『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』公開
2025年のMCU映画は、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』と共に幕を開けた。2月14日(金) に日米同時公開された本作は、MCU映画第34作目にあたり、「キャプテン・アメリカ」シリーズとしては第4作目となる。
アンソニー・マッキー演じるサム・ウィルソンが新たなキャプテン・アメリカとなってからは第1作目の作品となり、仕切り直しの作品でもある。それはキャプテン・アメリカにとってだけでなく、ファルコンにとっても同じことだ。本作ではホアキン・トレスが二代目ファルコンとしてデビューを果たしている。
今回は、ダニー・ラミレスが演じたホアキン・トレスについてネタバレありで解説&考察してみよう。以下の内容は『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』のネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』ホアキン・トレスはどうなった?
新しいタイプの相棒
映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』で映画デビューを果たしたホアキン・トレスは、冒頭からサム・ウィルソンのキャプテン・アメリカと共に二代目ファルコンとして活動している。ホアキンが使うスーツはドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) でサムから引き継いだものだ。
陽気でおしゃべりなホアキンはまさに“サイドキック”という立ち回りで、作品にコミカルな要素を与えてくれている。笑いのエッセンスをもたらすコメディリリーフとしても、シリアスな作風に明るさをもたらしている。
それに、サムとホアキンの関係は、トニー・スタークとピーター・パーカーの関係を想起させる。MCUのサイドキックは、わりかしメインキャラと対等な関係のキャラが多かった。コメディリリーフのキャラも、ダーシー・ルイスやケイティ・チェン、ネッド・リーズなど、メインキャラクターの友人というのが伝統的な形だった。
サムにはバッキーという対等な関係の相棒がいる一方で、ホアキン・トレスはサムに憧れる次世代のヒーローだ。スティーブ・ロジャースら第一世代にとっては孫世代。キャップの背中を見てきたサムだが、今度は自分が背中を見られる番になったのだ。
ホアキンのスーパーパワー
二代目ファルコンとなったホアキン・トレスはヒーローっぽさを重視していて、サーペントとの戦いではカッコよく技を決めて、それが誰にも見られていなかったことを悔しがっている。サムから技を教えてもらいたがってもいて、ヒーロー業を楽しんでいるように見える。
ファルコンのスーツを緑色にしているのは原作コミックのデザインに合わせたものだが、自分なりのヒーローになりたいというホアキンの個性も感じられる。これまで緑を基調にしていたキャラクターはハルクとシー・ハルク、セルシにグルートくらいで、ホアキンほど深い緑を取り入れているヒーローは初めてだろうか。
それらのキャラクターとの最大の違いは、ホアキンには超人的なスーパーパワーがないということだ。サム・ウィルソンと同じく生身の身体と科学の力だけで戦うのだ。だからこそ、サムはホアキンに、ホアキンはサムに、他のヒーローにはない何かを感じ取っているのだろう。
ホアキンに“明るさ”以外のスーパーパワーがあるとすれば、情報処理能力の高さだ。ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でも、ホアキンは米軍の「情報将校」と紹介されていた。空軍で情報の分析と提供を担当しており、位は中尉だった。
同作では、フラッグ・スマッシャーズがネットを利用して拡大し、活動を広げていく中で、ホアキンがネットの発信を見守って得た情報をサムに提供していた。『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』でも、ホアキンは基地で情報の収集と分析にあたっており、スターンズの居場所を突き止めている。
人の話を聞き、心に訴えかけるカウンセラーとしての能力を持つサムと、ネットの情報を分析して運用する能力を持つホアキンは、現代社会で求められる最強のコンビと言っても過言ではない。互いにスキルを補い合える理想的なコンビだ。
キャンプ・エコーワンに出向くことになった際には、すぐに出発することになり、ホアキンが慌ててジュースとスナックを掴んで出ていく場面も。遠足じゃないんだからとツッコミたくなるところも含めて、ホアキンの愛嬌が滲み出ているシーンだ。
ホアキンに重なる“ライリーの死”
日本との空中戦では、ホアキンはサムに倣ってまずは日本の隊員との対話を試みている。しかし、戦いの中で片翼を失うと海面に激突。重傷を負って一時心肺停止という状況に陥ってしまった。
映画『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014) では、サムはかつてアフガニスタンでの降下作戦でライリーという名の相棒を失ったことを明かしている。目の前で相棒が飛んでいながら何もできなかったことがサムが退役した原因だったのだ。
そのシーンで映ったサムとライリーの写真では、二人は共に米軍製のファルコンのスーツを身につけている。つまり、お互いにファルコンとして飛んでいたが相棒だけが死んだということを示唆している。空中戦でのホアキン/ファルコンの墜落は、サムにアフガニスタンの悲劇と無力感を思い出させたはずだ。
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』では、二度ホアキンが空中戦に出動する場面がある。その二度ともサムは「死ぬなよ」と告げ、二度ともホアキンは「死なないこと、了解(Not dying, copy that.)」と返している。サムにとって相棒を再び失うことだけは絶対に避けたいのだということが分かる。
