ラスト&ポストクレジット ネタバレ解説『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』考察&感想 | VG+ (バゴプラ)

ラスト&ポストクレジット ネタバレ解説『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』考察&感想

©️2025 Marvel

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』公開

MCU映画第35作目『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』が2025年2月14日(金) より日米同時に公開を迎えた。本作は「キャプテン・アメリカ」シリーズの第4弾で、アンソニー・マッキー演じるサム・ウィルソンが新たなキャプテン・アメリカとして映画デビューを果たす。

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の指揮をとったのは『クローバーフィールド・パラドックス』(2018) などで知られるジュリアス・オナー監督。ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』で新キャップに就任したサム・ウィルソンには、本作ではどんな結末が用意されていたのだろうか。

今回は『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』のラストをネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容は『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の結末に関する重大なネタバレを含むので、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の結末に関するネタバレを含みます。

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』ラスト ネタバレ解説

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』から繋がるポリティカルサスペンス

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』では、サディアス・ロスが新大統領に就任したことで、新たなキャプテン・アメリカとなったサム・ウィルソンが試練に直面する。ホワイトハウスに招いたイザイア・ブラッドリーが何者かに操られてロス大統領を襲撃してしまったのである。

イザイア・ブラッドリーはドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』に登場したキャラクター。初代キャプテン・アメリカが冷凍睡眠に入った後、米政府に超人血清を打たれて超人兵士になったが、30年間実験台として監禁されていた過去を持つ。

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では、アメリカ黒人としてキャプテン・アメリカになることに葛藤するサムに疑問を投げかけ、最後には全てを背負う覚悟を見せたサムと和解。サムはイザイアの歴史を博物館に残すことに尽力した。

「忘れられたキャプテン・アメリカ」が現職大統領を襲うという悲劇。2代目ファルコンとなったホアキン・トレスと共に真実を追う……、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は、そんなスパイ要素もある上質なポリティカルサスペンスに仕上がっていた。

ミスター・ブルーとは誰か

今回の事件を裏で操っていたのは、ミスター・ブルーことサミュエル・スターンズだった。スターンズは映画『インクレディブル・ハルク』(2008) に登場した細胞生物学者で、ハルクとなったブルース・バナーを助けていた人物だ。

同作では、スターンズはハルクの力を求めたエミル・ブロンスキーに脅されてブルースの血液サンプルをブロンスキーに投与。その際にスターンズも出血した頭部にブルースの血液が入ってしまい、頭部が変形する様子が映し出されていた。その姿は、原作コミックでスターンズが名乗る「リーダー」というヴィランを想起させた。

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の冒頭では、アボミネーションと化したブロンスキーが暴れ、ハーレムでハルクと衝突した事件について語られている。この時、ロス将軍はブロンスキーを率いて“ハルク狩り”を行っており、「ハルク・ハンター」の異名を得たことも明かされている。

ロスはこの件の責任を問われたが、ブロンスキーを生み出したスターンズを逮捕したことで汚名を返上したという。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) 以降、サディアス・ロスは国務長官としてソコヴィア協定の締結に邁進する姿が描かれていた。ロスの政治家転身の背景にはスターンズの逮捕があったということである。

このように、ロスとスターンズのその後を描く『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は事実上の『インクレディブル・ハルク』の続編だったとも言える。「ハルク」と「キャプテン・アメリカ」が交わる熱い展開だ。

日本との衝突

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』で大きな役割を果たすのが日本政府と首相の尾崎である。これまでMCUでは日本が果たす役割は小さかった。現実における映画市場の規模や国際的な影響力も関係しているのだろう。

ドラマ『シークレット・インベージョン』(2023) では、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の前哨戦のようにアメリカと各国の対立が描かれた。その時、日本は蚊帳の外だったので、今回使いやすかったという事情もあるのかもしれない。

日本政府は、映画『エターナルズ』(2021) でインド洋に登場したセレスティアル島で採掘できるアダマンチウムの精製に成功。サイドワインダーが率いるサーペントがアダマンチウムを奪取し、その黒幕がロス大統領であるという情報が尾崎首相にもたらされたことで日米関係は悪化することになる。あんなに若くて米国と対等に渡り合える日本国総理大臣は見たことがない。

ちなみに、サイドワインダーもかつて自分の部隊がスターンズを発見したという形で『インクレディブル・ハルク』のストーリーと結び付けられている。

まさかのアノ人登場

セレスティアル島での日米の軍事的な衝突を避けるため、サムとホアキン・トレスは奮闘するが、その戦いの中でホアキン・トレスは重傷を負ってしまう。二代目ファルコンが死んでいたかもしれないという状況で、落ち込むサムの前に現れたのは、セバスチャン・スタン演じるバッキー・バーンズだった。

