレスティアルズのアリシェムが黙っていなかった。

アリシェムは地球に残ったセルシ、ファストス、キンゴの三人を強制召集すると、人類が救うに値するかどうか三人の記憶をチェックしてから審判を下すと宣言。セルシ、ファストス、キンゴはそのまま連れ去られてしまう。セナ、マッカリ、ドルイグは突然現れた“11人目のエターナルズ”であるスターフォックスと共に拐われた三人の救出に乗り出すことを示唆して、『エターナルズ』は幕を閉じる。

クロエ・ジャオ監督の構想ではなかった

明らかに「つづく」という物語の終わり方だったわけだが、実はこのエンディングはクロエ・ジャオ監督の当初の構想とは異なっているという。

ELLEアメリカ版のインタビューでは、クロエ・ジャオ監督は以下のように話している。

私は、その映画単体だけで楽しめる作品を作りたいと強く思っています。今回の作品については、すべてをテーブルに置いてみたので、何が起こるのか見てみましょう。

これを公の場で言うのは初めてですが、脚本内ではとても素敵な終わり方だった時期があるんです。それで完結していて、「世界が救われた、ハッピーハッピー」みたいな。

しかし、ケヴィン(・ファイギ)はそれでは満足しませんでした。私も心の奥底では同じでした。それで彼は私に挑戦してきたんです。実はこれ(『エターナルズ』のエンディング)は彼のアイデアなんです。彼は私に考えさせたんです。「行動には結果が伴う。たとえそれが英雄的なものでも」ということを。

これほど大きな決断を下し、第三幕(設定→対立→解決の解決にあたる部分)でこれほど大きなことが起こったのなら、何かしらの影響が伴うはずです。「人類を救ったのだから、何をやっても大丈夫」というわけにはいきません。

そうしてしまうと、この映画で描こうとした“複雑さ”というものが削がれてしまいます。そういうことで、あのエンディングは生まれたんです。

当初の『エターナルズ』の脚本ではハッピーエンドが設定されていたものの、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギがこれに異を唱えたのだという。

確かにMCUでは、銀河中の人々が救われた『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) のエンディングですら、『エターナルズ』の一件の契機になっていた。アベンジャーズの英雄的に思える行動が陰では憎しみの連鎖を生んでいるという課題は、MCUフェーズ1からフェーズ3までの「インフィニティ・サーガ」の中心的な議題に設定されていた。

「行動には結果が伴う」という言葉は、「スパイダーマン」シリーズではお馴染みの「大きな力には大きな責任が伴う」という言葉にも通じる。これはもはやケヴィン・ファイギの哲学なのかもしれない。

そして、この哲学は拡大し続けるMCUとは非常に相性が良い。あるキャラクターの行動が別の結果を生むのならば、物語は無限に拡大し続ける。米時間2021年11月12日(金) に実施されたDisney+ Dayでは、マーベル・スタジオから『ワンダヴィジョン』(2021) のアガサを主人公に据えたドラマ『アガサ:ハウス・オブ・ハークネス(原題)』などの情報が続々と発表された。もはやMCUの拡大は必然ともいえる。

なお、MCUからの新たな発表については、こちらの記事にまとめている。

『エターナルズ』から削除された要素も

もちろん、マーベル・スタジオも拡張するばかりではない。『エターナルズ』の共同脚本を手掛けたカズ・フィルポとライアン・フィリポは米Deadlineのポッドキャストで、当初はマーベル・スタジオ側の要請でエターナルズを12人に設定していたと話した。初稿を提出した段階で二人を削るよう要請を受けのだという。

その理由は、新キャラを紹介するにはあまりにも数が多いということで、ヴァンパイアを思わせる名前とコスチュームを使用するヴァンピロを含むキャラクターが削られた。『エターナルズ』のポストクレジットシーンでは、MCUの“ヴァンパイア路線”と結びつく展開が用意されており、これは賢明な判断だったといえる。

また、英Metroのインタビューでは、カズ・フィルポは当初9種類のポストクレジットシーンを用意していたとも話している。9つのアイデアはそれぞれエターナルズの違うキャラクターにフォーカスしたものになっていたという。つまり、これらはクロエ・ジャオ監督が明かしたハッピーエンドパターンの脚本で用意されていたポストクレジットシーンだったと予想できる。

巨大なユニバースを形成するMCUでは、監督・脚本家の案とスタジオの意向を擦り合わせて作品が作られる。「行動には結果が伴う」というケヴィン・ファイギの哲学を頭に入れておくと、今後のMCU作品の見方が少し変わるかもしれない。

映画『エターナルズ』は2021年11月5日(金) より劇場公開。

『エターナルズ』公式サイト

Source
ELLE / Deadline / Metro

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『エターナルズ』のミッドクレジットシーンとポストクレジットシーンの解説はこちらから。

クロエ・ジャオ監督はスターフォックスが11人目のエターナルズであることを認めている。詳細はこちらから。

また、クロエ・ジャオ監督はポストクレジットシーンの声の主が『ブレイド』の主人公であることを明かしている。詳細はこちらの記事で。

セルシ役のジェンマ・チャンとイカリス役のリチャード・マッデンは、二人が恋に落ちた理由を解説している。詳しくはこちらの記事で。

Disney+ Dayで発表されたMCUの新情報はこちらの記事で。

 

セルシについての解説はこちらから。

エイジャックについての解説はこちらから。

ギルガメッシュについての解説はこちらから。

セナについての紹介はこちらから。

キンゴについての紹介はこちらから。

マッカリについての紹介はこちらから。

ドルイグについての紹介はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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