サムになりたかったホアキン
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』のラストでは、ホアキンはお見舞いに来たサムに自分がなりたいのはサム・ウィルソンだったと告白する。ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でも、初登場時のトレスは空を飛ぶサムのファルコンを双眼鏡で楽しそうに眺めていた。
重責を感じているサムに対し、ホアキンはマイアミ出身の自分にとってヒーローはインターネットやテレビで見る存在だったと明かす。いつかあなたのようになりたいと思った、決して諦めないサムのように、自分も責任を負いたいと語るのだ。
これらの言葉は、ホアキンが意識不明となっている時にバッキーがサムに語ったことの答え合わせになっている。バッキーはサムが生身の人間だからこそ、誰かの目標になれると諭した。サムはその目標への憧れの視線が最も身近な人から向けられていたことを知ったのだ。
そしてサムはホアキンに今まで出し渋っていた技のコツをホアキンに教え、カムバックに備えてスーツを準備するよう告げる。「世界はアベンジャーズを必要としている」と続けており、事実上、ホアキンのファルコンを新生アベンジャーズに勧誘したということである。
ホアキンはサムに、コネでワカンダに新スーツを作ってもらえないかと頼み、サムが渋るという微笑ましいシーンで『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は幕を閉じる。実はこれまでサム・ウィルソンが登場する作品ではサムがラストシーンを飾ることが多かったのだが、今回はサムとホアキンの二人がラストを飾っている。
二代目ファルコンの今後は?
「アベンジャーズ」での活躍に期待
映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は、ホアキン・トレスをMCUの中心的なキャラクターに押し上げる作品でもあった。サムはすでにホアキンをアベンジャーズのメンバーとして数えており、今後の「アベンジャーズ」作品でも活躍を見せてくれそうだ。
次に登場する時には、ファルコンはワカンダ製の翼を使っているのだろうか。現在のファルコンのウイングスーツについては、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でのホアキンの「スタークの技術は荷が重い」という発言からスターク製であることが分かっている。
サムのキャプテン・アメリカのウイングスーツはワカンダ製だが、これは『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でバッキーがドーラ・ミラージュに制作を依頼したものである。サムが新ファルコンスーツをワカンダに発注するとすれば、ワカンダと強い繋がりを持つバッキー経由ということになるだろうか。新しい相棒のためにバッキーを頼らなければいけないという点も、サムが“コネ”を使うことを渋る理由かもしれない。
軍所属のヒーローというのはウォーマシンことローディと重なるところもある。バッキーが議員になれば、政府側のヒーローチームによる緊密な連携も期待できる。それにホアキンが特殊なのは、情報処理を得意とするという点だ。新生アベンジャーズにとっては心強い戦力になるだろう。
原作コミックでは?
原作コミックにおけるホアキン・トレスが初めて登場したのは2015年の『キャプテン・アメリカ:サム・ウィルソン(原題)』でのこと。メキシコ生まれで米国にやってきた移民で、移住してくる人々を助ける17歳という設定だった。MCUではマイアミ出身ということになっているが、演じたダニー・ラミレス自身もマイアミ出身だ。
コミックのホアキンはレイシスト団体のサンズ・オブ・サーペントに捕まった後、移民を実験台にしていたカール・マルス博士によってサムの相棒の隼・レッドウィングのDNAを取り込まれた。ホアキンはサムのキャプテン・アメリカに救出されたが、鳥の力を得てサムと共闘することになる。
サムとレッドウィングはサイキックリンクで結ばれており、ホアキンもレッドウィングを通してサムとサイキックリンクで結ばれることになった。MCU版ではホアキンはスーパーパワーを持たないという設定になっており、むしろスーパーパワーがないことによってサムとの精神的な結びつきが生まれている。
原作コミックでは、ホアキンはミズ・マーベルことカマラ・カーン、スパイダーマンことマイルズ・モラレスらがアベンジャーズを脱退して立ち上げたチャンピオンズというヒーローチームに参加する。チャンピオンズはアベンジャーズに疑問を持った若手ヒーローによるチームだ。
MCUでもカマラ・カーンとケイト・ビショップがヤング・アベンジャーズを結成する動きがある。原作のホアキンはティーネイジャーだったが、MCU版のホアキンは30歳前後だと思われるため、若手チームではなくアベンジャーズ入りする線が妥当だろう。
キャプテン・アメリカではなくファルコンに、サム・ウィルソンに憧れたトレス。今後もまだまだ活躍を見せてくれることに期待しよう。
映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は2025年2月14日(金) より公開中。
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』オリジナルサウンドトラックは発売中。
ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のBlu-rayは、4K UHD コレクターズ・エディション スチールブックが発売中。
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