実は『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の公開前、主演のアンソニー・マッキーがバッキーは本作に登場しないと発言していた。アンソニー・マッキーが“アンドリュー・ガーフィールド”(事前に「登場しない」と嘘をつくこと)をやったのだ。

しかもバッキーはスーツなんて着ちゃって、ちゃんとネクタイも締めている。ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では、バッキーはウィンター・ソルジャーとしての過去と向き合い、自己満足ではない償いに取り組んだ。セラピーも卒業し、まともに生活しているようである。

ロス大統領のエージェントであるルース・バット・セラフは、バッキーはじきに下院議員になるだろうと予想している。バッキー自身も嫌々ながら資金調達のキャンペーンに顔を出さないといけないと話しており、政治の世界に足を踏み入れたことは確かだ。

それぞれ立場は変わったが、サムの相棒が重傷を負ったと聞いてバッキーがサムの元に駆けつけたという事実だけで泣ける。サムもなんだか嬉しそうだが、ここでサムは正直な気持ちを吐露する。

サムは2度もエイリアンの侵略を阻止したスティーブ・ロジャースと自分を比べ、重責に耐えられないとして「超人血清を打つべきだった」とこぼすのだ。エイリアンを追い返した「2度」というのは、映画『アベンジャーズ』(2012) と『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) のことだろう。

サムにはスーパーパワーがなく、ロスから依頼されたアベンジャーズの再建についても荷が重いと考えていた。そんなサムにバッキーは、スティーブがサムを選んだのはサムが最強の人物だからではなく、サムがサムだからだと告げる。

それに、スティーブは血清を打っても全員は救えなかったとバッキーは指摘する。例えば『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でサムの尽力によって恩赦が与えられたシャロン・カーターもその一人だろう。命を落としたナターシャ・ロマノフやヴィジョン、トニー・スタークもそうだ。

スティーブは人々に信じる希望を与えたが、サムは生身の人間であることで人々の目標になっている、というのがバッキーの意見だった。『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』のサムは汗をかき、血を流し、骨を折り、それでも戦う姿を見せていた。ほかでもない観ている私たちもインスパイアされる演出になっていた。

このバッキーの“カウンセリング”によってサムはスターンズとの最後の戦いに挑む覚悟を決めることになる。バッキー、ありがとう。

スターンズの陰謀

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』のラストでは、ミスター・ブルーことサミュエル・スターンズが自らの陰謀を明らかにする。ハルクの血が入って常人にはできない計算が可能になったスターンズは、逮捕された後、ロスから血中のガンマ線を増幅する処置を受け、文字通りロスの“ブレーン”となって助言を与えていたというのだ。

軍人だったロスがあれよあれよと大統領に上り詰めていった背景には、スターンズの力があったということである。しかし、ロスはスターンズに見返りを約束していたがその約束が守られることはなかった。ロスは病気で死に直面した後、スターンズが開発した薬で生き延びており、その薬を失うことを恐れていたのだ。

だが、この薬にもスターンズの罠が仕掛けられていた。ロスが飲んでいる薬はロスをレッドハルクに変える薬だったのである。スターンズは日米の関係を悪化させ、更にここぞというところでロスがレッドハルクに姿を変えることでロスの信用を失墜させようとしていた。

インド洋でそれが起きるはずだったがキャプテン・アメリカがそれを阻止。スターンズは最後の手段として自主し、ロスに不利な情報を流すことでロスの暴走を促そうとしたのである。

ヘインズポイントの決戦

ロス大統領がセレスティアル島の協定について会見を行う中、自首したスターンズが日本のアダマンチウム強奪にロスが関与していたという情報を報道機関に流す。さらにスピーカーからロスとスターンズの通話内容、そして娘のベティに更に嫌われるだろうという音声が流れたことでロスが暴走、レッドハルクへと変身してしまう。

居合わせた人物が「いつから赤だったの?」と言っているが、このセリフは、緑色のハルクが赤色になっているということと、米国では青が民主党、赤が共和党のテーマカラーであることを重ねたジョークだ。『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の冒頭では、ロスが大統領選の勝利宣言をする時の舞台が青を基調としたデザインとなっており、ロスが民主党の大統領であることを匂わせていた。

