ネタバレ考察 スターンズ/リーダーは何者だったのか『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』“MCUルール”変化の兆しを解説 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察 スターンズ/リーダーは何者だったのか『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』“MCUルール”変化の兆しを解説

©️2025 Marvel

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』公開

MCU映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』が2025年2月14日(金) より日米同時公開を迎えた。ジュリアス・オナーが監督を務める本作は、新たにキャプテン・アメリカとなったサム・ウィルソンに加え、映画『インクレディブル・ハルク』(2008) から登場しているサディアス・ロスがMCU世界の新大統領として中心的な役割を果たす。

また、『インクレディブル・ハルク』からは原作コミックでリーダーという名のヴィランとなるサミュエル・スターンズが再登場を果たす。スターンズもまた本作で重要な役割を果たすのだが、それ以上にMCUの今後に影響を及ぼすような設定も見られた。

今回は、映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』のサミュエル・スターンズについて、ネタバレありで考察していこう。以下の内容は重大なネタバレを含むので、必ず本編を劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の内容および結末に関するネタバレを含みます。

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』サミュエル・スターンズは何者だったのか

『インクレディブル・ハルク』のスターンズ

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』では、サディアス・ロスが新大統領に就任。『インクレディブル・ハルク』でハルクを追うアボミネーションの暴走という失態を演じたロスだったが、その後、アボミネーションを生み出したサミュエル・スターンズを逮捕して名声を得たことが紹介されている。

『インクレディブル・ハルク』では、スターンズは冒頭から“ミスター・ブルー”を名乗り、ハルクの“治療”を目指すブルース・バナーをオンラインで支援していた。一方でスターンズはことあるごとにブルースに血液サンプルを送るよう要求するなど、ハルクに対する好奇心が溢れ出してもいた。

ブルースがスターンズを訪ねた際には、解毒剤で一時的にハルクの力を制御することに成功。だが、スターンズがブルースの血液サンプルを大量に複製していることが明らかになり、ブルースからは危険だと批判された。

スターンズは決してブルースの血液を悪用しようと考えていたわけではない。ガンマ線への耐性を持つブルースの血液を活用すれば、様々な病気の治療法が見つかり、病気にかからない人類を創ることも可能だと考えていたのである。

その後、乗り込んできたエミル・ブロンスキーに迫られ、スターンズはブロンスキーに血液サンプルを注入してしまう。ブロンスキーは怪物のような姿をしたアボミネーションへと姿を変え、スターンズはアボミネーションに突き飛ばされて頭から流血、その傷口にブルースの血液サンプルが入って脳が肥大した姿を見せた。

その後のスターンズの動向は明かされていなかったが、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』では、スターンズは逮捕された後、ロスによってキャンプ・エコーワンに収監されていたことが明らかになった。

すべてスターンズのしわざ?

脳が肥大し、普通の人間には不可能な計算ができるようになったことで、サミュエル・スターンズはロスに目をつけられ、血中のガンマ線を増幅する処置も受けていた。ロスは恩赦を餌にしてスターンズを16年間もブレーンとして活用。MCUで陸軍将校から国務長官、大統領へと出世していったロスの16年の背景にはスターンズの存在があったことが明らかになったのだった。

サムはスターンズのラボでロス大統領のファイルも発見。ロス大統領は心不全を患っており、スターンズが開発した薬で命を繋いでいた。大統領になればスターンズは解放されるはずだったが、ロスは薬を失うことを恐れて約束を保護にした。ゆえにスターンズはロスへの復讐を決めたのだ。

だからスターンズにはロスを殺すつもりはなく、その目標はロスの名誉を地に落とすことだった。日米関係を悪化させ、アダマンチウムの利用をめぐる協定を破壊し、ロスを暴走させるためにスターンズは暗躍していたのである。

スターンズ最大の発明は、特定のパターンの光の点滅によって人間を洗脳し、フリートウッズの「ミスター・ブルー」(1958) を流すとその人間を操れるというシステムだ。これによりイザイア・ブラッドリーは操られてロスを銃撃する事件を起こしてしまった。

さらにスターンズが長年ロスに飲ませていた薬には、ロスを徐々にレッドハルクへと変えていく作用があった。スターンズの計画ではロスは日本と衝突したインド洋で暴走するはずだったが、キャプテン・アメリカの活躍によってそれは阻止されてしまった。

スターンズはエコーワンから脱走した後、ピルの作用を突き止めたサムの仲間の軍人を始末。そして、敢えて自首してロスが日本のアダマンチウム強奪を仕掛けたと嘘の情報を流し、ロスの暴走を誘ったのだった。

最後にはラフト刑務所に収監されたスターンズだが、ポストクレジットシーンでは別のユニバースからヒーロー達が押し寄せる今後の展開も示唆している。実はスターンズは最も安全な“シェルター”に行き着いたのかもしれない。