レッドハルクが暴走する中、キャプテン・アメリカが到着。レッドハルクをヘインズ・ポイントへ誘き出す。ヘインズポイントはワシントンDCにある桜の名所で、これらの桜は平和と親善の象徴として1912年に日本から寄贈されたものである。

サムはレッドウィングの援護を受けながら、ヴィブラニウムの翼で防御とカウンターを繰り広げるサムらしい戦い方でレッドハルクと対峙する。科学に支えられるキャップもなかなか良い。

最後は右の翼に溜め込んだエネルギーを放出してレッドハルクを倒すが、レッドハルクはなおも立ち上がる。ここで役に立つのが対立よりも対話を選ぶサムの“人間性”だ。サムは酷いことをしたかもしれないが、変わろうとした、それを世界とベティに示してくれと語りかけると、レッドハルクはかつてベティと歩いた思い出の地で散る桜を見て元のロスの姿に戻るのだった。

ハルクを元に戻す“ケア”の作業は、ベティにナターシャなど、これまで女性のキャラクターが担わされることが多かった。ブルースは自分自身でハルクと向き合うことを決めたが、今回、ハルクと向き合ったのは新たなキャプテン・アメリカだった。

ラフト刑務所の面会

ロスが全てを認めたことでイザイアは釈放、アダマンチウムの共同利用についての協定が結ばれ、レッドハルクが破壊したホワイトハウスは再建工事に入ることに。ニュースでは「新しい世界」が始まるということが示唆されている。

もしかすると、自由の女神が改修で銅色に戻ったように、アメリカのシンボルであるホワイトハウスもMCUの世界では違う姿になるのかもしれない。象徴的な建造物の見た目が変わるというイベントは、時系列やどのユニバースかを見極める時に役に立つ。

サムはラフト刑務所に収監されているロスを訪ね、全ての責任を認めて判決を受け入れたことを評価する。現実の大統領にも有罪判決が出ていることを想起させる。サムは、その結果として“尾崎=ロス協定”が締結されたことにも言及。アダマンチウムの共同利用に関する協定だろう。

ロスは「国を前に進めなければ」と自らが退いた理由を明かし、サムは「互いの良いところを見れなければ負けも同然」と歩み寄る。分断が深まる米国の空気、その打開に向けた希望を込めるようなラストだ。

最後にはリヴ・タイラー演じるベティ・ロスが登場。父サディアス・ロスと面会に訪れたのだ。サディアス・ロスは全ての責任を受け入れ、権力を手放してようやく自分の一番大切な存在に受け入れられたのである。

ロスとスティーブが対立した『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』では、サムはラフトに入れられており、ロスは檻の外にいた。その立場は真逆になったが、それでもサムがロスに寄り添おうとするというのが、分断の時代のキャプテン・アメリカという感じがして良い。

サムになりたかったホアキン

その後サムは入院しているホアキン・トレスに会いに行く。ホアキン・トレスはサムへの憧れを隠さず、「サム・ウィルソンになりたい」と思っていたと明かす。ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でも、トレスは初登場時から空を飛ぶファルコンを双眼鏡で楽しそうに見ていた。

キャプテン・アメリカではなくファルコンに憧れたホアキン・トレス。ヒーローはテレビ等でしか見たことがなかったと言い、スーパーパワーのない普通の人間だが、決して諦めないサムを目標としていた。サムは、まさにバッキーが言った通りのロールモデルになっていたのだ。

サムはきっと、バッキーが言ってくれた言葉と、新しい相棒からの言葉を重ね合わせたはず。サムはこれまで渋っていたが、ようやく自分の技のコツをホアキンに教えてやっている。そして、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は、ホアキンがサムにファルコンの新しい翼をコネでワカンダに依頼してほしいとお願いする微笑ましい光景で幕を閉じる。

ミッドクレジットで流れる曲はケンドリック・ラマー「i」(2014) 。ケンドリック・ラマーは『ブラックパンサー』(2018) でも主題歌「All The Stars」をSZAと共に提供している。ワカンダと共にある新キャプテン・アメリカに相応しいチョイスである。悪いことばかり起きているが、「私は自分を愛してる」と歌われる逞しい曲だ。

ポストクレジットの意味は?

スターンズは何を言っていた?

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』にはミッドクレジットシーンはなかったが、ポストクレジットシーンが用意されていた。サムはラフト刑務所で、ロスだけでなくサミュエル・スターンズにも面会していた。

高度に発達した頭脳で予測を立てられるスターンズは、「俺たちのユーモアは同じじゃない」と突き放すサムに、「住む世界は同じ」と切り出す。スターンズはある可能性を察知したと言い、ヒーロー達はこの世界を守っているが、自分達だけだと思うか、世界は一つだけだと思うかと問いかける。

もし他の世界からもこの世界を守らなければならなくなったら、何が起きるだろうかとスターンズが問いかけ、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』のポストクレジットシーンは幕を閉じる。これは明らかにマルチバース展開を示唆するセリフだ。

最初は、ヒーロー達が自分達だけだと思うのか、という問いかけは、5月2日(金) 公開のMCU映画『サンダーボルツ*』を示唆しているのかと思った。同作ではバッキー・バーンズやエレーナ・ベロワがアベンジャーズなき世界を舞台に新チーム結成に駆り出されることになる。

だが、スターンズはすぐに「世界は一つだけだと思うか」と、複数のユニバースの存在を指摘したのである。しかも、今回の指摘が新鮮だったのは、「他の世界を守るヒーロー達」の存在を示唆していたからだ。

マルチバース展開が待ち受けるMCU

2027年5月7日米公開を予定している映画『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ(原題)』では、原作に倣ってマルチバースのヒーロー同士が激突する内容になると予想されている。その前の2026年5月1日に『アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)』でも、トニー・スタークと同じ見た目のドクター・ドゥームが登場する予定だ。

その間の2026年7月24日に『スパイダーマン4(タイトル未定)』もマルチバース展開になることが予想されている。夏公開の『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は別のユニバースが舞台ではないかと指摘されている。

スターンズの言う通り、他のユニバースを守るヒーロー達が“やって来る”のだとすれば、再び『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021) のような事件が起きるのだろうか。その時、サム達はどのように対処することになるのだろうか。

また、映画の最後にはお馴染みの「キャプテン・アメリカは帰ってくる」の文字も。サムを中心としたアベンジャーズの再建も期待させるラストだった。

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』ネタバレ考察&感想

ニューリーダーを誕生させた傑作

やはり映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』はポリティカルサスペンスとして優れた作品で、最後まで飽きが来ることなく楽しむことができた。中でもバッキーの登場がハイライトで、やっぱりこの二人が喋っているだけで“ご褒美”感はある。

一方、ベティの登場も嬉しかったが、今回もベティは別の意味で「ご褒美」扱いではあった。ブルースとロスのために存在しているようなキャラクターで、なかなか主体的な描かれ方がされない。

それでも、スターンズと同じくユニバーサルが配給権を持っていた関係で続編が作られてこなかった『インクレディブル・ハルク』からの登場は嬉しかった(ちなみにアニメ『ホワット・イフ…?』にはベティは登場している)。

サムがアメリカ黒人としてキャプテンになる“継承の葛藤”はすでに『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』で済ませた部分だ。イザイアが政府から抑圧を受けるというのはドラマで描かれたストーリーの繰り返しのようではあった。それでも、映画サイズのアクションに外交を巻き込んだストーリーのスケールなど、劇場のスクリーンでこそ映える要素もふんだんに詰め込まれていた。

劇中には、現実の大統領の良心に訴えかけるようなシーンもあった。撮影中には選挙結果はわからなかったはずだが、罪は犯したかもしれないが変わることはできる、という呼びかけは民主的なプロセスで選ばれたトランプに今かけられる精一杯の言葉なのかもしれない。

一方で、ロスが民主党のカラーである青を背負っていたということは、バイデン前大統領のことも想定していたとも考えられる。バイデンも結局はイスラエルのパレスチナ侵攻に加担してしまった。ロスは娘を第一に考えていたが、バイデンもまた反発を受けながらも、銃の購入や所持に関する事件で有罪判決を受けた息子に恩赦を与えている。

「キャプテン・アメリカ」最新作としては、スティーブの影響力は最低限に抑え(下手にカメオがなくてよかった)、サムの新しいキャプテン・アメリカを存分に見せる作りにしていた点も良かったです。フェーズ4以降はなかなかMCUのリーダー的存在が現れていなかったが、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は見事にサムをニューリーダーに引き上げる作品に仕上がっていた。

おそらく今後、サムは新アベンジャーズの結成に動くのだろう。新生アベンジャーズのメンバーがどうなるのかについては、また別の機会に考察することにしよう。

「ハルク」と超人兵士のストーリーライン

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は、『インクレディブル・ハルク』の続編とも言える作品で、ロスの出世やスターンズのその後といった伏線が回収された。ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』ではアボミネーションことエミル・ブロンスキーのその後が描かれるなど、『インクレディブル・ハルク』の主要キャラは全員MCU復帰を果たしたことになる。