スターンズが破った? MCUのルールとは

MCUのヴィランルール

実は『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』のサミュエル・スターンズは、ほとんどのMCU作品が踏襲してきたヴィランのルールから逸脱したキャラクターだ。そのルールとは、「ヒーローは偶然パワーを得た人物で、ヴィランはパワーを追い求めた人物」というものだ。

このMCUにおけるヒーローとヴィランの定義は、2021年4月にマーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギ明かしたもの。ちょうどドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) が配信されている時期だった。

ケヴィン・ファイギは例外として、「スティーブ・ロジャースのように何かを乗り越えるための“手段”としてパワーを得る場合」を挙げている。パワー/力は目的ではなく、あくまで手段だというのがMCUの根底にある哲学なのだ。

このヒーロー/ヴィランの定義はほとんどの作品で適用されており、ヒーローは事故や事件に巻き込まれて力を手に入れるが、ヴィランは自ら力を欲して行動に出る。例えばスパイダーマンは蜘蛛に噛まれて力を手に入れ、キルモンガーはブラックパンサーの力と王の座を望んでそれを手に入れた。一方で、『アントマン&ワスプ』(2018) のゴーストのように望まない力を得て道を誤ったキャラには、救いの道が用意されていた。

MCU以外では、例えばソニーのサム・ライミ版「スパイダーマン」シリーズでは、ドクター・オクトパスらはスパイダーマンと同じく事故で力を手に入れるが、その力の“使い方”がヒーローになるかヴィランになるかを分けた。20世紀フォックスが展開した「X-MEN」シリーズも生まれつき力を持っているミュータント達が人類と共存するか分離するかで陣営が分かれることになった。

ルール転換の時期?

つまり、「力を欲して手に入れるのがヴィラン」というルールはMCUを特徴づけるものでもあった。ところが、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』では、黒幕でメインヴィランのスターンズは事故で力を手に入れ、その上ロスに騙されて復讐に出ていた。スターンズ自身は何も手に入れていない。

普通の作品なら復讐を試みるだけでヴィラン認定は降りるだろうが、MCUの基準ではスターンズは不幸なキャラクターである。レッドハルクと化したロスについても、スーパーパワーは意図せずスターンズから与えられたものだ。一方で、大統領という権力を欲して手に入れたという点では、ロスはヴィランの条件を満たしている。

サミュエル・スターンズ/リーダーがMCUのルールから外れる形で黒幕のヴィランとして描かれた理由は、二つ考えられる。一つはMCUのルール自体を変える時期が来たというもの。ソニー・ピクチャーズの「スパイダーマン」や、20世紀フォックス作品がMCUに合流するにあたり、ルールを変えざるを得なくなったのかもしれない。

例えば映画『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』(2021) では、二つのユニバースからヴィランが合流したが、サンドマンやエレクトロなど不本意にヴィランになった面々を“治療”するという形で決着をつけた。MCUルールを守るなら同じような形を繰り返さざるを得ないという創作上の窮屈さに直面するだろう。

また、「X-MEN」シリーズがMCUに合流するにあたって、ルールを維持するなら生まれつき能力を持っているミュータントをヴィランにするのが難しくなる。MCUもスタートから15年以上が経ち、ルール変更の岐路に立っているとも考えられる。

ちなみにケヴィン・ファイギのMCU哲学の一つとして、「行動には結果が伴う。たとえそれが英雄的なものでも」という考えも知られている。この思想は無限にクリフハンガーを続けていくシリーズの戦略に適している。

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』でも、ハルクとアボミネーションの戦いがスターンズの陰謀を生んでいだことが明かされた。また、ロスには自らの行いの帰結を受け入れるという結末が用意されていたので、こちらは維持されていくことになりそうだ。

スターンズの物語は続く?

もう一つ考えられるのは、今後、“サミュエル・スターンズはヴィランではない”という方向に進んで行くというセオリーだ。望まず超人兵士にされたバッキーが、事故に巻き込まれ量子フェージング状態となったゴーストことエイヴァと共に映画『サンダーボルツ*』で主役を飾るように、スターンズにも何らかの役割が残されている可能性もある。

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』のポストクレジットシーンでも、スターンズはわざわざサムに情報提供を行なっている。今後、MCU世界が混沌に陥っていく中で、スターンズは単なるヴィランに収まらない預言者的存在になるのかもしれない。

マーベル・スタジオは『インクレディブル・ハルク』で伏線を張っておいて16年もノータッチだった。スターンズには“リーダー”を名乗るに相応しいキャラに成長していく今後が用意されている方がフェアだと言える。

ちなみに原作コミックのリーダーはインテリジェンシアという名の頭脳派ヴィランチームを結成する。リーダーはハルクの宿敵でもあり、今後MCUで「ハルク」シリーズが再起動するのであれば、スターンズはMCUでも重要なキャラとなっていくかもしれない。スターンズの今後にも注目だ。

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は2025年2月14日(金) より公開中。

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』公式

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』オリジナルサウンドトラックは発売中。

ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のBlu-rayは、4K UHD コレクターズ・エディション スチールブックが発売中。

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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