「ハルク」はかつてユニバーサル・ピクチャーズが映像化の権利を持っていた。20世紀フォックスに渡った「X-MEN」やソニー・ピクチャーズに渡った「スパイダーマン」と同じだ。しかし、映画『ハルク』(2003) で思うような結果が出ず、映像化の権利はマーベルに戻ったが、配給権はユニバーサルが持ったままだった。

マーベル・スタジオはディズニーに買収され、配給の関係で「ハルク」の新作が制作されないままだったが、2023年にはユニバーサルとの15年契約が終了している。今後、MCUで「ハルク」の新作が制作される素地は出来上がっているのだ。

今後のMCUでは、マルチバース展開もそうだが、「超人血清」も一つの大きな題材になると見られる。次に公開される『サンダーボルツ』はバッキー、レッド・ガーディアン、U.S.エージェントと男性メンバーは全員超人兵士となっている。初登場のセントリー/ボブも原作では血清を打って能力を手に入れたという設定になっている。

ハルクはスーパーソルジャー計画の延長で誕生したヒーローであり、デッドプールとウルヴァリンも同様だ。今後のMCUが超人兵士の力を得た面々と、生身の人間であり続けようとするサムを中心に展開される可能性は十分にあると考えていいだろう。

ラフトは危険?

気になるのは、今回の事件でラフト刑務所にレッドハルクことサディアス・ロスと、サミュエル・スターンズが入れられたことだ。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のラストではバロン・ジモがラフトに収監されている。

しかし、ジモは執事を使ってフラッグ・スマッシャーズの残党を爆破するなど、獄中からも存在感を示している。『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』でスターンズが捕えられながらもロスを支配していたように、ラフトから外の世界に影響を与えることもあるかもしれない。

ジモ、ロス、スターンズが収容されたラフト刑務所は、さながら「バットマン」でヴィラン達が収監されているアーカム・アサイラムのようになりつつある。かつて『シビル・ウォー』でキャプテン・アメリカがサム達を助けに行ったように、サンダーボルツの誰かが凶悪犯達を逃してしまう、なんとことはないと願いたいが……。

今後のMCUは?

MCUとしては、2025年2月29日(水) に『スパイダーマン:フレンドリー・ネイバーフッド 』が最終回を迎える。同作はMCUのメインユニバースとは無関係とされているが、今後のマルチバース展開に絡む可能性もあるだろう。

3月5日(水) からはドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』の配信開始を予定している。こちらでは、キングピンことウィルソン・フィスクがニューヨーク市長に就任している。ロスが大統領に就任した『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』にも通じる設定だ。

5月2日(金) には映画『サンダーボルツ*』が日米で同時公開される。ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のもう一つの続編にあたり、バッキーの今後に注目が集まる。

米時間6月24日からは『アイアンハート(原題)』が配信される。映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022) で登場したリリ・ウィリアムズを主人公とした作品で、こちらでもワカンダの要素が登場する可能性もある。

7月25日(金) にはフェーズ6の第一弾、映画『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』が米国で公開される。『ブレイド(原題)』が無期限延期されたため、2025年公開のMCU映画は同作が最後になる。

8月6日からはアニメ『アイズ・オブ・ワカンダ(原題)』、10月からアニメ『マーベル・ゾンビーズ(原題)』、12月にドラマ『ワンダーマン(原題)』と配信作品が続く。

その後は、2026年5月1日に『アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)』2026年7月24日に『スパイダーマン4(タイトル未定)』2027年5月7日に『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ(原題)』の公開が控えている。

大型クロスオーバーまでノンストップの予定だが、まずは『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』を深掘りしつつ、各作品の公開を待とう。

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は2025年2月14日(金) 公開。

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』公式

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』オリジナルサウンドトラックは発売中。

ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のBlu-rayは、4K UHD コレクターズ・エディション スチールブックが発売中。

バッキーは政治家になる? サムとの絡みと今後についての解説&考察はこちらから。

バッキーの「I love you」発言への海外の反応と、10年前にあった伏線の考察はこちらから。

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スターンズがヴィランのルールを変えた? ネタバレ考察はこちらの記事で。

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新アベンジャーズメンバーの考察はこちらの記事で。

ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』最終回のネタバレ解説はこちらから。

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映画『デッドプール&ウルヴァリン』ラストのネタバレ解説&考察はこちらから。

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映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』ラストのネタバレ解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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